超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

今回のお話はあのオカマハッカーの登場!
しかし、オカマは何やら怪しげな目的を考えていて……。
しかも、あのキャラにまでオカマの魔の手が!

それではお楽しみください、どうぞ!


stage,75 俺と捜索! 盗撮犯

 

 

「ネプギア、反応はどのあたりだ?」

 

「はい、このあたりのはずなんですけど……」

 

ひょんなことからラステイション教会のノワールの執務室に何者かが隠しカメラを数台仕掛けてあることを知った宗谷とネプギアとユニの三人、一体誰がこんなことをしでかしたのか確かめるべく、三人はネプギアのナビゲートを頼りにラステイションの街を徘徊していた。

 

ちなみに、三人の後ろには教会で先程まで元気に遊んでいたロム、ラム、ピーシェとペットのクラたんも同行している。

まだ小さい彼女たちだけを教会に残しておくのは心配という宗谷の判断によるものだった。

 

「もうムカつく!!お姉ちゃんを隠し撮りするようなバカはこのあたしがギッタギタのめっためたにしてやるわ!」

 

「まったくだ、隠し撮りなんて言う不健全な行為、健全をモットーにして生きている俺としても見過ごせねぇ! 盗撮犯はこの手で、悪・即・斬だ!!」

 

「……なんだか二人の言葉が全部私に向けられているような気が……」

 

盗撮と言う行為に対してご立腹な様子のユニや、その隣で頷きながら盗撮犯撲滅を掲げる宗谷、しかし先程までノリノリでノワールの部屋に隠しカメラを仕掛けようとしていたネプギアも、罪悪感からか自分にも言われているような気がしてならなかった。

 

「それでネプギア! どの建物か、わかったの?」

 

罪悪感に苛まれるネプギアの事も露知らず、前を歩いていたユニがネプギアの方に振り返り、そう問いかけてきた。

怒りをあらわにした目つきですごまれたネプギアは一瞬びくりと肩を震わせるが、すぐさま返事を返す。

 

「は、はい!? えっと……この電波逆探知機だと大体の位置しか……」

 

「そう、ならしらみ潰しにするわ!」

 

「よし、気合い入れていくぞユニ!」

 

「当然よ! お姉ちゃんを陰からこそこそ覗こうとする奴を絶対に捕まえてやるんだから! 遅れないでよね、宗谷さん!」

 

互いにぐっと拳を握り、やる気を見せあう宗谷とユニ。

盗撮犯を捕まえるために、二人は今、燃えていた。

 

 

 

(……盗撮されてたってことは、間違いなく“あれ”のこともばっちり写ってるはずだ……ノワールのためにも、それがバレる前に盗撮犯を捕まえないと……!)

 

 

 

しかし、この時宗谷は純粋に姉のためを思うユニとはまた別のベクトルで盗撮犯確保に燃えていたのだった。

 

「………それにしても、そんな機械よく持ってたわね、それもあのカメラと一緒でたまたま?」

 

盗撮犯確保への意気込みを改めて誓う中、ふとユニがネプギアの持っていた機械に目をやった。

トランシーバーを思わせる無骨なボディのその機械、発信されている特定の電波を逆探知するという、ネプギア御用達の電波逆探知機、単純だが何気に高性能なその機械は現在犯人を見つけるための唯一の手掛かりだった。

 

「これはいつも持ち歩いてるよ? モバイル用充電器と電波逆探知機は女子の必須アイテムでしょ?」

 

「……どこの異世界の女子よ」

 

ネプギアが得意げにそう言うが、持ち運びが出来るモバイル用充電器ならまだしも、電波逆探知機を最近の女子はどういう場面を想定して持ち歩くというのだろうか…。

どう考えてもまともな状況とは思えない。

 

「まあそう言うなよユニ、こうしてネプギアの持ってる機械のおかげでこうして盗撮犯に近づいてる訳なんだから」

 

そんなネプギアの機械オタクぶりを身近に感じている宗谷が、ユニにフォローを入れておく。

実際にこうして彼女の逆探知機は捜索に大いに貢献してくれているのだから、バカにはできないのである。

 

そんな中…。

 

「そーや! ぴぃおなかすいた~!」

 

「うおっと!? おいおいいきなりだな……って言っても、そろそろおやつの時間だったか」

 

前を歩く宗谷の脚に抱き付き、お腹を空かせたらしく駄々をこねるピーシェ。

そろそろ時間は昼時を過ぎて来たころ、子どものピーシェにとっては待望のおやつの時間なのだが生憎今はそんな状況ではない。

 

「まいったな……ベールに急に呼び出されたせいでお菓子とかは持ってないし……」

 

「おなかすいたすいたすいた~! ぴぃおやつたべたい~!」

 

「えっと……ネプギア、さすがにお菓子とかは、ないよな?」

 

「さすがに持ってませんね……どうしましょう…?」

 

ピーシェを宥めることが出来る、代わりになるようなお菓子もなく、まわりにはコンビニらしきショップもない。

困り果てた表情を浮かべる宗谷。

 

何とか我慢するように言おうにも、純粋な食欲という欲望をまだ幼いピーシェに我慢してもらうように伝えるのは少々骨が折れそうだ。

どうしたものかと宗谷とネプギアが互いに困った表情を浮かべていると…。

 

 

「ピーシェってば子どもね!」

 

 

ピーシェの後ろでさっきまでピーシェがじゃれていたクラたんを抱えながら、ラムがそう言った。

 

