いやぁ、今回のお話は難しかった……!
後半がけっこう難産でしたが、なんとか書きあがりました。
さてさて、そんなこんなで、今回のお話はファートゥスとの最終決戦!
メテオの前に現れた仮面の人物の実力とは!
そして、あとがきにて重大発表が!
それではお楽しみください、どうぞ…。
「さあ、対戦ゲームを始めようか………」
革のグローブをきつく嵌め直した、仮面の人物。
マットホワイトに赤のラインが特徴的なシンプルな仮面“だけ”が異様な存在感を放つ人物の見せた、その行動にファートゥスとメテオの両方が驚いていた。
何せメテオを圧倒した程の攻撃力を誇るファートゥスの拳を片手で受け止めたのだ。
普通の人間ならできる技ではない。
『………うらぁ!』
一撃を止められたファートゥスはまさかと思ったのか、二撃目の拳を打つ。
だが、仮面の人物はその攻撃も同じように片手で受け止めてしまった。
『ざけんなぁ!!』
連続で止められたことに対し、ファートゥスは怒りを感じたのかさっきよりも血気迫った声で叫び、さらにもう一発、拳を繰り出す。
さっきよりも遥かに速度が上がった拳、どうやらさっきまでの攻撃は力を抑え気味に放った攻撃だったようだ。
当たれば一溜りもなさそうなその一撃は、周囲の空気を裂かんばかりの鋭さでまっすぐに仮面の人物に迫る。
だが、その攻撃でさえも目の前にいる仮面に当たることはなかった。
素早く身を屈めてその一撃を躱したのだ。
そして、すぐさま腕を振り上げてファートゥスの顔へとまっすぐにその腕を打ち出す。
しかし、その一撃はファートゥスに反撃を与える、攻撃ではなかった。
『っ!?』
「………」
ファートゥスの鼻先でぴたりと止まった仮面の人物のグローブに包まれた手の平。
ぴたりと止めただけで、ファートゥスのダメージを与えないこの行為にファートゥスも動揺したのか動きを止めてしまった。
『………ふざけんなよ、テメェェェェエエエエ!!』
遂に激昂したファートゥスが咆哮と共に怒りを込めた連撃を立て続けに撃ち始めた。
拳だけでなく、蹴りまで加わった狂気的な怒涛のラッシュ。
しかし、それでも仮面の人物は動揺する素振りを見せず、たまに防御を交えつつ、確実にその攻撃を回避していた。
顔面に迫る拳を身を横に倒して回避し、胴体を狙った回し蹴りはバック転で躱し、足元を狙った足払いには側宙で対処し、ダメージを受けないように動き回っている。
まるで軌道を読んでいるかのようなその流れるような動きに、一瞬だがメテオは見入ってしまった。
「………!」
そして、次々に攻撃を繰り出され続け、回避か防御に徹していた仮面の人物が再び動いた。
繰り出されたストレートパンチを横に流し、再びファートゥスの顔面に向けて腕を伸ばす。
だが、今度のこの行動も攻撃とまではいかずに鼻先でぴたりと止めるだけに押し留まった。
対するファートゥスだが、目前に再び広がった仮面の人物の手の平を前に、動きを反射的に止めてしまっている。
まるで、目の前に現れた獣の行動を窺っているように……。
そう、これは攻撃ではない、“威嚇”だ。
次にそちらが攻撃の意思を見せれば、自分はいつでもこの手を拳に変えて、打ち出すことが出来る。
そう言い現わしているような威圧感を、仮面の人物はこの威嚇でファートゥスに与えているのだ。
しかし、メテオは一連の彼の動きを見てこの行動が何を成しているのか理解できずにいた。
いくら防御力や回避力に優れていても、攻撃を繰り出さねばファートゥスは倒せない。
なのに、なぜ目の前の仮面は攻撃をせずにいるのか。
『………何者だ? お前』
自分に対して威嚇の意味を込めた手の平を向けている仮面の人物に対して、ファートゥスはそう問いただした。
しばしの沈黙、そして、返ってきたのは…。
「………“魔神”だよ」
メテオにとってはあまり馴染みのない言葉だった。
魔神、一体その言葉が指し示す意味が何なのか、メテオが脳内で整理していると…。
『魔神………だと?』
自分の攻撃を受け止められ、威嚇によって動きを止められていたファートゥスの声が若干上ずったものになっていた。
焦りからくるものではない、喜びを堪えようとしたが、堪え切れずに出てきた、そんな感じの声だった。
『………そうか、そうか、そうか……なら、この強さにも納得が行くぜ…そんな中途半端すぎる格好なのによぉ………えぇ? ヴィクトリオン・ハートさんよぉ!』
