超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

ゴールデンウィークも終盤、今回のお話を書き上げるのはなかなか苦労しました。
実家から家まで帰る時間もあったり、いろいろ忙しかったので…(汗

さて、今回のお話で落ち込んでた宗谷は元に戻るのか!

それではお楽しみください、どうぞ……。


stage,49 俺の中の迷い

 

 

 

前回までのあらすじ!!

 

マジェコンヌとの戦いを終えた私たちとソウヤ、でもなぜか宗谷の様子がおかしい…。 なんだか元気がないみたい…。

見兼ねた私たち女神の四人はソウヤを元気づけるためにいろんな作戦をけっこーしたんだけど……それもことごとく失敗…。

もー! ソウヤの大事な日はもうすぐだっていうのに、これじゃあそれどころじゃないよ!

困り果てた私たちはネプギアが持って来てくれた最後の切り札“遊園地のチケット”を使って最後の手段に打って出ることにしたのだった!

 

 

 

 

 

「以上、前回のあらすじ終わり! ナレーションはねぷねぷこと、ネプテューヌでお送りしました!」

 

「何騒いでるのよ、こんな時に…」

 

プラネテューヌ教会の前で、どこかに向かってピースサインを送り、前回……と言うか、昨日起きたことをおさらいしていたネプテューヌにノワールの冷ややかな突っ込みが贈られる。

 

「やだなーノワールってば~、もしかしたらこの作品をこのお話から読み始めた人だっているかもしれないから、わかりやすいように私が説明したんだよ」

 

「だから、何意味わからないことを言ってるのよ! それよりも、当の宗谷は大丈夫なの? 前回………じゃなくて、昨日イストワールに殴られて気を失ってたじゃない」

 

「その点に関してはだいじょーぶ! ちゃんと昨日の夜には目を覚ましたし、なんで気を失ってたのかも、何を見たのかも一緒にきれーさっぱり忘れちゃってたから!」

 

「記憶を飛ばすほどの被害は出てたってことね……」

 

宗谷に起きたことをノワールに説明したネプテューヌ。

あの後、イストワールの一撃で気を失った宗谷は昨日起きたことを完全に忘れた状態で目を覚ましたのだ。

また、目を覚ますのに時間がかかったためその日のうちに遊園地作戦を決行することはできなかったというデメリットがあったのだが……。

 

そのため、今日のこのイベントで何としてでも宗谷を元気づけなければいけないのだ。

 

何せ今日は、彼にとっての“重要な日”、なのだから…。

 

「それで、今日のための準備は整ってますの?」

 

その重要なイベントの方を気にしているベールがネプテューヌに問う。

 

「うん、そのあたりの準備はあいちゃんとこんぱがしてくれるって! 私たちはネプギア達と一緒にソウヤを連れて遊園地に行けば、万事オッケー!」

 

「うまく事が運べばいいけど……」

 

昨日のこともあったせいか、ブランはどこか不安げな表情を浮かべている。

何せ昨日はことごとく自分たちの作戦が失敗したのだから。 まあ、作戦の内容にも十分な問題があったのだが…。

 

その時、今回の遊園地作戦のサポートメンバーとして参加したユニの携帯端末から着信音が鳴り響いた。

彼女はそれを取り、画面を見つめる。 どうやらメールの様だ。

 

「ネプテューヌさん、今ネプギアから連絡が入って、今宗谷さんがイストワールさんと一緒にここに来てるって」

 

「お、さっすがネプギア! うまいことソウヤを誘えたんだね!」

 

妹からの連絡にガッツポーズをするネプテューヌ。

その傍では遊園地に行くことが楽しみな様子のロムとラムの二人がいかにもわくわくしていますという表情で騒いでいた。

 

「やったー! そうやお兄ちゃんもいっしょに遊園地に行けるのね!」

 

「ネプギアちゃんとユニちゃんも……それにお姉ちゃんたちもいっしょ……♪」(わくわく

 

幼い子供の純粋な反応を見せる二人の妹にブランはどこか朗らかな表情を浮かべて二人に声をかける。

 

「ロム、ラム、それもだけど……今夜までに宗谷を元気にさせるのも忘れないでね?」

 

「うん! まっかせといてー!」

 

「がんばる……!」

 

妹である二人もやる気満々と受け取ったブランはよしよしと二人の頭を撫でて答える。

 

「大丈夫かな……宗谷さんかなり落ち込んでるみたいだったけど…」

 

「だからこそよ、このまま放っておくわけにはいかないでしょう? ……曲がりなりにもあいつには助けてもらったんだし、今度は私たちが頑張る番よ」

 

「お姉ちゃん……うん、そうね!」

 

ユニとノワールもまた姉妹で今回の作戦に意気込んでいる様だ。

残されたベールとネプテューヌは教会から宗谷が出てくるのを待つ。

 

「……いよいよですわね?」

 

「うん、なんとしても今日で決めるよ!」

 

二人もやる気満々と言いたげに気合十分なようだ。

 

しばらくすると、教会の方から三人の人影が出てくるのが見えた。

 

