今回のお話でvsマジェコンヌは遂にラストを迎えます。
生死不明に陥った宗谷、そして黒いエネルギーに取り込まれた四女神…。
二つの絶望の時を迎えたとき、二つの絆が奇跡を呼ぶ…!
それではどうぞ、お楽しみください!
そこは、真っ暗な暗闇の中だった。
その中で一人、宗谷が何をするでもなく、暗闇の中を漂っていた。
右も左もわからない暗闇の中で、宗谷はただ一人……独りぼっちになっていた。
(………ここは……どこだ?)
周りに視線を向けて確認する宗谷、だが見えるのは暗闇ばかりで何もわからなかった。
そして程なくして、自分が先程何をしたのかを思い出した。
(ああ、そっか……俺、暴走して……それで何とか止めようとして……)
先程まで自分が陥っていた状況を思いだし、後悔の念に駆られる宗谷。
怒りに、殺意に呑まれないと約束しておきながら、突然のこの事態だ。 やはり自分は肝心なものを乗り越えられることができなかったのか。
これ以上みんなを、仲間たちを傷つけないためにとはいえ、自分は大切な人を泣かせるようなことをしてしまった。
それに、大切な人を救うこともできなかった…。
思えば、あの時もそうだった…。
怒りに呑まれ、復讐心に駆られた結果の過ち……大切な人を自らの手で殺してしまった過去の過ちがこの結果なのだろうか?
果たして、自分がこの世界に来た意味は何だったのだろうか?
(……俺、ヒーローに………なれなかった………ごめんな………みんな)
宗谷が死を覚悟し、そっと目を閉じた。
そして、彼女もまた……暗闇の中にいた。
(………どこだろう、ここ?)
そっと目を開き、何かを確認するように心の中で自問したのは、ネプテューヌだった。
周りには何もない、果てのない暗闇、ただそれだけ…。
その中で彼女はふと、目を覚ましたのだ。
(私……死んじゃったのかな?)
自分の体を包む冷たい感覚に、ふとネプテューヌはそんなことを思った。
このままこの暗闇の中を漂い続けて、いずれ存在そのものもわからなくなってしまうような気がしてくる。
そんな時、自分たちを助けに来てくれた妹たち、そして友人たち……そして、宗谷の姿が脳裏に浮かび上がった。
もしここで本当に自分が死んだとなったら、みんなになんて謝ればいいのだろうか……。
(あ……死んじゃってたら謝れないか)
自分で考えておきながら当たり前のことに気が付かなかったネプテューヌはすぐにそう気づいた。
後から後から湧き上がってくる後悔の念にネプテューヌは飲み込まれそうになっていた。
だが、
―――ドクン……ドクン……
はっきりと聞こえた……心臓の鼓動が……。
その心臓の鼓動ははっきりと自分の身体から聞こえてくる。
(ちがう……私は………でも、どうして?)
自分たちの命の源、シェアエナジーはもう届かないはず。 それなのになぜ自分から命の証の鼓動が聞こえてくるのか…。
疑問だけがネプテューヌの頭の中に残っていた。
そして、程なくしてまた別の何かが聞こえてきた…。
―――ごめんな……みんな……
それは、自分たちのために一生懸命に戦っていた宗谷の声だった。
なぜ、彼の声が聞こえてくるのかはわからない、だがこの声だけははっきりと聞き取れた…そして、彼が今どういう状態なのかも……。
(ソウヤ………ダメ、そっちに行っちゃだめだよ!)
(………え?)
ふと、どこからか聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
目を覚ました宗谷はあたりを見渡す、だけどその正体は一向に見えない。
(ダメだよ……ソウヤ、後悔したまま諦めたらダメだよ)
(………けど、俺は……)
(どんな時でも諦めちゃダメ……諦めたら、そこで試合終了だよ?)
どこかで聞いたことのあるセリフと、この状況でこんな冗談が言える人物を宗谷は知っていた。
(……ネプテューヌ………なのか?)
