超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です…。

なかなかに物々しいタイトルになってしまいましたが、それほどまでにきつい事ではいかもしれません…。
ただ、ある一点は相当な鬱ですが……。

さて、と言うわけで…。

今回のお話は、前回ネプギアがゲハバーン凶刃によって消え去り、悲しみに打ちひしがれるネプテューヌ。
そして、絶望の連鎖は……続く。

それではお楽しみください、どうぞ…。


stage,64 俺と絶望の連鎖

 

 

「ぁあ………あああ……っぁ……ぁぁぁああああ…! ネプギア……ネプギア……ネプギアぁ………!」

 

目の前で最愛の妹が消えた、その命を散らした。

それを目の当たりにしたパープルハートは女神化した状態のまま虚空を見上げ、目からは止まることのない涙を流し続けた。

先程までの戦意を完全になくし、うわ言のように妹の名を呼び、泣き続けるパープルハート。

 

そんな彼女の姿、そして今までの一部始終を離れたところでイストワールは見ていた。

 

目を閉じたまま、頭から血を流して気を失ったままの宗谷を抱きかかえながらも彼女もまたパープルハートを除く7人の女神が全員消滅してしまうという現実に驚きを隠せず、呆然とするしかなかった。

 

「そんな………女神様達が………」

 

震える声で呟くイストワール、国を守護し、世界のバランスを保つはずの存在であった女神が僅かな時間でほぼ全滅に追いやられてしまった事実は、彼女にとって最悪の事態としか言いようがない。

唯一残されたパープルハートは今は完全に戦意を喪失している状態、このままではとイストワールは危惧する。

だが、たとえここで自分が戦ってもこの状況を打開できるとは限らない………。

下手をすれば………。

イストワールは迷いながらも、パープルハートの前に立つ新・犯罪神へと視線を移す。

 

パープルシスターを貫いた体制のままでいる新・犯罪神、しばらく微動だにしなかったが、やがてその腕がゆっくりと動き出し前傾姿勢を取っていたその身も、まっすぐな姿勢に戻した。

そして、一歩前に出ると視線を落し、自分の目の前で泣き崩れるパープルハートへと視線を落とす。

 

このままでは……!

 

 

「ネプテューヌさん! 逃げてください!!」

 

 

イストワールが必死にパープルハートに呼びかけるが、彼女は未だに泣き崩れるばかりでその声が届いているかすらも怪しい。

いや、今の彼女にはその声すらも届いていないかもしれない…。

 

気付いたときには彼女は既に変身も解け、ネプテューヌの姿に戻ってしまっていた。

変身を維持できないほどの精神状態に陥ったのだ。

今の彼女には周りは何も見えていない、あるのは心の内の大きすぎる喪失感と、悲しみの感情だけだ…。

 

そんな彼女が、目の前に迫る危機にあらがえる術を持っているわけもなく………。

新・犯罪神が唯一残ったネプテューヌに止めを刺そうと、ゆっくりとゲハバーンを振り上げる。

 

 

 

そして………。

 

 

 

 

 

「っ………ぐっ!?」

 

 

 

 

 

不意に、新・犯罪神が片手で頭を押さえ僅かに体を揺らした。

持っていたゲハバーンを振り下ろすことなく、地面に落し両手で頭を抱え急に苦しみ始めた新・犯罪神は苦しみ、悶えながら徐々にネプテューヌから遠ざかって行った。

割れた仮面の間から見えていた目は大きく見開き、よろめく。

 

「あっ……ぐぁぁぁぁああ! あがぁっ……あぁぁ、あああああああああ!!」

 

激しく頭を振り、叫ぶ新・犯罪神。

一体どうしたことかと、イストワールも突然の事態に疑問を抱く。

そして、この事態に新・犯罪神の後ろに控えていた四天王たちが狼狽え始めた。

 

「い、如何なされたのです! 新・犯罪神様!」

 

「………まさか」

 

ブレイブ・ザ・ナイトが新・犯罪神の異常を気遣い、声を掛けるがその隣にいたマジック・ザ・クイーンが何かを悟ったのかそう呟いた。

 

「あ、あぁぁぁ! わ………私は……私はぁぁ! こんな……こんな時に…がぁあああ!!」

 

苦しみ続ける新・犯罪神、苦しみ、ふらふらとよろけるその体を駆けつけたブレイブ・ザ・ナイトとマジック・ザ・クイーンの二人が支える。

 

この時、新・犯罪神とパープルハートの距離は大きく開き四天王たちも新・犯罪神の異変に気を取られ、完全にネプテューヌから注意が逸れていた。

 

(今なら……!)