いよいよ宗谷の重要な今日を華々しく迎えるため、“遊園地大作戦”が決行されたのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地か……。

 

昨日頭が痛い状態で目が覚めた早々に、ネプテューヌに誘われたからその場の勢いで承諾したが……どうにも気分じゃないんだよなぁ。

まあ、なんでかっていうと最近の俺の悩みが原因な訳で……。

ネプギア達を危険な目に会わせた俺に、彼女たちと一緒に遊園地で楽しむ権利なんてないんじゃないか…? そう思えてならないんだ……。

 

「あの、宗谷さん? 大丈夫ですか?」

 

隣で歩くネプギアが俺の顔を覗き込んでそう聞いてくる。

 

「あ……ああ」

 

ぎこちない返事で答えてしまった、気にはしてても態度には出てしまうな…。

 

「どこか具合が悪いんですか?」

 

「……大丈夫だ、気にしなくていいぜ? まだ若干頭が痛いけど……」

 

俺はなぜか昨日から痛む眉間のあたりを抑えてネプギアにそう返事をする。

なぜかはわからないけど、妙に昨日からこのあたりが痛むんだよな……、変に昨日何をしてたのか覚えてないし……。

 

「…………うぅ」

 

なぜか反対側の隣にいるいーすんは昨日から顔を赤くしてるし……。 風邪でも引いたのか?

 

「それにしても、なんでいきなり遊園地なんだ…?」

 

「そ、それはほら、この前のマジェコンヌとの戦いでの祝勝会……みたいな?」

 

「………そうか」

 

……まあ、ネプテューヌらしいと言えばネプテューヌらしいか……。

あんなことがあった後だってのに、あいつは変わらないな…。

 

そうこう言っているうちに俺たちの目指す目的地の遊園地の門が見えてきた。

 

 

 

 

 

 

ここは、最近プラネテューヌにできたアミューズメント施設、その名も“あましろ☆プラネアントパーク”。

決して廃れた遊園地ではなく、出来たてで人気もそこそこ出ている遊園地なので心配はしないでほしい。

名前の響きがどこかの甘城にあるブリリアントなパークと似ているが決して違う。 ※(ここ重要)

 

「お~! 思ってたよりも人がいっぱいだ~!」

 

「あ! ロムちゃん見て! メリーゴーランドがある~!」

 

「あっちにはコーヒーカップがある……♪」

 

「結構充実してるのね……ってこらネプテューヌ! あんた勝手にどこ行くつもりなの!?」

 

パークの内容に早速目を奪われた一同、そんな中ネプテューヌが早速単独でどこかに行こうとしたのでノワールが注意するも動き出したネプテューヌが止まる気配はどこにもない。

 

「あっちに面白そうなゲームを見つけたんだ、あ、そうだ! ソウヤも行こうよ!」

 

「え、俺も……?」

 

「せっかく来たんだから楽しまなきゃダメだよ! ほら、はりーあっぷ!」

 

「なんで片言の英語!?」

 

そう言ってネプテューヌは一人ぽかんとしてた宗谷を引き連れて先に行ってしまった。

どうやら、今回の大本の目的は忘れていなかったらしい。

彼女なりの気遣いなのか、それを察したノワールたちはその後をついていく。

まずは最初のアトラクションで彼のテンションを上げなければいけない、果たして出だしはうまくいくのだろうか…。

 

だが、

 

「え………こ、これって…?」

 

 

 

ネプテューヌは、早速地雷を踏んでしまった……。

 

 

 

彼女が宗谷を連れて訪れたアトラクションの名は……。

 

“新感覚! 和風ホラーシューティングゲーム 呪われた旅館の断末魔”。

 

………どんなジャンル層を狙ったゲームなのだろうか…需要が出るのかなかなか微妙な感じの体感ゲームだった。

しかも、ホラー系の…。

 

「ネプテューヌ、これって……」

 

「このゲームってね、ゲームの中で使う除霊バスターっていうガンコンからゆーれいを映すホログラムも全部ホラーシューティングで有名なガブゴン製なんだよ!」

 

「いや、あんたのゲーム雑学はいいんだけど……」

 

そう言ってネプテューヌの隣にいる宗谷にちらりと視線を向けるノワール。

 

 

「………」(ぶるぶるぶるぶる…

 

 

案の定、若干だが体が震えていた。

そう、この中でノワールとユニの二人、並びにイストワールくらいしか知らないが……宗谷は“幽霊などの類”が大の苦手なのだ。

詳しくはTGSの際のお話を読み返していただきたい…。

 

「……ねえ、宗谷? 無理しなくてもいいわよ?」

 

「え、エ? なななな、ナニガ?」

 

小刻みに震える彼にノワールはそう言うが明らかに顔が引きつっている状態で宗谷はそう答えた。

 

「だ、大丈夫だぜ? こ、このくらい別に、ななななんともないぜ?」

 

「いや、無理にあいつに付き合わなくていいのよ? 無理なら無理って言っていいのよ?」

 

「え……いや、別に無理じゃないし? お、お、俺幽霊とか苦手な訳じゃないし?」

 

「え………? ……あ」

 

この時、ノワールは気づいた。

 

