劇場版ドライブ、サプライズ・フューチャーを二回観に行って大満足なまま書き上げた最新話です!
いやぁ、良かったなぁ…。
ベルトさんと進ノ介はもう最高コンビだし、シンゴウアックスは欲しくなるし、ダークドライブもかっこいいしで、もう最高でしたよ(笑)
でもなにより……。
仮面ライダーゴーストが早く見たい。
さてと、それはそれとして。
今回のお話はアニメ6話に本格的に突入となります。
見所はぴぃが加わったことで少し変わり始めた教会の様子と、紐なしバンジー!
それではお楽しみください、どうぞ!
穏やかな昼下がり、今日も今日とてプラネテューヌは平和だった。
つい最近に世界を揺るがすほどの大事件があったことなど、まるでなかったかのようにいつも通りの日常を過ごすプラネテューヌの国民達。
その日常はここ、プラネテューヌ教会も同じな様で……。 今日も今日とて、プラネテューヌ教会の主にしてこの国の守護女神のネプテューヌは………。
「おぉ~っと! 危ない……間一髪ぅ!」
仕事ではなく、ゲームに勤しんでいた。
視線を目の前のテレビ画面から離さずに、手に持ったゲームのコントローラーを忙しくガチャガチャと動かし、ゲームの中にいる自分の分身を躍動させる。
その集中力を仕事に生かせないのかと思えるほど前のめりになるほどに意識を集中させるネプテューヌ、そんな中彼女の後ろで詰まらなさそうに口をとんがらせている人物がいた。
「ぴぃたいくつ! あ~そ~ん~でっ! ねぷてぬ!!」
幼さを感じさせる舌足らずな言葉で、ちょっと惜しい呼び方だがゲームに勤しむネプテューヌの事を呼ぶ黄色い髪を後ろで一つ結びにした小さな女の子が両手を振って彼女に構ってほしいとばかりにしきりに彼女を呼ぶ。
しかし、そんな女の子の呼びかけにネプテューヌはテレビの画面から目を離すことなく返す。
「だから“ピー子”、何度も言ってるでしょ? “ねぷてぬ”じゃなくて、ネ・プ・テュー・ヌ! わかったらほら、ワンモアセっ!」
「ねぷてぬねぷてぬ!!」
“ピー子”と呼ばれた女の子はそれでもとばかりに間違った呼び方でネプテューヌを呼び続ける。
どうやら、彼女にはこの呼び方が一番呼びやすいらしい。
しかし、そんなことは露知らずとゲームに熱中し続けるネプテューヌ、それを見兼ねたのか女の子の後ろに一人の人物が立った。
プラネテューヌ教会の教祖、イストワールである。
「ネプテューヌさん、“ピーシェ”さんが呼んでいるのにその態度はかわいそうですよ!」
「もう、言わなくても分かってるってばいーすん、今はちょっと手が離せないだけなの~」
ピー子と呼ばれたこの小さな女の子の名は、“ピーシェ”。
彼女は、ネプテューヌ達が宗谷と共にピクニックに行った際に出会った謎の子どもであり、今現在この教会で保護している、所謂迷子である。
イストワールの注意も聞かずに軽く返事を返したネプテューヌ、呆れる様にため息をつくイストワールと一向にかまってくれない彼女に業を煮やしたのかピーシェは頬を膨らませる。
そして、その様子を近くにあるテーブルに座って見守るのはイストワールの下で働いているプラネテューヌ教祖補佐であり、先に起きた騒動の際に“勇者”と言う存在に覚醒したばかりの異世界の青年、天条 宗谷と同じく教会の手伝いをしながらそれぞれの仕事をこなしているネプテューヌの友人、アイエフとコンパの三人だ。
三人は一連の様子を見ながら用意されたティーセットでティータイムとしゃれ込んでいた。
「ぴぃが来てからもう3週間くらいか? もうすっかりここに慣れたもんだな」
「ねぷねぷとふたりでいつも仲良く遊んでいますから、もうすっかり仲良しさんですよ」
「仲良しねぇ……」