 

訪れた千載一遇のチャンスに、イストワールは意を決して飛び込んだ。

宗谷の身体を地面にゆっくりと下ろし、すぐさま立ち上がって走り出した彼女は助走をつけた状態で背中に彼女の持つ、光り輝く翅を広げるとそのまま低空飛行でその場で呆然と座り込むネプテューヌへとまっすぐに飛び続ける。

 

今なら、せめて彼女だけでも逃がすことが出来るかもしれない…。

 

咄嗟に訪れたこのチャンスを、生かさないわけにはいかない。

イストワールは彼女を救うために、必死に飛び続ける。

 

 

まだ四天王はこちらに気付いていない。

 

 

あともう少し、あともう少しで届く…!

 

 

低空飛行のままに自分が出せる限りのスピードで一気にネプテューヌとの距離を縮めるイストワール。

 

そしてやっとの思いで、ネプテューヌのそばまでたどり着くことが出来た。

 

「ネプテューヌさん! 今のうちに!」

 

「………」

 

「………ネプテューヌさん……しっかりしてください、ネプテューヌさん!」

 

辿り着いてすぐに彼女の肩を揺すり、呼びかけるイストワールだがネプテューヌはうつろな目で俯いた状態のまま答えようとはしなかった。

より強く揺すってみるが、それでも何の返答も帰ってこない。

まるで、魂のない抜け殻の様にうつろな目をしたネプテューヌ、このままでは彼女をここから逃がすことすらできない…。

 

「っ! 貴様! そこで何をしている!」

 

しかも、最悪なことにイストワールがネプテューヌの所まで来ていたことが気取られてしまった。

長剣を抜き、主君である新・犯罪神の獲物を逃がそうとする彼女に刃を向けるブレイブ・ザ・ナイト、イストワールはとっさに彼女を抱えて飛び立とうとするがネプテューヌ自身がまるで人形のように立つことさえもままならない状態でうまく抱えて飛ぶことが出来ない。

 

次第にこちらに近づいてくる、ブレイブ・ザ・ナイト。

 

ギラリと光る長剣の刃が、イストワールの視界に飛び込んできた。

咄嗟に彼女はネプテューヌを庇うように抱きかかえた状態で、その場に伏せる。

 

そして、ブレイブ・ザ・ナイトの慈悲のない一撃が、彼女を袈裟懸けに切り裂こうと迫り………!

 

 

 

 

 

―――ガガガガガガガガガ!!

 

 

 

 

 

「ぬぅうっ!?」

 

突然、けたたましい音が連続で聞こえ長剣を振り下ろそうとしたブレイブ・ザ・ナイトが怯んだ。

その異様な音に反応したイストワールは何が起こったのかと、その音が何なのかを頭の中で反復する音が何なのかを自分の中にある“記録”と言う名の記憶から探し始める。

 

今の音は、間違いない、“銃声”だった。

 

連続で聞こえたということは、連射されて放たれたということ、でも一体誰が……?

 

イストワールがふと、顔を上げると………。

 

 

 

「今よ! “サイバーコネクトツー”! “鉄拳”!!」

 

「……ケイブさん!?」

 

 

 

そこには、リーンボックスで特捜課という組織に身を置き、マジェコンヌとの戦いの折には戦いを共にしたケイブの姿があった。

両手に拳銃を持ち、銃口をまっすぐに向けた彼女は叫ぶように何かの指示を飛ばす。

 

「OK! いちかばちか………行っちゃうよ!!」

 

すると、どこからかそんな声が聞こえ、イストワールの真上を何者かが飛び越えて行った。

その素早い動きであたりを縦横無尽に駆けぬける何者かは、イストワールに迫ろうとしていたブレイブ・ザ・ナイトに襲い掛かりはじめる。

 

「ちぃ! 小癪な!!」

 

だが、ブレイブ・ザ・ナイトは自分の周りを走り回り牽制してくる何者かに対して剣を振るい追い払う。

振られたその剣を回避するためか、すぐに後ろに跳び退ったその人物はイストワールの前で足を止めた。

 

 

「ふぃ~…あっぶなぁ……やっぱ、一筋縄じゃ行かないってことか」

 

 

その人物はイストワールよりも明るい金髪に犬の耳と尻尾をつけた獣と人を混ぜたような姿が特徴的な少女だった。

両手に短剣を持ち、冷や汗をかきながらそう呟いた少女は、でも、と呟くとにやりと笑みを浮かべる。

 