TGSの際に宗谷はノワールの見せたライブプロジェクションを見たせいで気絶した、その影響か知らないが自分が何で気絶したのかも忘れてしまったのだということを…。

つまり彼は、まだ自分がお化け嫌いだということに気付かれていないと思っているのだ…。

さらには男でお化け嫌いはいけないだろうという無駄な強がりのせいでそれを表に出せないでいるのだ。

これはタチが悪い……。

 

「じゃーさっそく、行こ、ソウヤ?」

 

「え!? あ、あ~……うん」

 

「あ、ちょっと!」

 

明らかに顔が引きつっている状態の宗谷を引き連れて行ったネプテューヌ。

ノワールがそれを引き留めようとするが、時すでに遅し、二人は中に入って行ってしまった。

 

「……まずいわね」

 

「……まずいね」

 

「……まずいですね」

 

唯一事実を知るノワールとユニ、そしてイストワールが同じことを呟く。

 

「? いったい何がまずいんですの?」

 

気になったベールが三人に聞こうとしたその時………。

 

 

 

 

 

―――いんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!

 

 

 

 

 

中から外まで響く宗谷の大絶叫が響き渡ったのは、言うまでもない………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………こわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくないこわくない………」

 

「いきなり宗谷の精神壊してどうすんのよ!?」

 

「い、いや~…まさかソウヤがお化けが苦手と思わなくて…」

 

命からがら……と言うわけでもないが、ゲームから出てきた宗谷は最終的にネプテューヌに肩を貸す状態で死屍累々と言いたげな状態に陥っていた。

そして、出てくるなりうわ言のように、怖くない、という言葉を呟き続ける始末…。

強がりが生み出した結果とはいえこれは重症である…。

 

「あの、宗谷さん大丈夫ですか?」

 

そう言ってネプギアが宗谷の肩に触れると……

 

「おおぉぉぉぉぉうっ!?」

 

「きゃぁああっ!?」

 

その途端に体をびくりと震わせて後ずさる。

 

「な、なんだネプギアか……あ~びびったぁ、“貞〇”かと思った……」

 

「か、かなり嫌いなんですね、幽霊…」

 

「幽霊と言うワードを使うなぁ!!」

 

ネプギアを某ビデオの呪いで有名な幽霊に見間違えるほどの恐怖心に加え、幽霊という単語でさえも拒絶する徹底ぶり、一体なぜ宗谷はここまで幽霊を嫌っているのだろうか…。

 

「で、どうするのよこの後……」

 

「う~ん、予定だとここで宗谷がテンション上がって、後は各自自由行動で宗谷をいろいろ連れまわす算段だったんだけど……さすがにテンション上がってないよね?」

 

「………むしろこの後どこに連れて行くのかも重要」

 

「やはり、ことは慎重に運ぶべきですわ…事前に宗谷の苦手なものを聞き出して……」

 

今回の作戦を失敗させないためにこの後の作戦を練る四女神達、なんて言ったってもうタイムリミットは間近なのだ、もたもたしている場合ではない…。

すると、真剣に話し込む四人の間にイストワールが割って入ってきた。

 

 

「あの、皆さん?」

 

「もう、なにいーすん? 今重要な話してるんだよ?」

 

「宗谷さんがいなくなったのですが……」

 

「「「「………へ?」」」」

 

 

イストワールに言われ、さっきまで宗谷がいたあたりに目を向けた四人。

彼女の言う通り、そこには既に宗谷の姿は影も形もなくなっていた…。

 

「え、ちょっ!? いつの間に!? ソウヤってテレポートとか使えたっけ!?」

 

「ていうか、宗谷だけじゃなくてユニ達までいないじゃない! どうなってるの!?」

 

宗谷だけでなく、女神候補生の四人の姿まで消えてしまいパニックになる女神達。

それを落ち着かせようとイストワールが四人に何があったのかを説明する。

 

「実はさっき、退屈そうにしていたラムさんとロムさんの二人が我慢できなかったのか宗谷さんをどこかに連れて行ってしまって……その後を追ってネプギアさんとユニさんもどこかに……」

 

「ロム……ラム……あの二人が……!」

 

「子どもは正直ですから、仕方ないと言えば仕方有りませんわ……」

 

「っていうかダメじゃん! 肝心のターゲットがいなくなっちゃあ!! ソウヤーーー! カムバーーーーック!!」

 

人が込み合う遊園地の中でネプテューヌの叫びが黙礼する……。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、宗谷を連れ出した女神王補正の四人はと言うと…。

 

「そうやお兄ちゃん! こっちこっち!」

 

「はやく、はやく……♪」

 

「お、おい二人とも、そんなに引っ張るなよ!」

 

ロムとラムにジャケットの袖を引かれながら、遊園地を駆け巡る宗谷。 そしてその後をユニとネプギアの二人が追いかける。

 

「ふ、二人とも~! 勝手に行っちゃだめだよ~!」

 

「まったく、あの二人はほんとに無邪気なんだから!」

 

