今回のお話はラステイション盗撮編、最後!
多くの出会い、そして予想外の事態が巻き起こった原作でのあのお話。
今回はオリジナル要素も多めに加えた仕上がりとなりました。
見所は秘密を握る乙女たち!
それではお楽しみください、どうぞ!
この時、ノワールを含めた四人の女神はアノネデスが発した突然の言葉に思考能力を否応なく、強制的に停止させられた。
何を言ってるのだろうか、このオカマは…。
聞き間違いでなければ、宗谷が欲しいと言った。
欲しい、どういう意味で…?
相手はオカマ、心は乙女、でも肉体は男。
そんな奴が、宗谷を、欲しい、と言った……。
「………ふ、ふざけたこと言ってんじゃないわよぉぉぉぉおおおお!!」
アノネデスの発言を全力で否定するべく、ノワールが叫んだ。
ショートソードの切っ先がアノネデスに向けられる。
「なによ、アタシふざけてるつもりなんてないわよ?」
「どの口が言うのよこの変態盗撮オカマ! そ、宗谷が…ほ、欲しいって、いったいどういうつもりよ!?」
「そうだよ! ソウヤは萌えキャラとかヒーローを愛する気持ちはあるけど、さすがにそっち系の趣味はないよ!」
自分が恋心を抱く相手に突然迫った貞操の危機に、ノワールが鬼気迫る勢いでアノネデスに詰め寄るがアノネデスは飄々とした態度を見せるが、宗谷を狙う理由について問われた瞬間、アノネデスは両頬に手を添えた。
「どういうつもりって……それはもう、ねぇ……ポッ♡」
「ポッ、とか口で言うなぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」
再び顔に灯る赤いライト、憤怒の叫びをあげるノワール。
今まさに思いを寄せる人の貞操の危機を守るために、一人の少女が奮闘していた。
「まあ、ようするに~? なんていうか~、一目惚れ、みたいなものかしらね♪」
「あんたさっきまで私のファンとか言ってたじゃない!!」
「ええそうよ? でも、アタシはノワールちゃんのファンであり、あの坊やのことも気になってるのよ……ああ、愛っていうのは欲張りで、複雑なのね……ポッ♡」
「だから、ポッ、とか自分で言わないでよ! 気持ち悪いのよ!!」
「そうだよ! それにねオカマさん!」
恥じらう乙女の如く身をくねらせてそう言うアノネデス、どうやらこれは本当に宗谷の貞操がピンチらしい。
このままでは宗谷の恋愛面がややこしいことになってしまう。
その事を危惧したネプテューヌすかさずアノネデスの前に立つと、ドンと無い胸を張ってある人物を指さした。
「ソウヤにはね、大事なパートナーがいるんだよ! いーすんっていうパートナーが!」
「ぐすっ……ひっ……ふぇ?」
今だにむせび泣くイストワールを指さしながらそう宣言したネプテューヌ。
だが、その発言に一瞬だがノワールがむっと眉根を寄せた。
「……パートナー? ふん、笑わせないでちょうだい? アタシから言わせてみれば、その教祖ちゃんは邪魔なだけよ」
ネプテューヌの発言に、アノネデスがそう返す。
「………ノワールちゃんと一緒でね?」
「なっ……!?」
だが、突然口にしたアノネデスの発言にノワールは驚き、目を見開いた。
そして、同様に他の三人の女神達もノワールの方へと視線を向ける。
「それは……どういうことですの、ノワール?」
「………まさか……あなたまで…」
「うそっ!? まさか、オカマさんだけじゃなくてノワールも恋のライバルだったの!?」
その事実を知らなかった三人は動揺して一斉にノワールの方を見た。
確かに、ひそかに彼女が宗谷に思いを寄せていたことはイストワールを覗いて他の者には内緒にしていたのだ、驚くのも無理はない。
「いやっ……その……それは……!」
「否定、出来ないわよね? だってあの坊やの事を好きじゃなかったらさっきみたいにアタシに突っかかってこないもの」
「………あなた!」
感情に任せて、アノネデスを鋭く睨み付けるノワール。
すると、アノネデスは仮面の下でくすくすと笑う。
「でも、それはそれであたしは好都合よ」
「……どういう意味?」
「……大好きなノワールちゃんとあの坊やが一緒になってくれれば、アタシは一気に二人を独り占めできるかもしれないじゃない?」
「え………?」
「アタシはノワールちゃんの事も坊やの事も大好き、そしてノワールちゃんもあの坊やの事を大好き、なら、あとは坊やがノワールちゃんのことを好きになってくれれば、ノワールちゃんも幸せで、アタシもノワールちゃんと坊やの愛しい姿を独り占めして見ることが出来る……まさに、win・win、最高の関係じゃない?」
得意げにそう言ってのけたアノネデス。
それは言わば自分の愛する二人に愛を捧げる、独特の愛情表現のつもりなのだろうか。
自分はそれを見ているだけで十分、二人は普通に愛し合ってくれていいと……つまりはそう言うことなのだ。
「だから、アタシはノワールちゃんの恋路は応援するわ……でも、そこの教祖ちゃんはいらないのよね」
そう言うとアノネデスはイストワールの方へとマスクで包まれた顔を向けた。
「だから、ノワールちゃんのためにも今のうちにあの子の事を潰しておいた方がいいかと思ったのよ」
「そんな……そんなのってずるいよ!」