仮面の人物、そう、彼こそが、魔神 ヴィクトリオン・ハート。
彼はそれに対しては何も返すことなく、尚も威嚇の意思を込めた手をファートゥスに向け続ける。
だが、ファートゥスは荒々しくその手を払うとさっきとは打って変わった高揚した声でヴィクトリオン・ハートに迫った。
『上等だ……なら、その魔神様の力を俺の物にしてやる、こっからは本気の本気で相手してやんよぉ!!』
ファートゥスが叩きつけるようにそう言い放つと、手刀を作りそれを高く振り上げた。
先程の戦いでメテオに繰り出していた技、“ライダーデスサイズ”と呼ばれるチョップだ。
あの攻撃の威力は先程までの攻撃の比ではない、回避するには対応が遅いし、受け止めるにしては多少の危険を伴う。
次の瞬間には、ファートゥスの手刀がまっすぐに振り下ろされた。
直後に聞こえた鈍い音。
何かがぶつかったようなその音は、攻撃が当たったことを物語っていた。
『ご………がぁっ!』
ヴィクトリオン・ハートが直後に放ったもう片方の腕の拳が、ファートゥスの鳩尾に打ち込まれた。
あまりにも早すぎた、ファートゥスが攻撃を繰り出そうとしたのに対し、ヴィクトリオン・ハートが放った拳はそれが当たるよりも早く、正確にファートゥスの急所を狙い、しかも相当なダメージを与えたようだった。
振り下ろそうとした手刀を解き、両手で腹部を抑えて蹲るファートゥス。
その横をヴィクトリオン・ハートが悠然と通り過ぎ、メテオへと近づく。
「………立てる?」
「え? ………あ、ああ」
差し出されたその手に、メテオは反射的に自分の手をなんとか伸ばした。
すると、ヴィクトリオン・ハートはその手を握り、そっと彼を引き上げるようにして起こした。
ダメージが残っていた影響なのか、ふらりとよろめいたメテオだったが、ヴィクトリオン・ハートがその体を咄嗟に支える。
「相当やられたみたいだね…」
「………俺よりも…あの子が…」
そう言うとメテオは視線を自分とファートゥスから少し離れた場所にいるシンシアへと向けた。
骨を折られたことによる痛みに苦しみ、未だに倒れ込んだまま身を震わせて呻いている彼女、その姿を見たメテオは彼女をあんな目に会わせたファートゥスへの怒りと自分へのふがいなさから強く歯ぎしりをする。
同じようにヴィクトリオン・ハートもその視線を彼女へと向けた。
「………君は、あの子を……シンシアを守ろうとしてくれたんだね」
ヴィクトリオン・ハートは仮面の下でそう言うと、メテオに向き直った。
仮面で表情は読み取れないが、その声色は怒りとかそう言う負の感情は含まれているような感じではなかったように、メテオは感じた。
「………あんたは…あの子のことを知ってるのか……?」
そう問いかけたメテオに対して、ヴィクトリオン・ハートはこくりと頷くだけだった。
と言うことは、彼はシンシアの言っていたみんなの内の一人なのだろうと、メテオは直感的に感じた。
「………すまない、俺がいたのに……シンシアに、あんな怪我を……!」
だからこそ、彼女に大怪我をさせたことに対する申し訳なさでメテオは押しつぶされそうになった。
彼になら、何を言われても仕方ないと思った、どんな咎めも受ける気でいた。
「君は悪くない」
だが、返ってきたのは暴言でも、罵詈雑言でもなく、手に感じる優しく、それでいてしっかりと感じる握力と優しげな言葉だった。
「君はあの子を助けようとして、必死に戦ってくれた……その怪我を見ればわかるよ」
「………でも俺は!」
「自分を責めてもしかたない、それに………まだ彼女は助かる」
「え? どういうことだよ…?」
突然の言葉に、メテオは彼に対してすぐに質問を返した。
すると、彼は再び視線をシンシアの方へと向けた。
それにつられてメテオもそちらを向く。
その視線の先には、いつの間にいたのか彼女よりも年下の小さな少女がシンシアに近づき彼女に寄り添うようにすぐ傍に座っている光景が見えた。
その少女はステラだった。
ステラはこちらに気が付くと、こくりと頷き、ヴィクトリオン・ハートもそれに答えるように頷き返した。
そして、ステラは両手を前に突き出すと、その手の平をシンシアの両足に当て目を瞑った。
すると、どうしたことか、シンシアの脚に翡翠色の光が灯ったではないか。
いや、正確には包み込んでいると言った方が正しいだろうか。
「あれは………」
