最近暑くなってきましたね、水分補給には気をつかわないと……。
さて、そんなことより今回は、あの勇者王風の強敵との激闘!
そして、まさかの展開が!?
それではお楽しみください、どうぞ……。
着地によって周りに発生した砂塵を掻き分けて、ブレイブ、と名乗った大剣を持ったロボットが一歩、そして二歩と前に出た。
白と青を基調としたボディに似合った顔にある二つの輝く眼光が日本一を抱える宗谷、銀時、そして二人を庇うようにして前に出たノワールとユニを順に見据える。
対して、戦闘準備が整っているノワールとユニはお互いの武器を構え、ブレイブがいつ行動を起こしてもいいように警戒している。
「ブレイブ………見た目と言い、犯罪組織とは無縁そうな奴ね」
銃口をブレイブに向けたユニが静かに呟いた、それに続くようにしてノワールが持っていた剣の先をブレイブに向ける。
「あなた、ここの奴の関係者? だとしたら、こんなことをしてタダで済むと思ってるの?」
彼女が言うこんな事、それは彼女たちの近くで倒れているギャバンと日本一の事である。
二人は爆発と共にここに飛ばされてきた、そして遅れてブレイブが自分たちの眼前に現れたのだ、無関係とは言えないだろう。
「何を言う、こそこそと中に忍び込んだのはお前達だろうに…」
「ちまちまと小賢しい犯罪に手を染めてるやつに言われたくないけどね」
「犯罪、か……貴様にはわかるまい、俺がなぜ奴らに加担しているか……何のためにここを守る用心棒を買って出たのか」
「用心棒…?」
ブレイブがふと漏らした言葉の中に気になる単語があったのを、ノワールは見逃さなかった。
用心棒とはどういう意味なのだろうか、金か何かで雇われているのだろうか…。
「だが、用心棒のことは詮無きこと……今は俺の夢のため、邪魔をする貴様らを、ここで斬る!」
ノワールが考える余裕を与えないかのように、ブレイブがすぐさま臨戦態勢に入り身の丈ほどの大きさの大剣を構える。
「勝手なこと言ってんじゃないわよ! あんたがどんな目的で動いてようと、やってることはいけないことなのよ!」
「来るわよ、ユニ!」
「うん!」
ブレイブの言葉に噛みつくかのようにユニが反論し、ノワールがユニに指示を送って二人もすぐさま武器を構える。
「はあっ!!」
先に仕掛けたのはブレイブだった、大剣を軽々と振るい二人に向けてその刃を叩きつけんと勢いよく迫る。
しかも、そのスピードは大柄な巨躯に似合わず素早く、すぐにノワールたちの間合いを詰めてきた。
大上段に構えたブレイブの大剣が振り下ろされる。
二人はその攻撃を左右に跳び退ることで回避する、左側に避けたユニは地面に着地すると同時に得物の銃を構えて照準をブレイブの胴体へと合わせる。
発砲音と共に、銃口が火を噴き、ユニの攻撃がブレイブへと迫る。
だがブレイブはその攻撃を大剣の腹を盾代わりにすることで難なく防いでしまう。
「ちっ……このぉ!!」
ユニはそれならと銃を腰だめに構えて乱射、凄まじい数の銃声と銃弾がブレイブに迫るが……。
「むぅん!!」
ブレイブは大剣を軽々と片手で、さながらヘリコプターのプロペラの様に振り回して乱射された銃撃のすべてを防いでみせる。
「無駄だ、お前の豆鉄砲など俺には通用しない」
「うそ……全部防ぐなんて…!?」
ブレイブの今の防御を見て驚くユニ、そんな彼女にブレイブは剣を下ろしてじっと彼女を見下ろす。
「貴様の強さは所詮その程度だということだ、そんな攻撃では俺に傷一つ付けられやしない」
「なっ……!」
「それに、お前には特に興味を感じない……これでわかったなら、さっさと下がることだな」
「………っ!!」
明らかな挑発の意味を込めた言葉、だが同時に的確な言葉でもあった。
今の一連のブレイブの動きを見る限り、ユニの攻撃が通るのは困難だ。
しかし、このまま引き下がれないとばかりに歯ぎしりをしたユニが再び銃を構えようとする。
「ユニ、挑発に乗らないで!」
「お姉ちゃん………!」