「甘いわね、時には残酷な手段を使わないと恋のキューピッドにはなれないのよ! それともあなた、さっきの発言からしてそこの教祖ちゃんの味方みたいだけど…ノワールちゃんが坊やのことを好きだと知ったとして、そのまま放置できるの?」
「そ、それは……」
その言葉に、ネプテューヌは目を泳がせて言いよどんでしまった。
もちろん、イストワールの恋路を応援したいとネプテューヌは思っている。
だが、だからと言ってイストワールと同じように宗谷に思いを寄せているノワールの存在を知って何もしないでいるのかと言えば、難しい話になってくる。
ノワールはネプテューヌにとって大事な仲間だ、故に彼女にイストワールは宗谷の事が好きだから諦めてくれ、なんて率直に言えるわけはない。
かといって、イストワールの恋路が叶ってほしいとも思っている以上、この事態を見過ごすわけにはいかないのも事実であろう。
「要はそういうことよ、アタシはノワールちゃんの恋路を実らせるなら頑張っちゃう覚悟はあるわよ、アタシのためにもね……だから教祖ちゃん?」
アノネデスはそう言うと、未だに目に涙を溜めているイストワールへと視線を向けた。
「この動画、アタシの手にかかればあの坊やの元に届けることなんて造作もない事よ?」
「え………?」
「だから、あなたはあの坊やの事を諦めてちょうだい?」
残酷、且つ恐ろしい、死刑の宣告の如し言葉がイストワールの背筋を凍らせる。
もしあんなすがたを宗谷に見られてしまったら、自分は彼にどんな風に見られてしまうのか……イストワールにとってそれは想像する事すら恐ろしい事だった。
しかし、今彼女が胸に秘めている想いを、それで断つということもまた彼女にとっては苦痛でしかなかった。
この思いは、誰にも譲れない大切な気持ち、それを簡単に諦めてしまうことなんて彼女にはできなかった。
「そ、そんな……そんなこと、簡単に……!」
「あら? じゃあ、あの坊やにあなたの秘密、見せちゃっていいの? 他にもいろいろあるわよ?」
「っ………」
迫られる、二つの選択。
彼への思いを諦めずに、彼に減滅される道を選ぶか…。
彼の傍にいるために、彼への思いを諦めるか…。
どちらも残酷な、辛い選択だった。
無意識の内に、イストワールは自分の手を強く握りしめていた、そして目に溜まっていた涙がまた一つ、静かに零れた。
彼女の恋心が強く揺らぐ…。
だが、どちらを選んでも残酷な結末しか待っていない…。
彼女は迷った、だが、迷った末に一つの答えに辿り着いた
静かな静寂が、長く、長く続いた……。
そして、イストワールはその口をゆっくりと動かし始めた。
「私……は………」
「バカね」
だが、その静寂を破る者がいた。
「あら………?」
アノネデスの首元に突き付けられる、ギラリと光る刃。
そして、その刃を握るのは………。
「そんなの、選ぶ必要ないわよ、イストワール」
「ノ……ワール……さん……」
黒かった髪を白く変化させ、体に黒く輝くボディスーツを纏った、ノワールの女神化した姿、ブラックハートだった。
「……私も同じ気持ちだからわかるわよ、そう簡単にあいつへの思いを諦められる訳ないでしょ?」
「………ぁ」
ブラックハートの言葉は、イストワールにとって揺るぎない一つの答えだった。
“この思い、好きだという気持ちは、諦めきれない”。
これは今イストワールの心中にあった唯一の答えでもあった。
「なら、胸を張りなさい、そして堂々と言い切りなさいよ……私は宗谷の事が大好きだって……そのくらいでないと、張り合いがないじゃない」
ブラックハートはそう言うと、何処か気恥ずかしそうに視線をイストワールから外した。
「………ノワールちゃん、いいの? せっかくライバルを蹴落とすチャンスだったのに」
アノネデスがブラックハートにそう問いかけるが、ブラックハートは再度目つきを鋭くして、持っている大剣の切っ先をアノネデスの首元に更に近づけた。
「言っておくけどね、私は楽して何かを得ようとするのは大嫌いなの、何かを得るためなら努力して負けないように頑張って、正々堂々とつかみ取るわ……恋も一緒よ」
凛とした声で宣言したブラックハート、その言葉はまるで彼女のこの恋の三角関係に対する意気込みを現している様だった。
「だから、あんたみたいなやつの施しなんて必要ないわ、むしろあんたの方が私たちにとって邪魔者よ!」
強い口調で言ったブラックハートの言葉、それを聞いた瞬間、先程まで意気消沈していたイストワールの表情に再び強い意志が灯った。
目元の涙を拭って、立ち上がったイストワールは再び右手に白い細剣を握るとすぅっと大きく息を吸い込んだ。
そして、吸い込んだ空気を静かに吐き出すと今のブラックハートにも負けないくらいの鋭い目つきでアノネデスを睨み付けた。
「………私は、宗谷さんの事を諦めません………だから私は、あなたを………ぶっ飛ばします!」
彼女らしからぬ荒い口調。
だが、それが彼女の気持ちの強さの表れだということを、ブラックハートは直感的に理解した。
「………よく言ったじゃない、そうこなくちゃ面白くないわ」
「………当然です」
互いに言葉を交わしたブラックハートとイストワール、その二人の姿に他の三人の女神も触発されてか一気にその場の空気が張り詰めた状態に戻る。
「さあ、というわけだからあんたを盗撮の罪で拘束させてもらうわよ? ………行っとくけど、乙女の秘密をバラシてくれた代償は………死ぬほど痛いから覚悟しなさいよ?」