「あの子、ステラの力だよ……ステラには分子レベルで物質に変化を促して、物を“構築”する力があるんだ」
「構築?」
「うん、その力の使い方をちょっと変えれば折れた骨を再び元通りに組み合わせることもできる」
「そんなことが出来るのか!?」
「ただし、出来るのは骨を元に戻すだけでそれに伴った痛みまでは治せない、応急処置みたいなものだよ」
ステラの能力、“ロボティックスキル”。
ヴィクトリオン・ハートの言う通り、彼女には物を構築する能力があり。
僅かな材料となる物質があれば、それを再構築して新たな物へと再構築できる能力を有している。
実際に、TGSの時にマジェコンヌが駆っていたロボを無理矢理改造したのもこの能力によるものだ。
そして、折れた骨も骨そのものが残っていれば再構築して繋ぎ直すことも可能なのである。
ただし、痛みは完全には消えない。
骨折による筋肉への痛みは多少なりとも残る。
だが、これでシンシアの怪我も幾分かましになったのか、痛みに耐えていた表情がさっきと比べると妙に落ち着いた雰囲気を取り戻しているように見えた。
「………後は、あいつを何とかしないとね」
ほっとしたのもつかの間、ヴィクトリオン・ハートはそう言うと今度は視線をさっきまで鳩尾に受けたダメージで蹲っていたファートゥスへと向ける。
『まだだ…こんなんでまだ俺は……諦めはしねぇ!! お前をここでぶっ潰して、なんとしてでもその力手に入れてやらぁ!!』
ダメージから回復したのか、ヴィクトリオン・ハートとメテオを睨み付けるように向き直ったファートゥス、対してヴィクトリオン・ハートはメテオの前に出て再度、ファートゥスと対峙する。
しかし、一度だけちらりと後ろを振り向いた。
「………君、名前は?」
「………メテオ……メテオ・ソルヒート」
「メテオ………強そうな名前だね、かっこいいよ」
ヴィクトリオン・ハートはそう言うと再び視線をファートゥスの方へと戻した。
「メテオ君、僕は訳があって本気で戦うことが出来ない………回避や防御は出来ても、本気の攻撃が出来る回数が限られているんだ」
彼はそう言いながらグローブに包まれた手を握り絞めて、拳を作る。
「だから、悪いと思うけど君にも、もうちょっと手伝ってほしいんだ……だから……」
ヴィクトリオン・ハートはこちらに振り返ることなく言葉を続ける。
言葉とは別に伝わってくる、強い思いを彼の後姿からみて感じながら、メテオはその言葉を一言一句漏らさないように聞いた。
「………一緒に、戦ってくれ」
その言葉を聞いた瞬間、メテオはダメージが残る体に鞭を入れて強く、そしてしっかりと前に出た。
「当たり前だ、あいつは俺の影であり、俺が倒すべき相手でもある……だからこそ、責任取って最後まで戦うさ」
『……マスターがそう言うのなら、私も最後までお供します』
「………ありがとう、メテオ君」
ヴィクトリオン・ハートの隣に並び立ったメテオは、強く、そしてしっかりとその足で大地を踏みしめる。
目前にいる因縁の相手、ファートゥス。
例え、ここが違う世界であろうと……。
例え、蘇ったとしても……。
例え、力及ばない相手だとしても……。
何度でも立ち上がり、何度でも喰らい付き、何度でも戦う。
世界が違っても、この世界の生きる者たちの平和を脅かそうとするなら、負けはしない。
「ファートゥス………ケリをつけようぜ」
『兄弟ぃ………テメェも纏めてぶっ潰してやるぜ』
仮面ライダーとして、一人の戦士として……。
「ライダー………変身ッ!!」
意を決して、メテオは再び口に出す。
戦う覚悟を決め、自分の姿を変えるためのあの言葉を……。
「………ぅ」
脚に走る激痛のあまり、意識を失いかけていたシンシアはふと目を覚ました。
さっきまで自分の両足に広がっていた激痛が幾分か和らいでいたからである。
一体どうしてかと、身を起こして確認しようとするシンシア、すると彼女の視界に見覚えのある顔が映った。
「ロボ……ちゃん……」
ステラの顔だった。
ステラはいつも通りの無表情で彼女を見下ろすと、そっと彼女の上体を起こす。
「まだ、立たない方がいい………痛み、はしばらく続く」
そう言われたシンシアは今先程、ファートゥスによって折られた自身の脚に目を向ける。
見ると、無残に折れ曲がっていた脛骨の部分がまっすぐに戻っていた。
ステラの能力で繋げてくれたのだと、瞬時に理解したシンシアはステラにお礼を言おうと顔を向ける。
