超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

今回は……気づいたらかなり長くなっていました(汗

でもその分、今回のお話はタイトルにある通りものすごい見所があります。
そう、変革……それが訪れます。

それではお楽しみください、どうぞ!



stage,45 俺と変革の時

「あ………“ライバルカード”、試作品の起動、を確認」

 

一触即発の空気の中、端末を見ていたロボティックがそう言った。

傍にいたエネミーとトランスの二人はすぐにそれに反応し、彼女の端末を覗き込む。

 

「なんやて……ってことはあのおばはん、あれを使ったんか!?」

 

「出し惜しむつもりは、ないってことですか……」

 

「………一応、データは回収、しておく」

 

「……お願いします」

 

ロボティックはこくりと頷くと端末を操作し、さっそく表示されるデータの整理をし始めた。

 

彼女たちがマジェコンヌに渡したライバルカード、それは今後、“彼”の後継者の育成のために必要な礎そのものなのだ。

 

そのためにライバルカードそのもののデータが必要なため、それを収集するために彼女に手渡したというのが事の発端だった。

 

「へっ、ずいぶんとまあ仕事熱心になっちまってよぉ……前はもっと楽しそうなことしてたのに、変わっちまったな? お前ら……」

 

「……あなたがしたことでどれだけの影響が出たことか……私たちも、そして、“彼”もその犠牲者なんですよ?」

 

「おーおー、こえーこえー、そんな殺気立った目で見んなよ」

 

クロワールがからかうような姿勢でトランスに絡むと彼女は珍しく明らかな感情を滲みだした目で彼女を睨み付けた。

明らかな怒りを感じ取れる瞳がクロワールを映し出す。

だが、それを前にしてもクロワールはたじろぐこともなくにやにやと不敵な笑みを浮かべて四人の周りをうろちょろと動き回る。

 

「まあ、お前らのしようとしてることに文句つけるわけじゃないけどよ、今のままじゃ面白くねーのは事実だ」

 

「だから邪魔をしにきた……そう言いたいんか? あんたは」

 

「言っておきますが、少しでも変なことをしたら速攻であなたを袋叩きにしますよ?」

 

「へへっ、安心しろよ? 別にオレは何もしやしねーよ……何も、な?」

 

意味ありげにそう言ったクロワールはそのまま視線をある方向に向ける。

先程爆発があった、四女神が捕らわれている地点に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な花火が空中ではなく、地上で上がったかのような強烈な轟音と爆煙が上がる。

パープルシスターに向けて放ったマジェコンヌのエネルギー波、“ギャリック砲”。

異世界の戦士の力の一端を目の当たりにしたその場の全員は驚きを隠せずにいた。

あんな攻撃をまともに喰らえば……。 ユニの背中に冷たい悪寒が走る……

 

しかし、砂塵があたりに立ち込める中、その中から飛び出す者がいた。

 

視界が悪い中、一気にスピードを上げて上空にまで飛び出した何者かの姿はすぐに判明した。

 

「……ネプギア!」

 

「無事だったみたいね」

 

飛び出したのはまだ戦う意思を込めて銃剣を構え、上空に浮遊するネプギア、パープルシスターだった。

 

「……危なかった」

 

マジェコンヌのギャリック砲が放たれた瞬間、彼女はすぐに横に跳び直撃は何とか避けたのだ。

回避行動を取ったことでダメージこそなかったが、その際に起きた爆発の衝撃を身に受けた際に思った。

もしこれが直撃したらと思うと彼女はぞっとするものを感じずにはいられなかったからだ。

 

なにせ、ギャリック砲が直撃した地面は隕石が衝突した後のように大きく抉れているのだから……。

 

「ほお、よく今のを躱せたものだ」

 

「っ!」

 

パープルシスターが声が聞こえた方に振り向くと、そこにはまた別の武器を構えたマジェコンヌの姿があった。

持っているのはさっきの刀や片手剣や盾でもない、巨大な戦斧。

 

「だが、それはただの悪足掻きにすぎん…一瞬で死ぬのが嫌なら、じわじわ嬲り殺してやる!」

 

「そう簡単に……やられるつもりはありません!」

 

「なら、これを防げるか? “テンツェリントロンぺ”!」

 

「くっ! あうっ!?」

 

放たれたブランの得意技をパープルシスターは防御しようと試みるが、なにせパワータイプのブランの攻撃、コピーとはいえその攻撃力は凄まじく、パープルシスターの防御を突き破って地面に叩きつけるには十分すぎるものだった。

 

もうもうと立ち込めていた砂塵が徐々に晴れ渡る中、一人地面にたたきつけられたパープルシスターは自分の元に降りてくるマジェコンヌを見上げる。

だが、今のダメージの影響によるものかそれが精いっぱいで、反撃しようにもうまく体が動かなかった。

 

眼前にまで降りてきたマジェコンヌが戦斧を構え、再び振り下ろそうとした時、彼女にできるのは程なくして訪れるであろう痛みに耐えようと心に決めることだけだった……。

 

 

 

「やめて!」

 

 

 

だが、聞き覚えのある幼い声がマジェコンヌに向けて放たれた。

 

「ネプギアにひどいことしないで!」

 

声の主はおびえた様子でラムの後ろに隠れるロムと、負けん気の強い敵意むき出しの目でマジェコンヌを睨み付けるラムの二人だった。

だが、二人の子供の制止を彼女が聞き入れるつもりは毛頭なく……。

 

「ふん……ガキはおしゃぶりでも加えてな!」

 

ただそう言って二人の制止を振り払った。

 

そして再び彼女の持つ戦斧がパープルシスターに、振り下ろされる……。

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 

―――ガキィン!

