今回のネプおばは、前回の鬱展開から新たなステージへ!
意識を失い、暗闇に包まれる世界の中で大人になったネプテューヌと出会った宗谷。
果たして彼女は何者なのか…彼女はなぜ現れたのか!
それではお楽しみください!
どうぞ…。
ギャザリング・フォレストに突如として出現した巨大な城、ギルティキャッスル。
様々な機会のパーツが無造作に積み上げられ、無理矢理城の形にしたかのようなその外観の城は、今のギャザリング・フォレストの荒廃した姿と合わさって形容しがたい、ただならぬ不気味な雰囲気を醸し出していた。
その城の内部、最上階に位置する一室ではこのギルティキャッスルの城主、新・犯罪神とそれに使える四天王の四人が集まっていた。
内部も外観と同じように、いくつもの機械パーツで構成されたような造りをしている上に、薄暗いため内部の雰囲気もあまりに物々しい…。
新・犯罪神は疲弊した様子でその部屋の奥にある玉座に座り、今も尚苦しんでいる様子だった。
その傍らには四天王の中でも有力な力を持つとされる、マジック・ザ・クイーンが寄り添っていた。
「新・犯罪神様、どうかお気を確かに……今のあなたには、成すべきことがあるのです」
「………言われずとも、分かっている………!」
彼女の気遣いの言葉を、気遣いのつもりか方に置かれたその手と一緒に手荒く払いのけるようにしてそう言った新・犯罪神は腰に刺している魔剣ゲハバーンの柄に手を置く。
「あと一人………あと一人を葬ることが出来れば………私の計画が完遂される……!」
新・犯罪神はそう呟くと玉座から立ち上がり、その裏に回り込んだ。
玉座の裏には、割れたハートマークの様な紋章が壁に刻まれており、新・犯罪神がその紋章に手をかざすと、紋章が淡く輝いた。
すると、玉座の裏にあった壁が僅かに震えた、そしてさっきまで壁でしかなかった部分に光が駆け巡り、壁を構成していた部品たちがゆっくりと動き始め、壁だった場所にぽっかりと穴が開いた。
穴の奥には上へと繋がる階段があり、新・犯罪神はその階段を一段一段昇っていく。
新・犯罪神の後姿をマジック・ザ・ハードはその場で見送ると一度軽く頭を下げてから踵を返し何処かへと向かった。
一方の新・犯罪神は彼女のことを気にする様子もなく階段を昇っていく、果てしなく続いている長い階段を新・犯罪神はゆっくりと昇っていく。
先程から感じる頭の痛み、これは恐らく自分自身に課せられた戒めの代償によるもの、頭の中に響く鈍痛な痛みに耐えながら新・犯罪神はやっとのことでその階段を昇り切った。
階段の先にあったのは、外の光景だった。
ギルティキャッスルの屋根の上、最上階の上に建てられたその上になぜ新・犯罪神が向かったのか、その目的は彼女の視線の先にある物が深く関わっていた。
天に向かって高くそびえ立つ、巨大な装置。
ギルティキャッスルに張り巡らされている機械の部品と繋がるように伸びたそのコードをあらゆる所に繋げたその装置には、装置の周りを取り囲むように8つの小さなカプセルの様な物が組み込まれている。
そして、その装置の手前には小さな台座が置かれており、これも装置と繋がっているのかいくつものコードが装置に向かって伸びている。
新・犯罪神は腰に刺した魔剣ゲハバーンを引き抜き、その台座に近づくと右手に握るゲハバーンを逆手に持ち直し、足元にある台座へとその刃を突き立てた。
その途端、装置が息づいたかのように動き出し、魔剣ゲハバーンに灯っていた淡い光がコードを通って装置の中へと注ぎ込まれていった。
装置の周りを取り囲んでいた8つのカプセルの内、7つのカプセルに緑、白、黒、そして紫の光が満タンになるまで注ぎ込まれる。
そして、カプセルの内1つを残して、他の7つが溜まったのを確認したように、装置はそのまま駆動音を大きくし始めた。
大きく振るえる装置、カプセルの中に溜まった光を動力源にしているのか色鮮やかな光をまるで電流のように装置全体に駆け巡らせ、それを装置の上部にチャージし始める。
「………世界を、“リメイク”する………まだ全部揃っていなくても、これだけ集まればこのゲイムギョウ界の作り直しには十分なエネルギーを作り出せる……!」
その言葉に答えるように、装置は唸りをあげて装置の先端に備えられたアンテナにチャージされた光を上空に打ち出す。
