今期のアニメはなかなか期待できそうだなぁ、自分的な一押しは城下町のダンデライオン。
茜ちゃんかわいいなぁ…そして、僕は人見知りキャラが好きなんだと改めて実感…。
しかも、茜ちゃんの声優さんがプルルートと同じ花澤香菜さんだし、まさに僕得。
まあ、そんなことより!
今回のお話は前回怪我をして教会に送られることとなったファルコムと宗谷達が邂逅、果たして彼女が語ることとは…。
それではお楽しみください、どうぞ!
―――ここは、どこだろう?
そこは彼女にとって見覚えのない場所だった。
深い森の中のさらに奥、人気のない場所で彼女は一人彷徨い歩いていた。
気配も、音も、自分以外の存在をまるで感じないような静かな森の中、鬱蒼と茂る木々の間を彼女は一人歩き続ける。
木々が生やしている枝の間から見える空は、心なしかどんよりとした重みを感じさせる。
と言うよりも、まるでこの場所、この空間そのものが息づいていない無機質な物の様な冷たさを含んでいる様だ。
そんな居心地の悪さを感じつつ、彼女は一人、一刻も早くこの空間から逃げ出そうと歩き続けた。
闇雲にでも歩いていれば少しでも状況が変わるはずだ、彼女がその可能性に掛けてから何時間が経過しただろうか…。
ふと、どこからか話し声が聞こえてきた。
今まで誰もいなかったはずのこの森の中で、初めての自分以外の気配と声、無意識のうちに彼女はその方向に駆け出していた。
地面から飛び出している太い木の根を乗り越えて、地面を敷き詰める枯れた落ち葉と枝を踏みしめて、彼女はその声が聞こえた方向を目指した。
ここはどこなのか、どうすればこの森から出られるのかを聞くために……。
ただその一心で声が聞こえる方角に向かった彼女、だが、そこで待っていたのは……。
―――………え?
普通なら考え付かない光景だった。
いや、想像すらしない光景と言った所だろうか。
目の前にいたのは、二人の人影。
見た所、二人とも年齢の変わらない自分と同じような年相応の少女のだった。
着ている服もどこか似ているデザインをしているのを見る限り、二人の仲の良さを窺える、きっといつも二人一緒の仲良しなんだろうなと、彼女は感じただろう。
その二人の内の片方の胸に、深々と剣の刃が刺さっていなければ……。
深々と剣が胸に刺さった方の少女はその場でぐったりと項垂れて座り込んでいる少女を抱きかかえるようにしていた。
そして、抱きかかえられている方の少女は目の前にいる少女の胸に突き刺さり、少女の体を貫いている剣の柄を握っている、だがその手は小刻みに震えていた。
恐れるかのように、泣いているかのように震えるその少女に剣で貫かれた方の少女が最後の力を振り絞って耳元で何かを呟いた…。
そして、それを最後に、少女は力尽きた………。
残されたもう一人はピクリとも動かなくなった少女の体を今も尚振るえている両手で抱きしめようとする。
だが、それを許さんとするかのようにその少女の体はまるでさざ波に呑まれて崩れる砂の城の様にもう一人の少女目の前から忽然と消え失せた。
少女の消える直前、その光景を見ていた彼女は全身の血の気が一気に引くのを感じた。
紛れもない、今消えた少女はプラネテューヌの女神、ネプテューヌだったのだから。
そして、彼女は消えた少女に剣を突き立てていたもう一人に目をやる。
目から涙を流し、すべてに絶望したかのように虚空を見上げるその少女の姿に、彼女は見覚えがあった。
いや、覚えがあって当然だった。
何せ、その少女の姿は………
―――自分自身の姿、ネプギアの姿だったのだから。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
喉の奥から今見た事に対する驚きと恐怖と畏怖の念を込めた絶叫を迸らせながら、ネプギアはまるで跳ね上がるウサギの様にベッドから身を起こした。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ………今の……夢…?」
なんという悪夢だろうか…。
ネプギアは激しく動悸を刻んでいる心臓を落ち着かせるように肩で息をする、着ていたパジャマは今の夢を見ていた時にかいたのか、冷たい汗でぐっしょりと濡れていた。