 

 

 

聞こえてきたのは、裂帛の気合いと甲高い金属音。

 

 

見えたのはマジェコンヌとパープルシスターの前に割り込んだ二振りの剣を持つ“赤い影”。

 

 

「……また貴様か、小僧」

 

「……何処かで会ったっけ?」

 

 

パープルシスターに非情の刃が振り下ろされようとしたその時、彼が……宗谷が駆けつけた。

 

スキルチェイン、二刀流スキルの組み合わせを発動させマジェコンヌの攻撃を防いだ宗谷は大きく両足を開いた体制で二本の剣をクロスさせてマジェコンヌの戦斧による攻撃を防ぎ、パープルシスターを守ったのだ。

 

突然の乱入者にマジェコンヌは不機嫌そうに後ろに跳んで距離を取る。

 

「貴様、覚えていないのか? 私のことを、このマジェコンヌのことを!」

 

「………悪いけど、あんたみたいな目つきの悪い奴に覚えはないぜ?」

 

「なん……だと……、ふ、ふざけてるのか貴様ぁ!」

 

「いや……マジで覚えてないんだってば」

 

戦斧を宗谷に向けて怒鳴り散らすマジェコンヌに対して、彼は何を言いたいのかわからないと言いたげに首を傾げる。

まあ、実際の所TGSの際に二人は直接顔を合わせた訳ではないので宗谷自身が覚えていないのは当然である。

 

「宗谷さん……無事だったんですね!」

 

「勝手に殺さないでくれるか、ネプギア?」

 

「ネプギアさん、一度下がってください」

 

「いーすんさんも……よかった…」

 

遅れてきたイストワールがダメージを負ったパープルシスターの腕を引いて宗谷から距離を取る。

彼はそれを見届けると再びマジェコンヌと対峙する。

 

「ふん……まあいい、お前が覚えていなくとも、私はしっかりと覚えている……あいつらを倒したようだが、図に乗るなよ?」

 

「……魔進チェイサーと一緒にいた白い髪の仮面はどうした?」

 

「知ったことか、今は目の前にあることに集中していろ小僧!」

 

マジェコンヌは持っていた戦斧を振り上げその形状を再び片手剣と盾の二つに変化させた。

別の武器を構えたマジェコンヌに宗谷は警戒し二本の剣を構える。

マジェコンヌは片手剣を左右に切り払い、腰だめに構えると勢い良く地を蹴って前へと飛び出した。

 

「“ヴォーパル・ストライク”!」

 

「っ……なに!?」

 

赤色に発行した片手剣の刃を翻し、一陣の風の如き俊足で一気に間合いを詰めたマジェコンヌの攻撃を宗谷は紙一重で防いだものの、そのヘルメットの下に隠された眼は驚愕で見開かれていた。

 

「どうして……どうしてお前が、“ソードスキル”を使えるんだ!?」

 

「ふん、私は手に入れたのさ……女神の力と別世界の戦士の力を!」

 

「なんだと!」

 

「すべては女神とお前をあの世に送るためにな……はあっ!」

 

ぎりぎりと切り結んでいた刃を押し切って宗谷を後退させたマジェコンヌは片手剣を再び構える。

宗谷は歯をぎりっと食い縛り、マジェコンヌを睨むと反撃するべくすぐに走り出しマジェコンヌとの距離を埋めにかかる。

 

「らあっ!!」

 

一気に間合いを詰めて宗谷が右手に持っていた赤剣を振るって攻撃を仕掛ける。

しかし、宗谷の一撃はマジェコンヌが左手に持っていた盾によってあっさりと防がれた。

 

負けじと宗谷は二度、三度と両手の剣を駆使してマジェコンヌに切りかかるもそれらすべての攻撃はマジェコンヌの盾による防御ですべて弾かれ、当たることはなかった。

20回連続で攻撃を仕掛けた宗谷だったが、それらすべてを防がれたため、一度体勢を立て直すために一度後ろに跳んで距離を取った。

 

「くそっ! なんで通らないんだよ!」

 

「気を付けて宗谷! そいつ、私たちの技とあなたの世界の物語に出た戦士の力も使うのよ!」

 

「なっ……まさか……」

 

結界の中に閉じ込められているノワールの言葉を聞いた宗谷の脳裏にあるキャラクターの名前が浮かんだ。

 

それはゲームオーバーが本当の意味の死になったデスゲーム、“ソードアート・オンライン”の制作者であり、すべての元凶となり、キリトと相打ちになったもののその強大な力をこれでもかと残し、姿を消した人物。

 

 

 

「“ヒースクリフ”の………“神聖剣”」

 

 

 

そうとしか考えられなかった。

盾とはいえ、攻撃力も格段に上がった宗谷の連撃を正面から受けて、それらすべてに耐えうるほどの防御力。

それが絶対的な防御力を誇り、キリトの二刀流ソードスキル、“スターバースト・ストリーム”や“ジ・イクリプス”をすべて受け流したヒースクリフの神聖剣なら納得がいく。

 

「私が手に入れた力はこれだけではないぞ? ……むん!」

 