「………助けてくれたの?」
「………一応、あなたも……仲間」
「………ロボちゃん」
ステラの言葉にシンシアは微笑みを見せた。
「………笑ってる、暇はない………」
それに対して、ステラはそう言い捨てると目線を別の方向に向けた。
彼女の見つめる視線の先では………。
「『おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!』」
ぶつかり合う、白銀と黒の拳。
お互いの胸部に同時のタイミングでぶつかり合ったその拳、メテオの変身した仮面ライダーストームと黒のライダーの姿をしたファートゥスがまだ戦っていたのだ。
そして、
「メテオ君、下がって!」
自分にとって、忘れられない仮面を被り、彼と共にストームと共にファートゥスに立ち向かっている、彼の姿も見て取れた。
今の一撃でダメージに耐えきれなかったのか、よろけたストームと入れ替わるように前に出たヴィクトリオン・ハートが追撃で繰り出されたファートゥスの拳を受け止めて押し返す。
そして、すぐさま身を屈めたヴィクトリオン・ハート。
その上を、ストームが飛び越えてファートゥスに跳び蹴りを見舞う。
「てぇぇえええええええ!!」
『ぐぉっ!? ……ちぃぃ!』
二人のコンビネーション攻撃に後ろに押されたファートゥス。
防御と支援はヴィクトリオン・ハートが、攻撃はストームが中心となり、先程まで苦戦していたファートゥスに対してストームは互角に渡り合えていた。
既に体に大きなダメージを抱え、次に痛烈な攻撃を喰らえば危ない状態に変わりはない。
だが、防御はすべてヴィクトリオン・ハートが担ってくれているおかげで自分は攻撃に集中できる。
『調子に乗るなよぉ!!』
押され気味だったファートゥスは自身の能力、軟体体質で伸ばした腕を二人に伸ばし、遠距離からの強襲を仕掛ける。
二人はこの攻撃に対し、左右に分かれるように回避するが鞭のようにしなるファートゥスは二人を追い詰めようと容赦なく攻撃範囲を広げる。
「………しかたない!」
このまま回避に徹底していても、ストームが回避しきれるかどうかを危惧したヴィクトリオン・ハートは一か八か前に出る。
襲い来るファートゥスの腕を前受け身やジャンプで躱し続け、徐々にファートゥスとの距離を詰めていく。
そして、前転宙返りを切り、一気に距離を埋めて懐へと潜り込むと再びファートゥスに向けて威嚇の意思を込めた手の平を向ける。
『へ、同じ手が!』
だが、もうその手は食わないとファートゥスがヴィクトリオン・ハートの腕を払おうとした瞬間。
「ハッ!!」
その手が掌底となってファートゥスの顔面を捉え、打ち据えた。
とてつもない強度を誇る壁にぶつかったような衝撃が急に襲い掛かってきたため、ファートゥスは攻撃の手を緩め後ろによろける。
そして、その隙を見逃さずストームが追撃を掛ける。
「ライダー………パァァァァァンチ!!」
ファイターフォームの渾身の正拳突きがファートゥスの胴体に突き刺さる。
そしてそれだけにとどまらずに、ストームは拳を二度三度と立て続けに撃ち続け、とどめの蹴り込でファートゥスを後ろへと押し込む。
『うごぉぉぉぉぉぉ………ぉぉ……おぉ…!』
それによって後ろに吹き飛ばされるファートゥス、肩で息をしながらストームが再びヴィクトリオン・ハートと並び立つ。
そして、互いを見合わせると深く頷いて再びファイティングポーズを構えた。
その様子をシンシアは息を飲んでみていた。
片や既にボロボロのストームと、片やまともに戦うことが出来ない体のヴィクトリオン・ハート。
今でこそ圧倒しているように見えるが、今の状態ではファートゥスに決定的な一撃を与えることが出来ない。
ヴィクトリオン・ハートへの負担と、ストームの姿を見る限り今の状態が長く続けば後々苦しくなってくる。
だが、もうやめてと言ったとしても、二人は戦うだろう…。
シンシアには理解できた。
今の二人は必死になって戦っている、理由は何であれ再び立ち上がった以上、もう引くという考えは捨てているはずだ。
現に今も戦う意思を見せている。
もう、後には引けない…。
「………でも、このままじゃ………」
「……時間、の問題」
不安な表情を浮かべ始めたシンシアと眉を潜めたステラ。
何か、何か打開策はないのかと考え始める。
すると、ある考えが彼女の中で浮かんだ。