大剣を握るブラックハートが静かに殺気を立てて、そう告げた。
なんやかんやで、先程自分の秘密の趣味を隠していたことを根に持っている様だ。
揺らめく恋する乙女の怒りのオーラを前に、アノネデスは特に何をするでもなく沈黙を貫いたままその場に座っていた。
諦めたのか、その場にいたブラックハート達がそう思い始めた時だった。
「………そうこなくっちゃ♪」
不意に、アノネデスが何かを呟いた。
一体どういうことかとブラックハートが首を傾げた時……。
「ノワールさん!」
「っ!」
イストワールに呼ばれたブラックハートは自分に迫りくる何かに気付き、ハッ、と顔を上げた。
すると、どういう理屈か部屋中に浮かび上がっていた無数の画像がモンスターへと変わり、ブラックハートへと殺到してきたのだ。
突然の奇襲にブラックハートはすぐさま握っていた大剣を振るい、迫りくるモンスターを切り捨てる。
「おっと! 上からくるよ!!」
「言われなくても……分かっているわ」
「さっさと片付けてしまいましょうか!」
さらに、ネプテューヌ達も迫るモンスターたちをそれぞれの獲物で切り裂き、打ち据え、貫く。
一瞬にしてバトルステージへと姿を変えた部屋で彼女たちが奮戦する、そんな中アノネデスは隙をついて手元のカバンを手に取るとそそくさと逃げだした。
「ふふっ、楽しかったわノワールちゃん、あと写真を公開するっていうのは嘘だから安心してね? あと、あなたと坊やの秘密も黙っていてあげるわ♪ でも、教祖ちゃん…あなたはどうなるかわからないけどね~♪」
「あ! 待ちなさい!!」
「行かせません!!」
逃げ出したアノネデスをブラックハートとイストワールの二人が追いかけようとする、だがそんな二人の前に邪魔をしようとしてか無数のモンスターが立ちはだかった。
先程まで拠点にしていた部屋を後にし、廊下へと出たアノネデスは気分がいいのかその足取りも軽く浮いている様にも見えた。
というか、実際に浮いているのだが、どうやらそう言う機能を備えたスーツらしい。
「生ノワールちゃんに会えたんですもの、アジトの一つくらい、ドリームズカムトゥル~♪」
後半の部分は妙な巻き舌で伸ばしつつ、アノネデスは廊下をまっすぐに浮きながら移動し続ける。
「それにしても……あの教祖ちゃんを蹴落とせなかったのは、ちょっと残念ね……でもいいわ、いずれあの坊やはゲットさせてもらうわ………そうでないとアタシが面白くないもの……うふふふ♪」
怪しげな笑いを響かせながら、通路を曲がり出口へと繋がるドアを見つけたアノネデスはすぐさまドアノブを回して外に出た。
後は気取られないようにさっさとここから立ち去るだけ、アノネデスがそう考えていると……。
「ん?」
出口を出た瞬間、アノネデスの視界になにやら小さな影がぴょんぴょんと飛び込んできた。
ネズミとウサギを合わせた様な小動物らしきそれは素早い動きでアノネデスに近づくと足元から上に向けてどんどんよじ登って行った。
「ちょ、何!? 何!? ヤダヤダ! どっか行ってぇ!?」
突然現れた謎の生き物に、アノネデスは動揺し追い払おうとするが……。
「あ~~~~!! クラたーーーーーーん!!」
「ぐっふぅぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!?」
そこへ、突如として現れた少女が小動物を乗せているアノネデス目がけて思い切り飛び掛かった。
凄まじい気負いで飛び出した少女の行動は鳩尾にきれいに体当たりとして決まり、アノネデスはさっきまでのオカマ口調には似合わない野太い声を上げてその場に仰向けに倒れた。
その際に、アノネデスが持っていた荷物が地面に落ち、その中身が盛大にぶちまけられた。
「あー!! ピーシェとクラたん!!」
「ようやく見つけ………って、おいぴぃ!! お前またやったのか!? さっきも注意したろ!?」
「わわわっ!? だ、ダメでしょピーシェちゃん!? えっとごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
「まったく………どんなしつけしてるのよ………」
するとそこへ、その少女を追ってさらに複数の人物が現れた。
その人物たち、宗谷と女神候補生の四人、そしてピーシェの盗撮犯を追っていたチームの6人と一匹だった。
再びやらかしたピーシェに注意しつつ、ネプギアとユニの二人がぶつかった被害者であるアノネデスに謝罪する。
「………ん? ピーシェ?」
苦しそうにしながらもむくりと起き上がったアノネデス、この時自分の上に載っている少女の名前を聞いて、アノネデスは何かを思ったのか彼女の顔をじっと見つめる。
「あんたの名前、ピーシェ……?」
「うん! ぴぃだよ!」
肯定するピーシェに、アノネデスは特に何の返答を返すこともなくじっと、ただ彼女を見つめる。
「………あの、ぴぃが何か?」
「え? ………あ、あらヤダ! あなた!?」
「え? は、はい……ていうか、何? オカマ?」
黙ったままピーシェを見つめるアノネデスを疑問に思った宗谷がアノネデスに声を掛ける、すると彼の存在に気付いたアノネデスがハッとした様子で急に声を裏返した。
「………まさかこんな所で会うなんて……絶好のチャンスだけど、今はタイミング最悪ね………」