「わたしはもうお姉さんだから、お腹が空いたって我慢できるわよ?」

 

「わたしも、お姉さん……♪」

 

この中では一番ピーシェと年が近い見た目と精神を持っているロムとラム、だがピーシェが幼稚園児くらいの年齢だとするなら二人はもう小学校低学年ほど、年上としての意識からかピーシェにそう告げる二人が浮かべる、得意げな笑みには年上としての威厳にも近い何かを感じさせた。

 

「………むぅ」

 

それに触発されてか、ピーシェは頬をむっと膨らませたがすぐに抱き付いていた宗谷の脚から離れた。

 

「ぴぃもおねえさん!」

 

「じゃあ、がまん出来る?」

 

「……がまんする……」

 

「……なでなで♪」

 

年頃が近いであろう二人に言われたためか、対抗心を燃やして我慢するという気になったようだ。

 

その様子に宗谷はふと、職業体験で行っていた幼稚園での光景を思い浮かべた。

保育の現場における、子どもたち同士のコミュニティではやはり年上となる年代がお手本として行動を示すことで年下の子どもたちもその姿を学び自身の成長へと繋げていくのである。

 

無意識の内だろうが、今回はその役目をロムとラムの二人が果たしてくれたのだ。

 

「ピーシェがさらにちっちゃいせいか、二人がなんだかすごく大人びて見えるわね…」

 

「だな…さすがだな、二人共」

 

「ふふん♪ わたし達だって、いつまでも子どもじゃないのよ!」

 

「そうやお兄ちゃんに、褒められた……えへへ♪」

 

二人の頭を撫でてお礼を言う宗谷、それに対してご満悦なのか得意げに胸を張るラムと嬉しそうに笑みを浮かべるロム。

その時。

 

「あれ、ちょっ! わぁっ!?」

 

突然、ラムが抱きかかえていたクラたんがその腕をすり抜け、宗谷達の間をすり抜け逃げ出してしまった。

 

「あー! クラたんにげたー!」

 

「あ、おい! ぴぃ!」

 

「待ってピーシェちゃん!」

 

逃走したクラたんを追いかけるべく、ピーシェが先行して走り出した。

急に走り出しては危ないと、慌てて宗谷達もその後を追いかけていく、そしてクラたんが近場の曲がり角に差し掛かり右側に方向転換した時だった。

当然それを追いかけてピーシェもまた同じように方向を変える。

 

「わぁっ!?」

 

その瞬間、その曲がり角からピーシェの驚くような声が聞こえてきた。

 

 

「うぎゃぁぁぁあああああああ!?」

 

「ハル殿ぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!?」

 

 

そして、遅れて誰かの悲痛な叫びも聞こえてきた。

 

その場に尻餅をついて後ろ倒しに転倒するピーシェ、それを見た宗谷が慌ててピーシェに近づいて彼女に怪我がないかを確認する。

 

「おい大丈夫かぴぃ?」

 

「うー……?」

 

人とぶつかったところがそこだったのか、自分のおでこをさすりながら首を傾げるピーシェ、だが見た所特に目立った怪我もなく宗谷は一安心と息をついた。

 

だが、ピーシェはいいとしてももう片方が大丈夫かどうか心配だ。

ただでさえ力の強いピーシェのタックルをもろに喰らったのだ、ただでは済まないかもしれないと宗谷が半ば覚悟を決めて後ろを振り向いた。

 

「あ、あの、すみません、大丈夫……」

 

その人物に謝ろうと、宗谷が後ろを振り返った時だった。

 

反射的に、彼は出そうとしていた言葉を飲み込んでしまった……。

 

 

 

「うっ……うぅ、痛い……今まで生きてきた中で姉さんのげんこつ以上に痛かったよぉ……」

 

 

 

それ程までに強い印象を与えてくる、その人物の見た目。

歳は13か14くらいだろうか、鮮やかな蜜柑のようなオレンジのツインテール、幼さの残る整った顔立ち、身に纏ったボーイッシュな服装。

彼が目にしたのは、彼が今までに見たこともないタイプの美少女だったのだから。

 

(今までに見たことないタイプだな……ボーイッシュツインテール、と名付けるか……)

 

一オタクとしての好奇心からか、冷静に目の前の少女の事を分析した宗谷、それに対してボーイッシュツインテールの少女はその場に蹲り目じりに涙を溜めて、身を小刻みに震わせている。

その隣では、少女のツレなのだろうか、忍者の様な、ロボの様な何とも男心をくすぐる外観をした人物があたふたと慌てていた。

 

その様子を見て、宗谷は一度自分の中にある思考を無理矢理振り払って少女の方が無事かどうかを確認する。

 

「ってそうじゃなくて! お、おい、大丈夫か!?」

 

「は、ハル殿! 気を確かに!! 救急車!! 救急車を早く!! 119でござるぅぅぅぅう!」

 

「いや、ステマックス……大げさだから、そこまでの怪我してないから落ち着いてくれない……?」

 

「し、しかし! ハル殿にもしもの事があったら拙者はどうすれば! これからはまたボッチで生きて行けとハル殿はそう言うのでござるか!?」

 

「ねえ、ボク死ぬの? それってさりげなくボク死んでるよね……とりあえず、今は落ち着きなよ」

 

まだ痛そうに直撃を受けた部分なのであろう、下腹部を抑えながら何とか立ち上がった少女はロボ忍者、ステマックスという名前らしい人物に落ち着くように言うと、そっと自分の傍にいたクラたんを抱き上げてピーシェに近づいた。