 

「そぉ~れぇ~!」

 

 

途端にどこか間の抜けた可愛らしい声が聞こえてきた。

そして、程なくしてまるで天変地異でも起きたかのような衝撃と、轟音と共に何かが上空から急降下し、それが地面にぶつかったことで“地面が割れた”。

その衝撃はすさまじいものだが、新・犯罪神四天王は主君を抱えたまま後ろに跳び退りその攻撃を容易く回避しする。

 

隕石でも落ちたのかと目を疑うイストワールだが、その視線の先には隕石ではなく。

 

「ふぅ……こ、これでよかったのかな? サイバーコネクトツーちゃん?」

 

「ばっちりだよ! 鉄拳ちゃん!」

 

ストレートロングの黒髪に所々破けたズボンとへそ出しの上着が特徴的な華奢な印象が強い割にだいぶ露出が多い服装の少女がおろおろとしながら獣の姿をした少女に声を掛けていた。

 

互いを、サイバーコネクトツー、鉄拳と呼び合った二人の少女の乱入に、注意を削がれ牽制を受けた新・犯罪神四天王たちは突然の乱入者に敵意を向ける。

 

「人間如きが………我らに歯向かう気か!」

 

「幼女か幼年じゃなけりゃ興味はねぇ! お前ら纏めて俺のおもちゃ代わりにしてやるぜぇ!」

 

「………滅殺!」

 

突然の事態に激昂した、ブレイブ・ザ・ナイト、トリック・ザ・ルーク、ジャッジ・ザ・ビショップの三人が前に出て乱入者の二人に襲い掛かろうとする。

不意打ち攻撃を受けながらも一切のダメージを受け付けなかった四天王、その実力は乱入者の彼女たちよりも上なのは目に見えて明らかだ。

 

真正面から立ち向かってもおそらく勝算はない…。

このままでは、どの道ケイブと共に、彼女たちもやられてしまう…。

再度、イストワールが危惧したその時…。

 

 

「目からビィームっ!!」

 

「消え去るがいい!」

 

 

今度はどこからか、光の閃光と光弾が同時に跳んできて、迫りくる三人に攻撃として命中したのだ。

突然の不意打ちに防御を強いられる四天王の内の三人、攻撃を仕掛けたのはケイブの両隣に立っている二人の人物だった。

 

一人は丸っこい謎の生物の様な物体に乗り、さっき聞こえた言葉通り目からビームを発射しているほぼ二頭身サイズのセーラー服を身に纏った少女。

 

もう一人は白衣とゴスロリ衣装を混ぜた様な服装に、歯車のついた杖を持ちその先端を四天王たちに向けるサファイアブルーの長髪に魔女のような三角帽子が特徴的な少女。

 

二人は攻撃の手を緩めることなく、四天王に向けて魔法による光弾とビームを打ち続ける。

 

彼女達も援軍なのかとイストワールが思っていると、ふいに彼女に近づいてくる人物がいた。

 

「あなたは……!」

 

「間に合ってよかった、大丈夫ですか? イストワール様」

 

「5pb.さん!」

 

その人物はかつてリーンボックスで宗谷が行動を共にしたという、今を輝く人気アーティスト、5pb.だった。

彼女は地面に伏せたままのイストワールの手を取り、起こすのを手伝うと力なく地面を見つめるネプテューヌに肩を貸し、イストワールをサポートする。

 

しかし、なぜ彼女たちがここにいるのかイストワールには疑問思えてならなかった。

 

「どうしてあなたやケイブさんがここに? それに、あの人たちは……」

 

「説明は後で、今はここを離れるのが先決だってケイブさんが言ってました」

 

「あ、待ってください! 宗谷さんがまだ…」

 

5pb.の言葉に待ったをかけたイストワール、だが5pb.は微笑みを浮かべると視線を宗谷のいた場所に向ける。

 

するとそこにはいつの間にいたのだろうか、アイエフとコンパの二人が宗谷に肩を貸しているではないか。

まだ彼は気を失ったままの様だが、二人はそんな彼の体をしっかりと抱えいつでも逃げられると言いたげな表情を浮かべている。

 

「アイエフさんにコンパさんまで……」

 

突然の予想外の援軍にイストワールは驚くばかり、だがそんな彼女の思考を切り替える様に再びケイブの鋭く空間全体に響き渡るような支持の声が飛んだ。

 

