超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

今回のお話はマジェコンヌの復讐(笑)が動き出す。
しかし、その裏では何者かの影が…。

それではお楽しみください、どうぞ。


stage,78 俺と迫る、復讐の紫

 

 

「というわけで何か変わったことがあったら、早めに方向をお願いしたいのですが…」

 

翌日、さっそくイストワールは昨夜に聞いた話をネプテューヌ達にも一通り説明し、今後の対策を取るために協力を仰いだのだが…。

 

「絶滅させてやる~!」

 

「ちく、ちく~♪」

 

「ぴぃ、これで遊ぶ~!」

 

「ピーシェちゃん、それおもちゃじゃないから! 返して~!」

 

相変わらずクエストのモンスターではなくゲームの中のモンスターと激闘を繰り広げるネプテューヌ、手芸セットを取り出していくつかの布に針と糸を通して何かを作っている様子のプルルート、携帯端末のNギアを片手に走り回るピーシェに振り回されるネプギア。

イストワールの話を聞いていても、あまり重要そうに感じていないのか一行はいつもと変わらぬ日常を楽しんでいる様だった。

 

「………あの、みなさん聞いてます?」

 

「あ、すみませんいーすんさん、ちゃんと聞いて……あ、こらピーシェちゃん!」

 

「変わったことがあったらでしょ~? 今の所、何もないよ~?」

 

「いや、お前ら朝からこの調子でこの部屋から一歩も出てないよな?」

 

ネプテューヌのぐうたらぶりに今更ながらため息を漏らす宗谷、話は聞いていても動かないのではわかるものもわからないままだというのに…。

この国はこの先本当に大丈夫なのだろうか? 今更ながら宗谷はプラネテューヌの未来が心配になってきてしまった。

 

「まあまあ、イストワール様、それに宗谷も、いつもの事だからここは私がパトロールに行ってきますから」

 

「いつもすみません……」

 

「さすがアイエフ、いざって時は頼りになるぜ」

 

「褒めても何も出ないわよ? それじゃあ、行ってきます」

 

困った時はアイエフが動いてくれる、縁の下の力持ちということだろうか、プラネテューヌの諜報員の仕事をしている彼女がこうして教会側のサポートをしてくれるのもあってイストワールも大助かりなのだ。

二人にお礼を言われたアイエフは、さっそくパトロールに出かけようとするが、ふと何かを思い出したのかその場で足を止めると隣にいたコンパに声をかける。

 

「あ、そうだ、コンパこれから仕事でしょ? 途中まで送ってってあげるわ」

 

「わーい♪ ありがとうです!」

 

コンパの送迎もかねて、アイエフは彼女にそう提案するとコンパも笑顔を浮かべてそれを承諾した。

二人は仲よく並んで、そのまま部屋を後にする。

 

「それじゃ、ここは任せたわよ宗谷」

 

「いってきますです~」

 

「おー、気を付けてな、二人とも」

 

二人に手を振って見送った宗谷、部屋の扉が閉まったのを確認して宗谷が手を下ろす。

すると…

 

 

「できた~♪」

 

 

さっきからソファの上に座ってちくちくと裁縫セットを使って何かを作っていたプルルートが嬉しそうに声を上げた。

その声に反応して宗谷とイストワール、そしてネプテューヌ達の視線が一斉に彼女の方へと集まる。

 

「おっ、プルルートもしかしてそれって…」

 

「ねぷてぬー!」

 

「あったり~」

 

プルルートが両手に持っていたもの、それはネプテューヌを象ったぬいぐるみだった。

よく特徴を捉えた二頭身のぬいぐるみである、素人ではまずこのクオリティは再現できないであろうと宗谷はそれを見て判断した。

 

プルルートからぬいぐるみを手渡されたネプテューヌはさっそくとばかりに両腕に抱きしめ、そのぬいぐるみに頬ずりをする。

 

「本当、私に秘められた萌え要素がぎゅって凝縮されてるよ~!」

 

「……ネプテューヌの場合は萌えっていうより、能天気さって感じじゃね?」

 

萌えという言葉にはかなり敏感な宗谷がネプテューヌのぬいぐるみを見てそう言うと、ネプテューヌが聞き捨てならないと宗谷に不機嫌そうな目を向ける。

 

「むっ、ソウヤ、それってどういう意味かな? 私だってちゃんとやるときはやるんだよ! この前だっていざって時には復活してみんなを助けるのに貢献したじゃん!」

 