 

「はい、もう逃がしちゃだめだよ? ………あと、あまり勢いづいて誰かにぶつかったりもね……君も相手もすごい危ないから……」

 

未だにおでこを抑えながら首を傾げるピーシェに右腕に抱えていたクラたんを手渡しながらそう言った少女、恐らくまだ我慢しているのであろう、未だに体が小刻みに震えている。

 

「………うん」

 

それに対して、ピーシェはどこか不思議そうな顔をしながらピーシェがこくりと頷いた。

それを見てその少女がそっと微笑み、その場に立ち上がると後ろにいたもう一人が駆け寄ってきた。

 

「ハル殿、本当に大丈夫でござるか? 拙者が聞いた限りでは尋常ではない音が聞こえたと思うのでござるが……」

 

「……それを言わないで……今も結構……がまん、してるから」

 

「……なんというか、本当にすみません」

 

ロボ忍者の問いに対して、正直に答えたのであろうロボ忍者にハルと呼ばれた少女は宗谷とロボ忍者がぎりぎり聞こえる小声でそう答えた。

それを見て宗谷は反射的に再度謝るが少女は別にもう気にしないでいいという意思を込めてか、いえいえと手と頭を左右に振った。

 

「前を見てなかったボクも悪いですから、お兄さんは気を使わないでください」

 

「いやでも、本当にごめん…この子、普通の子よりも力が強いもんでな……あの、本当に大丈夫か?」

 

「はい、平気です……たぶん……まだ機能すると思いますから……」

 

「何が!? ひょっとしてどっか壊した!? 骨の二三本折っちゃった!?」

 

顔は笑顔だが、笑っている気がしない、苦悶の意志しか伝わってこないその表情に宗谷は慌てるが、ボーイッシュツインテールの少女は本当に大丈夫と宗谷に念を押した。

 

「宗谷さーん! ピーシェちゃーん!」

 

そこへ、先に走って行った宗谷とピーシェの二人を追いかけてネプギア達が合流した。

 

「ああ、ネプギアか、ピーシェなら怪我もなかったぞ」

 

「それはいいんですけど……それよりも、今さっきお姉ちゃんたちを見かけたんです!」

 

「ネプテューヌ達を?」

 

合流するなり、突然明かされた情報に宗谷が首を傾げるとネプギアがこくりと頷き空の方を指さした。

 

「お姉ちゃんたちといーすんさんが、どこかに向かってたんです、もしかしたらお姉ちゃんたちの方にも何かあったのかも…」

 

「……気になるな……いーすんも少し厄介ごとだって言ってたしな……まさか、みんなも盗撮犯を……? ちょっと様子を見に行ってみるか?」

 

偶然かもしれないが、何があったのか気になった宗谷はネプギアとユニに提案すると二人はこくりと頷いた。

 

「………お取込み中だった?」

 

すると、一連の事情を聴いていたらしいボーイッシュツインテールの少女が宗谷の方を見て問いかけた。

 

「え? あ、あぁ……ちょっとな」

 

「じゃあ、引き止めていてもしょうがないよね、お兄さんたちはもう行った方がいいよ、ボクの方は大丈夫だから」

 

少女はそう言って、顔に笑みを浮かべると片手をひらひらと振って大丈夫という意味を込めたアピールを見せる。

 

「そうか? ならいいんだけど……あんまり無理しないようにな?」

 

「大丈夫ですって、お兄さん心配性だなぁ……それよりも、急いだほうがいいんじゃないかな?」

 

「あっ、そうだった! みんな行くぞ!」

 

心配する宗谷に対して、少女が苦笑いしながら後押しすると宗谷は慌ててみんなを呼び、走り出した。

唐突な出会いを果たした謎の二人のことを気にしつつも、その場を後にした宗谷。

 

「……んー?」

 

「? どうかしたのか、ぴぃ?」

 

その途中、何やらピーシェがクラたんを抱えながら自分のおでこを気にするようなそぶりを見せたので宗谷はピーシェにどうかしたのか聞いてみた。

 

「なんか、へんなのにあたった…」

 

「変なの? さっきの女の子じゃなくてか?」

 

「う~ん……ぴぃ、わかんない」

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

宗谷達が去っていき、その場に残ったボーイッシュツインテールの少女とロボ忍者の二人。

 

残された二人は去っていく宗谷の後姿を見つめ、ふと少女、ハルが表情を変えた。

 

「………ステマックス、今あのお兄さん、盗撮犯がどうとか言ってたよね?」

 

「聞き間違いでなければ、拙者もそう聞こえたでござる」

 

先程宗谷が呟いた言葉の中にあった“盗撮犯”と言う言葉に対して表情をどこか引き締めた真剣な物に変えたハルは小さくなっていく宗谷たちの背中を見送りながら、パーカーのポケットに入れていた新たなチョコバーを取り出して包装紙をはがし、中身を一口齧った。

 

「……つまり、何らかの“悪”が絡んでるってことなのかな?」

 

「盗撮犯というのがどんなものを撮っていたかによるでござるが、女性だった場合は女の敵的な意味合いでは“悪”と見て間違いないでござろうな」

 

「だよね……じゃあ」

 

ハルはステマックスから確認を取ると、口元ににっと笑みを浮かべる。

 

 

「ちょっと、様子を見に行こうかな……?」

 

「それは良いのでござるが………ハル殿、さっきから足が震えているでござるよ?」

 