だが、この方法は彼女にとってあまりやりたくない方法だ、この力は自分がさんざん誰かを苦しめ、痛みを与え、恐怖を刻んできた呪われた力。
シンシアは今も尚この力を使うことに躊躇いを感じている…。
この力を使うと、あの時の自分が蘇っているようで怖くなるのだ。
彼女の中では、未だに過去の自分と根強い関係を結んでいるこの力が深い、深い恐怖の証として刻まれているのだ。
―――変わるんだシンシア……“変身”だよ。
だがその時、ふと彼がさっき自分に向けて行った言葉が脳裏に浮かび上がってきた。
「………変わる」
ふと彼女の脳裏で、自分の周りにいる今の仲間の姿が思い浮かぶ。
ライラ、ヤエ、ステラ。
三人とも、昔は今の様な関係ではなく、敵同士だった。
だが、この世界の行く末を見守ると決意したあの時から、変わっていった。
今までの自分を見つめ直し、新たな自分へと……。
それに対して、自分はどうだ…。
未だに過去を引きずっている自分は変われているのか?
答えは否だ。
現に今も、力に対して恐怖を感じている、過去の自分に恐れを抱いている。
でも、それでも………
「………変わる」
いつまでも怖がっていてはダメだ、自分の周りにいるみんなは変わっていった。
変わろうと決意した、その中で自分はただ過去の自分から目を反らすだけだった。
この力に対しても……。
でも、もうそんなことは言っていられない。
自分も変わらなければ、意味がない。
自分がなぜ今もこうして生きているのか、それは彼と同じ道を歩むと決めたからではないのか。
なら、変わらなければいけない。
過去を受け入れ、前に進むために…!
「わたしも………変わる!」
強い決意の意思を固めたシンシアは両手を組む。
「………お願い……力を、貸して……!」
すると、その手から眩い光が溢れ出した。
ファイティングポーズを構えるストーム、ファートゥスを睨み付けるようにその複眼で見据え、様子を窺う。
先程と比べればこのまま押し切れるかもしれない、だがやはりファイターフォームでは限界がある。
ここは多少無理をしてもまたデストロイフォームを使うか……。
彼がそう考えていると…。
「っ!」
ふと、自分の体が発行し始めたのだ。
淡い白の光を帯び、それが徐々に体に染み込んでいくように広がっていく。
そして、それと同時に感じる変化の兆し………。
(力が………溢れてくる)
今までに感じたことのない、力が全身に広がり、膨れ上がるようなこの感覚。
圧倒的な存在感を放ちながらも、それは優しく温かいものだった。
『マスター、ファイターフォームのパワーゲインが通常よりも遥かに増大しています……これはいったい……』
相棒のデスティニーにも理解できないこの現象、一体自分に何が起きているのだろうか……。
すると、それに気づいたヴィクトリオン・ハートがある方向へと視線を向けた。
「………どうやら、あの子も君を助けたいみたいだ」
彼の発言に、ストームは何を言っているのかと疑問を感じ、答えを求めて視線を彼と同じ方向へと向ける。
その視線の先には………。
「シンシア……!」
同じように体から白い光を放つシンシアの姿があった。
祈るように手を組み、目を瞑る姿は神々しく、それでいて温かみを感じる姿だった。
膨れ上がる力、すべてを乗り越えることが出来そうなこの湧き上がるパワー…。
これは彼女が自分にもたらしている現象なのかとストームは感じ取ると、右の拳を強く握りしめる。
体のダメージとは裏腹に、今まで以上の力が溢れてくる、デストロイの比じゃないこのパワーなら………。
「……僕の方も次の一撃が限界だ……これで決めよう」
「………ああ!」
彼女の思いを受け、強く頷いたメテオはヴィクトリオン・ハートと共に、再びファートゥスへと向き直る。
『舐めやがって………こうなりゃ、纏めて吹き飛ばしてやらぁ!!』
対するファートゥスは両手を広げて、その手の平から凄まじい勢いの炎を発生させている。
パイロキネシスを打ち出すつもりのようだ。
だが、それで立ち止まるわけにはいかない。
「行くぞ!」
ヴィクトリオン・ハートの合図と共にストームは走り出す。
それと同時に体を包んでいた光が下へ下へと集まり始め、その光は集中し眩い白銀の光となってストームの右足を包み込んだ。
『燃え尽きろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!』