勝手な行動をする二人を何とか引き留めようとして追いかけた二人だが、一度走り出したロムとラムを止めるのはなかなか困難を有する。

わんぱく盛りな二人の勢いは止まることを知らず、走り続けること数分、ようやくあるアトラクションの前でロムとラムはストップした。

 

「そうやお兄ちゃん! わたしこれ乗りたい!」

 

「わたしも……」

 

「はぁ、はぁ……え? こ、コーヒーカップ?」

 

ロムとラムの二人が連れてきたのはファンシーな雰囲気が漂うメルヘンチックなアトラクション、“コーヒーカップ”だった。

既に数人の子供たちがカップの中に入り、くるくるとまるでダンスを踊るかのようにカップを回している。

その様子を見るロムとラムの二人の目はキラキラと輝いている。

 

「そうやお兄ちゃん、一緒に乗ろう!」

 

「え、でも、俺……」

 

「だめ……なの……?」(うるうる…

 

うるうるとした瞳で訴えてくるロム、その瞳を見た宗谷は何かを言いかけるもぎりぎりで押し黙り、ここは二人の楽しみを壊しちゃいけないと自分に言い聞かせる。

 

「………わかった、一緒に乗ろうか?」

 

「わーい!」

 

「やったぁ…!」

 

二人の勢いに押され、承諾した宗谷は早速二人と一緒に入場ゲートに向かう…。

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……や、やっと追いついた…!」

 

「確か……このあたりに…来たはずだけど……」

 

遅れて到着したネプギアとユニ。

しかし、肝心のロムとラム、そして宗谷の姿が見えないので周りに目を凝らしてそれらしき姿を探す。

だが、この人だかりだそう簡単に見つけるのは困難を有する。

 

「………あ! ゆ、ユニちゃんあれ!!」

 

「え? ………な、なにあれ!?」

 

そんな時、ネプギアがある物を見つけた。

彼女に呼ばれてユニもそっちに目を向ける……すると、そこには……。

 

 

 

「はやいはやーい! そうやお兄ちゃんもっとはやくしてー!」

 

「がんばって……そうやお兄ちゃん…♪」

 

「うっおぉぉぉぉぉぉぉ……う、腕つりそっ!!」

 

―――ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる!

 

 

 

一個だけ、他のコーヒーカップよりも逸脱した速さで高速回転をするカップがあった。

それはまるで一つの小さな竜巻の如き速さで………。

 

「あ、あれってコーヒーカップの正しい乗り方……なのかな?」

 

「いや、たぶん違う気がするわ……っていうか宗谷さん、いくら二人が相手でも人が良すぎでしょ……」

 

二人が楽しんでいるとはいえ、あそこまでする宗谷も宗谷だろう、さすがにやりすぎともいえる。

その後、時間が来るまでの間、高速回転をする宗谷とロム、ラムを乗せたコーヒーカップは宗谷の腕が悲鳴を上げ、彼の三半規管が限界を迎えるまで回り続けたという…。

 

 

 

 

 

 

「うげぇぇぇぇ……気持ち悪い……腕痛い……」

 

「あれだけの無茶したらそうなりますよ……」

 

 

ベンチの上でグロッキー状態になった宗谷をネプギアが遊園地のグッズコーナーに売ってた団扇を使って仰ぐ。

そのすぐ横ではいきなり走り出し、こんな結果になった原因のロムとラムにユニが注意している。

 

「あ~……やばい……これ思ってた以上にやばい……」

 

「わわっ、大丈夫ですか!? えっと、せめて水か何かあれば…」

 

青ざめる宗谷に何か飲み物でも渡そうと思ったネプギアがあたりを見回す、すると……。

 

 

 

「はい、どうぞ?」

 

 

 

聞きなれない声をした誰かが宗谷にペットボトルを差し出してきた。

一瞬、誰かと二人はその人物の顔を見ると、その顔は遊園地などのアミューズメントパークには持って来いなお決まりのピエロのメイクが施されていた。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「いやぁ、たまにいるんですよね、無理してあそこまで回すお客さんって」

 

「は、はあ……それよりもいいんですか、これ貰っちゃって?」

 

「あ~、いいんですいいんです! サービスですよ、それよりもほら、彼にあげちゃってください」

 

ピエロにそう言われ、ネプギアはしぶしぶと水の入ったペットボトルを宗谷に差し出す。

宗谷もどこか不思議そうな表情を見せてはいたものの、気分の悪さには勝てなかったのかそれを受け取り一口だけ中の飲料水を飲んだ。

 

「ふぅ……少しはマシになった……かな?」

 

「それは良かった! なんせここは遊園地! ゲイムギョウ界に住む人たちが笑顔で訪れる夢の国だからね、気分の悪そうな顔をしてたらもったいないよ!」

 

「………ピエロなのによく喋るな、あんた?」

 

饒舌にしゃべるピエロの熱弁を気にした宗谷は彼にそう聞く。

確かに、大抵の遊園地に要るピエロは喋らなかったりするのが多い場合がある。 例外でパフォーマンスのために喋るピエロもいるが、どこか慣れない部分がある。

 

「あ、別にピエロだから喋らない決まりとかないんで、あくまでバイトなんで」

 