「………思い出させないでよぉ………はうぅ、やっぱり痛いぃ……あの子どんだけパワフルなの?」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ラステイションの上空ではブランから知らされた衛星へのハッキング行為に対し、その犯人の居場所を特定した四女神とそれに付き添っていたイストワールがとある場所に向かって一直線に飛行していた。

 

「ねえ、ノワール? 今更かもしれないけど、私たちが行かなくても警備兵に任せればよかったんじゃないの?」

 

その道中、ネプテューヌの女神化した姿であるパープルハートが隣を飛ぶノワールの女神化した姿、ブラックハートに問いかけた。

確かに、本来ならこのような事件は女神自身が手を下さずとも警備兵など国の組織を動かして事件を鎮圧することもできる。

しかし、それに対しブラックハートはちらりとパープルハートを一瞥すると、なぜか気に入らなさそうな態度を見せる。

 

「ふん、それじゃつまらないじゃない……私にこんな恥をかかせた犯人は私の手でぐっちょんぐっちょんにしてやらないと気が済まないのよ!」

 

どうやら自国の自慢のセキュリティを破ったことに対してまだ根に持っているらしく、自らの手で犯人を捕まえないと気が済まない様だ。

 

「今日のノワールはいつにも増して過激ですわね」

 

「ノワールさんは皆さんと違って、女神化するとより一層積極的になりますからね……ネプテューヌさんがさっきの話で大笑いしていたのもあると思いますが……」

 

「でもまあ、私は嫌いじゃねぇぜ……っと」

 

その様子を見ていたベール、グリーンハートと背中に半透明の翅を展開したイストワール、そしてブラン、ホワイトハートの三人がそれぞれに会話をしている中、ホワイトハートが何かを見つけたらしくその場に急停止する。

 

「………そこだよな」

 

「あそこが、ツイーゲちゃんの突き止めた犯人のアジトね!」

 

ホワイトハートが視線を向けた先、そこには何かの紅葉であったのであろう建物、廃工場があった。

そう、ここが彼女たちの目的地である、ハッキング犯が潜んでいる隠れ家と思われる場所である。

ツイーゲちゃんの協力もあり、何とか場所を突き止めた女神達は早速調査を開始すべく廃工場に向けて降下し、着地できる高度まで来ると変身を解除し、地面に降り立った。

 

「気を付けてください、ここは犯人のアジトです、衛星にハッキングを掛けるような人物ならなにか備えている可能性も考えられ…」

 

まわりを警戒しながら、地面に降り立ったイストワールが呟く。

すると……。

 

 

「よぉ~~~しっ! それじゃあ、犯人を見つけるよ!!」

 

「行ってる傍からネプテューヌさん、声が大きいです!?」

 

「静かにしなさいよ!? 犯人に気づかれちゃうでしょ!?」

 

「ノワールさんの声も大きいです!? あ、でも私の声も大きい!」

 

 

警戒という概念もないネプテューヌのやる気に慌てるイストワールとノワール、先行きが心配である。

コント染みたやり取りをする三人を横目でブランとベールが苦笑いをしながら見ながら、女神達のハッキング犯捜索が開始された。

 

 

 

 

 

時を同じくして、廃工場の裏口ではネプテューヌたちの姿を見つけた宗谷達が駆けつけていた。

錆び付いている格子扉の外から中の様子を窺う一行、しかし、生憎ネプテューヌたちの姿は確認できない。

どうやら施設の中に足を踏み入れているのかもしれない。

 

「……ここに入ってったわよね?」

 

「うん……もしかしたらお姉ちゃんたちも盗撮犯を追っているのかな?」

 

「だとしても、タイミングが良すぎるような気が……?」

 

なぜネプテューヌたちがこんな所にいるのか、首を傾げる宗谷。

すると、その時…。

 

「あーーーーーー! 逃げたーーーーーーー!!」

 

突然ピーシェが声を上げたかと思うと、彼女が抱きかかえていたクラたんがピーシェの腕をすり抜け、ついでに格子の間もすり抜けて廃工場の中へと入ってしまったのだ。

そしてそれを追いかけて、ピーシェも格子の間をすり抜けて廃工場の中へと入り込んでしまった。

 

「あ、おいぴぃ!!」

 

「ま、待ってピーシェちゃん!」

 

そして、それを追いかけて宗谷達も何とか格子扉の間を潜り抜けて、廃工場の中へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

工場の中は、思いのほか警備が手薄だった。

 

寂れた廊下に、古びた内装、ここがどれほど前に無人になったのだろうかと考えさせられるほどに古びたその廃工場の中をネプテューヌたちはくまなく捜査した。

 

そして彼女たちは、とある一室の前に辿り着いたのである。

薄暗い廃工場の中で、なぜか一室だけ光が漏れている部屋があったのだ。

既に無人となったこの工場の中で、光が漏れている部屋があるのは明らかに不自然である、故にネプテューヌ達はその部屋が怪しいと睨んだのだ。

 

息をひそめ、ノワールがドアの間にそっと顔を近づけて中の様子を確認する。

 

「………!」

 

そこには予想通り、誰かがいた。

 

ノワールの視界に入ったのは、複数のモニターの前で悠々とキーボードに指を走らせる怪しげな人物の姿だった。

その体は彼女たちに比べると大きく、何やら頑強なアーマーの様な物に身を包んでる。

 

いかにも怪しい人物を発見したノワールは、一度後ろに待機している四人に確認を取る。

そして、それぞれの武器を呼び出して手に取ると、ノワールを先頭に勢いよくその部屋のドアを開いた。

 

「動かないで! 手を上げて、ゆっくりこっちを向きなさい!」

 

突入と同時に、ノワールが得物のショートソードを構えながら叫ぶ。

すると、犯人と思われる何者かは特に抵抗するような様子は見せず、大人しく両手を上げると素直にゆっくりと彼女たちの方に振り向いた。

 

(……ロボット? ……いや、パワードスーツの様な物でしょうか?)