「それはそれ、これはこれだ」

 

「ねぷっ!? 軽くあしらわれた!」

 

ネプテューヌの言葉を華麗に流した宗谷。

一緒に行動してきた時間もだいぶ長いせいか、もうすっかり扱い方に慣れてしまったようだ。

 

「それにしても可愛くできてるな~」

 

「ねぷっ!? そ、そんな……私が可愛いなんて…浮気はダメだよ、ソウヤ?」

 

「いや、ぬいぐるみのこと言ってんだよ、ていうかなんだよ浮気って…」

 

ぬいぐるみの率直な感想を述べた宗谷、約一名変な聞き取り肩をしてしまったがあまり気にせずに宗谷はつんつんとぬいぐるみをつっつく。

柔らかな布と綿の弾力が指を押すことによってもふもふという柔らかい感触が指越しに伝わってきて楽しい。

好きな人にとってはこの感触が癖になってしまうんだろうな、と宗谷はこの時ぬいぐるみの魅力を親身に感じたという。

 

「まさか、プルルートさんにこんな特技があったなんて知りませんでした」

 

「うん~、あたし~、お友達のぬいぐるみ作るの好きなんだ~」

 

「ぴぃも! ぴぃも欲しい! ぷるるとつくって!」

 

プルルートの隠された特技に感嘆するイストワール、そしてネプテューヌのぬいぐるみを見て自分のも欲しいとプルルートに頼むピーシェ、ピーシェだって女の子でまだ小さいのだ、ぬいぐるみには目がないのだろう。

自分よりも低い位置でお願いしてくるピーシェにプルルートはやわらかな笑顔を向ける。

 

「じゃあ、次はピーシェちゃん、その次はギアちゃんね~」

 

「わーい!」

 

「よかったな、ぴぃ? ネプギアも」

 

「はい! なんだか自分がぬいぐるみになるのってすごい新鮮な気持ちです!」

 

ぬいぐるみを作ってもらえることになり、喜ぶピーシェとネプギア。

 

「あ、その前に~……」

 

すると、ここでプルルートが何かを思い出したのか、ソファの後ろから何かを取り出した。

両手に片方ずつ何かを持つと、プルルートはそれを宗谷とイストワールの二人に向けて差し出した。

 

 

「はい、これ、いーすんとそーくんに♪」

 

「え? これって……」

 

「私と宗谷さんの、ぬいぐるみ……?」

 

 

それは何と宗谷とイストワールの二人を象ったぬいぐるみだった。

どうやらネプテューヌのぬいぐるみを作るのと並行して二人の分も作っていた様だ。

まだ来て二日目だというのに、雰囲気とは違って製作スピードが明らかに早い、人は見た目によらない物である。

 

「あたし、がんばっちゃったよ~、二人とも大事にしてね?」

 

「………おう、てんきゅなプルルート」

 

「ありがとうございます、プルルートさん」

 

二人は互いのぬいぐるみを受け取ると、何となしに隣にいるパートナーの方のぬいぐるみも見る。

どちらも互いの特徴をうまく捉えたよく出来たぬいぐるみだった。

 

「……宗谷さんのぬいぐるみ、かわいいですね?」

 

「お、おう、そうか? ……なんかかわいいって言われると男としてどう答えたらいいのかわからないけど………ん?」

 

 

イストワールに言われて照れくさそうに答えた宗谷、すると宗谷は何やらネプテューヌが何かのサインを出していることに気付く。

ちょいちょいとプルルートたちにばれないようにさりげなく指さしているのはイストワールのぬいぐるみだった。

そして、宗谷がそれに気づいたのを確認すると、ぐっとサムズアップを向けてGOサインを出す。

 

 

(………俺も何か言えってことか?)