まっすぐに空に伸びていった光、それはやがて四方にはじけ飛びギルティキャッスルの周りの地面に落下し、染み込むようにして消えた。
そして、それを合図にしたかのように荒廃した森がさらなる変化を遂げ始めた。
徐々に広がっていくように、黒く枯れた木で覆われた森が壊れた機械で埋め尽くされた見たこともない不気味な大地へと姿を変え始めた。
「向こう側………“ギョウ界墓場”と繋がり始めた………後は、残った一人を………この世界のネプテューヌを仕留めれば……!」
新・犯罪神は姿を変えていく森を見下ろしながら、一度被っていた仮面を外した。
仮面の中に収められていた長い髪が広がり、素顔をあらわにした新・犯罪神はその眼で残りの一人が逃げたと思われる先を見つめる。
その先にあるのは、プラネテューヌ………。
「何としてでも仕留める……私の理想の世界のために……!」
新・犯罪神を見送ったマジック・ザ・クイーンは玉座の間に傅く残りの四天王達の前に移動すると大きな鎌を床に突き立てて三人に視線を向けた。
「……我らが犯罪神様の統べる、新世界の創造のため……何としてでも、取り逃した最後の一人……プラネテューヌの女神、パープルハートを捕える」
マジック・ザ・クイーンの指示を受け、残りの三人はそれぞれの反応を示しながら立ち上がる。
「今度こそ逃がしはしない、この剣に誓って何としてでも紫の女神を犯罪神様の元に連れてこようぞ!」
「………承知」
「………はぁ~」
剣を振り上げ、意気込みを見せるブレイブ・ザ・ナイトと主君の命令を忠実に成し遂げようという意思を見せるジャッジ・ザ・ビショップ。
だが、ただ一人、トリック・ザ・ルークだけはどこか乗り気ではない様子で深くため息をついた。
その様子に機嫌を悪くしたのか、ブレイブ・ザ・ナイトが長剣の切っ先をトリック・ザ・ルークに向ける。
「貴様、なんだその態度は! これは新・犯罪神様のためなのだぞ!」
「いやわかってるよ? わかってんだけどよぉ、ブレイブの旦那………こっちはさぁ、仕方ないとはいえ一番のお気に入りだったロムたんとラムたんを………はぁ~……」
「貴様……! それでも新・犯罪神様に使える四天王か!!」
完全に私利私欲にまみれた物言いに、遂にブレイブ・ザ・ナイトは我慢の限界に達したのか長剣を振り上げてトリック・ザ・ルークに切りかかろうとする。
だが、その刃をマジック・ザ・クイーンが得物の鎌で受け止めた。
「やめろ、ブレイブ……」
「マジック! しかし…!」
「やめろと言っている、仲間割れをしている暇があるならいち早くプラネテューヌに赴いた方が効率がいい…」
「………くっ!」
マジック・ザ・クイーンの言葉に、渋々引き下がることにしたブレイブ・ザ・ナイトは長剣を納める。
そして、彼を止めたマジック・ザ・クイーンはと言うと大鎌の切っ先を戻した。
「だが……」
しかし、次の瞬間、目にも止まらぬ速さで大鎌の切っ先が息づいたかのように駆け抜け、その切っ先がトリック・ザ・ルークの首元に突き付けられた。
「貴様もだトリック……貴様の性格上、仕方のないことと割り切ってはいたが……これ以上、余計な口を叩くならここで貴様を屠っても構わんのだぞ?」
「………う、うっす…マジすんません、マジック姐さん……俺様、調子こいてました…!」
仮面の奥から覗く絶対零度の如き、冷たい瞳…。
その眼で睨み付けられたトリック・ザ・ルークは首筋に突き付けられた鎌による脅しもあってか、若干身を震わせながらこくこくと頷いて見せる。
トリック・ザ・ルークのその様子を見たマジック・ザ・クイーンは大鎌を再び地面に突き立てる。
さすがにああいった手前、もう先程のような態度はとれないと判断したトリック・ザ・ルークは慌てて姿勢を正すと、それに合わせてマジック・ザ・クイーンも視線を四天王から離し、別の方向に向けた。
「残りの女神討伐のために、ある者からこちらに新たな手駒が送られてきている………私たちはこれより、その者たちと共にプラネテューヌに赴く……」
「で、で、マジック姐さん……そのある者ってのは?」
ワザとらしく手をすり合わせてそう聞くトリック・ザ・ルークに、マジック・ザ・クイーンは大鎌を視線の先に向けた。
すると、その先には白髪の髪を一つ結びにし仮面で顔を隠した黒いコートの人物がいた。