「“ブロッコリー”、“MEGES.”、もう十分よ、ありがとう」

 

「ふぅ……けっこう疲れたにゅ……」

 

「この程度でいいのか? 別に次元の彼方に屠っても叶わんのだぞ?」

 

ブロッコリーと呼ばれた二頭身の少女はビームを発射するのをやめるとそう言って誰始め、、MEGES.と呼ばれた少女はどこか自信があるような表情を浮かべてケイブにそう返した。

 

「あくまで私たちの狙いは救出とそのための時間稼ぎよ、それに私たちが戦っても奴らには…おそらく勝てないわ」

 

「ふん、弱気だな………だがそれも、運命石の導きか………」

 

ケイブの言葉にしぶしぶ納得したのか、MEGES.はそう言うと三角帽子を再び目深に被った。

 

 

 

「それじゃ、今度はわたしの出番だね!」

 

 

 

その瞬間、また別の誰かの声が聞こえたと思ったらイストワールの目の前に突然何者かが姿を現した。

 

突然発生した煙の中から現れたのは、一目で目を引くほどの大きさを持つ豊かな胸を強調するように、胸部のあたりを大きく開けた露出度の高い服装をしたオレンジの髪の少女だった。

腰には忍者刀と呼ばれる小型の刀が二本備わっており、巻物をその手に持つその姿は、多少の疑問や違和感を感じるがまさしく、“忍者”を思わせる。

 

「頼んだわ、“マベちゃん”!」

 

「了解♪ 行くよ! “秘伝忍法 退散消え身の術”!!」

 

彼女が持っていた巻物を口に咥え、伸ばした両手の二本の指を組み合わせて忍者によく見られる、印を結ぶという行動を取り、なにかを唱えると不思議なことにイストワールたちの周りにもくもくと大量の煙が発生し完全に彼女たちの姿を隠してしまった。

 

「ぬぅ……おのれ、不意打ちだけでなく姑息な手を!」

 

ブレイブ・ザ・ナイトが果敢にもその煙を掻き分けて不意打ちを仕掛けてきた者たちを探そうとするが、既にそこには四天王と新・犯罪神以外の姿はなかった。

 

ブレイブ・ザ・ナイトは逃げられたと判断すると、舌打ちをしながら地面に長剣を突き立てる。

 

「あ~らら、まんまとしてやられたなぁ……あいつら、俺達を倒すための援軍じゃなくて最初から残された女神を助けるための囮だったわけだ…」

 

「………」

 

トリック・ザ・ルークはそう言ってその場に座り込み、ジャッジ・ザ・ビショップは標的を見失ったためか何も言わずにその場に立ち尽くす。

してやられたと悔しがるブレイブ・ザ・ナイト、だがそこに新・犯罪神の体を支えながらマジック・ザ・クイーンが近づいてくる。

 

「……捨て置け、あの様子ではすぐにでも仕留められる」

 

「しかし!」

 

「今は新・犯罪神様を居城に連れ戻ることが先決だ……女神狩りはその後にでも出来る」

 

「………わかった」

 

マジック・ザ・クイーンに体を支えられ、ぐったりとする新・犯罪神の姿を見たブレイブ・ザ・ナイトは渋々首を縦に振ると同じように新・犯罪神の体を支える。

目標の女神すべてとはいかない物の、既に7人の女神を葬った新・犯罪神、だがなぜ突然苦しみ始めたのか…。

マジック・ザ・クイーンは息を切らし項垂れている新・犯罪神を一瞥しながら、新・犯罪神が呼び出した居城、ギルティキャッスルを目指す。

 

「やはりまだ………“なりきれてはいない”というわけか………」

 

新・犯罪神の姿を見て、マジック・ザ・クイーンがそう呟く…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャザリング・フォレストで起きた一連の出来事。

それを最初から最後まで、少し離れた位置で見ていた二人の人影があった。

 

離れた位置に生えている、今は黒く立ち枯れてしまった大きめの大木の陰に身を隠しその様子を見守っていたのはトランスとレヴォリューションこと、ライラとシンシアの二人だった。

気取られないように身を隠しながら、事態が落ち着いたのを見計らってそっと顔を出したライラは、自分に縋り付くようにしてくっついているシンシアを撫でながら一連の流れを振り返り、軽く眉を潜めた。

 

「……やはり、今の状態の彼や女神達の力では奴らに太刀打ちできなかった」

 