無意識のうちに、彼はその声の主が自分が助けようとしていた女神の声だったことに気付いた。
(ソウヤ………戻ろう? みんなの所に……)
(ネプテューヌ………でも、俺は……)
(ソウヤはソウヤ……例えどんなことがあっても、私たちはソウヤのこと信じてるよ)
(…っ!)
ネプテューヌの言葉を聞いた宗谷の手に、ふと何か温かい感触が伝わってきた。
それは片手だけじゃない、両手に伝わり、やがてそれは全身へと広がっていく。
そして、彼の中に……ネプテューヌが……ノワールが、ブランが、ベールが……四人の女神の存在が分かるような感覚が流れ込んできた。
(そうよ、勝手に死ぬなんて……許さないんだから)
(ノワール……)
(私は……まだ、あなたとやりたいことがあるし……伝えたいと思っていることもある)
(ブラン………)
(だから宗谷、まだ行かないでくれませんこと?)
(ベール……)
次々に聞こえてきた、この世界でできた大切な人たちの声が、思いが、魂が、宗谷自身の中に流れ込んでくるような不思議な感覚が宗谷を包み込んでいく。
その感覚は太陽の光のように暖かく、それでいて、安心するものだった…。
(………温かいね)
(………ああ、そうだな……)
自分たちは今、繋がっている……“リンク”している。
なぜかはわからない、ただ自然とそう感じた。
そして、彼の中にある思いが芽生えた。
この世界に自分が呼ばれた理由、それはまだ見えないし、不透明なまま残っている。
ただそれでも、この世界でできた大切な人を守りたいという思いは自分の心の中にある大前提の目的だったではないかと…。
彼女たちをこのままにしておくわけにはいかない、そして自分自身もこのままでいるわけにはいかない……。
やがて5人の周りを何か光のようなものが包み始めた…。
(………“絆”の光)
その光を見た宗谷はふと、そんな言葉が浮かんだ気がした。
シェアエナジーとかそう言うのではなく、ただただ、自分たちのつながりを体現する言葉がこれなのではないか、そう感じたから…。
(……ネプテューヌ……俺、やっぱりまだ死ねない)
(ソウヤ……)
(身勝手かもしれない……我儘かもしれない……でも、今はまだ死ぬわけにはいかないんだ)
(うん………そうだよね……私も一緒だよ)
(俺は………いや、俺達にはまだ“やらなくちゃいけないこと”が残ってるんだと思う……)
(………じゃあ、早く戻らないとね? だって、私たちは………!)
次第に5人を包む光がどんどん強くなってきた。
その光は暗闇しかないこの世界を明るく照らしはじめ………!
結界は黒く染まり、もうネプテューヌたちの姿は見えない…。
そして、暴走の果てに……これ以上仲間を気付つけないために宗谷は自分をその刃で貫き、倒れた……。
多くのものを一気に失い、四人の女神候補生と教祖イストワールは悲しみと絶望に打ちひしがれていた。
地面に伏し、体を震わせるパープルシスター、銃を下にだらんと下げて立ち尽くすブラックシスター、今にも泣き出しそうな顔をしながら互いの手を握るホワイトシスター。
そして、どんどん腹部から血を流して血だまりの量を増やし続け、体の体温が徐々に低くなっていっている宗谷を抱きしめ、嗚咽を上げて泣き続けるイストワール。
この場に、希望はもう残されていなかった……。
「………くくく……はーっはっはっはっ!!」
いつの間にいたのだろうか、岸壁から出てきていたマジェコンヌが高らかに笑いながらパープルシスターの元に降りてきた。
所々に傷があり、ダメージは負っている様だがそれでもまだ彼女は健在だった。
「お前たちの姉とあの小僧はもういない! 何もかも遅すぎたのさ!」
彼女が元々持っていた武器の形状なのだろう、柄の上下両方に刃を備えた槍を構えながらマジェコンヌはパープルシスターを見下ろす。
そして、彼女達から少し離れたところにいる宗谷とイストワールを一瞥すると再び口元に笑みを浮かべる。
「それにしてもバカな小僧だ、あれほどの力を出しておきながら最後は自分自身を傷つけて死んでいくとはな……お笑いぐさにもほどがあるぞ?」
その言葉を聞いて、パープルシスターとイストワールがピクリと体を大きく振るわせた。
「………たに……」
「あん?」
「あなたに………宗谷さんを笑う資格なんかない!」
怒りの眼に涙を浮かべ、パープルシスターが再びマジェコンヌに立ち向かった。
右手に持った銃剣を振りかざし、素早い動きで一気に距離を詰めると展開したビームの刃をマジェコンヌに振り下ろす。