 

その人物の姿を真正面で改めて確認した時、モード・アクティブを起動して白の細剣を握っていたイストワールはそう感じた。

近代的な鉄の装甲に身を包んだ人物、カラーリングはピンクという奇抜なものだが、ミステリアスな怪しさをこれでもかと感じさせてくる。

 

「あなたね……ハッキングの犯人は」

 

ノワールが目の前の何者かにそう問いかけるが、その人物は特に返答は返さなかった。

 

「さっさと答えなさい!」

 

痺れを切らしたのか、ノワールがさらに強い口調で問いかける。

 

この人物が衛星にハッキングを仕掛けた人物なのだろうか……。

 

ノワールの隣で緊張した面持ちを浮かべるイストワールがそう考えていると、アーマーに身を包んだ何者かがそっと座っていた椅子から立ち上がった。

警戒を強めるイストワール………すると………。

 

 

 

「あはぁん♡ そんな他人行儀な喋り方しないでぇ?」

 

 

 

………一瞬だが、その場にいた全員の空気が止まったような気がした。

立ち上がったかと思ったら、突然身をくねらせながら、男の声色で女性のような言葉遣いで話し始めたのだから。

 

「アタシの事は“アノネデス”ちゃんって呼んで♪」

 

きらっ☆

 

という効果音が付きそうなポーズを決めて最後にそう言った謎の人物。

この時点で、もうその場にいた全員は目の前にいる何者かがどういう人物なのかを理解できてしまった。

 

「ねぷぅ!? お、“オカマ”さん!? その見た目で!?」

 

そう、どうやら犯人と思われたこの人物は紛れもない“オカマ”だ。

全身を機械のアーマーで包み込んでいるせいではっきりとは分からないが、声色は完全に男のそれであるため、そうと考えるのが妥当であろう。

 

「あ~ら、失礼ね? 心は誰よりも、乙女よ♪」

 

「……本当、わかりやすいくオカマね」

 

「しかも、ちょっと毒舌だったりするんですわよね、きっと」

 

「あったり~! 胸だけ大きいバカ女神と思ったら違うのね?」

 

「なっ………!」

 

アノネデスと名乗った謎のオカマ口調の人物は、さっそく典型的なオカマなトークで独自の世界観を作り始めていた。

正直、この状態だとさっきのシリアスな空気が一気にぶち壊しである…。

 

「………なんだか、さっきまで緊張していた自分がバカらしく思えてしまいます」

 

「あらあら、ちょっと印象が違ってたってだけでそんなこと言うの? 見た目で判断するなんて愚の骨頂よ? もしかして、あなた見た目の割に内心結構黒いんじゃない?」

 

「なっ! そ、そんなことはありません!」

 

アノネデスの言葉をすぐさま否定したイストワール、そんな会話が進む中、ノワールが一歩目に出てアノネデスに詰め寄った。

 

「あなたの性別とかはこの際どうでもいの! 犯行を認めるの? 認めないの?」

 

「………ふふふ」

 

「な、何よ…」

 

ノワールの問いかけに対し、アノネデスは怪しげな笑い始めた。

そして、顔を包むヘルメット越しにノワールを見つめると、なぜか頬の部分が赤くライトアップされた。

 

 

「生で見るノワールちゃん……やっぱりかわいいわ、想像以上に」

 

 

怪しげな笑いの後に何を言い出すのか、突然の発言にノワールは僅かに動揺してしまった。

 

「なっ!? そ、そんなこと言って、気を逸らそうったって……!」

 

「やだ、本気よ? ほ・ん・き」

 

強がるノワールに対し、自分が本気と言うことを示すためか、アノネデスが人差し指を左右に振った後、ぱちんとフィンガースナップを鳴らした。

部屋にその軽快な音が響き渡った後、どういうわけか突然部屋中に何かが投影された。

どうやら画像の様だが、それが何なのか女神達とイストワールが確認すると……。

 

「こんな写真撮っちゃって、ごめんなさ~い♪」

 

「え? ……あ……ぁぁぁあああああああ!?」

 

「うわっ!? あっちもノワール! こっちもノワール! ぜーんぶノワールだ!?」

 

そう、それらの画像すべてはノワールが映し出されていたものだったのだ。

ありとあらゆる角度、様々な場所でのノワールの姿、食事中だったり仕事中だったり、休憩中、挙句の果てには着替え中など、ノワールの一日の生活を移したかのようなこれらの差神は完全に“盗撮写真”だった。

 

「アタシ、ノワールちゃんの大ファンなの! あなたの事、何でも知りたくてつい出来心で…!」

 

「……出来心っていうか、やってることは完全に犯罪ですよね? これ」

 

「甘いわねあんた! 愛のためなら些細なことを気にしてちゃいけないのよ!」

 

「いや、気にするべきだと思いますけど…」

 

アノネデスの所業に素直に引き気味な返答を返すイストワール、しかしアノネデスは特に動じる様子もなくむしろ誇らしげな態度を見せている。

まさに、タチの悪いストーカーそのものと言えるのではないだろうか…。

 

 

 

「………それ、あなたも言えるのかしらね?」

 

「え?」

 

 

 

だが、ここでふとアノネデスがイストワールに向けて何かを呟いた。

一体どういうことなのだろうか、不意にイストワールが首を傾げる。

 

 

そう言えば、アノネデスは先程イストワールの事を“教祖”だと言っていた。

 

ノワールのファンであり、これほどの写真を撮ってきたのならラステイションに長い間潜伏していたはずのアノネデスが、プラネテューヌに住んでいるイストワールを何故知っているのだろうか?