ライラの思う限り、現在の状況は最悪中の最悪と言っても過言ではない。

 

宗谷は暴走の挙句に倒れ、女神もプラネテューヌの女神を残すだけでほぼ全滅に追いやられてしまった。

この状況では、新・犯罪神に太刀打ちしようにも存分な力を振るうことが出来ない…。

 

「………予定通りだったら、少年くんがフォーチュン・リンクシステムを完全に使いこなして、対抗できていたでしょうに………」

 

そもそも、予定に大きく異常が出てしまった現時点でこの“最初の決戦”を迎えることは危険だとライラは最初に思っていた。

予定なら、マジェコンヌとの戦い、“最初の試練”の時点で完全なフォーチュン・リンクシステムを起動させた宗谷が女神候補生と共にマジェコンヌを倒す算段だった。

だが、実際にはイストワールがフォーチュン・リンクシステムの素体となり、想定外且つ不完全な変身を遂げてしまった…。

 

これでは、フォーチュン・リンクシステムの“本来の力”を出し切ることが出来ない…。

 

しかも、この状況……持ち直すのは相当に困難な状況に追い込まれてしまった……。

 

そもそも、なぜ彼はこの状況下で予定を進行させたのか…。

下手をすれば、このゲイムギョウ界が崩壊しかねないというのに、彼はいったい何を考えているのだろうか……。

 

いくら宗谷を育成するためとはいえ、この状況下でこの試練は困難どころか無謀すぎるとしかライラには思えないでいた…。

 

「………ライラ」

 

ふと、自分の服の裾をぎゅっと握っていたシンシアが彼女を呼んだ。

 

「………信じよう、あの人は………“諦めてないよ”?」

 

その言葉を聞いたとき、ライラにはここに来る前に見た彼の顔が脳裏に浮かんだ。

予定が狂った中でも、崩すことがなかった柔和な微笑み、“何かを確信している”かのようなあの表情…。

 

彼が何を考えているのかまでは、ライラには理解できない…。

 

だが、それでも彼がまだその表情を浮かべられるということは、彼がまだ諦めていないという何よりの証拠でもあるのだ。

 

「……結局、すべてを理解してるのは彼だけと言うわけですか……上等ですよ」

 

ライラは半ばやけくそ気味にそう自分に言い聞かせるとシンシアを連れてその場を離れた。

 

こうなったら、とことんでも彼を信じてみることにしよう。

彼女はそう心に決めると、いつも来ているジャージのポケットからある物を取り出した。

 

それに目を落としながら、彼女はシンシアと共にある場所へと向かう…。

 

「とことん付き合ってあげますよ………こうなったら、やけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラネテューヌ教会、そこには命からがら、なんとか逃げきることが出来たイストワールが疲れ果てながらもやっとの思いで教会の生活スペースのリビングに足を踏み入れていた。

 

ここまで来るのにそれはもう走った、全力で走った。

なにせ、四天王が追いかけてくる可能性を考慮して相当な距離を逃げてきたのだから、体力の限界ぎりぎりを迎えても無理はない…。

 

教会に到着するなり、すぐさま救助することが出来た二人を部屋に連れてそれぞれに手当てを施したのを確認したイストワールは緊張の糸がそこで切れたのか、部屋に戻るなり崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

今になって息切れをしているイストワールを見兼ねてかケイブが水の入ったコップを差し出し、震える彼女の体を落ち着かせるためにその背中を5pb.が優しく撫で始めた。

 

「イストワール様、これを…」

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

受け取るとすぐにそれを口に流し込み、喉の渇きを潤す。

 

なんとか一息つくことが出来たイストワールはすぐに自分に水を渡してくれたケイブと隣の5pb.に視線を向ける。

 

「ケイブさん、5pb.さん、助けてくれたことには感謝します……しかし、なぜあなたがあの場に? それに、この方たちは……」

 

「それに関しては、“彼女”から直接聞いてください」

 

ケイブはそう言うと、イストワールの視界から外れた。

すると、今度はそれと入れ替わるようにある人物が彼女の前に現れた。

 

 

「やあ、イストワールさま」

 

「ファルコムさん! 怪我はもういいんですか!?」

 

「うん、おかげで少しはマシになったよ」

 

 

まだ体の所々に包帯を開いた状態のファルコムがイストワールに軽く手を上げて挨拶を交わすと、その隣にケイブと5pb.が並ぶように立つ。

 

「実は、この場にいるみんなは私やファルコムの昔からの馴染みなのです」

 