ネプテューヌとピーシェの様子を見ながらそのような会話をする三人、アイエフが机に頬杖を突きながらそう言っていると……。
「あれ? ………うわぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?」
突如としてネプテューヌの悲惨な意志の籠った絶叫が聞こえてきた。
何事かと宗谷が視線を向けると、無残なことにゲーム機の主電源となるコンセントのコードが無残にも引きちぎれていた。
どうやら構ってくれないピーシェが強硬手段でコンセントを引きちぎったようだ、その証拠に彼女の手には千切れたコンセントの片割れが握られている。
「ねぷてぬ、あそんで!!」
ゲームを強制的に中断させたピーシェは待っていたとばかりに満面の笑みでネプテューヌに飛びついた、というより、“飛び込んだ”ともいえるような勢いで、だが……。
「ぐっ……ほぉぉぉぉぉぉおおおおおっっ!?」
その勢いづいたタックルにも似たピーシェの飛びつきを、腹部にもろに受けたネプテューヌはまるで会心の一撃を受けた敵キャラの様な声を上げてその場に倒れ伏した。
倒れ伏したネプテューヌの姿を見て、一連の事を見ていた宗谷は顔をしかめて道場にも似た意志を表情に出した。
「うわぁ……あれは痛いな……」
「あれじゃ、ねぷ子もゲームも再起不能かしら?」
「ふふっ、あいちゃんまだまだですよ? ほら」
コンパがそう言うと、ネプテューヌはすぐさま飛び起きてピーシェを見つけると仁義なき追いかけっこを始めた。
「ほら、仲良しさんです♪」
「翻弄されてる感があるけどね…」
「アイエフに激しく同意」
そんな二人の姿を微笑ましいようなそうでもないような微妙な表情で見守る宗谷とアイエフ。
そこへ、ネプテューヌに注意をしていたイストワールが来てやれやれと息を吐きながら空いている席に腰を下ろした。
「あれはネプテューヌさんの自業自得です、当然の報いです」
「ベールみたいなやり手のゲーマーなら発狂するレベルの報いだと思うけどな……ところでいーすん、ぴぃの親御さんの情報はまだないのか?」
隣の席に座ったイストワールに宗谷が質問するとイストワールも困ったような表情を浮かべてこくりと頷いた。
「ええ、もう3週間も経つのに一向にピーシェさんの保護者さんが迎え来ることもなく、ピーシェさんに関することもわからない状態で……とても不思議な方です」
「だな……分かってるのは履いていたパンツに書かれてたピーシェって名前くらいなもんと、アイエフとコンパさんのことを知ってるってくらいなもんだしな」
イストワールの言う通り親とはぐれた迷子なら、やはり保護者となる存在がすぐに捜索願を出していると思ったが、それらしきものもなく、ピーシェ自身も自分の親の事を覚えてないという。
それだけでも不思議なことなのに、宗谷達を悩ませる一番分からないことはなぜかピーシェがアイエフとコンパの存在を知っていたということ。
当然、アイエフとコンパの二人は彼女のことを知っているはずもなく、見覚えもない。
会ったこともないはずのピーシェがなぜ二人の事を知っていたのか……今も尚元気にネプテューヌと追いかけっこに興じている彼女には謎が多かった。
「まあ、今の所不自由してる様子もないし、何かわかるまではこのままでもいいんじゃないかな? ………ふわぁ……ぁふ」
「宗谷さん? なんだか眠そうですね」
「ん? ……あぁ、昨日ちょっとな」
「………?」
ピーシェの今後についての意見を出した後、眠たげに欠伸をした宗谷にイストワールは首を傾げた。
心なしか目元もまだ眠気が覚めていないといった感じだ、昨夜はあまり眠れなかったのだろうか?