その後ろには四つの影が控えており、大きさはそれぞれ違うがどれも異質な姿をしていた。
「奴は我ら四天王の集結に当たり協力を申し出てきた者だ……我らの魂をこちらの世界に呼び込んだ者の仲間でもあるらしい……」
「そういうことだ……俺はエネミー、お前達には期待してるぜ?」
マジック・ザ・クイーンの紹介を受けて、一歩前に出たエネミーはそう言いながら仮面の奥にある目で四天王たちを順番に見据えていく。
(……ただでさえ厄介なそうな奴らが揃ってるのに……これ以上の戦力強化はほんまに無理ゲーでしかないんやけど……)
胸の内で毒づく、エネミーことヤエ。
しかし、これも彼の指示の一つだ、集結した後はこちら側からも増援を用意し、徹底的な戦力強化を図れと…。
だが、今の状況を見ても、これ以上の戦力強化は本当の意味で追い打ちでしかない。
ただでさえ宗谷が本当の進化を遂げていない上に、女神も一人しか残っていないのにこれ以上敵側を強化したら、それこそ本来の目的を成しえる以前にこの世界が滅んでもおかしくない。
この試練は無謀だ、無謀としか思えない…。
彼は本当に何を考えているのか……エネミーは仮面の下で苦い顔をしつつ、仕方なく四天王たちに後ろで控える増援の戦士を見せる。
新たにエネミーが用意したのは以前と同じ、“コピペロイド”によって実体化させたこことは違う異世界の、ひいては宗谷の世界の物語に出てきた宿敵達で構成された精鋭達だ。
新・犯罪神に四天王、さらには異世界の強敵……こんな相手に今の宗谷達が太刀打ちできるのかエネミーは不安しか感じていなかった。
(……ほんまになんか考えがあるんかいな……あのアホは……)
エネミーはそう思いながら、四天王たちの視界から外れる。
「ほう…こやつ等が……どれも異質な姿をしているが、本当に頼りになるのか?」
「どれも相当な力を持ち合わせているらしい、この者たちと我が先兵たちを使い一気にプラネテューヌに攻め込めば、いずれパープルハートも姿を現すだろう…」
この異世界の強敵達と彼女たち四天王が手を組んで戦う。
もうそれだけでも恐ろしい戦力だ、エネミーが内心で冷ややかに思いながら仮面の下で再び苦悶の表情を浮かべる。
するとマジック・ザ・クイーンが、エネミーに再びどこか冷たい視線を向ける。
「………ご苦労だった、後は好きなようにしろ」
「………それじゃ、ほどほどに頑張ってくれよ」
エネミーはマジック・ザ・クイーンにそう返すとその場を後にした。
ギルティキャッスルの中を駆け下りながら、彼女は真っ先にある場所を目指した。
自分たちに指示を出した、彼がいるはずのあの場所へと……。
宗谷はあまりにも突然の人物の登場に気が動転してしまった。
まわりが真っ暗な何もない世界で突然目の前に成長したネプテューヌが現れたのだから軽く混乱しているのか、動揺しているのかは自分でもわからない。
だが、成長しているとはいえ、彼女はネプテューヌと見て間違い。 それだけは直感的に理解できた。
「……本当にネプテューヌ、なんだよな?」
「うん、そうだよ! 別に偽物とか、ドッペルゲンガーでもなければ機械生命体とかでもないから安心して♪」
「………でも、なんで大人に?」
「え? ………ああ、そうかこっちの私はまだ成長してないんだったっけ?」
大人になったネプテューヌ、仮に大人ネプテューヌと呼ぶとして、彼女はそう呟くと視線を明後日の方向に向けて首を傾げた。
その仕草は何というか、大人っぽい姿に子供っぽさが合わさって何とも言えない魅力を感じさせる。
あのネプテューヌが大人になるとこんなにも魅力的になるのか…宗谷は半ば驚きつつも彼女の今後の可能性に期待を膨らませてしまった。
「………って、そうじゃなくて!」
その期待を無理矢理抑え込んだ宗谷は首を左右に振って大人ネプテューヌに詰め寄った。
「あのさ、なんであんた……大人のネプテューヌがいるんだよ! っていうか、ここはどこなんだよ! 今俺こんな所にいる場合じゃ…」
「どーどー、まあまあ今は落ち着きなよ?」
そう、今のゲイムギョウ界はとてつもない危機に陥っている。
何とかしなければいけない、そう感じた宗谷は大人ネプテューヌにそう言い詰める。
だが、彼女は宗谷に両手を向けて落ち着くように促すと、少し距離を開けてこほんと咳払いをした。