再び追撃を試みようとするユニに変わり、今度はノワールがブレイブへと勝負を挑む。
右手のサーベルを構えながら走り、ブレイブの懐に潜り込もうとするがブレイブはすぐさまそれを察知し彼女の足元に向かって大剣を横薙ぎに振るう。
「ふっ!」
しかし、ノワールも負けてはいない。 持ち前の身体能力を生かしてその攻撃をジャンプで回避、身を翻しながら着地し、そのままブレイブの懐に勢いをつけた蹴りを撃ち込む。
“クレセントキック”、ノワールが得意とする体術を生かした蹴り技のコンビネーション攻撃だ。
「邪魔だ!」
だが、やはり固い装甲に覆われたブレイブには打撃攻撃は無意味のようであり、ブレイブが反撃を行う前にノワールはバックステップを刻んで回避する。
自分の眼前に勢いよく振られた大剣が生み出した風が彼女の髪をなびかせる。
「ならこれで!」
ノワールは意を決して剣を構えると思い切りジャンプし、空中で身を三回転ほど回転させてから持っていた剣を思い切り振りおろしブレイブの頭上から奇襲攻撃を仕掛ける。
落下による加速と、回転による勢いをつけた強力な一撃だ。
―――ガキィン!
しかし、その攻撃をブレイブはそうやすやすと通すつもりはない。
横向きに構えた彼の大剣がノワールの剣の刃を受け止め、鬼神の如き強力を持って彼女の体ごと押し返す。
攻撃を押し返されたノワールは空中で三度身を翻しながら地面に着地する。
息を深く吐いたノワールは剣を左右に切り払い、剣先をブレイブに向けるようにして再び身構える。
(やっぱりこいつ……)
ノワールはこの時、自分が感じていたことが気のせいではないことを理解した。
戦いに突入する前から薄々感じてはいた、目の前の戦士、ブレイブと名乗る者が放っている闘志の様な気迫が並のものではないということに……。
モンスターやマジェコンヌと言った敵の威圧感とはまた違ったこの感じ、闘志と言うよりもそれは覇気ともいえるほど…。
それをブレイブから感じているのだ。
(本気で掛からないとやばい敵みたいね……)
より一層闘志をみなぎらせ、ノワールは次はどうすべきかを考える。
「………おい宗谷、見たか?」
「………ああ」
後ろの方で傷ついた日本一とギャバンを守っている宗谷と銀時の二人の声がした。
どうやら二人もブレイブの強さが並はずれたものだということに感づいたようだ。
「あのツンデレの嬢ちゃんのパンツ、白だったな」
「ああ、純白だった」
コンマ数秒後、シリアスな顔つきをしていた銀時の顔面にノワールの蹴りが炸裂した。
「ごばぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」
「銀さんんんんんんんんんんん!?」
日本一のジャスティスキックも顔負けな跳び蹴りを喰らい、銀時は地面を転がって近くの木に激突する。
後ろにものすごい勢いで飛んで行った銀時を宗谷が心配するも、着地するや否やスカートを抑えて顔を真っ赤にしたノワールが宗谷と銀時の両方を交互に睨み付ける。
「こんな時になに見てんのよ!? この変態!!」
「い、いや……そもそもそんな短いスカートであんだけ動いてたら見てくださいって言ってるようなもんだろ、な? 宗谷」
「え!?」
いきなり話を振られて困惑する宗谷にノワールが詰め寄る。
「っていうか、宗谷もどういうつもりなの? こんな時に…」
「あ、いや、その、19歳になってもやっぱりそっち方面にも興味津々と言いますか……その、ごめんなさい、つい出来心で……」
まだ若干頬を赤くしているノワールに詰め寄られて、宗谷はたじたじとなりながらも謝罪する。
「………もう、今日だけだからね! ………ほんと、なんで私はこいつのことを………」
「ん? 何か言ったか、ノワール?」
「な、何でもないわよ! 斬られたいの!?」
「マジすんませんした!?」
まるでコントのような独自空間を作り出し始めた二人、剣の切っ先で宗谷の眉間を捉えた状態で宗谷を睨むノワール。
そんな二人に、気に凭れ掛かっている銀時が声をかける。