イストワールはこの時、疑問を感じた。

 

 

しかし、その疑問は間に割って入ってきたノワールによって一度中断されてしまった。

 

「写真なんてどうでもいいのよ! 私が言っているのはハッキングの事で…」

 

「あら、どうでもいいの? じゃあ、これも?」

 

声を張り詰めてくるノワールに、アノネデスがそう言って再度フィンガースナップを鳴らした。

すると、部屋に投影されていた画像の一部が別の画像へと差し替えられた。

 

それを目の当たりにしたとき、ノワールは驚愕のあまり頬を染めて目を見開いた。

 

 

「は………はぁぁぁ!?」

 

「ノワールが…“お裁縫”してる?」

 

 

その画像は、なんとノワールが楽しそうに“お裁縫”をしている画像だったのだ。

ミシンの前に座り、服に針を通すといった基本的な物から、サイズ合わせも行うなどの本格的な作業も含まれている。

 

「………ノワールさんってこういうことをしてましたっけ?」

 

「そ、そうなの! 私、案外家庭的なタイプで!」

 

「あの服、何処かで見たことがあるような……?」

 

「気のせい!! 100%気のせいだから!!」

 

その姿に疑問を抱き、イストワールとベールの二人がノワールに質問を掛け、ノワールが半ば強引な返答で返す。

強引に二人を言いくるめたノワールは今浮かべていた苦笑いを鋭い眼差しへと変えてアノネデスへと向き直った。

 

「ちょっと、それじゃないって言っているでしょう!?」

 

「ふーん……それじゃないなら、これのこと?」

 

そして、アノネデスが三度フィンガースナップを鳴らす。

それを合図に再び画像が切り替わり、映し出されたその画像を見た瞬間、ノワールの頬が今まで以上に高揚した。

 

「……きゃぁぁぁぁぁぁああああああああ!?」

 

甲高い叫びをあげて持っていた武器も地面に落とすほどに取り乱したノワール。

 

そこに映し出されていたのは………。

 

 

彼女の隠された趣味、“コスプレ”をしたノワール自身の写真だったのだから。

 

 

 

「おぉ、これは!」

 

「明らかにコスプレ写真ね………」

 

「あの服、四女神オンラインのコスプレだったんですのね」

 

「まさか、ノワールさんにこんな趣味があったなんて……」

 

「見ないでぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!!」

 

 

 

今まで特定の人物以外には秘密にしていた自分の趣味を暴露されたノワールは今まで以上に顔を真っ赤に染め上げて悶え始める。

 

「やだ♪ 取り乱したノワールちゃんもかわいい!」

 

その様子を見ていたアノネデスが、どこからか取り出したポラロイドカメラのレンズをノワールに向けてぱしゃりと一枚、シャッターを切った。

 

この事態に、ノワールは怒りを露わにしながらアノネデスに向き直る。

 

「こ、この……! いいわ! こうなったら盗撮の罪で牢屋に放り込んでやる!」

 

びしりと指さしながら本来の目的とは違う意味でアノネデスを捕まえることを宣言したノワール。

しかし、それに対し、アノネデスは慌てるような様子を見せない、むしろ四湯すら感じさせるほどに落ち着いていた。

 

 

 

「あら? アタシがここから離れると、この写真と……ノワールちゃんの“秘密のお楽しみ”を納めた秘蔵フォルダがぜ~んぶ公開される手筈になってるんだけど、それでもいいかしら?」

 

「ふえっ!? ……ていうか、あんた、今なんて言ったの?」

 

「最初は独り占めって思ってたんだけど、世界中をノワールちゃんで埋め尽くして、ノワールちゃんのことをみんなに知ってもらうのも楽しそうじゃない?」

 

 

 

その言葉に、ノワールは悔しそうな表情を浮かべてその場で押し黙ってしまう。

なんという手の込んだ仕掛けだろうか、ある意味国の重要機密の漏えいよりも、プライバシー的な意味で恐ろしい仕掛けである。

 

「悩みどころですわね……こんな写真が公開されたら……」

 

「恥ずかしくて表を歩けないわね……」

 

「だいじょーぶじゃないかなー、このノワールちょーかわいいしー」

 

「ネプテューヌさん、棒読みだと説得力ありませんよ?」

 

そんなノワールの悩みなんかどうでもよさげなネプテューヌの言葉にイストワールはツッコミを入れつつも、さすがにこの事態は見逃せないと、一歩前に出た。

白い細剣の切っ先をアノネデスに向け、イストワールが警告する。

 

「何はともあれ……さすがに、このような事態を放っておくわけにはいきません、あなたを拘束させていただきます」

 

「……イストワール」

 

「……知られたくない秘密は、秘密のままにしておきたいですよね?」

 

ノワールにフォローを入れたイストワール、その言葉にノワールは少しうれしそうな表情を浮かべると小さくこくりと頷いた。

しかし……。

 