だが、こうなってもおかしくない内容の夢だ……。
自分が姉をその手で殺す瞬間なんて例え夢であっても信じたくない光景だ。
何故今になってこんな夢を見たのか…。
もしかしてこれは、昨日喧嘩してしまった影響なのだろうか…。
でも、何もここまでの夢を見るほどの大喧嘩をしたつもりもない、自分の考えすぎだろうかとネプギアは慣れない悪夢に四苦八苦することとなった…。
「………とりあえず着替えよう」
なんにしても、もうあの悪夢のことは考えたくもない。
昨日喧嘩して、ネプギアはネプテューヌが謝ってくるまでは仲直りはしないと決めたために、ただでさえ気まずい関係になっているのにこんなものまで見ては余計に疲れるというものだ。
……本当は喧嘩をしても仕方がないということはわかっている。
ただそれでも、自分から謝りに行くのは的外れだとネプギアは心に決めた。
これも姉であるネプテューヌのため、自分が普段からどんな気持ちで彼女の仕事を手伝っているのか理解していなかった彼女に改めて自分と言う存在を理解してほしいがための意地だ。
―――別にやりたくなかったら、やらなきゃいいじゃん。
「………そうだよ、だから私はいつもお仕事頑張ってたんだよ……お姉ちゃん」
ネプテューヌのため、そのための手伝いだった。
それを真っ向からそのネプテューヌに否定された気分だった。
だからこそ、この件に関しては向こうが謝ってくるまでは仲直りはしないと誓ったのだ。
昨日のことを思い浮かべて自分がこれからどうするかを再確認しつつ、ネプギアはさっきの悪夢をすぐに忘れようと寝汗でぐっしょりと濡れたパジャマを脱ぎ始めた。
上着のボタンを手早く外して、ズボンも上着と一緒に手早く脱ぐ。
「うわぁ……下着まで濡れてる……」
どれだけの量の汗をかいたのだろうか、パジャマを脱ぐまでは気づかなかったが身に着けていたブラやパンツまでが汗でしっとりと濡れているではないか。
とりあえず着替えたら水分を補給することを最優先に考え、ネプギアは身に着けていたブラのホックを外し、パンツも脱ぎ、替えの下着に着替えるべくクローゼットに手を……。
―――どん、どん!
「おいネプギア! 起きてるか!?」
「ふえっ!? そ、宗谷さん!?」
掛けようとしたところで急に自室のドアがノックされて宗谷が呼び掛けてきた。
驚いたネプギアは反射的に右腕で自分の胸を、左腕で下腹部より下のあたりを隠す。
「あ、起きてたのか……ならちょうどいい、ちょっと出てきてくれないか? できれば速急に!」
「え、えと……わかりました、けど、ちょっと今すぐは難しいかなぁ……」
「ん? なんだ? なにかあったのか? 手伝いが欲しいなら手伝うぞ?」
「いえ! 大丈夫です! だからドアは開けなくていいですから!! ていうか絶対に開けないでください!!」
ドア越しに会話をしているから宗谷はわからないだろうが、今のネプギアは一糸纏わぬ全裸の状態だ、今ドアを開けられてはネプギア自身相当困る。
ネプテューヌと顔を合わせるのも気まずいうえに宗谷とも顔を合わせずらくなってしまうのはなるべく避けたい。
向こうも何やら焦っているようなので、早く身支度をしなければ……。
ネプギアはまず裸の体を何とかするためにクローゼットからお気に入りのピンクのボーダーのパンツを取り出す。
それを両手で持ち、右足から通し、次に左足、後は上に引き上げるだけ………。
「ね、ネプギア!! 早く来て!! 大変だよ!」
「おいこらネプテューヌ! いきなり開けるな!?」
だったのに………。
程なくして聞こえてきたどたどたと忙しない足音と共に、自分が今絶賛喧嘩中の姉、ネプテューヌが自室のドアを思い切り開け放ってしまった。
「「………ワオ」
ドアが開け放たれ、中の様子が丸見えとなったことで宗谷とネプテューヌは同時に声をそろえてそう言った。
対してネプギアはこれからパンツを上げようとしていた中途半端な状態でドアを開けられたことで結局宗谷に恥ずかしい姿を見られることとなった。
丁度、股の真ん中あたりまで引き上げられたパンツ、そして二人に背を向けていることで前の方は問題がなかったが、逆に背を向けた状態で前傾姿勢になっていることでネプギアの可愛らしい“桃”が丁度二人の視界にジャストミートしてしまっている。