「おいお前ら、あぶねぇ! あぶねぇ!!」
「「は?」」
銀時の言葉の刺す意味が何なのかわからず、とりあえず二人は彼が指差す先へと視線を向ける。
「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!」
視線の先には裂帛の気合いと共に二人へと剣を構えて迫るブレイブの姿があった。
完全に注意をそがれていた二人は突然の奇襲に対応しきれず回避しようにも、もうこの距離では間に合いそうもない。
咄嗟に宗谷が回避が無理ならと、防御のために赤剣をコールするが………
「らぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
それよりも早く、風の如きスピードで二人の間に割って入った銀時が腰に刺していた木刀、“洞爺湖”を抜いて振り下ろされた大剣に叩きつけた。
二人を突き飛ばした銀時は両足を開き、上からくる力を押し返そうと木刀に体全身の力を注ぎこんでいる。
ぎりぎりと鍔迫り合い、微動だにしない二人の獲物、完全に二人の力関係は互角のようだ。
「ほう、貴様もなかなかの手練れの様だな、あの銀色の男と同様に俺の攻撃を受け止めるとは……」
「へっ、あんな全身カッチカチな奴と一緒にすんじゃねぇ……よ!」
銀時は木刀を使い、大剣を横にいなして軽く跳躍しブレイブの顔目がけて木刀を思い切り振るう。
ひゅんという木刀特有の軽い音と共に洞爺湖の刀身がブレイブの顔面に迫る。
しかし、ブレイブはその攻撃を左手の甲で防ぎ、弾くと反撃とばかりに銀時に拳を振るう。
「っ!」
鈍い音と共に銀時の身体が勢いよく後ろに弾き跳ぶ、完全に拳は銀時を捉えていた。
「銀さん!」
今の一撃はもろに喰らったらさすがの銀時でもひとたまりもない、それ程に重い拳だった。
宗谷が咄嗟に銀時を呼ぶが、銀時は後ろに弾き飛ばされ、着地する瞬間に木刀を地面に突き立てて地面をがりがりと削りながらもスピードを押し殺し失速する。
地面に洞爺湖を突き刺した状態で顔を上げた銀時は、宗谷の心配と裏腹に目立った外傷は見られなかった。
「……紙一重で防いだか」
ブレイブがそう呟いた。
(今の一瞬……しかも木刀であんな防ぎ方を……!?)
同じように今の一瞬の出来事をノワールは見ていた。
そう、銀時はブレイブの拳が直撃するよりも前に逆手に持ち替えた洞爺湖の柄を迫りくる拳に打ち当てて威力を半減させたのだ。
「いきなり横入りした奴に早々やられるつもりもねぇよ、順番はきっちり守れって母ちゃんに教わらなかったのか?」
「ふん………減らず口を!!」
場違いな言葉を聞き流したブレイブは再び剣を構え、銀時に迫る。
その大きさとは不釣り合いなスピードで翻される大剣の斬撃、それらすべてを銀時は片手で持った木刀一本で迎え撃つ。
袈裟懸けに振り下ろされたブレイブの一撃を銀時が木刀で受け流し、大剣を握っていた右腕に回し蹴りを叩きこむ。
だが、決定打には至らずすぐに反撃を仕掛けるブレイブ。
それを真っ向から受け止めて何とか防御し、受け流しては木刀で打ち返す銀時。
鋭く放たれた木刀の一太刀がブレイブに迫るものの、それも同じように防がれブレイブも反撃を仕掛ける。
重く、威力の高い大剣の一撃一撃を真っ向から受け止め、負けじと反撃を繰り返す銀時の動きは荒々しいがブレイブと互角に渡り合っている。
「すげぇ……」
一進一退の攻防を目の前にしている宗谷は感嘆の声を漏らす。
しかし、反対側にいるノワールの表情は険しいものになっている。
「ダメ、体格が違いすぎる……」
確かに彼女の目から見ても銀時の戦いぶりは目を見張るものがある。
しかし、それでもやはり体格差までは埋められない。
相手は人間の体格よりも遥かに大きい敵、巨躯から繰り出される一撃一撃を何とか防御できても長期戦に持ち込まれれば消耗は大きくなる一方だ。
よって、今は何とかできていても、時間がたてば銀時が不利になる……ノワールはこの二人の攻防を見てそう分析する。
―――ガシィン!