そう言うとマジェコンヌは持っていた二つの武器を消し、両手で握りこぶしを作り、力を込める。

すると、その両手におぞましい黒い炎のようなエネルギーが滲み始めた。

 

「これは……“ガノンドロフ”と言うやつの魔力による拳闘術だ」

 

「は!? ヒースクリフだけじゃないのかよ……」

 

「喰らうがいい、小僧ぉぉぉおお!!」

 

両手に魔力を蓄えたマジェコンヌは叫び、拳を引きながら宗谷に向かって走り出した。

 

“魔王ガノンドロフ”、闇の魔力に長け、強大なパワーで幾度となくリンクを追い詰めた魔王の力をまともに受ければひとたまりもない。

宗谷は回避に専念しようと赤剣の構えを解除し、マジェコンヌと一定の距離をあけて走り出す。

 

だが、

 

「逃げても無駄だぁぁああああああ!!」

 

「な、ぐああああああぁぁぁぁぁあああああ!?」

 

逃げの一手と見るや否や、マジェコンヌは己の拳を地面に叩きつけその魔力を地面に伝え、衝撃波として放ったのだ。

予想外の攻撃に対処が遅れた宗谷は、その攻撃をもろに浴びてしまいスキルチェインを強制解除させ、赤剣を手放してしまい、宙に放り出される。

 

さらにマジェコンヌは宙に放り出された宗谷に追い打ちで両手を組み、アームハンマーを振り下ろし追撃する

 

強力な攻撃をまともに受け、地面に落下した宗谷。

しかし、マジェコンヌの攻撃はこれだけに留まらず、黒い魔力が炎となって宗谷の身体に纏わりつき、さらにダメージを与える。

 

「あ、あぁぁ……あぁぁぁああああぁぁぁ!! あっ……があああああぁぁぁあああああぁぁ!!」

 

炎が宗谷の体を装甲の上から焼き始めた。

装甲の上でも感じるあまりの熱さに宗谷は地面を転げまわり、悶え、苦しむ。

 

「あぁ…宗谷さん!!」

 

「宗谷さんが……待っててください! 今行きます!」

 

あまりの光景にイストワールが無意識のうちに彼を呼び、見ていられなくなったパープルシスターが再び武器を構えてマジェコンヌに挑む。

 

だがマジェコンヌは迫ってきたパープルシスターにいち早く気付くと魔力を乗せた拳で裏拳を一発、パープルシスターを寄せ付けようとしない。

 

「うぐっ……!」

 

「ふん、誰も私には敵わないさ……そう、誰であろうともな!」

 

倒れたネプギアにマジェコンヌは追い打ちをかけようと魔力を解き放とうとする。

 

 

「そんなことない!」

 

「あなたなんかに……ネプギアちゃんは……そうやお兄ちゃんは……負けない」

 

「それにわたしたちだって、いるんだから!」

 

 

そこに再びロムとラムの二人が待ったをかける。

さっきと同じように、幼い瞳に強い意志を滲ませて……。

 

「……ガキが……大人しくしていろ!!」

 

それを聞いたマジェコンヌは右手に溜めていた魔力を一度消した後、今度は腰にベルトのようなものを出現させて左手をロムとラムの方に向けた。

 

「ぐっ……あぁぁあ…っ! あ、あれは……!」

 

魔力の炎に焼かれる宗谷は、そのベルトを見たときある戦士の幻影がマジェコンヌに重なった。

 

“シャドーチャージャー”。

 

世紀王を名乗り、幼馴染でありながらその運命によってゴルゴムによって改造され“仮面ライダーBLACK”と激闘を繰り広げた宿敵。 “シャドームーン”が腰に備えていたベルトである。

 

「消し炭になるがいい………“シャドービーム”!」

 

「っ! 逃げて! ロム、ラム!!」

 

マジェコンヌが二人に向けていた左手から緑色の閃光が迸る。

稲妻のような光線が空気を切り裂き、ロムとラムに迫った。

その瞬間、捕らわれた状態のブランが二人に逃げるように促すが、閃光の光の眩しさに、ロムとラムはお互いに目を瞑り互いを庇うようにしてその場にしゃがみ込んだ。

 

 

その場にいた誰もが、息を飲んだ。

 

 

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

 

 

 

 

ただ一人、宗谷を除いて………。

 

「え? ……そうやお兄ちゃん!?」

 

「………そんな」

 

魔力の炎に焼かれながらも、宗谷は二人に迫った緑色の光線を自分の身を盾にすることで防いだのだ。

シャドームーンの姿が重なったとき、すでに体は動いていた。

今動かなければ、二人が危ない……そう感じたから。

 

「あっ………ぐ……ぁっ」

 

赤い装甲の所々を焼けこげさせ、煙を上げながら、宗谷は前倒しに再び地面に倒れ伏した。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「いや……いや………やだぁ!!」

 

倒れた宗谷にロムとラムが駆け寄る。

しかし、宗谷はピクリとも動かず倒れたままだ。

 

「そんな……宗谷さん!!」

 

「イストワール様、危険よ!」

 

「でも、宗谷さんが……宗谷さんが!」

 

離れた位置で見守っていたイストワールが彼に駆け寄ろうとするがケイブが危険と判断しそれを制止する。

それでもイストワールは彼の元に向かおうとするが、それはあまりにも危険すぎた。

なぜなら彼らのすぐそばにまでマジェコンヌが迫っていたからだ。

 