「ぴぃぱーーーーーんちっ!!」
「ぶふぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!?」
そんなことを考えていると、ネプテューヌが突然妙な声を上げて後ろ倒しに倒れた。
驚いたイストワールが二人の方を見ると、そこには右のてをぐっと握って上に振り上げた体勢で笑顔を浮かべるピーシェの姿があった。
どうやらピーシェのアッパーカットがネプテューヌを捉えて再起不能にしたようだ。
「ぴ、ピーシェさんまたですか!?」
「あ~、またやったのか……」
その様子を見たイストワールは慌ててピーシェの元に、宗谷はため息をつくと席から立ち上がり、少し遅れてピーシェに近づいていった。
「ピーシェさん! あなたはただでさえ力持ちなんですから、やりすぎないでくださいと言っていたでしょう?」
「むぅ……だってねぷてぬあそんでくれないんだもん! ぴぃ、わるくない!」
「ですけど…いいですか、ピーシェさん? 物事には限度と言うものが…」
「まあまあいーすん、いったんストップ」
ピーシェに目線を合わせてしゃがみ、ピーシェに注意をしようとしたイストワールの肩を宗谷がとんとんと叩いて中断させる。
「宗谷さん? しかし……」
「いいからいいから」
渋るイストワールにここは任せろと言いたげにそう言うと、彼女の隣にしゃがみ込んで宗谷はピーシェの頭をわしゃわしゃと撫で始めた。
その感覚がくすぐったいのか、ピーシェが目を細めると、宗谷は口元に笑みを浮かべてピーシェをじっと見つめた。
「ぴぃ? お前は遊ぶ時は楽しい気持ちでいたいよな?」
「? うん、たのしいほうがすき!」
「そうだよな、でも、もしもぴぃが俺やネプテューヌと遊んでいるときに俺達が本気でぴぃを叩いたり蹴ったりしたとしようか……ぴぃは楽しいか?」
優しげな口調ながらもどこかしっかりとした意志を感じさせる言葉でピーシェにそう言い聞かせる宗谷、それに対しピーシェはしばし考えるように目を伏せるとどこか嫌そうな表情を浮かべて小さく首を振った。
「………ぴぃ、それやだ」
「……そうだよな? 遊んでいるときはぴぃも俺達も楽しい方がいいよな? だからぴぃ、今のはお前に悪気があったわけじゃないのはわかるけど、これからはむやみやたらに叩いたり蹴ったりしたらいけないんだぞ? よっぽどの事があったら仕方ないけど、やりすぎない事、わかったか?」
宗谷がピーシェをじっと見つめたままそう言い聞かせる、するとピーシェは俯いたままではあるが小さく首を縦に振った。
「………う、わかった」
「………よし、いい子だ! それじゃ、あとで俺とネプテューヌと一緒に遊ぼうぜ、ぴぃの大好きな怪獣ごっこだ」
「え……ほんと! ぴぃやりたい!」
「ああ、もちろんだ、でもやりすぎないようにな?」
「うん、ぴぃ、やりすぎない! だから、ねぷてぬとそーやとあそぶ!」
落ち込むピーシェにご褒美の変わりなのかそう提案すると、ピーシェはぱっと笑顔を浮かべた。
「あ、それと……ネプテューヌ、お前も謝っとけよ?」
「ねぷっ!? 私も!?」
「あたりまえだろ! 今回はお前も悪い、年上のお前が謝らないでどうするんだよ!」
ピーシェに注意すると同時にネプテューヌにも注意する宗谷、その姿を見ていたコンパはふと笑みを浮かべた。
「なんだか宗谷さん、ピーシェちゃんのお兄さんみたいです」
「それを言うなら、お父さんの間違いじゃない?」
宗谷の姿を見て率直な感想を述べた二人、確かに宗谷はここ最近でピーシェの扱いにだいぶ慣れてきている様子だった。
つい先日までネプテューヌと同じように振り回されていることが多かったが、日にちを重ねるごとにどのように関わればいいのか理解してきたようだ。
「……昨日はピーシェさんに肩を外されそうになっていましたけどね?」
「……あぁ、まさか関節技まで決めてくるとは思わなかった……」
苦々しいこともあったようだが、それを気にせずピーシェとの関係の仕方を理解してきた宗谷、その隣でイストワールが小さく微笑むと今度はイストワールがピーシェの頭を撫で始めた。
「それじゃあピーシェさん、宗谷さんとネプテューヌさんと遊ぶ前におやつにしましょうか?」
「おやつ!? ぴぃ、おやつほしい!」
「今すぐじゃありませんよ、もう少し待っていてくださいね?」
宗谷とはまた違うが、イストワールもまた彼女とのかかわりを理解してきたようだった。
注意するときは宗谷とは違ってやはりどこか堅いイメージがあるが、こういう風にコミュニケーションを取るにはもう十分に彼女も慣れてきた様子だ。
「……イストワール様はなんだかお母さんって感じね」
「………ということは」
そんな二人がピーシェと関わる姿を見てあることを感じたのか、コンパが持っていたティーカップをテーブルに置いて明るい笑みを浮かべた。
「宗谷さんといーすんさんはピーシェちゃんのお父さんとお母さんですね!」
「ん?」
「え?」
その発言に宗谷とイストワールは同じタイミングでコンパの方を見ると、今言われ事を脳内で反復させるように繰り返した。
ピーシェのお父さんとお母さん→お父さんとお母さん→夫婦→結婚相手→いずれ来る新婚生活……。
なぜか二人の脳内でこんな方程式がくみ上がってしまった。
そして、何を思ったのか二人は互いの事を見つめると、どちらからともなく、ぼんっ、と顔を真っ赤に染め上げて慌てて目線を反らした。
(な、なんだ今の……俺は何でこんなことを……? あれ、俺ひょっとして彼女いない歴19年だからって焦ってるのか!? いやいやいや、それにしてはまだこういう思考に至るのは早いような……でも、いーすんと……はっ! いかんいかん、落ち着け俺! いーすんはそうは思ってないかもしれんだろ!!)