激しく切り結んだ二人、だがそれから間を開けずに銀時は後ろに跳び退る。
「はあ………はあ………タフな野郎だ」
肩で息をし始めた銀時、やはり消耗が激しいようだ。
対するブレイブはこれと言った疲労感を見せていない、ここに来るまでにギャバンや日本一とも一線を交えたはずなのに……。
「どうした? もう終わりか?」
「へっ、なめんじゃねぇよ……まだまだこっから……」
明らかな疲れの色を見せる銀時が何とか立ち上がる。
すると、
「っ!」
彼のすぐ真上を極太のビーム砲が駆ける。
その閃光の一閃はまっすぐとブレイブに向かって伸びていく。
突然放たれたビームによる攻撃だったが、標的となったブレイブは冷静に大剣を盾代わりにしてその一撃を防ぐ。
咄嗟にその場にしゃがんでその攻撃を回避した銀時が後ろを振り向く。
「おいおい危ねぇだろうが、助けるならもっと安全面に気を遣えって…」
「勘違いしないで、別にあんたを助けたわけじゃないし、助けを借りるつもりもない」
そこには巨大な銃を構えたユニ、いや、ブラックシスターの姿があった。
「あんたみたいな不真面目な奴の力なんて借りなくても十分よ、こんなやつ私とお姉ちゃんだけで充分なんだから」
「………」
ブラックシスターの言葉に銀時は何も返さずただ彼女の目を見つめる。
だが、そんな二人のやり取りをお構いなしに、ブレイブは新たな乱入者を見据える。
「………まさか、女神だったとはな」
自分のことに気付いたブレイブにブラックシスターは銃口を向けて食って掛かる。
「そうよ、こうなったら容赦はできないわ………降参するなら、今の内よ?」
念のためにとブラックシスターがそう聞くが、ブレイブはそれを鼻で笑い大剣を大きく振り上げて腰を落し身構える。
「………上等よ、そうでないとこっちの気が収まらないんだから!」
ブレイブのその体制を受けて立つと受け取ったブラックシスターが銃口を向ける。
今の彼女の目にはブレイブに対する挑戦的な闘志しか映っていなかった。
原因はおそらく、先程ブレイブが発した彼女への言葉だ。
もともとノワールに似てプライドが高いユニはあの言葉を自分に対するあてつけだと受け取ったのである
(私は前までの弱い私じゃない………私は強くなったのよ!)
大剣を構えるブレイブを睨み付け、ブラックシスターがトリガーに指を添える。
「待てユニ、俺も行く!」
そこへ、V.phoneを構えた宗谷が協力しようと声をかけるが、ブラックシスターは血気迫る眼差しで宗谷を睨み付ける。
「手伝いなんていらない! こいつは私が………倒す!」
感情をあらわにしたブラックシスターがさっきのお返しと言わんばかりにブレイブに突撃しウィングユニットで飛行しつつ両手に持つ銃を撃つ。
銃口から放たれた光がブレイブを撃ち抜かんと迫る。
「………ふん!」
しかし、女神化した彼女の攻撃さえもブレイブは怯まず迎え撃っていた。
自分に迫るビームを両手に持つ大剣で文字通り切り裂いていく。
(遠距離がだめなら……!!)