「ふん、バカな小僧だ…何もできないガキのために己を犠牲にするとはな」

 

彼女はそういうと武器を大剣に変化させて三人に迫る。

このままでは危ない、宗谷はどう見ても戦闘不能、ロムとラムの二人はまだまともにマジェコンヌと渡り合えるほどの力はない。

 

「やめろ! そいつらに……二人と宗谷に手を出すんじゃねぇ!!」

 

「ハッ、何もできない小娘が喚いたところで何になる?」

 

「くっ……畜生……私は……!」

 

「ブラン……」

 

ブランがマジェコンヌに食って掛かるが、手も足も出ない状況下の今では何を言っても無駄だ。

歯痒い思いをするブランの心中を察してかベールが彼女を見つめる。

 

 

 

「………ま、だ……」

 

 

 

その時、ブランの耳に……

その場にいた全員の耳に予想打にしない声が聞こえた。

 

「………え?」

 

「ま………だ…やられて、ねぇよ……」

 

宗谷が……立ち上がったのだ。

 

ぼろぼろになりながらも、息が絶え絶えの状態になりながらも、立ち上がったのだ。

 

 

「宗谷………バカ野郎!! これ以上戦ったらお前!」

 

 

ブランが今度は立ち上がった宗谷に怒鳴り声を上げる。

これ以上宗谷が戦えば彼自身がどうなるのか、それを察したからだ。

 

「……守るって」

 

「……え?」

 

「約束しただろ………守るって……どんな状況でも、何が何でも助けるって」

 

「あ………」

 

「ソウヤ……それって」

 

それはいつか、宗谷がネプテューヌとブランにした約束。

彼のもう一つの、信念の証。

 

これ以上大切な何かを失わないために、大切な人たちを守るために、彼はまだ立ち上がるというのか……

ブランはこの時、彼が背負っている何かが自分たちの想像以上に大きいものなのだと無意識のうちに感じ取った気がした。

 

「だから……この程度……屁でも、ねぇ…よ……っ」

 

そう言いつつも彼は再び地面に膝をついた。

先程の攻撃で彼に蓄積したダメージの大きさは並大抵のものではない、意識を刈り取られてもおかしくないというのに、それでも彼は己の体に鞭を打って立ち上がろうとしたのだ。

 

「……ふん、何をべらべらと……これで終わりにしてやろう」

 

マジェコンヌが大剣を構え膝をついた宗谷にとどめを刺そうと構える。

 

だが、

 

「させない……!」

 

「もう、あなたの好き勝手にさせないんだから!」

 

宗谷の両隣にいたロムとラムの二人が彼の前に躍り出た。

宗谷はダメージで震える体を無理矢理に動かし、二人に離れる様に言う。

 

「やめ、ろ……二人とも……危…ないぞ」

 

「ううん! もう、逃げない!」

 

「お兄ちゃん……お姉ちゃん……ネプギアちゃん……大好きなみんなを守りたい」

 

「だから、わたしたちだって戦うもん!」

 

宗谷の制止を断った二人は互いの手を強く握り、マジェコンヌを睨み付ける。

 

その時、

 

「やっつける……」

 

「わたしたち……二人で!」

 

二人の手から白い、美しい光が迸った。

 

その光を、ブランは知っていた。

 

「ロム……ラム……」

 

 

 

この光は………シェアエナジーの光。

 

 

 

「絶対に許さない……!」

 

「覚悟しなさい!」

 

 

 

光が溢れ、二人の体を包みこんだ時、二人の姿はいつの間にか別人のように変化していた。

二人とも先程まで来ていたボリュームのあるコートではなく、体に張り付くようなレオタードタイプのコンバットスーツを身に纏い、白い輝きを放つお揃いのロッドを手にしている。

髪の色も変化し、ロムは淡いスカイブルーに、ラムは鮮やかなピンクに染まっている。

 

そう、この現象は特訓の末に目指した彼女たちのもう一つの姿。

ネプギア、己の本質を見つけ遂に至ることができた彼女たちの力を最大限に引き出すもう一つの姿。

 

ロムとラム、女神ホワイトハートの妹たちが女神化した姿、“ホワイトシスター”!

 

 

「女神化だと? ハッ、だが所詮ガキの一人や二人が変身したところで……」

 

 

このどたんばの状況で女神化した二人を前にしても余裕を見せているマジェコンヌ。

だが、その余裕を見せたのが油断となった。

 

ホワイトシスターへと変身した二人は互いに背中合わせになるとロッドをマジェコンヌに向けて構え、先端に冷気を纏った魔力を集中させる。

 

「「はぁぁぁぁぁぁあああ!」」

 

二人が気合を入れて叫ぶと、冷気はたちまちにハート型の巨大な氷の塊となった。

 

「「“アイスコフィン”!!」」

 

「うあっ!?」

 

二人の魔力を合わせた氷魔法、“アイスコフィン”がマジェコンヌに向けて放たれる。

完全に油断していたマジェコンヌは放たれた氷の塊の勢いに対応しきれずその攻撃を真正面から喰らうこととなった。

砕けた氷がダイヤモンドダストになり、マジェコンヌの周りを浮遊する。

 

「「やった!」」

 

自分たちの攻撃が直撃し、喜ぶ二人。

その様子を見ていた宗谷は見つめる。

 