 

「あらあら、女同士の友情? 言っとくけどそれって案外もろい物よ、特にノワールちゃんと教祖のあなたみたいな関係の二人はね?」

 

 

何やら意味深な発言を投げかけたアノネデスに、イストワールとノワールは眉を潜めた。

 

「何が言いたいのですか…?」

 

「だってねぇ、ノワールちゃん? あなたの隣にいるその教祖の子、みんなの知らない所でこんなことしてるような子よ?」

 

アノネデスはそう言うと、ぱちんとフィンガースナップを再度部屋に響かせた。

すると、彼女たちの目の前、丁度アノネデスの背後にまた別の画像が映し出された、いや、正確に言えばそれは静止画ではなかった。

動いている、つまり動画だ。

そして、その動画が撮影されている場所は…。

 

「ねぷ? これって……」

 

「プラネテューヌ教会の、脱衣所?」

 

そこはネプテューヌとイストワールの二人にとっては見慣れた場所、彼女たちが普段からよく使っている浴場の隣に備え付けられた脱衣所だったのだ。

一体どういうことなのか、イストワールが首を傾げていると動画に映されている脱衣所の扉が開き、誰かが中に入ってきた。

 

 

「え……私?」

 

 

その人物は、イストワールだった。

両腕には着替えと思われる衣服と、数枚のタオルが抱えられている。

すると、動画の中のイストワールが脱衣所のドアを閉めると着替えとタオルを近くに置き、徐に服を脱ぎ始めた。

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

「こ、これは! イストワールの脱衣シーンですの!?」

 

その様子に、ベールが目を爛々と輝かせて食い入るように動画に目を向けた。

突然の動画の公開に動揺したイストワールは慌ててアノネデスを睨むと、細剣の切っ先をすぐさま向けた。

 

「こ、これは、何のつもりですか!?」

 

「ああ、安心して? アタシ、心は乙女だから、ノワールちゃん以外の女の裸なんて見ても特に興味ないわ」

 

「いや、そう言うことじゃなくてですね!!」

 

と言っている間にも、動画に映し出されているイストワールは身に纏った衣服をどんどん脱いでいく。

遂には身に着けていた可愛らしいデザインの白い下着すらも脱ぎ捨て、生まれたままの姿をさらしてしまった。

 

「や、やぁぁぁぁああああああ!? と、止めて!! 止めてください!!」

 

「いいえ止めないでくださいまし! この機会、逃すわけにはいきませんわ!!」

 

「ベールさんは少し静かにしててください!」

 

羞恥のあまり顔を両手で覆って懇願するイストワール、なぜか興奮するベールを注意しつつもアノネデスに再度向き直るが、アノネデスは一向に動画を止める様子はない。

 

「まあまあ、面白いのは……ここからなのよ?」

 

「……へ?」

 

アノネデスが何を言っているのか、イストワールには理解できなかった。

一体どういうことなのか、気になったイストワールは再び画面に目を向ける。

 

「あれ? いーすんが何かを見つけたみたいだよ?」

 

「……洗濯籠の中を見てるみたいね」

 

二人の言う通り、この時動画の中のイストワールは浴場に足を踏み入れようとする前に何かに気付いて足を止めた。

そして、彼女の視線の先に写ったのはいくつかの衣服が詰められた一つの洗濯籠…。

 

 

「………っ!!」

 

 

それを見た瞬間、イストワールはこの時の自分が何をしたのかを思い出してしまった。

イストワールの思考を裏付ける様に、動画の中のイストワールがそっと洗濯籠に近づく。

そして、次の瞬間、動画に映し出されているイストワールが洗濯籠の中から何かを取り出した。

 

「あれって………」

 

「宗谷がいつも着ている、ジャケット?」

 

「あ……あぁぁ……!」

 

先程のノワールのように、イストワールが驚愕に目を見開く。

そして、次の瞬間、それは間違いのない辱めへと変わった。

 

 

 

『………少し、だけ………少しだけです』

 

 

 

動画の中のイストワールがそう呟いた後、手に持っていた宗谷のジャケットを見つめ、それを徐に素肌をさらしている自分の身体に、“直に羽織った”。

 

ほのかに頬を朱に染めたイストワールが、何処か戸惑いを見せるような表情を浮かべながらも、直に羽織った宗谷のジャケットを自分の身体ごとぎゅっと抱きしめる。

 

 

 

『………宗谷さんの……匂い………』

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

どこか満ち足りたかのような表情を浮かべる動画の中のイストワールが呟いた言葉を聞いた瞬間、この世の終わりかの如くイストワールが叫んだ。

両手で顔を覆ったまま、その場に崩れ落ちるイストワール、しかし、無情にも動画は止まるはその先を映し出す。

 

 

『………宗谷さん………あぁ……っ…だめ……こんなこと、ダメです……ダメ、なのに……なんで……ぁあ……宗谷、さん……!』

 

「や、やめてくださいぃぃぃいいいいいいいいい!! お願いですから!! お願いですから止めてぇぇぇえええええええええええええ!!」

 

 

宗谷のジャケットを直に羽織り、その襟元に顔を寄せてすんすんとにおいをかぎながらその場に座り込んで艶めかしい声を上げ始める動画のイストワール。

そして、かつて自分がやってしまったことを改めて見せられ、羞恥の叫びを上げながらそこら中を転げまわる今のイストワール。

 

「………いーすん、私の知らない所でこんなことを……」

 