「お、お姉ちゃんのバカぁ~~~~~~~~~!!」
朝からネプギアの羞恥にまみれた叫びが教会に響き渡るのだった。
「朝から何をしてるんですか…」
いーすんが呆れ気味に俺達にため息をつく。
いや、俺はどっちかと言うと巻き込まれたというかなし崩し的に見てしまったというか…。
先程慌ててネプギアを呼びに来たネプテューヌの突拍子のない行動で俺とネプテューヌにあられもない姿を見られたネプギアは余計にご機嫌斜めになってしまった。
………でも、きれいだったな……うん。
まあ、それはいいとして………苦笑いを浮かべる俺の両隣りには俺を挟むようにしてネプ姉妹もいて何とも気まずそうな雰囲気がにじみ出ている。
ネプテューヌはワザとではないとはいえ、いきなりの行動で余計にネプギアを怒らせたことに対して若干落ち込んでおり、ネプギアは朝から自分のあんな姿を見られたからかネプテューヌに対して目を反らし今でも顔がほんのりと羞恥に染まって赤い。
こりゃ、仲直りにまだ時間がかかることになりそうだぞ……。
「……まあ、いいです、何があったかはこの際置いておきましょう、それよりもネプギアさん」
いちいち何があったのか聞いていたらキリがないと思ったのかいーすんがそう言って本題に入った。
いーすんはネプギアを呼ぶと、俺達の目の前にある、とある部屋のドアノブを握った。
「あなたにお客さんです……と言っても、笑顔で迎えられる状況ではありませんが……」
いーすんはそう言うとドアノブを回し、ドアを開けた。
そして、中の様子を見た瞬間さっきまで不機嫌そうだったネプギアが途端に驚いたような表情を見せた。
「ファルコムさん!?」
その部屋には一つのベッドの上に一人の女性が寝ている。
赤いショートヘアーが特徴的な女性の彼女の名前は、ファルコムさん。 ネプギアの知り合いと言うことらしい冒険家だそうだ。
そのファルコムさんだが、今彼女の体にはいたる所に包帯が巻かれている状態だった。
知り合いのこんな姿をいきなり目にすればネプギアでなくても驚くだろう……実際俺達も驚いた。
どうして彼女がここにいるのか、それを説明するには朝の出来事よりも数十分前に遡る。
昨日、夜遅くまでベールから借りたゲームの攻略と唯一見ることが出来たエンディングに号泣した俺達は慌ただしく鳴り響くノックの音で目を覚ました。
途中で寝落ちしたいーすんとネプテューヌに変わり、部屋の主であった俺がドアに向かいあくびをしながらドアを開けると、そこにはアイエフの姿があった。
『宗谷! ちょっと手を貸して!』
切羽詰ったアイエフの声に、俺は何があったのかと彼女についていくと玄関先でコンパに体を支えられてぐったりとしているファルコムさんの姿を見た。
『おいどうしたんだこの人、なにがあったんだ!?』
『わからないです、黒いコートの人が教会の前にファルコムさんを連れて来て“早く治療を!”って……』
『とにかく、教会に空き部屋に運んで手当てするわよ! 宗谷、運ぶの手伝って!』
『わかった!』
『コンパ、あなたは先に行って救急箱を用意しといて!』
『りょうかいです!』
アイエフの指示を受けて俺とコンパさんは忙しなく動き始めた。
そしてファルコムさんを空き部屋に連れて行ってベッドに寝かせて、コンパさんが応急手当てを施した。
それ程危険な状態でもなかったためか、今は容体が落ち着いているが……彼女を運んできた黒いコートの人が教会に連れて来てくれなかったら今頃どうなっていたことか……。
俺はさっき起きた出来事を思い出しながら気を失っているファルコムさんのそばに寄り添うネプギアを見つめる。
「今の所何とか落ち着いているけど、念のため後で病院に連れていくわ……安心しなさい、ネプギア」
「………はい」
アイエフの言葉に少々の安心感を得たのか、ほんの少し強張っていた表情を緩めてネプギアがそっと彼女の手を握った。
二人がどういう出会いをして、どういう関係なのかは俺は知らないが、その姿を見る分、相当仲がいいというのは理解できた。
それにしても、なぜ黒いコートの人はファルコムさんを教会に連れてきたんだ?