「はっ、なら何と言えばいいのだ!」
しかし、その攻撃はマジェコンヌの槍によって容易く受け止められた。
攻撃をあっさりと押し返され、後退したパープルシスターにマジェコンヌの槍による反撃が迫る。
パープルシスターはその攻撃を持ち前の素早さで流し、隙を見ては反撃を試みるもそのすべてはマジェコンヌに見切られ、ダメージを与えることはできなかった。
「っ!」
そこへ、横合いの方角から深緑の閃光がマジェコンヌに向かって飛んできた。
ブラックシスターの援護射撃である。
「あんたは………あんただけは許さない!」
「小賢しい!!」
ブラックシスターの射撃を槍の中央の柄をもって振り回し、弾いてその攻撃を無力化したマジェコンヌは左手をブラックシスターに向け、そこから黒い火球を放った。
ガノンドロフの魔法攻撃である。
「きゃあ!?」
怒りに我を忘れていたのか、ブラックシスターはその攻撃をまともに受け、地面へと落ちて行ってしまった。
「貴様もだ!」
さらにマジェコンヌはその手をパープルシスターにも向けて魔法を発動するが……。
その攻撃は割り込んで入ったホワイトシスターたちの防御魔法によって相殺される。
「よくも………よくもお姉ちゃんを!!」
「お兄ちゃんを笑ったのも………許さない!」
ホワイトシスターの二人はロッドを振りかざし、果敢にも彼女に接近し、至近距離からの魔法攻撃を挑もうとする。
「「やああああああああ!!」」
解き放った魔力の閃光がマジェコンヌに命中した。
だが、
「効かぬわ………!」
「………そんな」
「盾なんて卑怯よ!!」
その攻撃でさえも、マジェコンヌが得たライバルカードの能力、ヒースクリフの神聖剣の防御力の前ではマジェコンヌに傷一つつけることはかなわなかった。
「いくら足掻いても、無駄なものは無駄だ!!」
「あぐっ!」
「あうっ!?」
「ロムちゃん! ラムちゃん!!」
「最後は………貴様だ!!」
さらにマジェコンヌは左手に持ったままの盾で接近した二人を盾による打撃攻撃、シールドバッシュで地面にたたき落し、最後の一人……パープルシスターに狙いを定める。
「シャドー………キィィィィック!!」
「……うっ! くぅ………あああああああああああああ!?」
翼で上に急上昇した後、両足をそろえて前に突き出した体制で急降下し、パープルシスターを攻撃する。
彼女はその攻撃を何とか防御しようとするも、シャドームーンの強力な必殺キック、“シャドーキック”のパワーに押され防御を貫かれ、そのまま地面に勢いよく降下し、地面に激突してしまった。
「よく考えてみろ、邪魔をして、首を突っ込んだ結果がこれだ、小僧のやったことはすべて水の泡……無駄になったのさ!」
地面に落下したパープルシスターたちを見下ろしながらそう言い放ったマジェコンヌは、瀕死の状態で倒れる宗谷に寄り添っているイストワールに視線を向ける。
「そうは思わないか……プラネテューヌの教祖、イストワール?」
「………あなたに……宗谷さんの何がわかるというのですか……あなたは宗谷さんの苦しみを少しでも知っていましたか………」
「知る気もないな、勝手に邪魔をし、勝手に暴れ、勝手に仲間を傷つけ、勝手に死んでいった奴のことなど、知っても得になどなりはしないからな?」
マジェコンヌを睨み付けるイストワールに彼女はそう言い放つと、自分の真下にいるパープルシスターに少しづつ近づいていく。
今の彼女は先の攻撃のダメージもあり、もうすでに限界に近づいていた…。
恐らく、これ以上マジェコンヌとまともに立ち合うことは無理だろう……。
「だが、そう悲観することもない……すべてが無駄になったのならお前たちも同じところに送れば、無駄にはならないさ、なんたって、あの世に行った姉と小僧に会えるのだからな!」
マジェコンヌはそう言うと右手に握り直した槍を振り回し、力を溜め、パープルシスターにとどめの一撃を喰らわせようとする。
その様子をイストワールはただただ見つめることしかできなかった…。
「さあ! どす黒い絶望の淵に堕ちるがいい!!」
空気を切り裂き、すべてを切り捨て、死へと誘う刃が彼女に迫ろうとした……その時、
彼女は………彼女たちは見た。
「………っ!」
黒く染まったはずの結界の中で光り輝く、“四つの光”があることに…。
そして、宗谷の体からも光が漏れだした瞬間を……。
絶望の中で、希望は………まだ残っていた。
―――ガキィン!!