「……まず、いろいろ話すことがあるんだけどまずは私の事から説明するね? 私は君も知ってるプラネテューヌの女神のネプテューヌ、だけど、私は君の知っている私じゃないんだ」
「……俺の知ってるネプテューヌじゃない?」
「うん、私はね、簡単に言うと“このゲイムギョウ界とは違うゲイムギョウ界”にいた私なんだよ」
彼女はそう言うと、自分のパーカーのポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
いつも彼女が着ていた服装と色合いが似ている淡い紫と濃い紫が混じった色合いのパーカーとワンピースが合わさったような服装。
そのポケットから出てきたのは数個の棒付きキャンディだった。
彼女は左手にキャンディを一つ持つと、もう片方に色違いのキャンディを持ってそれを並べる。
「世界っていうのはね一つだけじゃないんだよ、似てるけどちょっと違った道をたどっている世界……私はね、その世界にいた私なの」
二つのキャンディを世界に見立てているのだろうか、宗谷にそう説明した大人ネプテューヌは持っていた片方のキャンディの包み紙を開けるとそれを口の中に入れた。
「………パラレルワールド………平行世界ってやつか」
「うん、もしくわ多次元宇宙とか、マルチバースとか言われてるね……あんまり驚かないんだね?」
「………まあ、お前と同じように違う世界から来たやつとか、知ってるからな……」
宗谷はそう言うと、異世界で出来た自分の友人の姿を思い浮かべる。
彼らの存在があるということ、そしてそこには彼らが生きている世界があったということ、今更その存在を追及したら彼らの存在を否定してしまうことになる。
故に宗谷は既にパラレルワールドの存在を認識はしていた。
「………でも、なんでそのパラレルワールドにいたネプテューヌが、ここにいるんだよ」
宗谷はまだ解決していない疑問を彼女に再び投げかける。
すると、彼女は口に含んでいた棒キャンディを歯で噛み砕くと、半分に割れた棒キャンディを口から出してそれを宗谷に見せつけた。
「実はね、私がいた世界……つまり、こことは違うもう一つのゲイムギョウ界はもう滅んじゃったって言ってもおかしくない状態なんだよ……」
「なんだって………!?」
伝えられた衝撃の事実に、宗谷は目を見開く。
だが、大人ネプテューヌはさらに問いに対する答えを続けていった。
「……私のいた世界はね、ある日を境に“犯罪神”って呼ばれる奴によって荒らされ始めたんだ……シェアを奪われて、世界を好き勝手にしようとして……もちろん、私たちも何とかしようと頑張った、けど思ってた以上に犯罪神の力は強くて……私や、ノワールたちはみんな捕まっちゃったんだ」
「………お前の世界にも犯罪神が………」
「…でもね、こっちの世界のネプギア達が頑張ってくれたんだよ? 捕まった私たちを助けようとして、私たちが捕まっているギョウ界墓場まで助けに来てくれて…一度はうまくいってたんだ、だけど……それも長く続かなかった」
大人ネプテューヌはどこか沈んだ顔でそう呟くと、俯きながら静かに口を開いた。
「………魔剣ゲハバーンを使う、その時までは………」
「っ!」
その言葉に、宗谷は再度驚いた。
魔剣ゲハバーンはこの世界以外にもあったというのか、その事実も驚きだが彼女の“使う”という言葉の意味にも宗谷は身震いを感じていた。
「使うって……まさか、お前たちが魔剣ゲハバーンを使ったのか? 女神殺しって呼ばれてる、あの魔剣を!」
宗谷の問いかけに、大人ネプテューヌはこくりと頷いた。
「私の世界に会ったゲハバーンは、他の女神の命を吸ってその力を蓄えるって言われてたんだ……犯罪神を倒すには、もうゲハバーンを使う以外の道はなかった……だから、私たちは他のみんなと戦って……」
それ以上は、大人ネプテューヌは話さなかった。
これ以上は言わなくても、大方想像はついてしまうからだ…。
その事実に耐えきれなくなったのか、宗谷は大人ネプテューヌの両肩を掴み、強く言い寄る。
「………なんで……なんで、そんなことを!」
「………その時の私たちには、これしか道がなかったんだ………今思えば、もっとほかのやり方があったかもしれない……そうすれば、あんな未来には……」