コンパさんが言うには彼女を自分たちに任せると、すぐにどこかに行ってしまったと言うが……。
何か理由があるのか?
すると………
「ぅ………ネプ…ギ……ア?」
「あ………ファルコムさん! よかった…気がついたんですね!」
俺の疑問に答えるかのように、気を失っていたファルコムさんが目を覚ました。
ファルコムさんはネプギアの顔を確認すると、周囲を見回してほっと息を一つ吐いた。
「……どうやら……教会に辿り着けたみたいだね……あの人たちには感謝しておかないと………」
「ファルコムさん、一体何があったんですか? こんな状態になって……」
安堵の表情を浮かべるファルコムさんにネプギアが問いかける、するとファルコムさんは思い出したのか急に起き上がろうとする。
だが、体に走る痛みに耐えられなかったのかすぐにベッドに横になってしまった。
「まだ動いちゃダメです! 怪我は治ってないんですよ?」
「うぅ……ご、ごめん……つい反射的に…まったく手酷くやられたなぁ…」
「ねぇ、ファルコム、あなたその怪我、モンスターにでもやられたの?」
アイエフがファルコムさんに問いかけると、彼女は小さくこくりと頷いた。
「うん……よくわからない四人組と、黒いユニコーンみたいな見たことのないモンスターにね……」
「四人組……? 見たこともないモンスター……? 詳しくお話を聞かせてくれませんか?」
ファルコムさんの言葉を聞いていーすんが部屋の中に入って彼女に問いかける。
すると、ファルコムさんはベッドに横たわったまま静かに口を開き始めた。
「……私は冒険から帰って、一度ネプギアに顔を出そうと思って、ここに向かってたんだ……その途中、私は“ギャザリング・フォレスト”を通ってきたんだけど……そこで、変な四人組にあったんだ」
「なんなんだ、その変な四人組ってのは?」
さっきの話にも出てきたその単語に、俺は再度確認を取るように聞くと、ファルコムは俺の方を見て小さく頷いた。
「恐ろしく強い連中だったよ……立ち向かったけど、歯が立たなかった………って、君はだれ? あまり見ない顔だけど?」
「ん? ああ、そう言えばまだ自己紹介してなかったな……まあ、気絶してたんだから当然か……俺は天条宗谷、今はこの教会で厄介になってて教祖補佐を務めてる」
「……ああ、そうか、君がネプギアの言っていた宗谷君か……ネプギアに聞いた通りの人みたいだね」
「ふぁ、ファルコムさん!」
自己紹介を聞いたファルコムさんがそう言うと、その近くにいたネプギアがハっとなってファルコムさんの方に顔を向けてぶんぶんと頭を振った。
え? なに? 俺に聞かれたらまずい事でもあるの? すっごい気になるんだけど?