「二人も……女神化、したのか……」

 

膝をつき、肩で息をする宗谷はそう呟く。

大切な姉、大切な友達を助けたい、その思いが彼女たちを女神化させるに至らしめたのか、ふと宗谷はそんな考えが浮かんだ。

 

喜びに浸るホワイトシスターの二人。

だが、その喜びもつかの間……

 

 

「………! 二人ともまだだ!」

 

 

宗谷が咄嗟に声を上げてホワイトシスターたちに呼びかけた。

 

その理由は、すぐにダイヤモンドダストの中から何かが飛び出したことで二人は気づいた。

まだ倒していなかった、いや、決定打に至るほどのダメージすら与えてなかったのだ。

 

 

「“レイシーズ・ダンス”!」

 

 

ダイヤモンドダストの中から飛び出したマジェコンヌは、今度はノワールの得意技を繰り出してホワイトシスターに反撃した。

 

「「きゃぁぁぁぁあああ!」」

 

「ロムちゃん、ラムちゃん!」

 

「くっそ! あぐっ!? ………つぅっ」

 

攻撃を受けて地面に落ちていくホワイトシスター、それを見た宗谷とパープルシスターはすぐに助太刀に入ろうとするが、宗谷は先程の攻撃による痛みによってうまく動けず立ち上がろうとするが再びその場に膝をついてしまう。

 

「宗谷さん、無理はしないでください! ここは私が!」

 

一方、空中に飛翔したパープルシスターは銃剣を構え、その銃口をマジェコンヌに向けるとそこから強力なビームを放ちマジェコンヌを銃撃する。

 

放たれたビームはマジェコンヌに命中し、直撃により発生した煙が朦々と立ち込める。

 

だが、その攻撃を受けても尚、マジェコンヌは健在だった……。

一体、彼女はどれほどのパワーアップを遂げたというのか、パープルシスターは戦慄を覚えた……。

 

 

「反撃させてもらうぞ?」

 

 

マジェコンヌがそう言うと、彼女の背中の一対の翼が分離し、まるでそれぞれが独自の意思を持っているかのように動き出した。

それらの翼はパープルシスターと先程攻撃を受けたホワイトシスター、さらにはまともに身動きするのも危うい状態の宗谷にまで迫った。

 

翼から放たれた赤い閃光が四人を撃ち抜かんとし、攻撃を激化させる。

 

「きゃあっ!?」

 

「ラムちゃん……っ、ああっ!?」

 

「くっ………うっ、この……ひゃっ!?」

 

「ぐっ……ううぅっ! はあ、はあ、はあ……赤剣は……っ! うおおぉぉ!」

 

それぞれ、回避や防御に専念しながらマジェコンヌの反撃に耐える中、四人からは離れた位置でただ一人、銃のスコープを覗き込むユニがマジェコンヌに狙いを定める。

 

だが、銃のトリガーに備えた彼女の指が小刻みに震えている……。

 

(私だけ変身できないなんて……お姉ちゃんだって見てるのに……宗谷さんにも一番に変身してみせるって約束したのに……)

 

彼女の心境に渦巻いているのは、自分が憧れた姉とは違う自分の無力さへの屈辱。 自分を励ましてくれた宗谷に対する申し訳なさ…。

その影を差すような暗い思いが彼女の狙いを鈍らせているのだ。

 

だが、彼女は程なくして気づいた。

 

(あ………どうして私、またお姉ちゃんと宗谷さんのことばっかり?)

 

いつの間にか、彼女の思考には二人のことが浮かんでいた。

それがなぜか、いつの間になのかは彼女にもわからない…。

 

気付けばマジェコンヌは彼女のスコープの狙いから外れ、パープルシスターに集中攻撃を行っていた。

このままでは彼女は押し負ける、そう思ったとき……

 

 

 

『Skill Chain! Infinite Stratos! Hidan no ARIA!』

 

 

 

電子音が聞こえ、マジェコンヌに向けてどこからか別の銃弾が放たれた。

その正体は、ガンコンシューターを右手に構え、左手に赤剣を握りしめながら膝立ちでマジェコンヌを銃撃する宗谷だった。

 

「ちっ! しぶとい奴め……」

 

「躱せるものなら、躱して……みろよ!」

 

ダメージが残る体で放った宗谷の攻撃、それは………“見えなかった”。

 

「ぐぅっ! ……なんだ、今のは?」

 

“撃つ動作すら見せなかった”今の宗谷の銃撃。

これは緋色のアリアの主人公、遠山キンジとその兄である“遠山金一”が持つあまりにも早すぎる早打ち、“不可視の銃弾(インヴィジヴィレ)”の再現攻撃。

高速移動能力を持つ、スキル インフィニットストラトスと組み合わせたことにより発動できた。

 

だが、

 

「うぐっ! ……腕が……」

 

本来彼の体そのものを高速移動させる能力を手だけに集中させたために、その反動が大きくそれによって宗谷の手に痛みが走り、ガンコンシューターを手放してしまった。

 

「小僧ぉぉぉぉぉぉおおおお!!」

 

激昂したマジェコンヌが今度は宗谷に狙いを定めてオールレンジ攻撃を放とうとする。

今の宗谷は回避や防御に専念するのがやっとで合計数十機もある翼の攻撃をすべて避けるのは確実に無理だ。

 

「っ! ……この!」

 

マジェコンヌの攻撃が放たれる寸前、ユニは持っていた銃のトリガーを引いた。

放たれたエネルギーの一閃がマジェコンヌを攻撃し、当たりはしなかったが注意をそぐことはできた。

 

「え……ユニ!」

 

「宗谷さん、今のうちに離れて!」

 

ユニは宗谷にそういうと、再び銃のスコープを覗き込みトリガーを引く。

 

(なんでかはわからない……けど今は!)