「ボクたちみんな、ファルコムさんに呼ばれてきたんです」

 

「どうにも嫌な予感がしてならなかったからね……ケイブやみんなに私が呼び掛けて、ギャザリングフォレストに向かって貰ったんだよ、もしもの時はみんなの手助けをしてあげてってね」

 

「そうだったんですか…ありがとうございます、ファルコムさん」

 

予想外の援軍を用意したのは、ファルコムだった。

イストワールはそれを知り、彼女に礼を言うとファルコムは照れくさそうに自分の頭を掻く。

だが、その隣にいる5pb.はどこか悔しそうな表情を浮かべる。

 

「でも………ベール様や……他の女神様達が……」

 

彼女の言葉に、イストワールは彼女たちも新・犯罪神によって他の女神達が命を散らす瞬間を目にした瞬間を見たのだと悟った。

現に、まわりにいる他の者たちもそれぞれがやるせない表情を浮かべている。

 

「………ネプテューヌさまだけは助けることができたけど……これからどうなるんだろう」

 

「……どうなるもなにも、こんなこと他の国の人達が知ったらそれこそ大パニックだよ」

 

「サイバーコネクトツーの言う通りだ……この情報は、普通の人間には受け入れがたいだろう……」

 

不安そうな表情を浮かべる鉄拳の言葉にサイバーコネクトツーとMEGES.が答える。

確かにこんな事態になってしまい、国の主導者が突然消えたとなっては国民たちは動揺するだろう…。

今の状況だけでも由々しき事態なのに、パニックが起きればそれこそ取り返しがつかないことになってもおかしくはない。

 

「幸いにもまだ他の国にはこの情報は出回っていない……さっきアイエフが情報規制をするように手回しはしておくと言っていたけど、このままにしておくわけにはいかないのも事実……」

 

「………そうですね、しばらくの間はこのことは秘密にしておきましょう……ともかく今は、現状を何とかしない限りは………」

 

「……ねえ、ネプちゃんはどうしたのかな?」

 

ケイブとイストワールがこの事実については機密事項としようと相談する中、マベちゃんと呼ばれていた少女がネプテューヌのことを聞いた。

ネプちゃんと言うには、ネプテューヌのあだ名と考えて間違いはないはずだと思ったイストワールは彼女に質問した。

 

「あの、失礼ですが……あなたは?」

 

「あ、私は“マーベラスAQL”って言います! ネプちゃんとはちょっと前に知り合った仲で…」

 

そう答えた彼女、マーベラスAQL曰く、ネプテューヌとは以前にとあるきっかけで知り合った仲なのだという。

自分の知らない所で関係を作ってくることはある意味彼女の才能なのかもしれない、と感じつつ、イストワールはマーベラスAQLそっとお辞儀を返した。

 

すると、そこへ帰ってくるなりネプテューヌの部屋にネプテューヌと一緒に入って行ったアイエフがリビングに入ってきた。

 

「ねぷ子は……しばらく、休ませておいた方がいいかもしれないわ……」

 

いつから話を聞いていたのかは知らないが、そう言ったアイエフはマーベラスAQLの前を通り過ぎてイストワールの隣に立った。

遅れてダメージを受け、怪我をした宗谷の治療を行っていたコンパも部屋に戻ってきてアイエフの近くに移動する。

 

「目立った外傷はないんだけど……心のダメージが深刻みたい……」

 

「……やはりですか」

 

あの時、イストワールはネプテューヌの姿を見て多少なりとも覚悟はしていた…。

魂が抜けたようにうつろな目をして、力なく項垂れた彼女の姿…。

ネプギアの死を目の当たりにした彼女の精神的なダメージはかなりひどいと考えて間違いないだろう…。

 

「………でも、さすがにあれは………」

 

「む? どうかしたにゅ?」

 

訝しげな表情を浮かべ、そう呟いたアイエフにブロッコリーと言う名の二頭身少女が首を傾げる。

それにつられて、その場にいた全員が一斉にアイエフの方に目を向けた…。

 

「………ここに連れて来てからも、ねぷ子はずっと何も反応しないまま、ネプギアの名前を繰り返すくらいの反応しか見せなかった……この時点でも相当に精神がまいってるのはわかってたんだけど……」

 

そう言った後、アイエフが重苦しそうに言葉を溜めて、こう続けた………。

 

 

 

「少し目を離した隙に………あいつ、“遊んでたのよ”……ゲームで、無邪気に……」

 

 

 