「ああ、ごめんごめん……大丈夫、言わないよ」
「うぅ……いきなりバラそうとしないで下さいよ……」
そんなやり取りをしている二人を前にして、俺はどうすればいいのかわからず隣のネプテューヌに視線を向けるが、ネプテューヌはわからないと言いたげに首を左右に振るだけ…。
本当に何なんだ……気になるじゃないかよ、ネプギア……お前普段俺のことをなんて伝えてんだよファルコムさんに……。
「あの、ファルコムさん……それで続きは……?」
そんな俺の疑問なんか露知らず、いーすんがほぼ強引に話を元に戻した。
ファルコムさんは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべると、すぐに表情を真剣なものに戻す。
「ああ、ごめん……それで、その四人組の姿を見た途端、私はそいつらに襲われたんだ……応戦はしたけど、歯が立たなくて……こっ酷くやられたよ、命があっただけ幸いだったね………その後、何とか逃げ出せたはいいけど黒いユニコーンをそいつらにけしかけられたんだ……そしてもうダメだって思ったとき、助けてくれた人たちがいたんだ……ここにいるのはその人たちのおかげだよ……」
「ファルコムさんがここまでやられるなんて……一体何者なんでしょうか?」
「さあ、それについては私も……ただ、その四人組がなんて名乗っていたのかはしっかりと聞いたよ…」
ファルコムさんはそう言うとネプギアの方を見つめ、その四人組の名を答えた。
「奴らは、“新・犯罪神四天王”………奴らの中にいた一人が名乗ってたから間違いないよ………」
“新・犯罪神四天王”………いかにもって感じの名前の連中だな……。
でも、なんでそんな奴らがギャザリング・フォレストに?
あそこはゲイムギョウ界の中心に近い位置にある神聖な森と聞いたことがある、しかも相当に深い森でもあり、迷うのは必至とのことだ………ていうか、ファルコムさんよくそんな森を越えようと思えたな?
「………でも、問題はそれだけじゃないんだ……」
ファルコムさんはそう言うと、より切羽詰った雰囲気を瞳に浮かべて俺達に言った。
「その神聖な森、ギャザリング・フォレストが全部枯れてしまってるんだ」
「え………! それは本当なんですか!?」
いーすんが驚きを隠せない様子でファルコムさんに再度確認すると、ファルコムさんは頷いて返事をした。
そして、彼女はさらに強張った表情であることを言った。
「………しかも……その中で私は………呪われたあの魔剣を、私は見たんだ………」
「………魔剣?」
聞きなれないその言葉を、俺の隣にいたネプテューヌが繰り返す。
すると、ファルコムさんはさらに緊張した面持ちで重い口を開いた…。
「………かつて、“女神殺しの魔剣”と呼ばれた、伝説の魔剣があった………その名を“ゲハバーン”………私は、あの森でそのゲハバーンを持っている何者かを、見たんだ………」
その場にいた全員が反射的に息を飲んだのが分かった。
“魔剣ゲハバーン”………それに、“新・犯罪神四天王”………一体、そいつらは何者なんだ………。
黒く、炭のように枯れ果てた木々で今は完全に覆われているこの森、“ギャザリング・フォレスト”。
ここはシェアエナジーの恩恵を強く受けてることから神聖な森とされており、生き生きとしている木々が生い茂っていた。
だが、今はこの有様だ……。
黒く立ち枯れした木は生気すら感じさせず、辺りを包み込む静けさは不気味以外の何物でもない。
緑で覆われた豊かな森だったこの場所が、なぜ突然このような姿に変わってしまったかのか………。
その原因は、この森の奥にあった。
円形に開けた、まるで焼け野原のようなその場所にそれは突き立っていた。
禍々しい光をその刃から放ちながら、地面に突き立っているのは魔剣ゲハバーン、そう、すべてはこの剣による影響だった。
魔剣ゲハバーンは今、この森に蓄えられたシェアエナジーの恩恵をすべて吸収しているのだ。
この森が枯れたのもそれによる影響である。
そして、そのゲハバーンの前に立つのはそれを手にした紫の甲冑に身を包んだ人物。
背中に鳳凰の翼を思わせる装飾を広げ、顔の半分を覆う仮面越しに地面に突き立つゲハバーンを見つめる。
「新・犯罪神様………」
突然、後ろから声が聞こえた。