「バイト……なんだ……。 それなのに、こんなことしてていいのかな?」

 

そう返してきたピエロに苦笑いを浮かべるネプギア、だがピエロはそんな言葉は気にせず軽いステップを踏んで宗谷の前に来るとどこから取り出したのか細長い風船を膨らませてそれをひねったり曲げたりして何かを作り出した。

 

「僕はね、昔からいろんな人の笑顔を見るのが好きなんだ、いろんな場所にはいろんな人の笑顔がある、僕はそのたくさんの笑顔を見たくてたまにこう言ったバイトをしてるんだよ」

 

「笑顔……か……」

 

「ねえ、君は笑えてるかい?」

 

唐突にピエロはそんなことを聞いてきたので、宗谷は、はっと顔を上げてピエロの顔を見る。

 

「遊園地では誰しもが笑顔でないとね、どうにも今の君はさっきの水じゃ洗い流せない何かがあるみたいだ」

 

「………あんた、どうして」

 

「僕は笑顔を見たいけど、“笑顔を守りたくもある”。 陽気でお世話焼きなピエロさ♪」

 

そう言ってピエロは手早くバルーンアートを完成させ、それを宗谷に手渡した。

完成した犬のバルーンアートを片手に、呆気にとられる宗谷を見て、ピエロは去り際にこう言い残した。

 

 

 

「迷うことがあるなら長く悩むのも手だけど………後悔だけはしちゃダメだよ?」

 

 

 

最後にそう言ったピエロは颯爽とその場を去って行った。

残された宗谷とネプギアは呆然とする。

 

「な、なんだか変わった人でしたね? ……いや、ピエロだから当然かな」

 

「………ああ、そうだな」

 

バルーンアートを待ったままそう答えた宗谷。

一体ピエロは何が言いたかったのだろうか……すると、

 

 

 

―――きゃぁぁぁぁぁぁあああああ!!

 

 

 

遊園地の絶叫アトラクションよりも戦慄した鬼気迫った悲鳴が二人の耳に届いた。

それは隣にいたユニとロムとラムにも聞こえたようだ。

 

「なんだろう、今の悲鳴……」

 

「とにかく行ってみましょう!」

 

「ああ、急ぐぞ!」

 

5人はすぐにその悲鳴が聞こえた方に走り出した。

 

 

 

 

 

程なくして現場に急行した5人、何かを中心にするようにできた人だかりの中で宗谷達が見たものは……。

 

 

 

「アッククククク! 遊園地! この場所こそ、俺の求めていた桃源郷! まさに憩いの場だ!」

 

 

 

以前ルウィーでロムとラムを攫った張本人であるトリックと呼ばれるモンスターが長い舌で小さな女の子を捉え悦に浸った笑いを響かせていた。

なぜトリックがこの場にいるのかはわからないが、これはある意味一大事だった…。

 

「あ、あの時の変態!」

 

「ひぅ……怖い……」(ぶるぶる

 

トリックの一番の被害者だったロムとラムはトリックの姿を見るや否やユニの後ろに隠れてしまった。

それほどまでのトラウマになる何かをされたのだろう……まあ、何かとは言わないが……。

 

「ん? この戦場に咲く一輪の儚い花のようなかほりは………うぉぉぉぉぉ!! ロムたん、らむたん、はっけぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

一体どんな匂いなのかはわからないが、早速ロムとラムを見つけたトリックは手をワキワキとさせながら二人の方に顔を向ける。

以前のトラウマがあるせいか、二人は震えてまともに動くこともできないらしい…。

 

そんな二人の前に宗谷が立ちはだかる。

 

「おいやめろ! 二人に手を出すな! それとその子たちを離せ、嫌がってるだろ!」

 

「むむっ? 誰かと思えばいつぞやに俺の邪魔をした小僧じゃないか、今回も邪魔をしに来たのか?」

 

宗谷の姿を見るなり顔をしかめたトリックは舌で捕らえていた幼女を腕に抱え、その長い舌をれろれろと動かし始める。

宗谷はポケットに入れていたV.phoneを取り出そうとするが、その手を反射的に止めてしまう……。

 

(……もし、何かの拍子でまた暴走したら……)

 

そう考えてしまい、変身するのをためらってしまったのだ……。

 

「どうした小僧? 来ないのならこちらから、行くぞぉ!!」

 

「…っ! しまっ、ぐはっ!?」

 

隙を見つけたトリックの下による攻撃で宗谷は弾き飛ばされ、地面にたたきつけられる。

 

「宗谷さん!」

 

「この変態! よくも!」

 

宗谷が倒れ、その腹いせに女神化してトリックを懲らしめようとするネプギアとユニ、だがトリックはそれを見越して次の狙いを二人に絞っていた。

 

「させぬわ!」

 

「きゃあっ!?」

 

「な、なによこれぇ…!」

 

長い舌をぶるんと振るい、何かねばねばとした液体を二人にかけたトリック。

ねばねばした液体はネプギアとユニの動きを邪魔し、さらには徐々にだが二人の体を痺れさせ始めたのだ。

 

「ど、どうして……!?」

 

「か、体が……痺れて……」

 