「あの~……どうかしたんすか?」
ぶつぶつと呟くアノネデスに不思議そうな表情を浮かべながら再度問いかける宗谷。
しかし、ここでその傍にいたユニがある物を見つけた。
足元に広がる無数の書類の山、その中の数枚をユニが拾い上げた。
「? ………お姉ちゃん?」
その書類の中に、何やら写真の様な物が紛れていたことに気付いたユニがそれを見るとそこにはコスプレをしたノワールの姿が映っていた。
なぜ、こんな写真をこの人物が持っているのか……疑問を感じたユニだったがその答えはすぐに出た。
「っ!! あんたが盗撮犯ね!!」
「えっ!?」
「なに!? ………あ、ほんとだ!? これ、ノワールのコスプレの………!」
「Ooooopus!? お気に入りをプリントアウトしていたのが、仇に!!」
ノワールの姿を映した写真を見てアノネデスが盗撮犯だと見抜いたユニは、怒りの表情を露わにするとすぐさまその体を光で包み、己の体を女神としての姿に変化させた。
怒りの感情を双眸に滾らせるユニ、ブラックシスターがX・M・Bの銃口をアノネデスに突き付ける。
「………許さない」
「ゆ、ユニちゃんが怖い……」
「………当然の報いって言ったらそれまでだけど……ドンマイ、オカマ盗撮犯」
ブラックシスターの溢れ出る威圧感に押され、まさに蛇に睨まれたカエルの如く、身動きできない状態のアノネデス。
小さいピーシェやロムとラムに被害がいかないように端へと誘導したネプギアと宗谷も彼女の気迫に若干怯えている様だった。
そんな中、突然アノネデスの後ろにあった扉がとてつもない爆風を上げて吹き飛んだ。
「このオカマ! 逃がさないわよ!!」
「神妙にしてください!!」
「お、お姉ちゃん……? イストワールさんも……」
「あら? ユニ……」
そこからきれいなダブルキックの体制で飛び出してきたブラックハートとイストワール、二人が出てきたことがアノネデスは完全に退路を断たれた。
まさに、前門の虎後門の狼、逃げ場のない袋小路である。
これではもう成す術ないと判断したのか、アノネデスが憂鬱そうに溜息を吐いた。
「………はいはい、諦めるわよ」
そう言ってアノネデスはあっさりと逃走を諦めてその場で両手を上げた。
「………随分諦めがいいじゃない」
「だって、アタシ戦えるほどの力ないし、どうあがいても無駄でしょ?」
「いい判断ね、でもそんなので罪が軽くなると思ったら大間違いよ?」
逃走を諦めたアノネデスをブラックハートが拘束しようと近づく。
「ちょ、ノワール! いーすん! 二人共先に行かないでこっち手伝ってよ~!!」
だがそこに、たくさんのモンスターを引き連れてネプテューヌとブラン、そしてベールの三人が駆けつけてきた。
実はノワールとイストワールの二人はアノネデスを追いかけるべく、迫りくるモンスターの間を掻き分けて強行突破してきたのである。
故に、彼女たち三人ではさばききれない数のモンスターがまだ残っていたのだ。
「ちょっ!? あんた達なんでそいつらを連れてくるのよ!?」
「だって~…!」
「女神化しようにも、数が多すぎて…」
「さすがに疲れもたまってきますわ……」
「どれだけの数を揃えていたんですか、この人は……」
既に疲労困憊と言いたげな三人、迫るモンスター達を前にブラックハートとイストワールが身構える。
「よくわからないけど………とにかくノワール、いーすん、俺も手伝うぜ!」
そんな二人に加勢するべく、宗谷も赤剣とV.phoneを取り出して二人の隣に並ぶ。
その時!!
「ハイィィィィヤァァァァァァァアアアアアアアア!!」
突然の声と共に、何者かが勢いよくモンスターの群れの中に飛び込んだ。
『!?』
突如として現れた乱入者にその場にいた全員が驚く中、遅れて数体のモンスターが粒子となって消滅した。
モンスター達も標的を宗谷達から乱入者へと変え、その場にいた全員の視線が飛び込んできた何者かに向く。
「………フッ」
短く息を吐きながら、右手に握る青色の長い槍をぶんと振り回したその人物の身体は“青い装甲”に包まれていた。
シルバーのアンダースーツの上に、光り輝くスカイブルーの光のラインが浮かび上がっている近未来的な印象を与える装甲を胸、両手、両腕、両膝、両足に装備し、顔には仮面を被っていた。
その首元には装甲と同じように青いマフラーがなびいていた。
青い装甲に包まれた謎の人物、いや、“青い戦士”とでも呼べるその姿を見たとき、ソウヤは驚きのあまり目を見開いた。
「………俺と、似てる?」
全体的なデザインに細かな違いはあれど、大まかなフォルムや特徴は宗谷と何処かに通っている部分があったのだ。
その証拠に、青い戦士の握る三叉の槍、トライデントの矛先には宗谷の赤剣と同じように、液晶画面が供えられた端末の様な物が取り付けられ、画面には宗谷のベルトと同じVとパソコンの起動マークが合わさったような不思議な紋章が表示されていた。
青い戦士はトライデントを地面に突き立てると視線を周りを囲むモンスターに向ける。
「……この程度の数の前に逃げ出すなんて、この世界の女神は大したことないな」
「……お前は……?」
宗谷は目の前にいる青い戦士に恐る恐る訪ねた。
すると、青い戦士は宗谷を一瞥すると何かに気付いたように僅かに反応するような動きを見せると仮面越しにほんの少し笑いを溢した。