新・犯罪神と呼ばれたその人物が後ろを振り向くと、そこには今は自分の従者となっている四天王の一人、マジック・ザ・クイーンがその場に跪き、頭を垂れるような体制を取っていた。
「既にこの森のシェアエナジーは完全に吸い尽くしたかと思われます……」
「………そうか……なら、次だ………これより“私の城”を呼び出す……お前たちはそれまで邪魔が入らないように警戒を怠るな………」
「はっ……仰せのままに……」
マジック・ザ・クイーンは傍らに置いていた巨大な鎌を手に取るとまるで煙のようにその場から姿を消した。
彼女の姿が消えたのを確認した新・犯罪神は地面に突き立つゲハバーンにその手をかざし念じるように力を込める。
すると、ゲハバーンのつばの装飾が怪しく光り、輝きだした。
そして、新・犯罪神の目の前に巨大な魔方陣のようなサークルが浮かび上がり始めた。
「………遂に、この時が来た………私の悲願を………叶えるために………!」
そう呟いた新・犯罪神の声に答音するかのように、ゲハバーンがその怪しげな輝きをより一層強くする。
そして、同時にサークルの光も強くなり始めた………。
一方、少し離れた所では新・犯罪神の命令を受けたマジック・ザ・クイーンがあたりを見回しながら自分の得物である鎌を地面に突き立てた。
その瞬間、彼女の周りに新たに三人の人影が突然どこからともなく現れた。
彼女を除く他の四天王たちである。
「新・犯罪神様の命だ……今より我々はこの森に近づくものを一斉に排除する……何であっても取り逃すな」
マジック・ザ・クイーンがそう言うと他の三人はそれぞれの反応を見せる。
「この剣は新・犯罪神様のため……その命、必ずや果たして見せよう」
腰に携えた長剣の柄に手を添えながらそう言ったのは、宗谷がラステイションでDr.トロイが起こした事件に巻き込まれた際に出会った戦士、ブレイブが新たに転生した姿、ブレイブ・ザ・ナイトだ。
騎士を思わせる風貌に見合った口調でそう答えたブレイブ・ザ・ナイト、だがそれと対となる位置に立つもう一人は対照的にどこか気だるそうなふるまいを見せている。
「はぁ~…まぁた見張りかよ、いい加減そろそろ俺様は街にでも繰り出して至福の時間を過ごしたいというのに…」
「貴様、新・犯罪神様の命を怠るつもりか!」
「おうおう、そう怒んなよナイトの旦那!? 俺様はただ、街に出て元気に遊ぶ……よ、幼年幼女をこの手で……アグ、アグググググ……! おぉっといかん、涎がじゅるり…」
そう言って口元をぬぐうような動作を見せるのは、以前にルウィーでロムとラムを攫った張本人、トリックが新たに転生した姿、トリック・ザ・ルーク。
転生する前のずんぐりとした体形とは違い、全体的にシャープなフォルムに変わり、まるでピエロを思わせるような姿と胸によく目立つトリックの転生前の顔をそのまま胸当てにしたかのような鎧がなんとも不気味だ。
さらには転生前の幼女好きも悪い方向でパワーアップしているのか、幼年、つまり男の子に対しても好意を示しているあたり余計に達が悪くなっている様だ。
「………しばらくすれば街にも出られる、それまではもう少し耐えろトリック」
「ま、マジっすかマジック姐さん!? おうやべぇ、今から興奮してきやしたよ! いろいろ用意しておかないとな……首輪に手錠に縄に……あと、大人にしかわからないであろうおもちゃも………アググググ! 待っててね~! ロムたん!! ラムたん!!」
「破廉恥な……」
手をワキワキと動かすトリック・ザ・ルークを白い目で見るマジック・ザ・クイーンとブレイブ・ザ・ナイト。
これ以上関わるのはやめておこうと割り切ったマジック・ザ・クイーンは残るもう一人、ジャッジ・ザ・ビショップに目を向ける。
「お前もだ、分かっているな………失敗は許されんぞ?」
「………」
この四人の中で一番の屈強な肉体を持つ、ジャッジ・ザ・ビショップ。
転生前は荒々しく、常に戦いに飢えていた姿はみじんも感じさせず、静かにその場でこくりと首を縦に振って返答するだけのその姿はこの中で一番異彩を放っていると言って言えようか…。
その後も頑強な黒の鎧に包まれたその戦士は何も話すことはなく、ただただその場に立ち尽くすのみ。
「あいつ転生前と違って本当に物静かになったな………逆に不気味だぞ?」