「………さすがに、これはどうかと」

 

「あぁ、イストワール…あんな表情を浮かべて……ハァ……ハァ……」

 

「いやぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

突然の公開処刑、かつて自分が出来心で行った行為を身内に暴露されたイストワールは先程のノワール以上の勢いで顔を真っ赤に染め、羞恥のあまりその場に蹲り、それっきり動かなくなってしまった。

 

「……い、イストワール、大丈夫?」

 

先程の動画で知ったイストワールの黒歴史に、若干動揺しつつもノワールが彼女を気遣ってそっと彼女の肩に手を覆いて大丈夫かどうかを確認する。

しかし、イストワールはその場に俯いた状態で蹲ったまま、特に返答する様子を見せなかった。

 

「………ぐすっ」

 

「……?」

 

その代り……。

 

 

 

「……っ……あ、あの時は……ただの……出来心……だったん、です……ひぐっ……つい、間が差して……えぐっ……いけないことだって……分かっていたのに……反、省もしたのに………こんな……ふぇぇ……!」

 

 

 

目からぽろぽろと涙を流し、身を震わせながらイストワールは泣き出してしまった。

 

「イストワール!? だ、大丈夫よ!? 私だってさっきのこと秘密にしてたからお会い子よ、お会い子!」

 

「で、でも……こんな姿を皆さんに見られて……もう私……ひぐっ……うぇぇぇぇ…!」

 

「あ、あなただってさっき言ってたじゃない! 秘密にしていたい物は誰しもあるって! 私だってまだあるのよ!?」

 

「………ノワール、あなたまだ何か隠してるの?」

 

「……ハッ!?」

 

泣き出したイストワールを慰めようとノワールが奮闘するが、それが新たな失言を引き出してしまった。

それを聞き逃さなかったブランがノワールに問いかけるが、ノワールはすぐさま視線を逸らして何とかしようと思考を巡らせる。

 

 

(まずいわ……このままだと、宗谷との“あれ”がバレるかもしれない……!)

 

 

今はまだ明かされていない最大の秘密が暴露されるのを恐れてアノネデスを見つめるノワール。

これは、今まで自分がひた隠しにしてきた彼との“大事な秘密”、これだけは誰かに知られるわけにはいかない…。

 

(………でも)

 

しかし、なぜかこの時ノワールは自分の大切な秘密が明かされることよりも、自分の傍で泣きじゃくるイストワールの事が気になって仕方なかった。

 

情けとかそんな物とは違う……また別の何か……。

 

 

 

「と、とにかく! あなた、どういうつもりなの? こんな動画を見せてイストワールを辱めて! 何が目的なのよ!」

 

「目的も何も、アタシはそこの教祖ちゃんが隠れてどんなことをしていたのか教えただけよ? まあ、ノワールちゃんも言えた義理じゃないと思うけど」

 

「なっ……! そ、それとこれとは話が別よ! 私はどういう意図があってこんなのを見せたのか聞いてるの!」

 

話と思考を強引に中断して、ノワールが問いただすと、アノネデスは待っていましたと言わんばかりに不敵な笑いを溢した後、流していたイストワールの黒歴史動画を止め、新たな画像を映し出した。

 

「アタシはね、ノワールちゃんの事大好きだからいろんなことを調べたの、そしたら……この坊やの事を知ったのよ」

 

「っ! これって宗谷…?」

 

フィンガースナップを鳴らしたことにより映し出された新たな画像、そこに映し出されていたのは紛れもない、宗谷の姿だった。

 

「天条 宗谷…… 最初こそ、ノワールちゃんの周りにたかる汚らしい害虫と思ってたけど、調べていくうちにおもしろい子だってわかったのよ」

 

新たに映し出された画像が、また別の物へと切り替わる。

次に映し出されたのは、宗谷が変身した姿、クロス・ヴィクトリーが巨大なロボットと戦っている様子だった。

 

「あの子、なんだか女神とはまた違ったすごい力を持ってるみたいじゃない……アタシ、興味が湧いちゃって」

 

「あれは確か、私が捕まった時の……Dr.トロイの時の?」

 

宗谷と戦っているのは、以前にラステイションで革命を起こそうと計画し、宗谷とユニ、日本一、そして具現化したヒーローメモリーの主人公たちの手によってその計画を潰されたDr.トロイが作り出した女神の力を動力源にするロボット、イノベイタ・ヴァルキリーだ。

 

「Dr.とアタシ、ちょっとした関係でね? あの時のDr.のロボットを作るのも手伝ったのよ? まあ、どっちみちうまくいかないのは目に見えていたけど、おかげであの坊やの事もより詳しく知ることが出来たからいいんだけど…」

 

「……何が言いたいの? 結局あなたは何が言いたいのよ!」

 

場を濁すような回りくどい説明をするアノネデスにノワールが強い口調で問い詰める、

すると、アノネデスはその場に足を組んでふふっ、と不敵な笑いを響かせた。

 

 

 

 

「アタシはね、あの坊やが……欲しいの♪」

 

 

 

「………は?」

 

 

 

 

 




いかがでしたか?


次回は、アノネデスの密かな企みが明らかに…。

なぜ、アノネデスはイストワールにあんな嫌がらせをしたのか?

なぜ、宗谷を欲しがるのか?

そして、ノワールがイストワールに感じた物とは?

ラステイションの盗撮事件はノワールとイストワールの恋の二重奏も交えて、予想外の展開に!?

次回もお楽しみに!

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