燃え上がる両手を前に突き出し、パイロキネシスを発動するファートゥス。
走り出した二人の足元や空中が爆発し、燃え上がる炎が二人を飲み込もうとする。
だが、二人はそれを物ともせずに走り抜け、互いにタイミングを合わせて地面を思い切り蹴り、高く、高く跳躍した。
『ちぃぃ!! うらぁあああ!!』
それに対抗してファートゥスも同じように高く跳躍する。
右足に漆黒の炎を纏わせたダークネスライダーキックで迎え撃つつもりのようだ。
ストームとヴィクトリオン・ハートの二人は空中で前転宙返りを同時に切り、互いの右足を思い切り前に突き出す。
『Strompower! Rimit break!』
デスティニーから電子音が鳴り響き、ストームの右足がさらに輝きを増す。
「限界突破!! ライダーヴィクトリーキィィィィィィィィィィック!!」
「はぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」
打ち出された二人のダブルキックがファートゥスのダークネスライダーキックとぶつかり合う。
押し合い、激しいエネルギーのスパークが巻き起こる。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」」
だが、負けるわけにはいかない。
裂帛の気合いを迸らせ、ストームとヴィクトリオン・ハートがキックにさらに力を込める。
すると、それに合わせて光がより強くなり、二人の脚がファートゥスの脚を押し返した。
『何だとっ!?』
そして、そのまま二人のキックは流星の如く宙をかけ、ファートゥスの体を突き抜ける!!
地面に着地したストームとヴィクトリオン・ハート、身を屈めた状態で顔を俯かせる。
『お、俺はぁ………無敵の体を………あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!』
ファートゥスの断末魔を背に、凄まじい爆風が二人の背中を押した。
「言っただろう、君は弱いって」
ストームの隣にいたヴィクトリオン・ハートはそう言うと振り向くことなく立ち上がった。
「その力は君自身の力じゃない……模倣の体と、欲望では……本当の強さは得られない」
これで終わった。
この世界に現れたファートゥスの思念体は、これで消滅したはずだ。
ストームはそう思って胸を撫で下ろすと、変身を解き、立ち上がった。
後ろを振り返ると、そこにはファートゥスが乗り移っていた黒い仮面ライダーの姿はなかった。
あるのは僅かに地面に落ちている鉄くずだけだった。
「やったね」
ヴィクトリオン・ハートがそう言って、顔を包んでいた仮面を脱いだ。
顔を隠すものが無くなり、その素顔が露わになる。
「ああ……あんたのおかげでなんとかあいつに勝てた……ありが……っ!」
彼に向き直り、お礼を言おうとしたメテオだったがそこで驚愕に目を見開いた。
「あんた……その顔……!」
メテオが驚いたのは彼の顔に起きていたある減少だった。
彼の顔の半分がチラチラとノイズが走っているように乱れている、しかも茶髪の髪の色も変わっていて黒く染まっている。
「あ………やっぱり、多少なりとも影響が出るみたいだね」
「あんた……一体……」
「………いろいろ事情があるんだよ、いろいろね」
そう言うと、ヴィクトリオン・ハートはそのノイズが走っている部分を隠すように再び仮面を被る。
影響、とはどういうことなのか。
戦いの際に、本気の攻撃が出来る回数が限られていると言っていたのと何か関係があるのだろうか…。
疑問に頭が包み込まれるメテオ、だがヴィクトリオン・ハートは何も言わずに仮面の下で彼を見つめ続けた。
「ごめんね、違う世界の人間である君にも言うわけにいかないんだ、何が起こるかわからないからね」
「………そうか」
「うん、あ、それよりも……」
ヴィクトリオン・ハートは話を途中で斬るように視線を横に向けた。
すると、その先にはいつの間にここまで来ていたのかステラがシンシアの体を支えながら二人のそばまで来ていたのだ。
まだおぼつかない足取りながらも、ステラに支えられながら二人に近づくシンシア。
「あっ……!」
「シンシア!」
しかし、足を取られてシンシアが前のめりに倒れそうになる。
「危ない!」
だが、その体をヴィクトリオン・ハートがすぐさま支えた。