「変態趣味のお前と比べれば、まだいい……真の戦士は余計な口を開かないというものだ」
「いや、聞いたことねぇっすよそんな格言……まあ、ナイトの旦那もだいぶ様変わりしてるっちゃしてるし、言えた義理でもねぇか」
この場にいる四人は元はこの世界に存在した肉体に別の世界から現れた同じ魂を持つ霊魂が入り込んだことで生まれ変わった姿だ、性格や見た目が大幅に変わるのも無理がないといえよう。
トリック・ザ・ルークとブレイブ・ザ・ナイトがジャッジ・ザ・ビショップを見ながらそう会話していると、マジック・ザ・クイーンが持っていた鎌の柄を地面に突き立てて音を鳴らし、注目を自分に集めた。
「話はそこまでだ………どうやら、もうすでに異変に気付いた邪魔者がこちらに向かってきているらしい」
そう言った彼女の手の甲には、いつの間にいたのか蝙蝠の様な小さなモンスターが留まっていた。
彼女の偵察用モンスターだ、どうやらそのモンスターがこちらに近づく存在をいち早く見つけたらしい。
「またあの剣士の女のような人間か?」
「いや………どうやら違うようだ………これは……」
小型の蝙蝠モンスターから何かを読み取っているのかマジック・ザ・クイーンは目を閉じながらブレイブ・ザ・ナイトに答える。
そして、程なくして目を開けると、にやり、と凶悪なイメージを与える笑みを口元に浮かべた。
「思ってもいない、客人の様だ………」
ギャザリング・フォレストから少し離れた空では、六つの光点が並びながら空を駆けてきていた。
どんどんと黒く枯れ果てたその森に近づいているのはネプテューヌを除く他の国も女神、ノワール、ブラン、ベールの三人とユニ、ロム、ラムのネプギアを除く女神候補生の三人だった。
六人は女神化した状態でギャザリング・フォレストの真上にまでたどり着くと一旦その場に浮遊するようにして止まった。
「これは………」
「情報通り……っていうか、想像以上だなこりゃ……」
ギャザリング・フォレストの変わりように驚くブラックハートとホワイトハート、同様にグリーンハートもただならぬ状況を目の当たりにしているのか、表情にいつもの余裕が見えない。
彼女達もまた、この異変を聞きつけたのだ。
ここまでの異変ならむしろ気づかない方がおかしい。
国民からの情報や、他の国からの連絡を受け、彼女達六人はこの場に集まったのだ。
「ネプテューヌや宗谷がまだ来ていませんわね」
「さっき連絡を入れたら、もう少しでこっちに来るって言ってたわ、まったく…ネプテューヌが相変わらずお気楽だからいつも行動が遅いのよ」
呆れながらそう言ったブラックハートに、妹のブラックシスターが苦笑いを浮かべる。
「何があったのかは知らねぇが、放っておくわけにもいかねぇな……あいつらが来る前に私たちで先に調べておくか?」
「そうね、打てる手は早く打っておいた方が………?」
ホワイトハートの提案にブラックハートが賛成し、さっそく少佐を開始しようとしたその時、ブラックハートが何かに気付いた。
「何かしら、あれは……?」
下にある森のその更に奥の方に目を向けたブラックハート、その視界に何やら輝く光を見つけたのだ。
森の奥の方で怪しく光り続けるその光はいったい何なのだろうか、ブラックハートが気になって確認しようと移動を開始する。
だが、
「……っ! お姉ちゃん危ない!!」
咄嗟にブラックシスターがブラックハートにぶつかってきた。
そして、遅れて自分がさっきまでいた場所に凶悪な光の残滓を纏いながら、三日月形のエネルギーの刃が通り過ぎた。
何処かからの攻撃、何とかそれを妹のおかげで回避できたブラックハートはすぐさま武器を呼び出して攻撃が飛んできた方角に構える。
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
すると、森の中から鋭角な戦闘機の様なウィングを展開した白と黒の甲冑を纏った騎士の様な何者かが飛び出しこちらに剣を振りかざして向かってきたではないか。
突然の襲撃に、ブラックハートはすぐさま大剣を横に倒して防御態勢に入る。
思い切り振りおろされた長剣がブラックハートの大剣とぶつかり、甲高い衝突音を響かせる。