その言葉に、その場にいた全員が最初何を言っているのかわからないでいた…。

 

「それは……一体どういう……?」

 

イストワールが、理解しがたい発言をしたアイエフの発言に質問を投げかけると、アイエフは複雑な表情を浮かべながらもリビングからネプテューヌの自室へと向かう廊下に繋がっているドアの前へと移動した。

ドアを開けて、手招きをするアイエフにその場にいた全員がついていく…。

 

しばらくして、ネプテューヌの部屋の前に辿り着いた一同はアイエフが人差し指を立てて静かに、と言う意味を込めたサインを出したのを見て口を閉ざした。

 

すると………

 

 

 

「………これ、ねぷちゃんの声……だよね」

 

「ネプテューヌ様………笑ってる」

 

 

 

それは、今の現状からは考え付かないような声だった。

ネプテューヌのドアの向こうから聞こえてくるのは、いつも彼女が楽しげに上げていた無邪気な“笑い声”だった。

そして、時折誰かと会話するような話し声も聞こえてくる。

一体誰と話しているのか、一体なぜ彼女は笑っているのか、イストワールには理解できない事だった……。

 

「………今のねぷ子は現実を受け入れられるほどの精神状態じゃない………あの子はたぶん、日常を送ってるの………」

 

「日常……?」

 

「そう………ネプギアと一緒に遊んでた、“いつもの日常”を………」

 

何を言っているのか…。

ネプギアは彼女の目の前で完全に消えたはずなのに、彼女はなぜネプギアと遊んでいるのか…。

 

それは、想像もしたくない出来事…。

 

イストワールの心中にとてつもない悪寒が走った…。

 

そんな、まさかとイストワールは意を決してそっと目の前の扉に手を掛ける。

ドアノブを回して、ほんの少しだけ隙間を開け、その間からゆっくりと中を覗き込むと……。

 

 

 

「あっははははは! ネプギア~、ダメだよそこで攻撃したら…… 最初は魔法でステータスガンガンあげていくのが効率いいんだって…… ベールが言ってたんだ~……」

 

 

 

そこには、いつものネプテューヌの姿があった。

 

天真爛漫な笑顔を浮かべ、無邪気に会話をしながら備え付きのテレビに繋がれたゲームのコントローラーを操作するネプテューヌ。

 

だが、そのテレビには何も映っていない…。

 

ゲームにも電源は入っていない…。

 

そして、会話の相手であるネプギアの姿も、当然……そこにはない……。

 

 

 

部屋でたった一人、まるでそこにネプギアがいる様に振る舞うネプテューヌの姿が、そこにはあった……。

 

 

 

「ネプ……テューヌ……さん……」

 

 

 

そのあまりにも受け入れがたい光景に、イストワールは反射的に息を飲み、口を手で覆い、驚愕に目を見開いた。

それもまた、あまりにも残酷な現実だった…。

異常な行動を見せるネプテューヌの姿を見たイストワールは気づいたら夢中で部屋の中に飛び込んでいた。

すぐにネプテューヌの傍によって彼女の肩に手を置いてその体を揺する。

 

「ネプテューヌさん! どうしたんですか!? 何をしてるんですかあなたは!」

 

「へ………? あぁ、いーすんか…今ね、ネプギアとゲームしてたんだ……ここのステージね、すっごく難しいから……手伝ってもらおうかなって……」

 

「……ネプギアさんって……何を言ってるんですか? ネプテューヌさん……」

 

「え? どうしたのいーすん、ここにいるじゃん……ほら、ここに」

 

そう言って自分の隣を指さすネプテューヌ、だが当然そこにはネプギアの姿はない…。

 

そして、イストワールがこの時に見た彼女の瞳は、ひどく空虚で何も映っていなかった…。

 

「あっ……あぁ…!」

 

気付けばイストワールは後退り、その場に蹲って涙を流していた。

あまりにも惨めで、虚しくて、辛く、酷すぎる彼女の姿…。

こんな状態の彼女に対して自分はどうしていいのかわからない…。

自分は結局、“無力”なままなのか……。

思いを寄せる人を守ることが出来ず、こんな状態になってしまった彼女も守ることが出来なかった自分の無力さが、イストワールは許せなかった…。

 

静かに泣き崩れたイストワール、そんな彼女の姿を見て、ネプテューヌがどうしたのかと近寄る。

 

「……いーすん、どうしたの? なんで……泣いてるの? ……もしかして、お仕事サボってたのがいけなかった? だったら、私……ネプギアと一緒に行ってくるからさ、だから、泣き止んでよ……ねえ、いーすんってば……」

 

彼女を気遣って言っているのであろう、その言葉でさえ、今のイストワールには辛いものでしかなかった……。

 

 

これが、悲劇が招いた結果……。

 

 

絶望の連鎖は、終わらないのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここは………どこだ?)