「アクククク! それは俺様特製の麻痺液だ! 俺様の舌は幼女を回復させる能力もあるが、こういう使い方もできるのさ!」

 

高らかに笑い二人を見下ろすトリック。

邪魔者がいなくなったところで、狙いを今度は怯えるロムとラムの二人に変えてじりじりと二人に迫る。

当の二人は女神化するのも忘れ、その場に座り込み怯えている。

 

「アクククク……さあ、俺と遊ぼうぜ? ロムたん、ラムたん!」

 

「いや……こ、こっち来ないでよ!」

 

「ふぇぇ……助けて……誰か助けて…!」

 

長い舌をうねうねと伸ばしロムとラムに迫るトリック、その腕には遊園地に遊びに来ていた小さな女の子たちもいる。

このままでは………。

 

(くそ………! どうすれば……どうすりゃいいんだ!)

 

暴走の可能性を恐れ、変身できない宗谷は歯を食いしばって地面を殴る。

このまま何もできないまま、二人がトリックの手に堕ちるのを見ているしかないのか……。

何もできないなら、この力を持つ意味は何なのか?

 

そんな考えが頭を横切る…。

 

だが、その考えに宗谷自身が待ったをかけた……。

 

(待てよ……俺はなんで何もしようとしないんだ?)

 

ふとそんな疑問が宗谷の頭に浮かんだ。

 

(………それは暴走が怖いから………でも、そもそもこの力はいったい何の力なんだ?)

 

自問自答する宗谷だが、力の意味の答えはすぐに見つかった。

 

(………いや、そんなの決まってるだろう……誰かを守るための力だ)

 

宗谷はその答えに辿り着くと勢いよく立ち上がった。

 

(俺は暴走するのが怖くて無意識にこの力を恐れてたんだ………でも違う、この力はそもそも誰かを守るために戦った……俺の憧れたヒーローたちがくれた力だったじゃねぇか! 怖がる必要なんてない、むしろこれは俺を奮い立たせるには十分すぎる力だ!)

 

宗谷はV.phoneを握る手の力を強くし、目の前に要るトリックを強く睨み付ける。

 

「暴走するのは嫌だ………でも、目の前で助けを求めているのに、見ているだけなのはもっと嫌だ!! もう、迷うのはやめた……俺はもう失わないために………守るために戦うって、ずっと前に決めたんだ!!」

 

宗谷はそう言うと、呼び出した赤剣とV.phoneを構えて走り出す。

 

「リンク……オン!!」

 

自分が力を振るう理由、目の前の大切なものを、助けを求める声を救うために宗谷は再び変身した。

ロムとラムに気を取られまだトリックがこちらに気付いていないのを確認し、宗谷はv.phoneの画面を二回タップする。

 

『Skill Chain! Katekyou hitman REBORN! MARIO!』

 

両手にブーステッドフィアンマを装備した宗谷は手の甲から噴き出したブースターの炎を引きながら目にもとまらぬ速さでトリックの目前まで移動すると、その鼻先に高速の拳を叩きつける。

 

「ぐへぇっ!?」

 

怯んだトリックが両腕に抱えていた少女たちを離したのを見計らって宗谷は右腕にスキルチェインによる強烈な一撃を撃ち込むだけの力をチャージする体制に入った。

 

「次元の彼方まで吹っ飛べ! “ビックバン・アクセラレート”!!」

 

「ごばぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」

 

火球を拳に乗せた超ド級のパンチをトリックに打ち付けた宗谷、あまりの威力にトリックは叫びを上げながら文字通り、空の彼方へと飛んで行ってしまった…。

何はともあれ、トリックを退けることができた宗谷は地面に降り立ち一息を突く。

 

「ふぅ………」

 

「そうやお兄ちゃん!」

 

「こわかったよぉ……!」

 

変身した状態の宗谷にロムとラムが飛びつく、宗谷は二人の頭を優しく撫でてよしよしと言いながら二人を宥める。

 

「あの、ありがとうございます! 娘を助けていただいて!」

 

「本当になんとお礼を言っていいのか……!」

 

「あ、いや……別にそんなつもりはありませんから、当然のことをしただけですんで…」

 

トリックにつかまっていた少女たちの両親と思われる人たちも宗谷に駆け寄り、彼はたじたじになる。

突然の遊園地の危機を救った英雄に皆興味津々なのだろう、人だかりもだいぶ出来てきた。

すると、そこへ騒ぎを聞きつけたネプテューヌたちが駆けつけた。

 

「わわっ、何この人だかり!?」

 

「一体何が……」

 

事のいきさつを知らず、困惑するネプテューヌたちに麻痺液から何とか脱出したネプギアとユニが近寄る。

 

「たぶん、宗谷さんはもう大丈夫なんじゃないかな?」

 

「え、どういうこと?」

 

「さっきの宗谷さん……なんだか吹っ切れたって顔してたから」

 

ネプギアの言葉が差す意味は何なのかネプテューヌには理解できなかったが……。

 

 

 

「お~い! みんな~! 誰でもいいから助けてくれ~!!」

 

 

 