己に迫る刃をパープルシスターは受け止めた。
まだ、負けるわけにはいかない…。 まだ、諦めちゃいけない…。
その信念が彼女を再び奮い立たせたのだ。
「お姉ちゃんは………お姉ちゃん達は………宗谷さんは!!」
戦う気力はもうないと思っていたマジェコンヌはパープルシスターが突然立ち上がったことに驚きを隠せなかった。
そして、それは彼女だけではなかった。
「………無駄だなんて、言わせません……彼がどんな気持ちで戦ったのか……宗谷さんがどんな気持ちで戦ってきたのかを知らない、あなたには!」
さっきまでとは打って変わって力強い眼差しでこちらを睨み付けたイストワール。
そして、マジェコンヌはこの時気付いた。
既に瀕死の状態にあるはずの彼の身体から眩い光が漏れだしていることに…。
そして、他の三人の女神が見つめている先にある、自分の後ろ…結界の中から謎の四つの光が輝いているということに…!
「なに!? なんだ……一体何が起こっている!」
動揺を見せたマジェコンヌの隙を突き、パープルシスターは彼女の刃を思い切り押し返した。
「お姉ちゃんたちはまだ戦っている……宗谷さんも、あの状況で自分自身を止めようと戦っていた……!」
「私たちだって………!」
「絶対……負けない!」
「絶対、諦めない!!」
パープルシスターに続き、ブラックシスター、ホワイトシスターも立ち上がる。
すると、四人の身体から眩いばかりの虹色の光が溢れだした。
「この光は……!」
「あなたを倒します……私たちの、全身全霊……すべてを賭けて!!」
その光は収まることなく、さらに輝きを増してこのあたり一帯を包み込むまでに溢れだした。
周りに漂っていたアンチエナジーがかき消され、温かい光が周りを包み込んでいく
そして、
―――いーすん………
突然、目の前で倒れているはずの宗谷の声がイストワールの脳裏に響いてきた。
「宗谷……さん……?」
―――………今、頼ってもいいか?
「………え?」
その言葉と同時にイストワールの体に宗谷の体から溢れだした光が流れ込み、彼女の体を包み込んだ。
(シェアエナジー………? ………違う…この光は……?)
自分の両手を見つめながら、この光に疑問を抱いたイストワール。
すると、再び宗谷の声が響いてきた…。
―――勝手なことしてごめんな……でも、俺はまだ……ここにいる。
「ここに………」
―――………だから……頼む……。
―――………一緒に戦ってくれ。
「………はい!」
彼の体に意志があるのかはわからないが、宗谷の手を強く握って答えたイストワールはそっと彼を地面に寝かせて立ち上がり、一歩前に出る。
すると、彼女の身体に纏わりついていた光が彼女の腕に集まり………。
ブレスレットのようなアイテムに姿を変えた!
中央には液晶画面が付き、色はイストワールに合わせてか白いカラーリングが施されている。
そして、その液晶画面にはある文章が表示されていた。
「……“フォーチュン・リンクシステム”」
その文章を読み上げたイストワールは、ブレスレットの画面をタッチする。
液晶画面の表示が切り替わり、イストワールを包む光が一層強くなった。
―――行くぜ………イストワール!