「………そうか、お前が………」
「え?」
「………よく覚えておけ、“勝利の勇者”………俺は、“正義の勇者”」
「“クロス・ジャスティス”だ………!」
そう名乗った青い戦士、クロス・ジャスティスはトライデントを両手で握ると周りにモンスターに向けて迷いなく、その先端の刃を向けて振るい始めた。
「てぇぇえ!!」
何かの武術の様な洗礼された見事な動き、縦横無尽に駆け巡るトライデントの槍先が次々とモンスターを捉え、切り裂いていく。
目前のモンスターを貫き、横に迫ったモンスターは右足で蹴り飛ばし、と嵐電とを引き抜くと左右にぶんぶんと振り回しながら牽制し、横薙ぎに大きく振るって数体のモンスターを纏めて切り裂く。
「………強い」
「あの人は一体……」
クロス・ジャスティスの戦いぶりに息を飲んで見入ってしまっている宗谷とイストワール、それは女神達も同様の様だった。
「………ふん、雑魚ばかりか……なら、さっさと片付ける」
クロス・ジャスティスはそう言うと、左腰に備えられていたカードケースの様な物を開き、そこから一枚のカードを取り出した。
左手に持ったそのカードを、トライデントに連結してある端末にスライドするように装填する。
『ライバルカード! リード! ソードアート・オンライン ユージオ!』
「っ!」
遅れて聞こえてきた電子音、それを聞いて瞬間宗谷は驚きのあまり目を見開いた。
聞こえてきたのは、自分もよく知っている作品とキャラクターの名前だった。
ソードアート・オンラインの主人公、キリトが“アンダーワールド”と呼ばれる仮想世界で出会った友であり、青い薔薇を咲かせた剣を握る剣士の名前…。
カードを装填したトライデントの槍先に白い、靄のように広がる冷気が集まり始める。
「咲け、“青薔薇の氷河”!!」
クロス・ジャスティスが叫び、トライデントの槍先が地面を穿った。
その瞬間、彼の周りから噴き出すようにとてつもない寒さを感じさせる冷気が発生し、一瞬にしてモンスターの群れを飲み込んだ。
その勢いを前に咄嗟に目を覆った宗谷が次に目を開いたとき、モンスターの群れはその姿を完全に変えていた。
なんと、南極の海に浮かび上がる氷河の如く、モンスターがすべて氷漬けになっていたのである。
そして、氷のオブジェと化したモンスターに纏わりつくように青い、氷の薔薇が咲いている。
宗谷がその光景に見入っていると、次の瞬間にはその氷のオブジェは木っ端みじんに砕け散った。
当たりに氷の微粒子、ダイヤモンドダストが漂う中、宗谷はすぐさまクロス・ジャスティスが立っていた場所へと目をやる。
だがそこには、すでにクロス・ジャスティスの姿はなかった……。
「……なんだったんだ、あいつ……」
呆然とする宗谷と女神達、辺りに残った僅かな氷と空中に漂うダイヤモンドダストがキラキラと輝いていた…。
突然の事態もあったものの、こうしてラステイションのハッキング事件………いや、盗撮事件は幕を下ろした。
その後、投降したアノネデスはラステイションの警備兵によって護送、刑務所送りとなった。
ハッキングについては認めず仕舞いだった物の、ラステイションだけでなくプラネテューヌの教会にまで隠しカメラを設置したアノネデスはしばらく檻の中で暮らすこととなるであろう。
アノネデスが記録していたノワールの画像やイストワールの恥ずかしい映像データも無事に回収して、一件落着といければよかったのだが……。
残念ながら、ユニにノワールのコスプレ写真を見られたことによってノワールのコスプレ趣味は女神達だけでなく女神候補生にまで知れ渡ることとなってしまった。
結果的に大恥をかいてしまったノワール、その横で宗谷が何か申し訳なさそうな顔をしていたのは言うまでもない。
しかし、その後のラステイション教会でこの物語はまた新たな局面を迎えることとなった。
教会へと戻ってきた一向、今日あったどたばたに疲労を感じる中、ノワールはなぜかイストワールをテラスへと誘った。
夕日がテラスを優しいオレンジに染め上げる中、どうして自分が呼ばれたのかイストワールは不思議に思いながらノワールの元に来た。
「あの、ノワールさんどうしたんですか?」
「………これ」
「え? ………これって」
突然渡されたのは、数枚の写真だった。
それを手に取り、何かとイストワールがその写真を覗き込むと……。
「宗谷さんと、ノワールさんの………コスプレ写真?」
そこに写っていたのは宗谷とノワールの二人がツーショットで撮影したコスプレ写真だった。
宗谷は白い衣装に南蛮胴と呼ばれる鎧のようなものを身に纏い、純白のマントを背中に広げて普段は黒い髪をカツラか何かで金色にしていた。
その隣には同じように白い神々しさと儚さを感じさせる衣装を身に纏い、同じ様にカツラか何かで髪を金色にしたノワールの姿があった。
二人とも楽しそうに寄り添い、様々な衣装に身を包み、ポーズを決めている。
一体、この写真は何なのかとイストワールがノワールに向き直ると、ノワールは視線をそらしながらそっと呟くように言った。
「……私と宗谷、週に何回か夜にこっそりこの教会でコスプレをしてたの」
「こっそり……というか、宗谷さんのノワールさんの趣味を知っていたんですか!?」
「だいぶ前にね……あの時はいろいろ大変だったのよ?」