 

無限に続く暗闇の中で、宗谷はふと意識を取り戻した。

まわりには何もない、あるのは自分の姿だけ……。

一体どうして自分がここにいるのか、訳も分からないまま宗谷はあたりを見回しながらさっきまで自分が何をしていたのかを必死に思い出そうとする。

 

 

 

「っ!? ぐっ………!!」

 

 

 

すると、彼の脳裏になにかの映像のように様々な光景が突然流れ込んできた。

 

それはすべて、新・犯罪神によって次々とその命を散らしていった、女神達の姿だった。

 

突然流れ込んできたその光景に、信じられないといった表情を浮かべる宗谷だったが、すぐにそれが現実のものだと理解した。

理解できてしまった…。

夢と言うにはリアルすぎる…幻と言うにはよく出来すぎている…嘘と言うには現実を帯びすぎていると彼の直観がそう告げたのだ…。

なぜかはわからない、だが、それが自分が意を失ってから起きた現実だということは反射的にだが、理解することが出来てしまった。

 

その光景を目の当たりにし、すべてを悟った宗谷はその場に崩れ落ちる。

 

 

 

「………俺は………俺は………また、守れなかったのか………何もできず………みんなが死んでいくのに………俺はまた、何もできないまま………何も救えないまま………!」

 

 

 

その現実はあまりにも残酷で、宗谷の心に眠っていた深い傷を再び呼び起こすには十分すぎる物だった。

かつて、この世界に迷い込む前にも守ることが出来なかった大切な仲間たち……。

また自分は、守ることが出来なかった……。

何も、出来なかった………。

 

絶望に打ちひしがれる宗谷は、目から悔しさと悲しみ、そして怒りと言った感情が入り交ざった涙を流しながら、声にならない声で一度、吠えた。

 

暗闇の中で彼の声が黙礼する…。

 

彼の周りには、もう、だれもいない……。

 

「なにが………なにがヒーローになるだ……! 何がみんなを守るだ!! 結局守れてねぇじゃねぇか……!! チクショウ………チクショウ………!」

 

すべてに絶望し、地面かどうかすらわからない目の前の闇を殴りつけて泣き続ける宗谷。

たった一人、何処かもわからない空間の中で悲しみに暮れる宗谷……。

これもまた、悲劇が生み出した絶望の連鎖なのか……。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、目を覚まして早々泣き出すなんて……カッコ悪いんじゃないかな~? そこの少年くん?」

 

 

 

 

 

 

 

突然、絶望に打ちひしがれる宗谷の耳にどこか聞き覚えのある間の抜けた声が聞こえてきた。

だが、その声はいつもと違った印象を含んでいた…。

いつも跳ねまわっているような元気な彼女の声、でも今の声はどこか違っていた…。

 

咄嗟に顔を上げた宗谷はその声が聞こえた方向、自分の真正面に目を向けた。

 

そして、そこには“彼女”がいた。

 

だが、その容姿はかなり違っていた。

 

服装はいつも来ているジャージとワンピースを足したような服装ではなく、パーカーとワンピースを合わせた様な服装。

彼女のトレードマークと言える十字キーの形をした二つの髪留めはそのままだが、その髪はいつもよりも明らかに伸びていて、腰辺りまである。

背丈も大きくなっていて、なにより体格と言うか………不謹慎ではあると思うが、明らかに彼女にはなかったはずの胸が明らかに大きくなっている…。

 

その人物は、見慣れた容姿ではなかった…。

 

だが同時にその人物が何者なのか、宗谷はすぐに分かった……。

 

彼女は………。

 

 

 

 

 

「………ネプテューヌ?」

 

「ぴんぽん、ぴんぽ~ん! だいせいか~い♪」

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは“大人の姿をしたネプテューヌ”だった……。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

え~…かなり陰鬱なシーンが存在しましたが…。
これでいいのです。

そして、終盤に登場した、大人ネプテューヌ!!

彼女との出会いが宗谷に何をもたらすのか!

次回、突然宗谷の前に大人ネプテューヌはなぜ現れたのか!

それでは、また、次回でお会いしましょう!
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