「はい、宗谷さん!」
そして、
―――フォーチュンリンク・オン!!
「フォーチュンリンク・オン!!」
脳裏に響いた宗谷の声と共にイストワールが高々と叫び、ブレスレットから光が溢れ、彼女の体を包み込んだ。
光が次々と彼女の体を包み込み、眩いばかりの装甲を形成していく。
両手、両足、腕、足、腰、胸、頭、そしてさらに、肩や背中にも光が集まり、すべての部位に装甲が施され、イストワールがその姿をがらりと変化させた…。
いや、変身したのだ。
宗谷と同じようなデザインの装甲だが、フォルムはイストワールの体に合わせて女性らしくなり、色合いも燃えるような赤と銀から、輝く日差しのような白銀に変わっている。
そして、今までなかった装甲も追加され、ヘルメットの形状も少し変化しているようだった。
さらに背中にはイストワールと同じ形の光の翼が広がっている。
変身を完了したイストワールは並び立つパープルシスターのすぐ隣に舞い降りる。
「ネプギアさん……」
「え………もしかして、いーすんさん!?」
「その姿……どうしたの?」
突然現れたイストワールの変わりようにさすがの女神候補生たちも驚きを隠せないようだった。
しかし、イストワールは首を左右に振って彼女たちの問いに答えた。
「今はマジェコンヌを……それが、ネプテューヌさんたちと……宗谷さんの意思です」
そう言われたパープルシスターたちは、はっ、と目を見開きすぐに頷いて返答した。
そして、上空にいるマジェコンヌを睨み付ける。
「アンチエナジーが………私の奇跡が……打ち消されていく……うぐっ!」
呆然と周りを、いや、島全体をも包み込んでいるシェアエナジーを見渡していたマジェコンヌが突然苦しみだした。
すると、彼女の身体から四つ、何かが飛び出した。
それはこの戦いの前に、彼女が自分の体内に取り込んだライバルカードだった。
ライバルカードは彼女の身体から飛び出すと、亀裂が入り、遂には粉々に砕け散ってしまった。
「異世界の戦士の力までもが………くぅ!!」
分が悪いと判断したのか、マジェコンヌは背中の翼をフルに使い、この場から逃げ出そうと空に向かって飛び立った。
だが、それを5人が見逃すはずがなかった。
すぐにマジェコンヌの後を追いかけるべく、空へと飛びあがった5人は彼女を二が住まいとそれぞれの武器を構える。
「逃がさない!!」
ブラックシスターが銃を構え、照準をマジェコンヌの翼に合わせてトリガーを引く。
銃口からは虹色の光が閃光となって打ち出され、マジェコンヌの左の翼を粉々に打ち抜いた。
「「ええええええええええいっ!!」」
失速したマジェコンヌに更なる追い打ちをかけるべく、ホワイトシスターの二人が氷魔法を発動し巨大な星型の氷の塊を作り出し、それをマジェコンヌ目がけて放つ。
「ぐああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
寸分の狂いなく、見事に命中しマジェコンヌはそのまま氷の塊に押され地面へと向かって行った。
「くっ………おのれぇ!!」
しかし、マジェコンヌはその氷の塊から脱出して空中へと再び舞い上がる。
だが、その行く手に変身したイストワールが立ちふさがった。
「絶対に逃がしません………あなただけは!」
「そこを………どけぇぇぇぇぇぇえええ!!」
マジェコンヌが再び武器を手に取り、イストワールに襲い掛かろうと槍を振りあげ彼女に迫る。
しかし、勢いをつけて振り下ろされた彼女の槍はモード・アクティブの状態のイストワールが使っている白い細剣によって防がれた。
イストワールは槍の刃を受け流し、思い切り引いた細剣の刃を勢い良く突き出して、マジェコンヌに反撃する。
「てぇぇぇぇぇぇええええ!!」
「うぐぅお!?」
鋭い刺突がマジェコンヌにダメージを与え、さらにイストワールは左手を振り上げるとその手に宗谷がいつも使っている愛剣、赤剣が現れ彼女はそれを強く握りそれを思い切り振りおろした!