大人ネプテューヌはそう言うと、持っていた半分掛けたキャンディを呆然とする宗谷の口に無理やり押し込んだ。
「むぐっ!?」
「………女神の力を吸ったゲハバーンによって、犯罪神は倒せた……そして、唯一残った女神はたった一人………残されたあの子は、一人でゲイムギョウ界を纏めることになった………でも、他の国にいた国民からしたら、それはただの“支配”でしかない……」
俯いたままの彼女はそう言うと、宗谷の口に押し込んだ棒キャンディの棒から手を離した。
「一体どこからそんな情報を手に入れたのか、他の女神が同じ女神の手によって殺されたと知った他の国の人達は統治していいた残された女神に対し、クーデターを起こした………それによって、そのゲイムギョウ界に起きた争いの種は次第に大きくなって……それはやがて、戦争に変わったんだ……」
「………」
大人ネプテューヌの口から出た、あまりにも悲惨なその世界の結末、小さなクーデターから発展した大きな戦火は、やがてその世界そのものを崩壊に導いた…。
その先は言わずとも、どうなったのか宗谷には理解できてしまった…。
戦争によって生まれるのは、深い悲しみと深い爪痕だけ……。
恐らく、その世界はもう………。
「……今思えば、それ間接キスだよね?」
「っ!? な、なんだよ急に!?」
「あははっ! 赤くなっちゃって~意外と君、かわいいね♪」
折角シリアスな雰囲気になっていた空気を、大人ネプテューヌは何気ない言葉で一気にぶち壊した。
確かに気になってはいたがと、口に無理やり押し込まれた棒キャンディを慌てて出した宗谷に、大人ネプテューヌは悪戯っぽい意志を込めた笑顔を向ける。
「まあ、私が何者なのかはこれでだいたいわかっちゃったかな?」
「………まあ、大方は」
「じゃあ、私についての説明が終わったところで、次は君の番!」
「……俺の?」
大人ネプテューヌは宗谷にそう告げてびしりと指さすと、宗谷は首を傾げる。
次は自分の自己紹介をしろと言うことなのだろうかと考える宗谷だが、その前にネプテューヌが真っ先に口を開いた。
「ぶっちゃけて言うと、君の中にはね、様々な世界の理の中でその影響を受けずにそれを受け入れることが出来る力が備わってるんだよ」
あまりにも突然の説明に、宗谷は再度首を傾げる。
というか、そもそもネプテューヌはこんな知的なことを言うキャラだっただろうか?
成長して、結構膨らんでいる胸と一緒にそのあたりの容量も増えたということなのだろうか?
そんなことを考えている宗谷を無視して、大人ネプテューヌは話を続ける。
人差し指を立てて、得意げな微笑みを大人ネプテューヌは宗谷に向けた。
「通称、“特異点”! 特定の人にしかない超ウルトラレアな能力だよ! 課金してもなかなか手に入らないくらいの!」
「……その“特異点”が、俺ってことか?」
大人ネプテューヌの言う、特異点。
彼女の言う言葉の意味をいまいち理解できていない宗谷は疑問が募るばかりだ、だがそれがかなり珍しい力と言うことだけは彼女の言動から何となく理解はできる。
課金と言う言葉のせいでどこまですごいのかはイマイチわからないが……。
「うん、その通り! でもね、さっきも言ったけどある特定の人は君と同じように“特異点”としての能力を持ってるんだよ」
「俺以外にも……?」
「でも、君はまだその特異点の力を完全には引き出せていない……特異点の力を最大まで引き出すことが出来れば、今の君は……もっと強くなれる」
その言葉に、宗谷は反応した。
今はまだ完全には引き出せていない、特異点の力、それを引き出せれば新・犯罪神に対抗できるかもしれない。
大人ネプテューヌは表情を変えた宗谷を見て、何かを察したのか彼に背を向けてゆっくりと歩きだした。
「………このプラネテューヌからずっと北の方角に、“聖地・クロスオーバー”って場所があるんだ………そこに、君の特異点の力を最大限に引き出すために、同じ“特異点”としての力を持った人たちがいる」
「え? ………お、おい!」
次第に遠くなっていく彼女の背中に宗谷は手を伸ばすが、既に彼女はかなり遠い距離まで離れている。
すると、ふと宗谷の頭の中に大人ネプテューヌの声が聞こえてきた。
―――この世界の私たち………それと、あの娘を助けてあげてね………