人混みの中から助けを求める変身を解除した宗谷の姿を見たとき、彼女たちは宗谷の瞳にもう迷いがないのを見た気がした。

手を振り上げて自分たちに助けを求めるその姿は、前のような距離感は感じられず、むしろ自分から歩み寄ってきている感じがした…。

 

まだ、すべてが解決とはいかないが………彼の中の迷いはもう吹っ切れたらしい。

 

「………なぁんだ! 心配して損しちゃったよ~」

 

「まったく、心配かけさせておいて勝手に解決しないでよ……もう」

 

「でも、これで今夜までには間に合ったわ……」

 

「そうですわね、なら早速戻って準備をしませんと!」

 

「はい、あ、それと……各自準備するものも忘れないようにしませんとね?」

 

目の前の問題を何とか乗り切った女神たちは次のステップへと進もうとする。

そう、すべては今夜のためにあったのだから……。

 

 

 

 

 

 

遊園地から帰っる途中、なぜかほかのメンバーの寄り道をしながらも何とか教会に辿り着いたころにはもうすでに空は茜色に染まっていた。

そして、教会の廊下で宗谷はネプテューヌとイストワールの二人に手を引かれてリビングへと向かっていた。

 

「おい、なんなんだよ? 急に外で待っとけって言われたと思ったら今度はすぐに来いって……」

 

「いーから、いーから! はやくはやく!」

 

「見てからのお楽しみですよ♪」

 

二人にそう言われ、しぶしぶ了解した宗谷。

そして、リビングの扉の前にまで来ると二人はそっと両側に一歩後ずさり、宗谷にドアを開けるように指示する。

訳が分からずいったい何が起こるのか予想もつかない宗谷が二人に疑問の眼差しを向けながらもドアノブに手をかけて、ドアを開けると………

 

 

 

 

―――パン! パン! パン! パン!

 

 

 

 

軽快な破裂音と、たくさんの紙吹雪が宗谷の目前で舞った。

 

そして、

 

 

 

 

 

『宗谷! お誕生日、おめでとう!!』

 

 

 

 

 

全員の声をそろえて言われたその言葉が予想外すぎて、本日の主役、宗谷はきょとんとその場で固まってしまった。

 

「……これは……どういう?」

 

「あ~、もしかして忘れちゃったの?」

 

「前に話してくれましたよね、宗谷さんの世界の時間でちょうど今日が誕生日だって」

 

「………あ、そう言えば」

 

そう、彼女たちが計画していたこと、それは宗谷の“誕生パーティー”だったのだ。

そもそもなぜ彼女たちがそのことを知っているのかと言うと、宗谷がまだゲイムギョウ界に来て間もないころ、自分の世界の時間の流れからこの日が誕生日だということを世間話でネプテューヌにしていたのだ。

 

そこで、彼女は事前から宗谷以外の全員で誕生日パーティーを計画していたのだ。

 

だが、その前にマジェコンヌとの戦いがあって宗谷自身が相当落ち込んでしまったというアクシデントはあったものの何とかそれも振り切れて実行に移せたのだ。

 

「じゃあ、昨日ネプテューヌたちが変な行動をしていたのも、今日遊園地に誘ったのも……?」

 

「はい、全部宗谷さんのためです」

 

「秘密にしててごめんなさい、でも、お姉ちゃんたちも今日のために頑張ってたんです! 失敗ばかりでしたけど……」

 

申し訳なさそうにするネプギア、そして当の宗谷はまだぽかんとした表情のまま部屋を見渡す。

 

だが、

 

「………そうか、そうだったんだな」

 

そう呟いた後、宗谷は口元に笑顔を浮かべて……。

 

 

「ありがとうな、みんな………それと、心配かけてごめん……まだいろいろ考えることがあるけど、でもおかげで当分の間は大丈夫だと思う!」

 

「うんうん、やっぱりソウヤはこうでないと!」

 

「まあ、変に考えすぎる割に立ち直りが早いのはいつものことだけど」

 

「喜んでくれたなら、何よりだわ……」

 

「さあ、宗谷の復活も含めて、今日は盛り上がりましょう!」

 

「ちゃんと宗谷さんにプレゼントもあるんですよ!」

 

「感謝しなさいよ! 女神さまからのプレゼントなんて早々ないんだから!」

 

「お料理もいっぱいだよ~!」

 

「いっぱい……」(わくわく

 

「今日のために張り切って作ったんだから、残したりしたら承知しないわよ?」

 

「いつも以上によりをかけて作ったです♪」

 

それぞれの面々が盛り上がる中、イストワールがそっと宗谷の前に移動する。

 

 

 

「宗谷さん、改めまして……お誕生日、おめでとうございます!」

 

「………ありがとうな、いーすん……ありがとうな、みんな! 最高の誕生日になりそうだ!」

 

 

 

その日、プラネテューヌ教会で執り行われた異世界の少年の誕生日パーティーは盛大に盛り上がったそうな……。

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

俺はこの日、19歳になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人足が離れ、すっかり閉演となったプラネアントパーク。

そのスタッフルームで宗谷にバルーンアートを渡したあのピエロが洗面台の水を顔にかけてメイクを落としていた。

 