(そ、宗谷さんとけ……け……結っ……だ、だめです! まだ私達はそれ以前に付き合ってもいないのに! それは、私だっていずれは宗谷さんとそうはなりたいと思ったことはありますけど………でも、もしそうなったら……宗谷さんと二人きりで一緒に生活を共にして……いずれ私も宗谷さんとの子どもを……)
互いに互いの思考をスパークさせながらどこぞの赤い彗星の専用機もビックリなほど顔を赤くする二人。
それを間近で見ていたネプテューヌはにやにやと笑みを浮かべながら見ていた。
(あ~、分かりやすいなぁ二人とも……あ、そうだ! ソウヤには助けられたお礼もあるし、いーすんにもこの前守ってくれたお礼を兼ねてちょっとお手伝いしちゃおうかな? 海王星な私だってキューピッドを演じれるんだよ!)
以前の事件で宗谷とイストワールにはかなり世話を焼いてもらっていたネプテューヌはわかりやすいほどに互いを意識させる二人を見て、お礼変わりにとそんなことを考え始めた。
そして、ネプテューヌは手で顔を扇ぎながらわざとらしくふらりふらりと立ち上がった。
「いやぁ~、なんだか異様に暑いね~、私なんだか熱中症になりそうだよ~、おっとっと~」
そして、棒読みなセリフを述べつつ、ネプテューヌがふらふらとよろけて……。
「おっと~」
「きゃっ!?」
「っ、いーすん!」
イストワールの背中にぶつかり、そのせいで危うく転びそうになったイストワールの体を宗谷が慌てて支えた。
体をクッション代わりにするようにして支えたため、今宗谷とイストワールの距離はほぼ密着状態、というか、宗谷が抱き留めていると言っても過言ではない。
「だ、大丈夫……か?」
「は、はい……ありがとうございます……」
「………」
「………」
顔が赤いまま、互いに密着した状態でそれ以上の言葉が出ず黙ってしまい、つい視線をそらしてしまう両者だったがどうしてかすぐには離れようとはしなかった。
そして、そんな二人の横ではわざとらしく倒れたネプテューヌがコンパとアイエフの方を見てぐっとサムズアップを見せていた。
それに対して一連の様子を笑顔で見ていたコンパもぐっとサムズアップを返す。
どこかで二人に対して思っていることが似通っていたのだろうか、言葉も交わさず協定を結んでいるかのように無言で笑みとサムズアップを交わす友人二人を見てアイエフはため息を漏らす。
「あんた達……まあ、悪い方には進んでないし、いいとしましょうか」
呆れたような物言いでも結局はなんやかんやでアイエフも二人と一緒らしい。
目の前の恋模様を見守りたいという心情があるあたり、やはり自分も乙女なんだなと思えてきてしまう。
「いすとわる? そーや? どうしたの?」
「っ! な、何でもないんですよピーシェさん!?」
「そ、そうそう! 別にやましい気持ちとかは全然ないから!」
途中、ピーシェの介入で惜しくもそれ以上は進まなかったが、まあこれはこれで良しとしようかとネプテューヌが倒れ伏していた自分の身を持ち上げてじっと二人の方を見つめた。
(あの事件のお礼変わりにこれから私は二人を応援させてもらうよ! 頑張れ、いーすん、ソウヤ!)