転ばずに済んだシンシアはヴィクトリオン・ハートの仮面に包まれた顔を見つめる。
「………ごめん、シンシア……来るのが遅くなって」
「……大丈夫……だって、あなたは来てくれた……信じてたから」
「………シンシア」
ヴィクトリオン・ハートは彼女の体をやさしく抱きしめる、その姿はまるで親子のように見えた。
しばらく抱擁を続けていた二人だったが、シンシアが彼から離れて今度はメテオに向き直った。
「………シンシア……俺、お前を……」
メテオは彼女に痛い思いをさせたことに対しての罪悪感から、謝ろうとした。
だが、それに対して、シンシアは首を振って彼の言葉を遮った。
「………気にしてない、あなたのおかげで、わたしも……変わることができた………気がするから」
「シンシア………」
そう言うと彼女は、おぼつかない足取りでメテオに近づきそっと彼に抱き付いた。
「………ありがとう………メテオ」
「………それはこっちのセリフだよ………ありがとうな、シンシア」
ヴィクトリオン・ハートと同じように、抱擁を交わす二人。
あの時、シンシアの力がなければメテオはファートゥスに勝てなかったかもしれない、これは二人の出会いによってできた繋がりが起こした勝利なのだ。
しばらく抱擁を続け、離れた二人はどちらからともなく微笑みを交わす。
その様子をほほえましく見守るヴィクトリオン・ハートとステラ。
すると………。
「っ!」
突如、メテオの体が白い光に包まれ始めたのだ。
突然の事態に驚くメテオ、その光は徐々に彼の体を包み込む。
「………どうやら、君が元いた世界に帰る時が来たようだね」
自分を見つめるヴィクトリオン・ハートの言葉を聞いてメテオはその意味を理解して、落ち着きを取り戻した。
だが同時に名残惜しい気持ちにもなった。
「ってことは……これで、お別れってことか」
そう呟き、メテオはシンシアへと視線を向ける。
シンシアもメテオを見つめ、どこか寂しそうな表情を浮かべている。
そんな彼女の頭をメテオは優しく撫でてやると、安心させるために優しく微笑んだ。
「……そんな顔するなよシンシア、確かに寂しいけどよ……いつかまた会えるって」
「………ほんとう?」
「ああ、信じてればきっと……な」
彼の言葉に、シンシアは寂しそうな表情を微笑みへと変えて小さく頷いた。
そして、今度は視線をヴィクトリオン・ハートへと向ける。
「………あんたのことはよくわからなかったけど、でもこれだけは言える………あんたはいいやつだ、それは間違いないと思ったよ」
「………ありがとう、メテオ君……君を呼んだのは間違いじゃなった……なんだか君は、彼と似ている気がするからね」
「?」
最後に意味の分からないことを言われたが、メテオはあまり追求しないようにした。
「メテオ君、この繋がりはきっと無駄な事じゃない……人の繋がり、“絆のリンク”は何よりも勝る大きな力となる……いつかまた出会えることを、楽しみにしているよ」
彼のその言葉を最後にメテオの視界は一気にホワイトアウトした。
残されたヴィクトリオン・ハートとシンシア、ステラの三人はさっきまでメテオがいた場所を見つめていた。
予期せぬ出会いから始まった今回の大騒ぎ、でも、それはきっと何かが齎した運命の出会いなのかもしれないと、感じながら。
「……さて、僕たちも帰ろうか……ステラ、ライラとヤエは?」
「ギガントールとSARUTOBIを、呼んで……先に帰らせた……たぶん今頃手当て、をしているはず」
「そうか、じゃあ、早く帰って手伝ってあげないとね」
「ひゃっ!?」
ステラに確認を取ったヴィクトリオン・ハートはそう言うと、シンシアに近づき彼女の体を抱き上げた。
さりげなくお姫様抱っこで抱き上げたのはただ単にその方が彼女への負担が少ないかな、と考えた結果である。
「あう……あう……ぅ」
いきなりのこの行為に顔を朱色に染めて言葉を濁らせるシンシア。
さすがに急にこうされるのは、いくら彼でも慣れていないし、心の準備と言うものが必要なのである。
そんな彼女を見て、ヴィクトリオン・ハートは仮面の下で微笑みを浮かべる。
すると、彼はここであることに気付いた。
「あれ? シンシア、髪飾りは?」
さっきまで彼女の白い髪にあったはずの花飾りが無くなっていたのだ、それに対してシンシアは何気なく髪飾りのあった場所を手で撫でると、僅かに微笑みを浮かべた。
「帰ってきたのか」
『そのようです』