 

「今は、私もお姉ちゃんやみんなを助けたいの!!」

 

迷いを無理矢理に振り切り、一心不乱に銃を乱射するユニ。

 

「当たれ、当たれ、当たれぇぇぇぇぇえええええ!!」

 

 

奮闘するユニの様子を、ノワールはじっと見ていた。

 

「ユニ……」

 

今まで彼女を思い、厳しめに接してきた彼女だからこそ感じるユニへの心配。

奮闘する彼女が見せる、必死さの奥に見える何かを、ノワールはいち早く感じ取っていた。

 

((そうよ……ユニ))

 

この時、自然とノワールとユニの思考が合わさっていた。

 

((今は標的のことだけを考えるの………))

 

救い出すために、守るために、何も気にせず目の前の標的を撃ち抜く。

それが今の彼女に必要なこと……。

揺るがぬ思い、突き進むための強さ!

 

 

 

その思いが、彼女に劇的な変革を促す!

 

 

 

ユニが放っていた銃撃の狙いが、荒いものから次第に正確なものに変化していった。

牽制から狙撃に、動き回る翼を正確に寸分違わずに次々と撃ち落していく。

 

(見える!)

 

僅かな時間で多くの翼を撃ち落したユニの体が、この時淡い光を帯び始めたのをパープルシスターと宗谷は見逃さなかった。

 

黒かった彼女のツーサイドアップの髪がカールし、白銀に染まっていく。

 

地面を思い切り踏みしめ、彼女の変化とともにその姿をより重厚活巨大に変えた銃を構えたユニは痛烈な一撃を放つ!

 

 

X・M・B(エクス・マルチ・ブラスター)!!」

 

「ぐあああああああ!?」

 

 

銃口から迸った深緑のエネルギー砲がマジェコンヌの背中の翼を捉え、撃ち抜いた!

 

ユニは悠然と、そして、今までなすことができなかった浮遊を見事にこなし、空中で己の武器を構え闘志を込めた瞳でとマジェコンヌを睨む。

 

「迷いはないわ………あるのは覚悟だけ!」

 

そう、その姿は今までの彼女ではない……。

黒く輝く体のプロセッサユニット、背中に備わったウィングユニット。

彼女は遂に変身したのだ……黒の女神、ブラックハートの妹、“ブラックシスター”に!

 

「ユニちゃん……かっこいい!」

 

「え? ……あ、私……変身してる」

 

「やったね、ユニちゃん!」

 

「すごい♪」

 

遂に女神候補生の全員が変身したことで四人は喜びあう。

宗谷も地上からユニに視線を向け、彼女に向けてサムズアップを見せている。

 

「やったな、ユニ……おめでとう!」

 

「みんな……ま、まあね! 主役は最後に登場するものよ!」

 

「うん、そうだね!」

 

戦力的に大幅に向上した女神候補生の四人、これで少しはマジェコンヌと対等に渡り合えるやもしれない。

彼らの目の前に少し希望が見えてきた。

 

「ユニ!」

 

「みなさん……素晴らしいですわ!」

 

結界の中に捕らわれている四人にも自然と笑顔が戻っていた。

これならもしかしたら、そう思えてきたのである。

 

 

 

だが、その希望は一瞬で絶望へと変わる……。

 

 

 

 

 

絶望の秒針が、その時を知らせようとしていた………。

 

 

 

 

 

自分の妹たちと友人が奮闘する姿を見守っていたネプテューヌ。

その彼女の足元から、また黒い雫がしたたり落ちた……その時

 

 

「っ!」

 

「な、なんなの……!?」

 

「これは……!」

 

 

彼女たちの足元に溜まっていた黒い液体状の何かから、何か呻き声のようなものを上げながら黒い手のようなものが伸び、ネプテューヌたち四人の身体に纏わりつき始めた。

 

この時、女神の四人が捕らわれてからすでに丸一日、つまり24時間が経過しようとしていた。

 

「あ! みなさん! 急いでください!」

 

離れた位置でケイブとことを見守っていたイストワールが結界の中の異変に気づき宗谷を呼んだ。

イストワールの声を聴いて、宗谷を含めた五人が彼女の方を向く。

 

「もう時間がありません、このままだとネプテューヌさんたちが!」

 

「なっ……もうそんな時間だってのか!?」

 

「え……どういうことなんですか、宗谷さん!?」

 

慌てた様子の宗谷に近くにいたネプギアが聞く。

宗谷は赤剣を杖代わりにして立ち上がりながら結界の方に視線を向けた。

 

「ここに来る途中でいーすんから聞いた……アンチクリスタルはただネプテューヌたちとシェアクリスタルのリンクを遮断するだけの力を持ってるだけじゃないんだ」

 

「それって……どういう?」

 

「リンクを失い、行き場をなくしたシェアエナジーはやがて“アンチエナジー”と呼ばれるマイナスの力に変換され……密度の濃いアンチエナジーは………

 