心の内でさりげなく二人にエールを送るネプテューヌ、果たして彼女がさりげなく立案したの“恋のキューピッド作戦”はこれからうまくいくのだろうか…。
すくなくとも、宗谷のみの周りにはイストワールのライバルとなりえる存在がいるのだが……悲しきかな、彼女はそのことを知らない。
まだまだ前途多難である。
すると、まだ頬を朱に染めた状態のイストワールがここであることを思い出したかのようにネプテューヌの方に向き直った。
「そ、それはそうと、ネプテューヌさん! バルコニーの方にベールさんが……」
時を同じくして、バルコニーの方ではある客人が教会を訪れていた。
その客人とはリーンボックスの守護女神、ベールである。
ある理由があってここに訪れたということらしい彼女なのだが……。
「うふふ……どうですか、ネプギアちゃん、やわらかいでしょう?」
「はい……ベールさん……」
どういうことか、バルコニーには百合の花が咲き乱れていた。
いや、実際には咲いていないのだが、まるでそのように見える雰囲気が漂っていたのである。
バルコニーに備え付けられた二人用のソファ、そこに腰かけるベールとネプギア。
今現在、ネプギアはベールの胸に抱かれ、安らかな笑みと幸せそうな声色を出しながら彼女に身を任せているのだった。
豊満なベールの胸の双丘が優しく受け止めてくれるその極上の感覚に今現在、ネプギアは酔いしれているのだった.
「いいのですのよ? “お姉ちゃん”と呼んでくださっても…」
「で、でも………私には、お姉ちゃんっていう心に決めた唯一のお姉ちゃんが……それに……」
ベールの誘惑の言葉に迷いを見せるネプギア、そんな彼女にベールは優しく笑みを浮かべるとそっと彼女を抱く力を強めた。
「うふふ…御安心なさい、ネプギアちゃん……いずれ、あなたと一緒で“もう一人”の妹が私にできた時、あなたには同じ妹と“お兄さん”が出来ますわよ?」
「お兄さん……それって……」
「そう、宗谷ですわ…」
その言葉にネプギアは一瞬驚いて目を見開いた、ネプギアの頭を優しく撫でながらベールは言葉をつづける。
「私にはすべてわかっていますわ……あなたがだいぶ前から宗谷の事を兄のように思い始めていたこと、そしてイストワールの気持ちの事も…」
「ベールさん……それじゃあ……」
「ええ、いずれあの二人が恋人となったとして、その時にイストワールを私の妹とした時……私にはイストワールと宗谷という妹と弟が同時にできるのですわ」
なんとも恐ろしいのかバカらしいのかわからない彼女の野望だが、ベールは本気だった。
それは今、近くで彼女の目を見ているネプギアには真っ先に理解できた。
彼女は、本気だと……。
「だから、ネプギアちゃん…悪いお話ではないですわ、あなたも私の妹に加われば、あなたも私もみんなウルトラハッピーですわ」
「あぁ……ベールさん……私、もうベールさんがお姉ちゃんでいいかも……」
ベールの甘い言葉と、ネプギアを包む極上の感触が彼女の心をぐらりと揺れ動かす。
恐ろしくは彼女の包容力と、揺るぎない信念、とでも呼べるものだろうか……。
このままでは、ネプギアはベールの手に落ちてしまう……。
と、その時!
「くぉぉらぁ! ベール!! うちの妹に、なにしてくれとんじゃあ!!」
怒声と共に二人の前にネプギアの実の姉であり、前回の事件を通してよりその絆を深めたネプテューヌが現れた。
突然の彼女の登場にネプギアははっと我に返り、身を持ち上げる。
「お、お姉ちゃん!? ち、違うのこれはっ……あはん……」
「いいじゃありませんの、たまにこうして親睦を深めることくらい」
「いや、ここの所毎日じゃない! ネプギアはこの世界で唯一無二の私の妹なんだからね! 前回の長編でその関係もさらに深まってるんだから!」
若干余計な口を挟みつつも、ネプテューヌは必死にベールに食って掛かる。
「ベール様も飽きないわね、それ程妹ってのがいいのかしら……」
「ギアちゃんのリリィランクが爆上げ急上昇で天元突破です…」
「なんというか……俺、巨乳も好きだけど、恐ろしさすら感じるんだけど……」
「………うぅ、なんだか以前のトラウマが……」
その後ろでは遅れてきたアイエフ、コンパ、宗谷、イストワールが三者三様の表情を浮かべる。
確かに、ここ最近、ベールはこうしてプラネテューヌに毎日通い詰めネプギアと交流を深め始めたのだ。
というのも、その目的は先程ネプテューヌがいない間に離していた通りのことで…。
その信念によるものなのか、どう頑張っても今のネプテューヌにはない胸の谷間にネプギアを埋め、彼女を籠絡させようとするベールの表情には余裕すら感じさせた。