その言葉を最後に、宗谷の目の前が急にホワイトアウトした。
そして、気付くとそこは見覚えのある部屋、プラネテューヌ教会の宗谷の自室だった。
プラネテューヌ教会のリビングでは、イストワールが一人力なく椅子の上に座り込んで俯いていた。
精神が追い込まれ、あんな状態になってしまった彼女に何もしてやれない自分の無力さ、それに対して強い悔しさを堪え切れなかったイストワールは一人その場で泣き崩れた。
そして、ややあって部屋に戻ったイストワールは一人、酷く落ち込んでいた。
「………私は………」
「……イストワール様」
その様子に、アイエフとケイブや5pb.達も心配そうな表情を浮かべる。
このままネプテューヌの精神状態が回復しないままだったら、どうすればいいのだろう…。
言い知れぬ不安感がアイエフを駆り立て、やがてそれは全員に広がりつつあった。
すると、突然静まり返っていた部屋のドアが勢いよく開け放たれた。
「た、大変です! 宗谷さんが……宗谷さんが……!」
ドアを開け放ったのは、コンパだった。
今先程彼の様子を見に行くと言って部屋に戻って行ったのだが、かなり取り乱した様子で戻ってきたコンパにその場にいた全員が動揺した。
そして、宗谷に何かあったのかと俯いていたイストワールも顔を上げてすぐにコンパのそばに近づいた。
「落ち着いて、なにがあったの、コンパ?」
「宗谷さんになにかあったのですか!?」
コンパに詰め寄るアイエフとイストワール、息を切らせた様子のコンパは息を整えながら何があったかを二人に報告する。
「宗谷さんが………いないんです!! いつの間にか、部屋から抜け出しちゃったです!」
「え!? どういうことなのコンパ!」
「宗谷さん……!」
慌てるアイエフに対し、その言葉を聞いてすぐさま宗谷のいる部屋に向かったイストワール。
廊下を駆け抜けて、部屋のドアをすぐに開けて中を確認する。
すると、コンパの言う通りベッドに寝かせてあったはずの宗谷の姿は忽然と消えており、代わりに窓が開いていて、しかもベッドの上には何やら書置きが残されていた。
イストワールが動揺しながらもベッドの上の置かれた書置きを手に取り、それに目を通す。
『みんなを助けるための方法があるかもしれない、少しだけ行ってきます 宗谷』
そう書かれたメモを手に、イストワールは開け放たれた窓から外へと目を向ける…。
目を覚ましてすぐに部屋から飛び出した宗谷は変身し、スキル 家庭教師ヒットマンリボーンで生成したブーステッド・フィアンマを装備し、それによって得ることが出来る高速の推進力をフルに使って空を飛行していた。
彼が目指すのは大人ネプテューヌが自分に教えてくれた場所、聖地・クロスオーバー…。
北の方角をV.phoneで調べた宗谷はまっすぐにその方角を飛び続ける。
どのくらいの距離を飛んだだろうか、自分が出せる最大限のスピードで空を駆ける宗谷。
プラネテューヌの街を抜け、外にある森を飛び越え、海を越え始めた宗谷、一体どこまで行けばその聖地と言う場所があるのだろうか…。
すると、彼の視界にある場所が飛び込んできた。
「………あれは」
小さな離れ小島、それほど大きな島でもないがそこには何やら巨大な正方形上の舞台の様な場所があった。
小島にしては何やら妙なものでその全体を覆っているその場所を宗谷は不審に思い、一度その場所に降りてみることにした。
その小島に着地した宗谷はあたりを見回してみる。
神聖な遺跡を思わせる真っ白な石で敷き詰められた床、島全体を覆うように敷き詰められたその場所のいたるところに同じく白い意志で出来た柱が並び立っている。
明らかに普通の島ではない、何かの手が加わっているのは目に見えて明らかだった。
もしや、ここが聖地・クロスオーバーなのだろうか……。
「やっと来たか……待ちくたびれたぞ」
すると、突然背後から声が聞こえた。
宗谷が慌てて後ろを振り向くと、背後にあった柱の陰から何者かがゆっくりと出てきた。
そして、その人物の姿を見た瞬間、宗谷はマスクの下で大きく目を見開いた。
「あ、あんたは………!!」
その人物は、飾り気のない服装に身を包んではいるがその整った顔立ちと、首に掛けた“マゼンダの色合いが施されたトイカメラ”がいっそうに目を引く存在だった。