「まさかこちらに近づいていたのが女神だったとは、なんという行幸! 女神よ、いざ尋常に勝負!!」
「な、なによあなた! 急に襲い掛かってきて、何者なの!?」
「我が名は新・犯罪神四天王が一人……ブレイブ・ザ・ナイト! 貴様のその首、貰い受ける!!」
血気迫る声でそう名乗った白黒の騎士は持っていた長剣でブラックハートの大剣を押し返す。
くるりと空中で身を翻して、体勢を立て直したブラックハート、その後ろで目の前の騎士の名を聞いたブラックシスターが驚愕に目を見開いていた。
「ブレイブ………まさか、あんた……!」
目の前にいる騎士と、先の戦いの末に何処かへ旅立っていった戦士の姿が重なった気がした。
困惑するブラックシスター、そして、突然の乱入者に警戒し始める他の女神達。
「ノワール!」
「おぉっと! お前らの相手はこの俺様だぁ!!」
加勢に入ろうとしたホワイトシスターにどこからか鋭利なナイフが投げつけられた。
だが、いち早くそれを察知した彼女は呼び出した戦斧ですべてのナイフを薙ぎ払うと、こちらに向けてナイフを投げた者を睨み付ける。
「なんだ、テメェは?」
「おおっと、こっちの世界でもその悪い目つきは相変わらずか……アグググ……」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「この人………だれ?」
突然の不意打ちを受けたホワイトハートを心配して、ホワイトシスターの二人が近づいてくる。
ホワイトハートは大丈夫だと答えると、すぐに戦斧を再び目の前にいるピエロのような姿の何者かに向けた。
「うっほぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!! 女神化したロムたん、ラムたんキタァーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「えっ!? な、何よ突然!?」
「………怖い」
すると、二人の姿を見るなりピエロの様な何者かは両手を振り上げて叫び出したではないか。
あまりにも突然の奇行にホワイトシスターの二人は怪訝そうな顔を浮かべる。
その何者かは荒い息を上げながら二人を顔を向けると、その両手をワキワキと忙しなく動かす。
「ハァ、ハァ……俺様だよ、ロムたん、ラムたん、幼年幼女を愛する最強の紳士様、トリック・ザ・ルークだよぉ…」
「トリック………? ………お前まさか、誘拐事件の時の!?」
「えぇ~!? あの変態なの!?」
「ふえぇ……また出た……!」
「さあ、二人とも……それと、お二人のお姉さま、俺様と一緒に遊ぼうぜぇぇぇええええ!!」
両手で細身の曲刀を取り出したトリック・ザ・ルーク、歓喜の叫びを上げながら彼は地面がないはずの空を飛び跳ねるようにして三人に近づく。
「ブラン! 何者なんですの……あの方たちは……」
次々と現れた襲撃者にグリーンハートは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべて武器を呼び出す。
加勢に入ろうと武器を構えたグリーンハート、しかしそこにまた新たな乱入者が現れた。
「っ!」
横合いから飛んできた鎖で繋がれた棘付きの鉄球。
咄嗟にそれを槍で弾いたグリーンハートはその鉄球で攻撃を仕掛けてきた何者かに目を向ける。
黒い、丸みのある鎧に身を包んだ大柄な姿をした何者かはモーニングスターと呼ばれる武器を手にこちらを見据えている。
「………あなた、何者ですの?」
「………」
彼女が問いかけるがその何者かは答えようとしない。
「……だんまり、ですのね……なら、余計なことは聞かずに倒させていただきますわ!」
「………排除する」
槍を振り回しながら、グリーンハートが黒い鎧に身を包んだ何者か、ジャッジ・ザ・ビショップに突撃を仕掛ける。
それぞれの女神と四天王の内の三人が激突し、戦いを始めた。
その光景を少し離れた位置でマジック・ザ・クイーンが見据える。
「予定より早いが、まあいい………始めようか、“女神狩り”を………」
このゲイムギョウ界に起きた異変が、牙をむき始めた瞬間だった。
いかがでしたか?
次回は新・犯罪神四天王と女神が大激突!
本格的に新・犯罪神が動き出す…。
それでは、また次回でお会いしましょう!