「もう、まるで小姑ですわね……これからも、ゆっくり関係をはぐくんでいきましょうね、ネプギアちゃん……私の目標のためにも……」
「ん? なんか言ったベール? 後半が妙に小声だったんだけど……」
「なんでもありませんわ♪ あ、そうそう……」
ベールはそう言うと、彼女の後ろ、以前にリーンボックスで受けた辱めのトラウマを思い出していたイストワールに視線を向けた。
「イストワール、あなたもいかかです? 折角なのですから親睦を深めませんこと?」
「え、遠慮しておきます……!」
「いーすんさん、そう身構えないでください、いーすんさんにもすぐわかりますから…」
「えっ!? ね、ネプギアさんいつの間に後ろに!?」
ベールの誘いを断ろうとするイストワールの背後にいつの間にか背後に回り込んでいたネプギアが彼女の肩を掴んで動きを封じ、その間にベールがネプテューヌの横を通り過ぎてイストワールに近づいた。
「ほら、イストワール……私に身を任せてくださいな」
「あ、ちょ……はうぅ…」
警戒するイストワールの頭を優しく撫で、背中に手を回し、ベールが彼女を抱きしめる。
ネプテューヌにぞっこんだったネプギアをも籠絡させようとする彼女の胸が、イストワールを受け止め、そのやさしくも癖になる弾力が彼女を包み込んだ。
まるで空気のいい野原で陽光を浴びているかのような心地よさに、安心感を与えてくる甘美な弾力。
(な、なんで………あぁ、だめ……癖になっちゃダメです……ダメ、なのに……逆らえません……)
その感覚に、イストワールをも揺らぎそうになっていた。
恐るべき、ベールの抱擁……。
この事態を目の当たりにし、宗谷は目の前で起きている状況に目を反らせずに見入っていた。
「おぉ……リアルな百合展開……!」
「って、なに見入ってんのソウヤ!」
「げふっ!?」
感嘆をも漏らす余暇の様な宗谷を正気に戻すべく、ネプテューヌが彼の鳩尾に膝蹴りを見舞った。
予想外のことに宗谷はその場に崩れ落ち、鳩尾を抑える。
「いーすんとネプギアのピンチなんだよ!? このままだと二人がベールの毒牙にやられちゃうんだよ!? それなのに何ぼーっと突っ立てるの!」
「い、いや、百合展開をリアルで見れるなんて……ひとりのオタクとしてはレアだから……つい……」
「そこは違うでしょソウヤ! このひとでなし!!」
「なんで!?」
率直な感想に率直な罵倒を返すネプテューヌ、ここは男を見せるべきだと彼女は思ったのだろうが、悲しきかな宗谷は燃えと萌えを愛する性分であり、恋愛沙汰にはまだ疎い一面があるのだ。
「もう、しっかりしてよいーすん! ネプギア! ベールもいい加減離れて!」
「はっ! わ、私はいったい何を……」
強引にイストワールとネプギアをベールから引き離したネプテューヌ、危うく陥落しそうになったイストワールもそれに正気に戻ると、ベールはどこか惜し気のある表情を浮かべた。
「あらあら…もう、せっかくの戯れでしたのに…」
「いくらベールでもこれは見逃せないよ! ていうか、何しに来たのさ! いーすんからは何か用事があるって聞いてたけど?」
「ああ、そういえば、すっかり忘れてましたわ」
ネプテューヌの言葉にすっかりと忘れていたのであろう要件を思い出した様子でベールが手を叩いた。
「実は私、あなたと宗谷達を誘いに来たんですのよ?」
「ねぷっ!? それって私とソウヤも攻略対象!? 姉妹どんぶりにハーレムなの!? そ、そんなのって……ねぷ~!」
「半分当たりなような気もしますが、違いますわよ」
ベールの言葉に恥ずかしげに身をよじるネプテューヌに対し、冷めた表情で返したベール。
どうやらネプテューヌは攻略対象ではないようだ。
このままでは話が進まないと今度は鳩尾を抑えながらも身を起こした宗谷の方に視線を向けた。
「ネプテューヌにも来てるはずですが、宗谷の方にも連絡が入ってるはずですわよね?」
「あれ、そうだっけ?」
「いっててて……あぁ、そう言えば今朝がた来てたような……もしかして、ベールが来た目的って……」
「ええ、用はみなさんのお迎えに私が来たというわけですわ」
所変わって、ラステイション教会では既にプラネテューヌにいる宗谷とネプテューヌ達を誘ったルウィーの女神、ブランとその妹であり女神候補生のロムとラムの二人が既に訪れていた。
ラステイション教会のバルコニーではユニがロムとラムの二人と談笑しながら、さっきから三人の周りを飛び跳ねていた何かを抱きかかえて二人に見せていた。
「どう? ミミナガバンディクートのクラたんよ、最近飼いはじめたの」
そう言ってユニはクラたんと名付けられたミミナガバンディクートという種類の小動物を二人に差し出した。