咄嗟に防御しようとして槍を水平に構えたマジェコンヌだったが、赤剣の刃はその防御すらも切り裂いてマジェコンヌにダメージを与える!
「まだです!!」
さらに、後ろに後退したマジェコンヌにイストワールは食らいつく様に光の翼を広げて迫り、すれ違いざまに彼女を攻撃する。
さらに、空中で身を翻し、何度も、何度も、連続でマジェコンヌをすれ違いざまに攻撃して着実にダメージを与えていく。
「これで!!」
「うあああああああああああああああああああ!?」
最後に両手の剣をクロスさせるように振り下ろしてマジェコンヌを切り付け、彼女を結界に叩きつける!
結界の障壁に叩きつけられ、貼り付けのような体制にされたマジェコンヌ。
そこへ、パープルシスターが飛翔し、彼女のすぐ目の前まで接近する。
「はぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
体をひねるように回転させながら、右手に握る銃剣をしっかりと構え、銃口をマジェコンヌに向ける。
「消えて!!」
その一言とともに放たれたエネルギーの一射がマジェコンヌの体に浴びせかけられた。
「うおぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!」
今までにない叫びとともにマジェコンヌが光に包まれ、さらにはアンチクリスタルの結界にすらもダメージが入り、その障壁を木っ端みじんに破壊してしまった。
とてつもない威力の一撃、そして再び立ち上がることができた5人。
それは彼女たちが見た希望の光が生み出した、一つの奇跡なのかもしれない…。
そして………。
後には何も残らず、アンチクリスタルの結界も、当の犯人であるマジェコンヌの姿も、そして、四女神の姿すらも残らなかった。
後に残っていたのは、地面に大きく穿たれたクレーターだけ…。
辺りに蔓延していたシェアエナジーの光はいつの間にか消滅し、元の状態に戻っていた。
そして、そのクレーターの前に一人佇んでいるパープルシスター、そしてその後ろでマジェコンヌに放った最後の一撃から守るために、コンパ、アイエフ、ケイブを抱えている状態のブラックシスターとホワイトシスターの二人。
そして、変身を解除し、一人立ち尽くすパープルシスターを見つめるイストワール。
彼女の両手には、さっき自分の手に現れた宗谷の赤剣が握られている…。
「………お姉ちゃん?」
ふとパープルシスターが呟いた。
「お姉ちゃん………どこなの…?」
姿が見えない自分たちの姉を呼ぶパープルシスター。
だが、その返答に答える声はなかった……。
「………ねえ、お姉ちゃん………」
ネプギアはそう言うと、ふと後ろの方を振り向く。
その視線の先には、暴走の末に自分を刺して倒れた、宗谷の姿があった。
「………宗谷さん」
呼びかけても、やはり起きることはない。
わかっているつもりでも、悲しみが彼女の中に満たされていった……。
結局、何も助けることはできなかったのか………。
再び俯いてしまったネプギア、そして、その様子を見ていたイストワールもまた両手に持っていた赤剣を見下ろして……そっとそれを抱きしめる様に両腕で包み込んだ。
程なくして彼女の口から嗚咽が漏れ始める…。
絶望の中には………やはり、悲しみしか残らないのか………。
「ここよ、ネプギア……」
いや、それは違う………。
希望は、消えてはいない……。
「っ!!」
聞こえてきた声に顔を伏せていたパープルシスターがすぐさま顔を上げて声の聞こえた方角に視線を向けた。
そして、その先にいたのは………。
夜が明けた、朝焼けの空の中……。
その中に浮かび上がっている、女神化した四人の姿だった!