着替え中に部屋に入られて下着姿は見られるわ、隠していたコスプレ趣味を宗谷の無駄に鮮やかな推理であばかれて泣かされるわ、その時に絶対に受け入れられないコスプレを受け入れて貰えてちょっぴりうれしかったなど、その時のことを思い出しながらノワールが苦笑いを浮かべた。
「昨日なんか熱中しすぎて気づいたら深夜になってて、あいつ慌てて帰って行ったのよ?」
「……だから、宗谷さん今朝は眠そうにしてたんですね」
「まあ、無理もないかしらね…そのコスプレのキャラ、宗谷の一番のお気に入りだったらしいから」
あの時に眠そうな欠伸をしていた宗谷に合点がいったと納得したイストワール、しかし、まだ腑に落ちない部分があった。
「でも、ノワールさんはなぜこのことを私に…?」
これは彼女と宗谷の秘密の会合であり、少なからず理解者であり、思い人である彼との楽しい時間であったはず、それを何故今ここで明かしたのか、イストワールは疑問を感じたのである。
「まあ、秘密にしておくつもりだったんだけど……あなたの秘密を知った以上、私だけまだ隠したままっていうのも嫌だなって感じただけよ、だからこれで本当におあいこ」
「あ………はうぅ……」
アノネデスのせいで明かされてしまったイストワールの恥ずかしい秘密の行動、それがばらされたことを思い出してイストワールの恥ずかしさのあまり頬を染めて目線を伏せてしまった。
「………でも、別に秘密の一つや二つあってもいいんじゃないかしら」
「え?」
ノワールの言葉にイストワールはきょとんとするが、それを気にすることなくノワールはそっと茜色に染まる空を見上げる。
「実はね、私もたまに宗谷が着た後の衣装のにおいを嗅ぐことがあるの……たまによ? たまに」
「は、はい……」
念を押していったノワールの勢いに押され、イストワールが僅かにたじろぐ。
そして念を押したノワールはイストワールと迎え合うように対面すると、口元に微笑みを浮かべた。
「それにね、私はあなたと違って宗谷となかなか会えないから……あいつにはもちろん言ってないけど、こうしていられる時間が楽しかったし、幸せだったの……」
「……ノワールさん」
「………だから、好きな人に対する秘密とか、一つや二つあっても構わないって私は思ってるわ……そう言うのもひっくるめて好きって気持ちの証明なんだから」
「………はい!」
ノワールの言葉にイストワールが強く共感して頷いた、それを見たノワールはふふっ、と小さく笑うと今度は挑戦的な笑みを浮かべてイストワールを見つめる。
「さて、これでお互いの秘密は明かしたわ………負けないわよ、イストワール」
「お互い、正々堂々と、そしてこれからも秘密に頑張っていきましょう………受けて立ちます、ノワールさん」
ここでまた、ひそかな恋の戦いが再び燃え上がっていた。
そんな二人の会話を、物陰でこっそりと聞く人影が一人……。
「………やっぱり、そういうことなのね」
ブランだった。
二人の会話と様子を見る中、ブランはどこか負けじと言った闘争心を瞳に浮かび上がらせる。
こっそりと二人を見つめ、何か闘争心を感じさせる瞳を浮かべるブラン。
だが、突然何かに気付いた彼女は慌てて顔を陰に引っ込めて身を隠した。
「お姉ちゃん……」
「………ユニ、宗谷」
テラスにいるノワールとイストワールの元に現れたのは、ユニと宗谷だった。
二人の元にやってきたユニと宗谷、すると宗谷が申し訳なさそうな表情を浮かべてノワールに近づき、二人に聞こえないようにノワールに小声で耳打ちした。
「ノワール……あの事だけど、大丈夫だったか?」
宗谷の言う、あの事、それは恐らく宗谷とノワールの秘密のコスプレパーティーの事だろう、あれがばれなかったかどうか聞きに来たようだ。
それに対し、ノワールは口元にほんの少し笑みを浮かべると、ちらりとイストワールと目を合わせてから二人共、同じタイミングで微笑みを浮かべた。
「その事なら大丈夫よ、気にしなくていいわ」
「そ、そうか……ならいいけど……でも、お前、コスプレの事はみんなに…それに、ユニちゃんにも…」
「………ありがとう宗谷、気にしてくれて…でも大丈夫よ? これは私がけじめをつけなくちゃいけない事だから」
そう言うとノワールは宗谷から離れて、ユニの元へと向かっていった。
その言葉を聞いた宗谷はこれ以上は余計なお世話と悟ったのか静かにその背中を見送った。
「………ユニ、ごめんなさいね、今まで秘密にしていて………コスプレしている私なんて、嫌よね……」
不安そうにしながらも意を決してユニにそう問いかけるノワール。
姉としての威厳、女神としての手本となるべき自分の隠していた趣味が原因でユニとの関係を悪くしたくない、これはノワールの重大な決意と葛藤の末の答えだった。
最初こそ、帰りの道中に不安そうな顔を浮かべていたノワールを心配していた宗谷だったが、これは彼女の問題だと自分に言い聞かせてその場を見守ることにした。
「もし、ユニが嫌なら……私、やめても……」
ノワールが一大決心をしてユニにそう告げる。
だが、帰ってきたのは優しく首を左右に振る、ユニの姿だった。
「お姉ちゃん、やめないで?」
ユニはノワールの趣味を否定することもなく、その趣味をやめるということそのものを否定した。
優しく微笑むユニにノワールは戸惑うが、ユニは言葉をつづける。
「そう言うことが出来るのって、お仕事に余裕があるからでしょ?」