ちなみに、ミミナガバンディクートという種類の動物は宗谷の生まれた世界、地球にも存在する有袋類の動物であり、主に砂漠に生息する珍しい動物なのだが、どうやらこのゲイムギョウ界にも生息しているらしい。
「可愛い……」
「抱っこさせて! させて!」
愛らしい小動物に興味津々のロムとラム。
一方、その三人の姉であるブランとノワールは少し離れたところで何やら話している様子だった。
「……で? 一体何の用なのよ」
「……率直かつ簡単に言うと、ネットワークセキュリティに関する事よ……」
焦らすなとばかりにすぐさま用件を聞くノワールにブランがそう答えた、ネットワークセキュリティ、その言葉が話題に上がった瞬間、ノワールの口元にしっかりと笑みが浮かんだ。
「あぁ、うちの鉄壁のセキュリティを手本にしたいのね?」
「………あの、まだ話が途中……」
「まあ、当然ね! 一流のスタッフを惜しみなく雇って作った、難攻不落のファイヤーウォールだもの!」
自信ありげに説明するノワールに、ブランはいつもの無表情のままその説明を聞く。
技術においてどの国よりも最新鋭を誇るラステイション、その技術力はセキュリティの面でも惜しみなく発揮されているらしい。
だが、ブランは別にそのセキュリティについて聞きに来たのではなかった。
「……最近稼働を始めた人工衛星システムも、それで守られているの?」
「ええ、もちろん、真似させてもいいけど………正直お金はかかるわよ♪」
最後にはウィンクまでつけてそう言ったノワール、だがブランの本題はそれではないため、あまり効果は見いだせなかった。
彼女がここに来た目的は別にセキュリティの技術提供ではなく、人工衛星システムそのものに関する事態についての事なのだから。
「………ラステイションのサーバーから衛星に、ハッキングされた形跡があるわ………」
いちいち説明するのも惜しいのか、無表情のままブランは単刀直入にそのことを伝えた。
それを聞いたノワールは一瞬きょとんとした表情になるが、慌てて彼女に詰め寄った。
「……はい!?」
「……だから、ラステイションから」
「あり得ないわ! あのセキュリティが破られるのは空から人が落ちてきて当たっちゃうくらいの確立なのよ!?」
反復しようとするブランの言葉を途中で遮り、反論したノワール。
先も説明した通り、ラステイションの技術力は他の国よりも高い、そのためその性能に関しても十分な注意と自信を持って提供している。
そのため万が一にもそのようなことはないとノワールは確信していた。
だが、彼女はこの時予想することもできなかった。
その万が一の僅かな確率が、何の因果か起こり得ることもあるのだということを……。
―――………ぁぁぁぁぁあああああ!
「え?」
突如として聞こえてきた声、それがどこから来ているのかというと真上からだった。
それに気づいたノワールが目線を上に上げると………。
「どいてどいてどいてどいてどいてどいて!! どいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!」
どういうことか、空からネプテューヌがミサイルの如き勢いで急降下してきていた。
女神化もしていない状態で、なぜ空から降ってきたのだろうか、そんな疑問も感じさせる余裕も与えないうちに……。
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!?」
まっすぐに自分目がけて急降下してきたネプテューヌを避けることも出来ず、激しい土煙を上げながら二人は衝突してしまった。
バルコニーの周りにその衝撃力を物語るかのように漂う土煙、驚く一同をよそに土煙が次第に晴れていくと上から落ちてきたネプテューヌがむくりと起き上がった。
「いやぁ~、助かった~……」
「ぅ……な、なんで……あなたは無傷なのよ……ガクッ……」
「? って、うわぁっ!? ノワール!? なにがあったの!? なんで地面に埋まってるの!?」
一体どういう体をしているのだろうか、ネプテューヌは無傷の状態で起き上ったのである。
どういう落ち方をしたら上空の遥か彼方から落下して無傷でいられるのだろうか、何とも不思議な話である。
その代償として、ノワールはネプテューヌの下敷きになってしまったが……。
「……あったわね、空から人が降ってきて当たる確率が……」
ダメ出しでもするかのようにそう付け加えたブラン。
―――………ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!?