 

 

 

 

       女神の命を奪うとも言われています……」

 

 

 

 

 

イストワールの口から告げられた事実を聞いたとき、女神候補生の四人の目が驚愕で見開かれた。

アンチクリスタルに隠されていた力が本当に女神の命を奪うものなら、もう時間は残されていない……。

 

「時間がない……無理やりにでも突っ切るぞ!」

 

『Skill Link! Kamen Raider』

 

宗谷はスキル 仮面ライダーを発動しマシンヴィクトラーを再び出現させると四人を促し、強行突破を試みる。

それを聞いた四人も強く頷いて返答し、彼女たちが前に出ようとした時。

 

「させるか!」

 

マジェコンヌが残っていた翼を駆使し、女神候補生の四人と宗谷を妨害し始めたのだ。

飛び交うビームが彼女たちの行く手を阻み、進ませようとしない。

 

「くそっ! 邪魔するな!」

 

「宗谷さん、先に行ってください!」

 

「ネプギア……でも!」

 

「いいから行って! 早く!」

 

パープルシスターとブラックシスターが宗谷を援護し始め、何とか彼が進む道を作り始める。

宗谷は二人の強い声に押され、まだ迷うような素振りを見せながらもマシンヴィクトラーを走らせる。

 

「………ふっ、そう甘くはないんだよ!」

 

すると、マジェコンヌは何も持っていない両手を大きく広げて両手に光り輝くエネルギーを集め始める。

そして、大きく息を吸い込み何か煙のようなものを体に取り入れるとにやりと笑った。

 

「小僧、いいことを教えてやろう」

 

「なに……?」

 

「アンチクリスタルの力は女神を殺すだけでなく、私の力の糧にもなるのだ」

 

「っ! ……じゃあ、さっきのロムとラムやネプギアの攻撃が効かなかったのも!」

 

「………そういうことだ」

 

「……いけない! 宗谷さん急いで!」

 

宗谷はパープルシスターの声を聞いて歯噛みをしながらも、マシンヴィクトラーのアクセルを回す。

止まれば狙い撃ちにされると分かっていたからだ…。

何故なら、今マジェコンヌが放とうとしているのは“サイヤ人”の王子、“ベジータ”が超サイヤ人に覚醒し、会得した攻撃。

 

「吹き飛べ小僧! “ファイナル・フラッシュ”!!」

 

彼女の両手から放たれた光の束がマシンヴィクトラーで走る宗谷に向かって伸びる。

パープルシスターとブラックシスターは翼に気を取られ、ホワイトシスターたちが彼を守ろうとするがそれも妨害された。

 

守る者がいない宗谷のすぐ近く……そこにファイナル・フラッシュは直撃した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!?」

 

先程のギャリック砲以上に強力な波動の衝撃は凄まじく、マシンヴィクトラーごと宗谷は空中に投げ出された。

直撃は何とか避けたが、その衝撃でマシンヴィクトラーは消滅し移動手段はつぶされ、宗谷自身も地面にたたきつけられダメージを負ってしまう。

 

「ぐはっ……ぁあっ!」

 

「くっくっく………小僧よく見ておけ、アンチクリスタルが女神を殺すところを」

 

地面に背中を強く打ち付けた宗谷の上にマジェコンヌが移動し、楽しそうにそう呟いた……。

 

 

 

そして、彼は見てしまった……。

 

 

 

 

 

―――ネプ……テューヌ……

 

 

 

 

―――ベール………だめぇぇえええええええええ!!

 

 

 

 

―――………ノワー、ル……

 

 

 

 

―――くっ! ……こんな、ことで……!

 

 

 

 

そして、聞こえてきたのは苦しむ女神たち四人の姿…。

 

黒い腕に体を絡めとられ、ずるずるとその中に引きずり込まれていくベールとブラン。

そして懸命に伸ばした二人の手を何とか手に取るも二人を助けることができず、悔しそうな表情を浮かべるネプテューヌとノワール。

 

すぐそこまで、絶望が………闇が………“死”が迫っていた。

 

 

「あ………あぁ……ああ」

 

 

今にでもその黒い闇が、四人を殺そうとしている光景を宗谷は目の当たりにしてしまった…。

このままでは、危ない……みんなが、“死ぬ”。

 

 

 

 

 

 

 

―――ドクン……

 

 

 

「っ!?」

 

 

胸の奥で、何かが胎動するのを感じた……。

 

それは熱く、それでいて威圧感を感じる強大な何か……。

 

「なん……だ……?」

 

この感覚は何なのか、宗谷は疑問を抱き自分の胸を抑える。

だが、胸の奥の胎動は収まるどころかより激しさを増していく。

 

そして、やがて自分の脳裏に声のようなものが聞こえてきた……。

 

 

 

 

 

―――チカラニミヲユダネロ……スベテヲタオセ……

 

 

「な……に……?」

 

 

―――スクイタケレバ……ウケイレロ……オノレノイシヲ……

 

 

「何を…言って……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――……………コロセ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――コロセ……コロセ………コロセ……コロセ、コロセ、コロセ、コロセ…

 

 

 

 

 

 

 

 

―――コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ

 

 

 

 

 

 

―――………殺せ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろ……違う、俺は! 俺はこんなこと思ってない! こんな感情は抱かないって決めたんだ!」

 