遠距離からの射撃ばかりでは埒が明かないと判断したブラックシスターは一か八か接近して、至近距離からの射撃で勝負を決めようとする。
意を決して空中を滑るように移動し、銃のトリガーを引きながらブレイブとの距離を縮めていく。
「おい無茶すんじゃねぇ!」
「うるさい!」
銀時の制止を振り切りブラックシスターは攻撃を続ける。
距離が近づいた分、ブレイブも防御に乱れが見え始め、今は防御と回避で精いっぱいのように見える。
(行ける! このまま押し切れば!)
「エクス・マルチ……!」
ブラックシスターが強力な一撃を放とうと銃口にエネルギーをチャージする。
「離れなさいユニ!!」
唐突にノワールの切羽詰った声が聞こえてきた。
その瞬間、彼女の声に感化され一瞬だけ思考を落ち着かせたブラックシスターがあることに気付いた。
ブレイブの背中にある二本の筒状の何か、それが自分に向けられていることに…。
そして、その先端、ぽっかりと空いている穴に今にも弾けそうなほどにエネルギーがチャージされていることに……。
「しまった…!」
「吹き飛べ!!」
気付いたときにはもう遅い、ブレイブの背中にある二つの方針から光のエネルギーが迸り、ブラックシスターに迫る。
咄嗟に彼女も銃に溜めてあったエネルギーを解放し、迎え撃つも、照準が狂ったエクスマルチブラスターはブレイブの砲撃にかき消され霧散する。
爆音、そして同時にとてつもない衝撃がブラックシスターを襲う………。
はずだった……。
「え?」
体に伝わる衝撃が来たのは目の前からでなく、横合いからだった。
痛みは感じない、何者かに押されただけの衝撃によってブラックシスターの身体が横に流れる。
違和感を感じたブラックシスターが自分の横合いに割り込んだ何かに目線を向ける…。
「……お姉ちゃん!」
そこには、女神化したノワール、ブラックハートが大剣でブレイブの砲撃を防いでいた。
砲撃が放たれる直前、ノワールは女神化してブラックシスターに砲撃が直撃するよりも早くその間に割り込み、その攻撃を大剣で迎え撃っていたのだ。
激しい閃光のスパークが目前で瞬き、大剣を通して激しい衝撃がブラックハートの両腕に伝わる。
(なんて、力なの……いったいどこからこんな力が……!)
凄まじい攻撃力を誇るブレイブの砲撃を直に受け止めるブラックハートが恐れにも似た感情を募らせる。
ブレイブのこのパワーはいったいどこから来るのだろうか…。
「………己を盾にして妹を救うか、女神よ………その意気込みやよし、だが俺の悲願のため……容赦はせん!」
砲弾を受け止めるだけで手いっぱいのブラックハートにブレイブがそう言い放ち、腰だめに大剣を構えた。
すると、突然どこからか大剣の刃に赤く燃え上がる炎が纏わりつき、大剣を一瞬で文字通りの姿、炎の剣へと変える。
「秘剣、ブレイブソード!!」
燃えたぎる刀身を横薙ぎに一閃、縦に二閃、十字を切るように描かれた刃の軌跡が炎を纏いそのまま一直線にブラックハートへと迫る。
砲撃に意識を集中させている彼女にはこの攻撃を回避する余裕も、纏めて相殺する余裕もなかった。
激しい爆炎と煙がブラックハートを包み込む。
「お姉ちゃん!!」
「ノワール!!」
空中に立ち込めるもうもうとした黒い煙、そこから一筋の線が伸びる様に何かが地面に落ちた。
「かはっ………くぅ……ぁ」
今の攻撃をまともに受けたため、体中がぼろぼろの状態になりダメージを負ったノワールが地面を転がり、倒れ伏した。
彼女は体を震わしながらも両腕を地面につき、再度立ち上がろうとするもすぐに脱力して力なくその場に倒れこんでしまう。
「そんな……お姉ちゃん……!」
「………てめぇ!!」
自分を庇い、大ダメージを負ってしまったノワールを見て放心状態になるブラックシスター。