一方、メテオは無事に元いた場所、プラネテューヌ教会のバルコニーに帰ってきた。
何気なく空を見上げるメテオと彼の言葉に答えるデスティニー。
今回の短かったようで長くも感じるこの出会いを通して、彼は何を感じているのだろうか。
「………?」
ふと、彼が自分のパーカーのポケットに手を入れた瞬間、その中に何かが入っていることに気付いた。
何かと思い、メテオがそれを取り出すと………
「これは………」
それは、シンシアの髪にあった白い花の髪飾りだった。
―――約束だよ………。
まるで、そう言うメッセージが込められた様にも感じるその花飾りを、メテオは見つめ続けた。
こうして、異世界の仮面の戦士と世界を見守る側になった魔神との出会いは、幕を閉じた………。
だが、これがまた新たな物語の始まりとなることを、彼らは知る由もなかった………。
辺りは夜の闇に包まれ、人気が無くなった遺跡。
底の奥深くで、メテオによって倒されたジャッジが力なく壁に凭れかかっていた、既に意識がないのか、沈黙しているジャッジ。
そこに、一人の少女が近づいてきた。
クロワールだ、彼女はにやりと笑みを浮かべるとジャッジの体に近づく。
「へへっ♪ うまくいったうまくいった、最初からあいつが狙いじゃなくて本命はこのデカブツだったんだよ」
クロワールはそう言うと、ぱちんとフィンガースナップを鳴らしてある物を呼び出した。
怪しげな光を放つ球体が、彼女の前に現れて左右に飛び回り始める。
「ほらよ、念願の新しい体だぜ? 四天王をそろえるためにわざわざあいつらにまでちょっかい掛けたんだ、早く転生しろよ」
彼女の言葉を受けて、発行体はジャッジの体に近づきその中へと入り込んだ。
すると、ジャッジの体が光に包まれ、徐々にその体を変質させ始める。
大きい黒い巨躯が伸縮し始め、がたいのいい、屈強な肉体を持つ人間代の大きさに変化する。
丸みを帯びた強固な鎧に身を包み、片手には棘が付いた鉄球が先端に付いた槍、モーニングスターが握られており、頭にはチェスの“ビショップ”を思わせる兜をかぶっている。
「転生完了………“ジャッジ・ザ・ビショップ”………」
荒々しい口調ではなく、どこか落ち着いた口調に変わったジャッジ、ジャッジ・ザ・ビショップがモーニングスターを地面に突き立てる。
「おーおー、雰囲気がだいぶ変わったな……まあ、これで四人全員が揃ったわけだな、なあ?」
その様子を見て満足げなクロワールが後ろに振り返る。
彼女の背後には、一人の人影がいた。
毒々しい赤と黒のドレスを思わせる作りをした鎧に身を包んだ女性、顔を西洋の兜を思わせる仮面で隠し、チェスのクイーンの駒を思わせるちぃあらを頭に乗せた血のように赤いツインテールのその人物は持っていた巨大な鎌を地面に突き立て、俯かせていた顔を上げる。
「“マジック・ザ・クイーン”、これで四天王が揃ったぜ」
「わかっている………協力、感謝しよう」
マジック・ザ・クイーンと呼ばれた女性はジャッジ・ザ・ビショップの前に立つ。
「すべては………新・犯罪神様の作り出す、新たな世界のために」
とてつもなく、強大な闇が、動き始めようとしていた。
いかがでしたか?
いやぁ、二回目のコラボとなって楽しいやら難しいやらで大変でしたが充実したお話が書けました!
そして、このお話がトリガーとなり、四天王が揃いました。
次回、四天王が揃い、異変が起こり始める…。
そして…。
このネプおばのお気に入り件数がいつの間にやら150件を突破しました!
こんな作者の趣味全開の作品を見てくださって本当にありがとうございます!
さて、そんな中ですがこれがそれを祝ってのものになるかどうか怪しいのですがちょっとばっかし、あることを発表しようと思います。
白宇宙、新作二次創作、始動!
はい、いろいろあると思いますが、満を持して新作を今現在書き始めています!
ネプおばと並行して書いていこうかなと思っているこの作品、結構前から考えていたもう一つの主力作品の一つなんです。
物語の舞台となるのは、学校!
初めての学園ものに挑戦させていただきす。
そして、見所は………あのキャラが! このキャラが! まさかの登場!
はい、今作も多重クロスを含んでおります。
ただ、キャラだけです、キャラだけ出てきます。 ちょっと問題を含んでいますが………。
さて、そんな白宇宙の勢いに任せた学園系二次創作。
近日、更新予定です。