無意識のうちに頭に流れ込む声に、宗谷は立ち上がり振り払おうと頭を振り、耳を抑えるが己の脳裏に響く何者かの声は収まろうとしない。

 

「やめろ……やめてくれ!! なんなんだ……なんなんだよ一体!!」

 

喚き、あがき続ける宗谷。

 

その姿をパープルシスターたちは見ていた。

そして、あることに気付いた……。

 

 

「宗谷、さん……?」

 

「なに…あれ…?」

 

 

彼の身体から滲み出ていた、“黒い炎”のような何かを……

 

 

 

 

 

 

 

「っ! ………なに、これ?」

 

端末を操作していたロボティックが目を見開いた。

それを見ていたトランスたちも何事かと、その端末を覗き込む。

そこに映し出されていたのは、宗谷の体の状態を指し示す数値が書かれたデータと彼の力の状態を指し示す数値。

 

「これは……あの時と一緒の……!?」

 

「あんた、何しよった!?」

 

「は? 何のことだ? オレは何もしてねーぜ?」

 

「とぼけんなや! こんなん出来るのはあんたくらいしかおらん!!」

 

エネミーがすぐさま疑わしい存在であるクロワールに食って掛かる。

だが、クロワールはにやりと笑うだけで何をしたかまでは言おうとしない。

 

「彼はここに来るまで精神状態が安定していました……でも、あまりにも突然にそのバランスが崩れ、ほぼ強引としか思えないほどまでの異常な精神状態に陥っています……どういうことか、説明してもらえますか?」

 

トランスが声を荒げたエネミーを下がらせて、代わりにクロワールに詰め寄ると、クロワールは小柄な自分の体を見下ろす彼女を見上げる。

そして、唐突に彼女の育ちすぎともいえる大きな乳房を手で鷲掴むとそれを今度はむにむにと片手で揉み始めた。

 

「……っ!」

 

「やっぱお前は胸にばっか栄養が行っちまって、考える頭に栄養が回ってねーみたいだな?」

 

「……ぅ…あん……んっ!」

 

「だから、言ってただろ? 俺は何もしねーって……俺はただ面白くなるように下準備をしただけだ♪」

 

右手でトランスの胸を揉みつつ、クロワールは左手に再びあの“黒い炎”を浮かべる。

宗谷の身体から滲み出ていたものと同じ、どす黒いあの炎を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろ……やめろ………?」

 

声が頭に響き、その場にうずくまり声が消えるのを願うばかりの宗谷。

そんな中、彼の目の前にある物が浮かび上がった…。

 

―――DENGER

 

英文だ。

意味は危険を意味するもの、ただそれは彼のヘルメットにではなく彼の“網膜に直接写っていたのだ”。

 

「なんだ………これ?」

 

疑問を向けるが答えは出ず、ただただ混乱する宗谷……。

 

そして、それと同時にある言葉が宗谷の脳裏に浮かび上がった。

 

彼は何となしに、その言葉を口ずさむ…

 

 

 

 

 

 

「………“モード・バーサーク”……?」

 

 

 

 

 

その声がなす意味が何かを考えようとした瞬間……

 

 

 

 

 

「っ! ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

体の奥底が爆発するような強い衝撃を感じた。

その瞬間、宗谷の身体が赤黒い光を放ちながら、発光し始めたのだ。

 

湧き上がるマグマのような熱いものが、どんどんと宗谷の身体を埋め尽くしていく。

強制的に、成す術もなく、ただ流されるように…。

 

そして、それは宗谷の姿さえも変えていった…。

 

 

「……なんだ、これは?」

 

 

宗谷の身体の変化に気付いたマジェコンヌは光から目を守るために手で隠しながらその様子を見ていた。

それはパープルシスターたちも同じで、彼女たちも彼の異変を目の当たりにしていた。

 

宗谷の背中から血飛沫のように赤黒い光の翼が現れたかと思ったら、宗谷が絶叫し、凄まじいびりびりとした威圧感を放ちながらその姿を変化させ始めた。

 

「宗谷さん!? どうしたんですか、宗谷さん!!」

 

パープルシスターが呼び掛けるがその声は届かない…。

 

今の彼の耳には、届いていない……。

 

そして、異変は……完全な変化として彼女たちの前に現れた。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

絶叫するのをやめて、ゆっくりと立ち上がった宗谷の姿は全く別の姿に変わっていた。

 

燃える炎のような色をした赤と銀の装甲はどす黒い血のような赤と、漆黒の闇を体現したかのような黒に染まり、首に巻いていたマフラーは切り裂かれたようにボロボロに変わり、両手は鋭利な爪のように尖ったフォルムに変わっている。

 

そして何より、宗谷の背中に現れた一対の翼を思わせるウィングユニット。

 

光が変化して機械のような形になったこのユニットの形状は、まるで悪魔を思わせるようなシャープな形をしている。

 

イストワールは異変を起こした宗谷のこの姿を見て………こう呟いた………。

 

 

 

 

「………魔神………」

 

 

 

 

 

絶望の秒針が、その時を知らせた瞬間だった……。

 




いかがでしたか?

変革は女神候補生の四人だけじゃなく、宗谷にも訪れました…。

だけどそれはあまりにも残酷で恐ろしい変革…。

果たして、今までにない姿に変身した宗谷はどうなるのか…。

それでは、次回でお会いしましょう…。
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