「………そ、そうね、最近時間が出来たから……」
「それって、アタシもちょっとは役に立てるようになったから、かな……なんて思って」
最後の方は照れくさそうに言っていたが、実際にユニの言う通り、最近のノワールには仕事に十分な余裕が出来ていた。
宗谷が着た当初の頃よりも、最近のユニは奮闘し姉であるノワールのサポートを頑張ってきた。
あの時、宗谷に言われたように……。
その頑張りもあった結果、ノワールは時間にゆとりが持てた、故に夜のコスプレパーティーの時に使う宗谷の分の衣装も用意することが出来たのだ。
その結果なのかは定かではないが、姉の事を思っていたユニはノワールのその趣味を受け入れたのだ。
「……うーん、それはどうかしら?」
「え……?」
だが、それに対し、ノワールは何か考え込むような仕草を見せる。
「………ちょっと所じゃない、すっごく頼りにしてる」
「………お姉ちゃん!」
帰ってきた返答に、ユニはぱっと表情を明るくした。
意地悪な返答の仕方だったが、ユニにとってそれは何よりもうれしい返答だった。
二人はどちらからともなく笑顔を浮かべ、笑いあう。
どこぞの紫姉妹にも負けないくらい、ラステイションの黒姉妹も仲良しなのだ。
その様子に宗谷とイストワールの二人は微笑ましそうに見守っていた。
「………さて、ということだから」
すると、ノワールが宗谷の方を振り向きそっとその隣に寄り添った。
「宗谷、今夜またコスプレの衣装合わせするわよ? 今度のは結構いい出来になりそうなの!」
「えっ? ちょ、今夜!? いきなりすぎっていうかノワール、いーすんやユニもいるのに言っていいのかよ!?」
突然の彼女の誘いに戸惑いの表情を浮かべる宗谷、それを聞いたイストワールもまた慌ててノワールに食って掛かる。
「の、ノワールさん! いきなり抜け駆けはずるいです!」
「あら? いつも宗谷と一緒に居るあなたこそ、私からしたら抜け駆けよ?」
「それとこれとは話が別です! と、とにかく一旦宗谷さんから離れてください!」
「そっちこそ! たまには私に譲りなさいよ!」
宗谷の前で互いに譲ろうとしないノワールとイストワール、その二人の言い争いについていけず宗谷はたじたじになってしまいどうすればいいのかわからないのか、一度ユニの方に視線を送る。
「宗谷さん、アタシみたいな第三者の横入りは無粋ってものなのよ?」
「なんだよそりゃ……あーもう、とにかく落ち着けよ二人共!」
どうやら助けてはくれないらしいユニに宗谷はげんなりとしながら、にらみ合う二人をなんとか落ち着かせようとする。
早速始まった修羅場に、慣れていない宗谷は原因が自分だということも理解できずどうしたものかと頭を悩ませる。
恋のライバルの争いはこのようにしてこれからも起こっていくのだろうか?
どんどんと沈んでいく夕日が、四人のいる賑やかなテラスをまだ優しいオレンジの光で包み込んでくれていた。
この賑やかな日々がこれからも続いていくのだろうか……この時、宗谷はふと夕日の色に染まる空を見てそんなことを思いたくなったという。
―――――どいて、どいて、どいて~~~~~~~~~~!!
「「「え?」」」
宗谷を巡って一歩も譲らないノワールとイストワール、そして何が何だかわからずに途惑う宗谷の耳に、突然声が聞こえてきた。
遠いとこから聞こえてくるような声に、宗谷達三人は一旦騒ぎをやめて、どこから声が聞こえてきているのかその声を辿った。
ちなみにこの時、ノワールはデジャブを感じていた…。
何故なら今日、似たような状況に出くわしていたのだ。
二回も連続して起きて、普通ならあり得ない奇跡すらも起こしたあの出来事。
まさか、あれに“三回目”があるなんて思ってもみなかった……。
嫌な予感を感じて上を見上げる三人。
すると………。
「どいてぇ~~~~~~~~~~~!!」
「「「………のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!?」」」
本日三回目の奇跡、空からまた人が落ちてきた、しかもとてつもないスピードで。
程なくして、その三度目の奇跡はノワールだけでなく宗谷とイストワールの二人も巻き込んで三度目の正直を起こした。
巻き起こる轟音ととてつもない土煙。
その音を聞きつけたネプテューヌ達は慌ててテラスの方に駆け寄ってきた。
「なに今の音とすごい悲鳴! って、ねぷぷ!?」
「三回目……だなんて……ぶっちゃけ……ありえ、ない……」
「あぁ………て、天空の城が………見える……」
「うきゅぅ………」
驚くネプテューヌの視線の先には地面に倒れ伏し、呻き声を上げる三人の姿。
そして、その上に座る、“空から降ってきた少女の姿”だった。
「うぅ、いた~い……お尻ぶつけちゃった~」
「だ、誰……?」
とてもやわらかそうな、ふわふわとした感触の有りそうな衣服を身に着け、所々寝癖が残っている髪を一本の三つ編みにして後ろに流している少女。
ほんわかとした表情を浮かべる少女に、ネプテューヌが首を傾げる。
すると少女は、立ち上がりながらその声に気付いたのかネプテューヌ達の方に向き直った。
「ほぇ? ……あぁ!あたし~? あたしはね~、“プルルート”っていうの~」
「プラネテューヌの~、女神だよ~」