宗谷はその姿を知らないはずはなかった、何せ彼は彼の憧れたヒーローの中でもかなり特殊な力を持った存在の一人だったから。
その人物の名は………。
「“門矢 士”………仮面ライダー……“ディケイド”!?」
そう、彼の名は“門矢 士”、“世界の破壊者”とも呼ばれ、様々な平行世界を渡り歩くことが出来る唯一無二の仮面ライダーの一人、“仮面ライダーディケイド”だ。
「なんでこんな所に……あんたもヒーローメモリーなのか?」
「それは違うな、俺達はそのなんたらメモリーとかいうやつじゃねぇ」
突然の人物の登場に、真っ先にヒーローメモリーによるものかと疑いを掛けた宗谷。
だが、彼の発言に待ったをかけるもう一つの声があった。
その声に導かれ、宗谷が今度は反対側に視線を向けると、同じように柱の陰から出てくる一人の人物がいた。
まるで海賊を思わせる深紅の派手な服装、そしてその手にはカギと海賊が使うサーベルが組み合わさったような独特な紋章が刻まれた一丁の銃が握られている。
その彼また、宗谷を驚かせるには十分すぎる人物だった。
彼の肩書は、“宇宙海賊”。
広大な宇宙を駆け巡り、“宇宙最大のお宝”と呼ばれるものを目指した戦士の一人…。
「“キャプテン・マーベラス”……!?」
またの名を、35番目のスーパー戦隊“海賊戦隊 ゴーカイジャー”のリーダー、“ゴーカイレッド”こと、“キャプテン・マーベラス”。
続けざまに登場したヒーローの二人、だが宗谷は次の瞬間、さらに驚愕することとなった。
あまりにも突然の事に動揺する宗谷、だがそんな彼の頭上、はるか上の空が突然ぽっかりと穴をあけた。
異常なその現象に慌てて目線を上に向ける宗谷、空の上に突然開いた穴。
奥には真っ暗な暗闇が広がっている…。
しかし、その穴の奥から何かがこちらに近づいて来ていた。
光に包まれ、次第にその姿を大きくしていく。
やがてその影はどんどんと大きくなっていき、いや、違う、その影はあまりにも巨大な姿をしていたのだ。
そう、まさに“巨人”………“光の巨人”だ。
その巨人はそのまま空にあいた穴を通り抜けると、宗谷のいる小島の上にそのあまりにも巨大な身を浮遊させて制止した。
そして、改めてその姿を見た時、宗谷はもう言葉すら出せないほど驚いた…。
赤と青の色合いに銀色のラインが加わった体、胸と両手を覆う巨大な白銀の鎧、そして銀色の顔と輝く鋭い双眸、そしてその頭に備えられた二本の宇宙ブーメラン。
「よぉ、待たせたな!」
「う………“ウルトラマンゼロ”………!」
ウルトラ兄弟と呼ばれる、ウルトラマンの中でも特に強い力を持った者たち。
その中の一人、“ウルトラセブン”の息子にして、“ウルトラマンレオ”の弟子、そしてその身に纏う“ウルティメイト・イージス”と呼ばれる鎧を身に纏い、今は“ウルティメイトフォースゼロ”と呼ばれる宇宙警備隊を纏め上げる、ウルトラマンの一人。
“ウルトラマンゼロ”、彼もまた宗谷の心に強く印象を残しているヒーローの一人であった。
ゼロは宗谷を見つけると、身に纏っていたウルティメイト・イージスを解除し元の姿に戻ると両腕をクロスさせて自身の体を光で包む。
そして、そのまま宗谷達のいる小島へと降り立つと、その姿は宗谷の姿に合わせた人間代のサイズへと縮小していた。
だが、姿はウルトラマンゼロのまま、なんともシュールな光景である。
そして当の宗谷は、自分の周りに集結した三人のヒーローを前に動揺するばかりだった。
それもそのはず、途中でマーベラスが言った言葉、それをそのまま受け取るなら、つまり彼らはまぎれもない、“本物”のヒーローと言うことになるのだ。
「あ、あんた達……い、いいや! あなた達は本当に本物の!?」
「要領が悪いな……いちいち説明しないとわからないのか?」
「ああ、本物だ!? 俺様口調なその辛辣な言葉、まさしく本物の士さんだ!!」
一体何を基準にしているのだろうか、あまりのことに歓喜し始めた宗谷にウルトラマンゼロが深くため息をついた。
「はぁ……まったく、あの妙な仮面の奴に鍛えてほしい奴がいるって言われてきてみれば……」
「え………? 鍛える?」
ウルトラマンゼロの言葉に、宗谷は反応するとゼロはそうだと首を縦に振り、びしりと宗谷を指さした。
「この世界の事情は、大体把握してる……でも、その様子だとお前がこの世界を守るのは、2万年早いぜ?」