「お姉ちゃん!!」
その姿を見たホワイトシスターの二人は真っ先に彼女たちの元に向かい、二人の姉………ホワイトハート、ブランに思い切り抱き付いた。
勢いよく自分に抱き付いてきた妹二人をホワイトハートはしっかりと抱きとめた。
「会いたかった………会いたかったよぉ!」
「………よかった……!」
「………子どもみたいに泣くなって」
声を出して泣きじゃくり、喜ぶ二人をホワイトハートは優しく抱きしめ、そっと二人の耳元で呟いた……。
「………ごめんな……心配かけて」
そっと、互いに抱きしめあいながら再会を喜ぶ三人。
いつもは二人にいろいろと振り回されていたブランも、この時ばかりは泣きじゃくる妹をあやす立派な姉そのものだった。
「お姉ちゃん………ごめんなさい……遅くなって」
一方、ブラックシスターは申し訳なさそうに目の前にいるブラックハートに開口一番、謝っていた。
しかし、それを聞いたブラックハートは助けるのが遅かった妹を咎めるでも落胆するでもなく……。
「何言ってるのよ……だいぶ成長したじゃない………ありがとう」
「―――—っ!」
お礼を言った。
そして、初めて面と向かってしっかりとお礼を言われたブラックシスター……ユニは、目じりに涙を溜めてブラックハート、ノワールに抱き付いた。
そして、
「お姉ちゃん………」
再会を果たしたパープルシスターとパープルハートはじっと互いを見つめあって言葉を交わしていた。
「あ、あのね……私………私……!」
その先の言葉が出ないのか、パープルシスターは言葉を詰まらせる。
だが、パープルハートは何も言わずただただ頷くと……
「……頑張ったわね、ネプギア……これからは……ずっと……一緒にいるから」
そう言って、優しい笑顔を妹に向けた。
そんな姉の姿と言葉を聞いたパープルシスター………ネプギアは目から涙を溢しながらそっとパープルハート、ネプテューヌに抱き付いた。
こうして、四人の女神と四人の妹は見事に再会を果たしたのである………。
すると、ここでパープルシスターがあることに気づき、パープルハートから離れたと思ったら……。
「ベールさん………」
「あ……」
アイエフと、コンパ、そしてケイブとともに姉妹の再会を見届けていたグリーンハート……ベールにそっと抱き付いた。
これは、ネプギアなりのやさしさ……なのだろうか。
「………お疲れ様でした」
「………ありがとう」
負けず劣らず、まるで本物の姉妹のように抱きしめあう二人の姿もまた、まるで姉妹のように見えた……。
それを見ていたパープルハートは苦笑いを浮かべる。
「……まったく、今日だけだからね、ベール?」
これもまた、大事な再会の一つなのだから、邪魔するだけ野暮と言うやつなのだろう…。
パープルシスターはそう言うと、一人、朝焼けの空を眺める…。
そんな彼女たちの姿を、イストワールは一人、眺めていた。
彼女の腕の中にある、赤剣にそっと視線を落として囁くように話しかける。
「………見えてますか、宗谷さん? ……みなさん、嬉しそうですよ………守れ、ましたよ………」
今はもう、この場にいない宗谷に語り掛ける様に囁く彼女の姿はどこか儚くて、今にも潰れそうなほど、華奢に見えた。
触れただけで壊れてしまいそうな彼女のすすり泣く声が、静かにその場に響き渡る。
「ああ………見えてるよ、ちゃんと」
「え………っ!?」
それはあまりにも唐突で、あまりにも信じられなくて、あまりにも意外な……言葉だった。
そして、同時にイストワールが求めていた言葉と、声だった……。
その声の主を彼女が知らないはずはない、咄嗟に後ろを振り返りその声の主の姿を確認する。
そして、そこには………
「痛つぅ………へへ」
さっきまで倒れていたはずの宗谷が、血が出ている腹を抑えながらではあるが座り込んだ体制でイストワールのことを見つめていた。
彼は………生きていたのだ………。
「あ………っぁ………ぁあ……!」
「………ごめんな、いーすん……結局、迷惑かけちまったな」
そんなことはどうでもいい。
今の彼女にとっては、そんなことは本当に些細なことに感じた。