同じようにそれを見ていた宗谷も激しい闘志をたぎらせた状態で駆け出し、傷つき、倒れたノワールを庇うようにブレイブの前に立ちはだかると赤剣を呼び出して構える。
「………今度は、俺が相手だ!」
「………いいだろう、受けて立つ」
宗谷の目を見て大剣を構えるブレイブ。
敵にしては正々堂々とした立ち振る舞いだが、油断はできない。 今目の前にいるのは間違いなく敵なのだから………。
さっきまでの戦いでブレイブは並外れた戦闘力を持っているということは既に確認している
最初から全力で臨まないと苦しい相手になるだろう…。
宗谷は息を飲みながら左手でV.phoneを操作し、変身の体制に入る……。
――――ガチンッ
しかし、集中していた彼の思考は………いや、その場にいた全員の思考が突如として聞こえた異質な音に掻き消された。
咄嗟に宗谷はその音が聞こえた方角、自分の背後へと視線を向ける。
「………ノワール!!」
さっきまで倒れていたはずの彼女の名前を叫ぶ宗谷。
その視線の先には、確かにノワールがいる。
だが、両腕が胴体と一緒に鈍色の太いバンドの様なもので縛られているのだ、さっきの音はこれが原因だろう。
まだダメージが残る体を無理矢理起こされ、苦痛に顔をゆがめるノワール、彼女の背後には白衣に身を包んだ一人の男性が立っていた。
片目にモノクルと呼ばれるレンズをかけたその男はにやりと粘着質な笑みを口元に浮かべてノワールを見ている。
「クックック………よくやってくれましたブレイブ、まさかこうも早く女神様と出会えただけでなく、鹵獲すらできようとは………いやはや、さすがと言った腕前ですね」
「………“
ブレイブは男性を見るや否や構えていた大剣を下ろして彼を見つめる。
“Dr.トロイ”と言う名前らしいその男に宗谷はすぐさま食って掛かった。
「お前、ノワールに何してる!!」
赤剣の切っ先を向けて問い詰める宗谷だが、Dr.トロイはふん、と鼻で笑うと空いていた左手を上げて何かの合図を送った。
すると、いつの間にいたのか全身を黒いアーマーで包み込み、手に大型の銃を持ち武装した何者かが数人現れ、銃の照準を宗谷達に向けた。
「通達する、君たちは今完全に包囲されている……このまま抵抗することなく、投降しなさい」
「投降だと………ふざけんな!!」
宗谷がそんなことはお構いなしと言わんばかりに前に出ようとするが、彼の足元に一発の銃弾が放たれ、無理矢理その動きを止める。
「今のは威嚇射撃です、次はないですよ?」
「………!」
気付けば、放心状態になり近くに座り込んでいたブラックシスターの後頭部、そして銀時の背後には三人が並び同じように銃口を向け、いつでも撃てる体制になっている。
さらに、傷つき、倒れていたギャバンと日本一は既に取り押さえられており抵抗することはできない状態になっている。
「………トロイ、これはどういうつもりだ」
宗谷の背後に立っていたブレイブがDr.トロイに問いかける。
「工場に紛れ込んだものは俺に任せると言ったはずだぞ?」
まるで何も知らないと言いたげなブレイブ。
当のトロイは表情を一つも変えずにブレイブに曇りのない笑顔を向ける。
「少し予定が変わりました、あなたに通達するのが遅れてしまいましたが………この方々はここで捕らえます」
「………それが、俺の悲願のためにもなるのか?」
「ええ、もちろん……お約束しますよ」
宗谷達にはわからない二人の独自の会話を始めるブレイブとDr.トロイ。
トロイの言葉を受けたブレイブは少し渋るような動作を見せつつも、一歩二歩と前に出て片手で持っていた大剣をそっと、宗谷の首元に向ける。
「一緒に来い……」
少しでも抵抗すれば自分だけじゃなく、この場にいる全員が危ない。
宗谷は歯噛みしながらもそっと視線を目の前で力なくトロイに捉えられたノワールへと向ける。
「………わかった」
最優先はみんなの命だ。