「………?」
この時、彼女は予想すらしていなかった。
目の前で起きた万が一にもあり得ないであろう、空から人が降ってくる確率がまさか二度起ころうとしていたとは……。
遅れて聞こえてきたもう一つの声に気付き、ブランがふと上を見上げると……。
「無理! 無理無理無理無理無理無理無理!! 紐なしバンジーはいくら変身してても無理ぃ!!」
「宗谷……!? な、なんであなたまで……!?」
なぜか今度は赤い装甲を身に纏った戦士、クロス・ヴィクトリーに変身した状態の宗谷がまっすぐにブラン目がけて落ちてきたのだ。
彼には空を飛べる能力を持ったスキルもあるはずだが、どういうわけか今はそれを発動していない。
「……二度あることは三度あるということね……でも、まだ今は二度目、未然に防げる余地はある……」
しかし、ブランは冷静に宗谷の落下してくる角度を計算すると、さっと後ろに距離を取った。
宗谷には悪いが巻き込まれるのはさすがに彼女もごめんなのだ。
真っ直ぐに落ちてきている宗谷は角度を変えることも出来ず、そのまま急降下をつづけ……。
「オンドゥルルラギったぁぁぁっぁぁぁああああああああああああ!?」
そのまま犬上家よろしく、変身した状態で奇声を上げながらそのままバルコニーの床に頭から突き刺さった。
ふぅ、と胸を撫で下ろし一安心と息を吐くブラン。
ノワールの二の舞は踏まずに済んだようだった。
だが、しかし………。
―――………シャン!
突然、宗谷とは遅れて何かが回転しながら落下してきて、ブランの目の前に突き刺さった。
「………え?」
地面に斜め角度で突き刺さったそれは見覚えのある赤い、両刃の剣だった。
鍔の部分に施されているゲームのコントローラーの装飾からして、それは間違いなく宗谷が愛用している武器、赤剣だった。
どうやら何かがあって空中で手放したらしいが、もし後ろに跳ぶ距離を謝っていたら自分に突き刺さっていたのではないかと、ぞっとした悪寒を感じざるを得なかったブラン。
だが、その悪寒はこの後すぐに起きたことによってあっさりと消え去った。
―――はらり………
「………?」
突然、ブランを妙な寒気が包んだ。
なぜか体の前がすーすーする感覚に、ブランは疑問を抱くがすぐに理解することが出来なかった。
すると、目の前で頭から床に突き刺さっていた宗谷が身を振るわせながらどうにかこうにか床から頭を引っこ抜き、起き上がった。
「っぁぁ……死ぬかと思った………ていうか大丈夫? 本当に死んでないよね、これ……ちょっとブラン、せめて助けてくれても………っ!?」
「……? ……宗谷、どうかし……」
途中で言葉を中断した宗谷に擬音を感じたブランが、視線を自分に向けると彼女もそこで言葉を止めた。
なんということだろうか、今現在、ブランは頭にのせている自分の帽子を除き、彼女が身に纏っていた服の正面が身に着けていた下着も含めて、真っ二つに裂け、彼の目の前にその雪のように白く未成熟な自分の身体を晒してしまっていたのである。
なぜこんなことになったのかというと、その原因はブランの目の前に突き刺さり絶妙の角度で宗谷の視界から彼女の大事な部分を隠している赤剣にあった。
赤剣が回転しながら落下してくる際に、彼女の体を傷つけることなく、その刃先で彼女の服と下着だけを縦に真っ二つに切り裂いていたのだ。
人が落下してきて直撃するという事態は避けても、落ちてきた剣に服を斬られるということは予想できなかったブランは彼に自分の身体を見せたことによる羞恥で顔を真っ赤に染め上げる。
そして、彼女は徐に得物のハンマーを呼び出して……。
「み、み、見るなぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」
「はんまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?」
ラステイション教会にブランの羞恥の叫びと宗谷の断末魔の叫びが響いた…。
いかがでしたか?
次回はラステイションでの一幕となります。
ということでまた次回でお会いしましょう!
それでは……。