『え………ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』
“プルルート”、そう名乗った、空から降ってきたほんわかした雰囲気の少女の突然の発言に、下敷きになった宗谷達三人を除く全員の驚きの声が響き渡った。
とにもかくにも…。
この日、俺達は盗撮犯を捜索した後………空から降ってきた女の子と、突然の出会いをしました。
ラステイションで宗谷達が新たな出会いを果たしたころ。
ラステイションの街角の路地裏では、一人の人影が壁に凭れかかり一息ついていた。
アノネデスのアジトで宗谷達の前に突然現れ、宗谷達に襲い掛かろうとしたモンスターの群れをわずかな時間で全滅させた戦士、クロス・ジャスティスだ。
クロス・ジャスティスは右手に握るトライデントの矛先に連結した特殊な形状の端末を分離させる。
すると、トライデントは柄と槍先を微粒子に分解して端末の中に吸い込まれるように消滅し、クロス・ジャスティスの身を包んでいた装甲も同じように端末の中に吸い込まれて行った。
クロス・ジャスティスに変身していた人物は持っている端末を身に着けているパーカーのポケットの中に入れる。
「お疲れ様でござる」
そこへ、一人の人物が現れた。
ロボの様なシャープなデザインながらも忍者を思わせる姿をした人物、そう、ステマックスである。
そして、ステマックスの言葉に反応したクロス・ジャスティスの変身者はこくりと頷いた。
その動きに合わせて、その人物の髪型である“耳よりも低い位置のツインテール”が僅かに揺れる。
「今日も、いい動きだったでござるよ、ハル殿」
「うん、ありがとう、ステマックス」
クロス・ジャスティスに変身していた人物、それはハルと呼ばれたあのボーイッシュツインテールの少女だったのだ。
得意げな笑顔を浮かべるハル、えへんと胸を張ってステマックスにお礼を言うとにっと明るい笑顔を浮かべた。
「いや~、でもまさかあのお兄さんが“先輩”だったなんてね~、もっとゴツくてワイルドな人かと思ってたけど、なんだか思ってたのと違ったよ」
「それは、ハル殿も言えるのでござるか?」
ステマックスがそう言うと、ハルはむっと頬を膨らませてステマックスをじろりと睨んだ。
「ステマックス、それってどういうこと?」
「いや、だって、ハル殿どっからどう見ても少女にしか見えないでござるから……」
「むぅ、失礼だよ!」
風船のようにぷぅっと膨らませた頬、いかにもご機嫌ななめですと言いたげな態度を見せながらハルはびしりと自分を親指で指さした。
「ボクは、“漢の中の漢”を目指す、正義の勇者、クロス・ジャスティス! “ハルキ・ラピスリー”! ボクは正真正銘、“男”だよ!」
そう、どう見ても、いや服装はボーイッシュなのだが、一見すると髪型も相まって少女にしか見えないが、彼、“ハルキ・ラピスリー”はれっきとした、正真正銘の“男性”なのだ。
「いや、そうはいわれてもハル殿、もともと小柄なのとその髪型のせいもあってどう見ても少女にしか見えないでござる……“漢の中の漢”というよりも、“漢と言い張る男の娘”にござるよ」
「だから身長のこと言わないでって言ってるでしょ! 小柄でもボクは18歳! それにこの髪型はボクにとって重要なの! ステマックスだって知ってるでしょ!」
「まあ、そうでござるが……」
ステマックスの言葉にぷんすかと怒るハルキ、どうやら彼にとって身長は相当なコンプレックスだったようだ。
ご機嫌斜めになったハルキはパーカーの反対側のポケットから好物のチョコバーを取り出すと包装紙を開けて、頬張り始める。
「まったく……あーあ、結局あの人は見つからないし、すっごいパワフルな子のタックルをアソコに受けるしで、今日はあんまりいいことなかったなぁ」
「そう言えばハル殿、あそこはもう大丈夫なのでござるか? ちゃんと機能するでござるか?」
「……いちいち聞かないでよ、ちゃんと機能するよ、もう………」
ステマックスの心配にどことなく嫌そうな表情を浮かべて答えたハルキ。
チョコバーをかじりつつ、夜を迎えつつあるラステイションの夜空を彼はそっと見上げる。
「でもまあ、今日もまたカッコよくモンスターを倒せたからいいとするかな」
「悪人の盗撮犯は女神達に先取りされたらしいでござるが…」
「あー、それは別にいいよ、また別の悪を探せばいいんだし」
ハルキはそう言うとかじっていたチョコバーをすべて平らげ、包装紙をぐしゃぐしゃと丸めた。
「ボクは、悪を倒す……すべての悪を……そして、いつか……あの人も倒してみせるさ」
決意を込めた強い眼差しを浮かべながら、ハルキは持っていた包装紙を近場のごみ箱の中にぽんと投げ捨てた。
「“プルルート”………ボクは絶対、あの人を倒す」
いかがでしたか?
いやぁ、本来ならギャグ回であるはずのこのお話が最後は妙にシリアスな仕上がりに……。
まあ、でも、何気に初めてなノワールといーすんの修羅場をかけたからいいか(笑)
そして終盤。
はい、新キャラのハルは、女の子ではなくて男の娘でした!
予想できた人はいましたかな?
そんなことより!!
次回からは遂に、あのほんわか女神さま、プルルートが本格参戦!
ネプシリーズの中でも自分の大好きなキャラなだけに、僕は今、テンションフルスロットルです!
それでは、次回でお会いしましょう!