 

 

「あんまり、あのお兄さんに接触すんのは控えてほしいんやけどなぁ……」

 

 

 

すると、誰もいないはずの彼の背後に白いポニーテール姿の女性のシルエットが現れた。

エネミーである。

突然の来訪者にピエロは驚くかと思ったが、逆に驚くでもなくメイクを落として水に濡れた顔をタオルで拭いて彼女の方に振り返った。

 

「あれ、ヤエ? どうしたのこんなとこまで、迎えに来てくれたの?」

 

「それもあるけど、ちょっと注意に来たんや……いきなりあのお兄さんに近づくのはやめい!」

 

子どもに説教する母親のような態度で男を注意するエネミー。

当の男は申し訳なさそうに頭を茶髪の頭を掻く。

その顔はどのパーツを見てもどこか幼さの残る顔立ちで、ある意味イケメンとしても通じる整った顔立ちをしていた。

 

「あはは、ごめんごめん……」

 

「まったく、こっちは予定狂ったせいでトランスのあほが飲んだくれて大変やっちゅうのに……」

 

「あー、まだ飲んでたんだライラ……そろそろ止めないとだね?」

 

「そう言うことやから、はよ帰るで? そもそも、なんであんたはここでバイトなんかしとるんや……」

 

不機嫌そうに身を翻すエネミーの後を手早く私服に着替えた男が追いかける。

すぐに彼女の隣に追いつくと、男はそっと彼女の頭に手を置いた。

 

「ありがとう、ヤエ……迎えに来てくれて」

 

「っ! べ、別にそんなんちゃうわ!」

 

すぐに顔を赤くして彼の手を振り払ったエネミーに男はにこりと笑顔を浮かべる。

男の笑顔を見たヤエはまだ若干顔を赤くさせながらも、ふいとそっぽを向いてどんどん先に行ってしまう。

 

「あ、待ってよヤエ~!」

 

男はその後を追いかけながら、遠くに見えるプラネテューヌ教会をちらりと見る。

 

 

 

(………あの時の彼が、“僕の後継者になるかもしれない”子か………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、何処かの森の奥深く。

 

そこには宗谷に吹っ飛ばされたトリックが一人、とぼとぼと当てもなく歩いていた。

 

「はぁ……また同じように吹っ飛ばされてしまった……俺はただ幼女をぺろぺろしたいだけだというのに、一体なぜいつも邪魔が入るんだ!」

 

憤怒したトリックが地団太を踏みながらそう文句を言う。

やってることは変態行為でも彼なりにプライドはあるらしい。

 

「そうだ! こうなったのも、すべて女神とあの小僧のせいだ! あいつらさえ、あいつらさえいなければ……」

 

『なら、力を貸してやろうか?』

 

「アク?」

 

ふと聞こえた声にトリックはあたりを見渡す。

しかし、その声の主と思われる姿はどこにもなく、あるのは森の木々だけだった。

トリックが幻聴か何かかと思い、その場を後にしようとしたその時………。

 

不意にトリックの背中に何かが飛びついた。

 

 

「ぎょえっ!? な、なんだこれは!? 一体なんだぁぁぁあああ!?」

 

『心配するな、少し体を借りるだけだ……』

 

「な、なんなんだお前は! 一体何者だぁぁぁぁぁああ!?」

 

 

背中に広がる違和感が全身に広がっていく中、トリックは自分の背中に飛びついてきた何者かにそう聞いた。

やがてその違和感は怪しく揺らめく紫の炎のようなエネルギーに変わり、トリックの全身を包み込んだ。

 

そして、その声はトリックの耳にはっきりと、そして、怪しく響き渡った。

 

 

 

『アックククク………俺様の名は、“トリック・ザ・ハード”………復活した“新・犯罪神”様に仕える四天王の一人だ………!』

 

「な………に………ぎょえぇぇぇぇぇぇええええええええええあああああああああああああああああ!?」

 

 

 

トリックの眼前に自分とよく似た姿の幻影が映った。

そして、次の瞬間にはトリックの体が紫の炎に包まれ、変化を遂げた………。

 

 

 

 

「アッグググググググググ! 転生完了! 生まれ変わった俺様の名は“トリック・ザ・ルーク”! そう、幼年幼女を愛する最強の紳士様とは、俺のことさ!!」

 

 

 

 

まるでチェスのルークの駒を模したような兜をかぶり、大きさもずんぐりした巨体からシャープなフォルムが特徴な人間サイズまで縮小したトリックは、人が変わったようにハイテンションで喋り、笑った……。

 

 

 

 

この時すでに、新たな試練が動き出そうとしていた………。

 




いかがでしたか?

宗谷の誕生日、詳しい日時までは決めてなかったんですけど、今作のどこかで取り入れたかったんですよ。

そして、物語後半については………今回のお話を左右する重要な人物の登場と、次の長編への布石です…。
さて、そのあたりも含めて次回!

予定が狂ったことで現状どうするかを悩むトランスたち白い四人、さらに新たな影が動き始め……。

次回をお楽しみください! それでは……。
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