今は何よりも、嬉しく感じることがあったから…。 本当に良かったと感じたことがあったから…。
気付けば、イストワールは赤剣を手離して、涙を浮かべながら地面に座り込む宗谷に向かって走り出し…。
「宗谷さん!!」
「うわっちょ! って、痛ぇぇぇえええええ!!」
思い切り、抱き付いていた。
「バカ………宗谷さんのバカ……! 私……宗谷さんが……死んだって……!」
「………ごめんな……本当ごめん……こんなことになって……」
「バカ……バカ………う………ひっ……うわぁぁぁぁぁああああああああん!」
「………ごめん……ごめんな、いーすん……」
あのしっかり者のイストワールが、声を上げて泣いている。
そして、泣かした当の本人は腹部に走る痛みをこらえながら泣き続けるイストワールを抱きしめ、ただただ謝るばかり。
「………まあ、これで一件落着……ってことでいいのかしら」
その様子を、パープルシスターは眺めながらそう言った後、生きてはいたものの大けがをしている宗谷を救助すべく、二人の元へと向かった…。
夜は明け、もうすっかり朝になった……。
絶望の夜が終わりを告げた瞬間である……。
だが、多くの謎はまだ残されていた…。
「………こんな……こんなことって……」
再会を喜ぶ宗谷と女神候補生たちを遠巻きに見つめるトランス、エネミー、ロボティック、レヴォリューション、そしてクロワールの5人。
トランスは見開いた目で未だに抱き合って泣き続ける宗谷とイストワールの二人を見ていた。
「なぜ………“フォーチュンリンク・システム”があんな形で起動したのですか!」
イストワールが変身したあの姿、“フォーチュンリンク・システム”を見たトランスは驚愕を隠せずにいた。
あの姿は本来、“宗谷がなるべくしてプログラミングされた新たなる姿”であり、イストワールが変身するためのシステムではない。
本来なら、フォーチュンリンク・システムを起動させたイストワールがシステムの制御を担当し、宗谷と一心同体になることで成すことができる変身のはずだった。
それが、逆転してしまったのだ。
―――予定が大きく狂ってしまった…。
あまりにも予想外の事態にトランスは焦りに満ちた表情を浮かべる。
「へへへ、どうやら大分予定が狂っちまったみたいだな?」
空中を浮遊していたクロワールがにやにやと笑いながらトランスにそう言った。
「元はと言えばあなたが余計なことをしなければ!」
「別にいいじゃねぇか、どっちにしろこの先には“長い戦い”しか待ってないんだからよ、だったら少しでもおもしろおかしくしとかねーと飽きちまうっての」
「飽きる? ……ゲイムギョウ界の運命を左右する重要な事なんですよ! あなたにはそれが分からないんですか!!」
「別にどうだっていーんだよな、オレは世界がどうなろーとおもしろければそれでいいし」
「っ、あなたは!!」
皮肉気な笑みを浮かべるクロワールにトランスが掴み掛ろうとするが、クロワールはそれよりも早く空中に飛び上がりトランスたちを見下ろす。
「まあ、せいぜい楽しんでいこーぜ? この次の“最初の決戦”ってやつも近いんだろ? なら、はやくなんとかしねーとなぁ?」
「くっ………!」
「へへへ、まっ、せいぜい楽しませてくれよ? じゃあな、あばよっ!」
そう言ってクロワールは黒い魔方陣の中に飛び込み、その姿を消してしまった…。
残された四人はそれぞれに何か言いたげな表情を浮かべつつも、何も言わずただただ俯いていた。
その中でトランスは一人、焦りの感情が心の中に渦巻いていた……。
(早く予定を立て直さなければ………このままでは……“少年くんがヴィクトリオン・ハートの後継者”になる時が遠のいてしまう………!)
この世界に、一体何が起ころうとしているのか………。
とにもかくにも、
この日、俺は………繋がる絆の奇跡を見た………。
いかがでしたか?
一か月ほど続いたマジェコンヌ編も遂にラストを迎えました…。 長かったなぁ…。
とまあ、シリアス続きだった今回のお話………次のお話はちょっと小休止。
今回の戦いを経て何か悩みを抱いている様子の宗谷、その様子を見た四女神は…。
それでは、次回でお会いしましょう!