「………っ!」
はっきりと言われた言葉に、宗谷は無意識の内に後退ってしまった。
確かに、先の新・犯罪神との戦いでも自分は暴走した挙句に手も足を出ずに敗北した…。
そして、女神達は…。
仮面の下で歯噛みする宗谷、それを見たマーベラスは持っていた銃を仕舞いこみ、懐から携帯電話の様なアイテムを取り出して一歩前に出た。
「俺達も訳がわかんねぇうちにこの世界に呼ばれたからな、しかもそれがこいつを鍛えてほしいとは……海賊は何でも屋じゃなんだぞ」
宗谷を睨み付ける様に見据えたマーベラスは腕組みをしてそう言い放つと、今度は反対側にいる士がにやりと笑みを浮かべた。
「まあ、そう言うな……気に入らないんだったら、こいつを気に入る奴に鍛え上げればいい……少なくとも、俺はそのためにこの世界に呼ばれたみたいだからな」
「……え?」
「………まあ、それもそうか、だったら………派手にストレス発散と行くか!」
二人はそう言うと、互いの手に持っていたそれぞれのアイテムを取り出しそれを起動した。
マーベラスは携帯電話型の変身アイテム、“モバイレーツ”と赤い戦士の姿を象った鍵、“レンジャーキー”を構える。
そして、士は白いカラーリングに9つの紋章が刻まれたベルトのバックルを取り出すとそれを腰に当てがい、バックルの左右に備えられたサイドハンドルを左右に引くと、バックル部分が180度回転し、士は続けて一枚のカードを取り出す。
「ゴーカイチェンジ!」
『ゴー! カイジャー!!』
マーベラスは右手に持つレンジャーキーを鍵の形状に変えて前に突き出すと、それをモバイレーツに差し込み180度回転させる。
すると、モバイレーツから赤い光が飛び出しそれはマーベラスの体を次々と通り抜けてその姿を赤い、海賊を思わせるデザインのスーツとヘルメットで覆った。
この姿こそ、キャプテン・マーベラスのスーパー戦隊としての姿、ゴーカイレッド。
「変身!」
『KAMEN RIDE DECADE!』
そして、士は持っていたカードを裏返し、自身のベルト、“ディケイドライバー”のバックルに差し込むと左右に広げたハンドルを押し込みバックルを元の状態に戻した。
その瞬間、バックルから音声が鳴り響き、士の体をいくつもの灰色の影が重なるように覆い、やがてその姿をマゼンダと黒の色合いが特徴的な緑の複眼の戦士に変えた。
仮面ライダーディケイド、この姿こそ、彼のヒーローとして姿……仮面ライダーとしての姿である。
変身を終えてそしてゼロも加え、宗谷を取り囲むようにしている三人。
宗谷は反射的に彼らが何をしようとしているのかを察した。
「………まさかとは思うけど、これって」
「お前も、今まで何度も修行してきたんだろ、なら言わなくてもだいたい分かるはずだ」
「俺達が直々に鍛えてやるんだ、でも覚悟しろよ?」
「この世界を守れるほどの強さがあるかどうか、俺達が見極めてやるぜ!」
そう言い放ち、それぞれのファイティングポーズをとるディケイド、ゴーカイレッド、ウルトラマンゼロの三人。
普通に考えれば、この三人が相手、しかも本物のヒーローを前にして太刀打ちできるかどうかすら不安だ。
だが、ここで諦めるつもりも毛頭ない。
次第にだが、宗谷の心中には一種の決意の様な物が湧き上がっていたのだ…。
故に、宗谷は彼らの修業を受けることを決意した。
宗谷は赤剣を呼び出すとそれを手にし、左右に切り払ってから赤剣を構えた。
(これが、あいつらを……みんなを救える可能性なら……みんながいるこの世界を守れる可能性なら……! 俺は……!)
宗谷は強く床を踏みしめると、自分を取り囲む三人を鋭く睨み付ける。
「俺は乗り越える! そして、この可能性に賭ける!!」
“特異点の力”………。
それを呼び覚ますための宗谷の新たな試練が幕を開けた…。
いかがでしたか?
最後に現れた、仮面ライダーディケイド、ゴーカイレッド、ウルトラマンゼロの三人。
今作における多重クロスという最大の特徴、それは今作において重要なカギであり、重要なコンセプトなのです!
そして、次回!
三人のヒーローとの修業を開始した宗谷。
果たして、彼はこの試練を乗り越えられるのか!
彼の持つ、特異点の力とは!
それでは、また次回でお会いしましょう!