今は大人しく、投降することを選んだ宗谷は赤剣をそっと下ろした。
悔しそうな表情を浮かべながらも幸福の意を示した宗谷の姿を、銀時はじっと見つめる。
そして、さりげなく自分たちに向けられている銃、そして宗谷の前に立ち、ノワールを右手に捉えているDr.トロイと言う男を見据え、最後にブレイブを見つめる。
「………」
その瞳が何を見つめているのかはわからないが、この時銀時はある違和感を感じていた。
(………こいつら)
「おーおー、どんな様子か気になってきてみたら、なんか面白いことになってんじゃねぇか」
宗谷達がいた場所から大分離れている場所で、クロワールが一部始終を高みの見物とばかりに見下ろしていた。
目的は器となる存在のブレイブだったのだが、思ってもみないものを見られたせいか興奮気味である。
「こりゃ、もう少しほっといてもいいかもな♪ いろいろ楽しめそうだ」
にやりと笑ってみせるクロワール。
「おい貴様! 俺の相手はどこにいる!!」
突如としてクロワールの背後から荒々しい声が聞こえた。
眉を潜めて後ろを振り返ったクロワール、そこには彼女の身体と比べると明らかにサイズが違いすぎる黒い巨躯をした何者かが片手で持った槍と斧が合わさったような武器、ハルバードを振り回していた。
「わざわざ俺をこんなところに呼び出しておいて、何もさせずに放置しておくとはどういうつもりだ!? 早く俺を戦わせろ……そのために俺をここまで連れてきたんだろぉぉぉぉぉぉぉぉお!?」
怒鳴り声を上げてクロワールに詰め寄ろうとするその黒い巨躯の何者かを彼女はひらりと躱し、顔の前にまで移動する。
「わーってる、わーってるって………ったく、なんでこいつはどこの世界でも頭ん中がバトルのことばっかなんだよ……」
「何か言ったか!? そうか、お前が相手をしてくれるのか!? そうか? そうなんだなぁ!!」
目の前にふよふよと浮かんでいるクロワールの翅を摘み上げて黒い巨躯が吠える。
「わ、わ、わ!? ちょ、待て待て待て! わかったから暴れるなよ! ちゃんと相手は用意してあるから!!」
「本当だろうな………なら、早くしろぉぉぉぉおおおおお!!」
危うくクロワールにハルバードが振り下ろされそうになるが何とか言いくるめることに成功し、何とか解放してくれたが摘まれた翅を気にしながらも彼女はほっと胸を撫で下ろすと、視線を宗谷達の方に再び向ける。
「もう少し見ておきたかったけど、しかたねぇか……はぁ、あ~、めんどくせぇなぁ……」
「早く……早く戦わせろ………でないと、体がうずいてしかたないだろうがぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」
「………こいつがこんなにめんどくせぇとはなぁ、まいっか」
クロワールはそう言うと、その黒い巨躯をした何者かを先導する形で移動を開始する。
「ああ、そうそう………お前の相手だけどな……ほれ」
その最中、黒い巨躯をした何者かの目前に一つの画像を見せる。
どういう原理かは知らないが、空中に浮かぶように表示されたその画像を黒い巨躯をした何者かが睨み付けるようにして覗き込む。
「こいつが………俺の相手かぁ?」
「ちょっと違うけどな、まあ、まずはそいつを捕まえてからっつーことだ」
表示されている画像に写っていたのは、白髪に白い花飾りをした小柄な一人の少女………。
シンシアだった。
この時、宗谷達の知らない所で、また別の新たな騒動が起きようとしていたのである………。
とにもかくにも………。
この日、俺は……いや、俺達はマッドサイエンティスト風の男に捕まりました。
いかがでしたか?
次回は、Dr.トロイと言う名の謎の男に捕まったノワールと宗谷達。
捕らわれの身となった者たちはそこで何を思うのか……。
次回をお楽しみください、それでは…。