 

そう受け取った宗谷はなぜネプテューヌがそんなサインを出したのか気になりつつも、視線をイストワールの持つ彼女のぬいぐるみに向ける。

 

「あー、その………いーすんのも、すげー可愛いと思うぜ?」

 

「え……そ、そうですか?」

 

「ああ、なんていうか……本物のいーすんそっくりだ」

 

「ふえっ!? あ、その……えっと……」

 

宗谷に言われ、イストワールはすぐさま顔を赤く染めた。

ぬいぐるみを可愛いと褒められ、それに続いて自分そっくりと言われたことで自分が可愛いと言われたように感じた様だ。

 

イストワールは頬を朱に染めて、目を右往左往させながらもどこかまんざらでもなさそうな笑顔を浮かべる。

 

「……あ、ありがとうございます」

 

「………おう」

 

なぜか照れくさそうに視線を合わせずにそうやり取りする宗谷とイストワール。

その様子に、ネプテューヌはそっと気づかれないようにぐっとガッツポーズを取るのだった。

 

「イエスっ! Gjだよ私!」

 

「二人とも、仲良しさんだね~♪」

 

「いすとわる、そーや、びょうき? かおまっかっかだよ?」

 

「うーん、たぶんそれは違うと思うよ? ピーシェちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラネテューヌか………こっちの方のプラネテューヌに来るのは初めてなんだけど、初めてな気がしないね?」

 

「左様でござるな、些細な違いさえあれどどこか似通った雰囲気を感じるでござる」

 

一方その頃、教会から少し離れたプラネテューヌの街中では以前にラステイションを散策していたボーイッシュツインテールの少年、ハルキがロボット風忍者のステマックスの二人がいた。

 

プラネテューヌの街をきょろきょろと見渡すハルキの頭の動きに合わせてオレンジのツインテールが揺れる。

一見すると誰しもが美少女と見間違うその姿、だが、その姿はそう見えるだけ。

ハルキは間違いなく男である。

 

「それにしても、ラステイションじゃ結局空振りだったからなぁ……ここで見つかるといいんだけど」

 

「焦りは禁物でござるよハル殿、いつでも落ち着いて対処するべしと姉上殿にも言われていたでござろう?」

 

「もう、分かってるよそのくらい、ステマックスはいちいち細かいなぁ…」

 

細かい指摘をしてくるステマックスに対し、ハルキはうんざりとした表情を浮かべる。

ステマックスとは付き合いが長いハルキなのだが、彼のこの小言に関しては正直飽き飽きしていた。

自分だってもう18なのだ、自分の事は自分で何とか出来るのが当然な年頃なのだからそこまで心配されるのは逆に気が引けるというもの。

 

ハルキは小さくため息をつくと、パーカーのポケットから好物のチョコバーを取り出すと包装を解いて一口齧る。

 

「あ、ハル殿、そのチョコバー今ので3本目でござるよ? 食べ過ぎは良くないでござる」

 

「3本なんてまだ食べすぎの内に入らないよ、それともなに、食べ過ぎると糖尿になるって言いたいの?」

 

「いや、虫歯になるでござるよ」

 

「ステマックス………正直に言うとボクのこと子ども扱いしてるよね? 言い逃れできないよね? 18歳に対して虫歯を注意するなんて普通ないからね!?」

 

これも身長が低いのと童顔なのが原因なのか、自分の見た目に対するコンプレックスがこれからもこのような形で付きまとうのかと思うとうんざりする。

ハルキは完全に子どもに対する感覚で虫歯を注意したステマックスに噛みつかんばかりの眼差しを向けながら、うー、と唸る。

 

「ああ、いや、別に拙者はそんなこと……そ、そう言えば、このあたりは何やら工事が多いでござるな~?」

 

「あからさまに話を反らさないでくれるかな………ステマックスの隠してるお宝本、全部シュレッダーにかけられたいの?」

 

「せ、殺生でござるハル殿!? それだけは! それだけはどうかご勘弁を!!」

 

ステマックスにとっては命の次に危険を感じるレベルの脅迫を仕掛けたハルキ、必死になってその場で土下座するステマックスをやれやれと言いたげに見下ろしつつ、チョコバーを半分ほど齧った。

 

「……でも、確かにやけにこのあたりは道路工事が多いね」

 

そう言うとハルキは自分たちの目の前にある工事中の意味を示す簡便に目をやった。

看板の奥にある道路は何かに穿たれたように陥没しており、カラーコーンに囲まれて誰も中に入れないようにしている。

ここに来る途中でも似た様な工事現場をいくつか目にしたが、今日はそんなに工事が多いのだろうか……ハルキはふと疑問を感じ始めていた。

 

「しかも、決まって曲がり角のあたりが工事中になっているでござる、ここに来るだけで何回左折や右折を繰り返したことか…」

 

「それに、どこも工事中ってなってるわりには作業してる人がいなかった、休憩時間っていう時間帯でもないし……」

 

ここに来るまでに見た数々の工事現場、そこで見た光景を振り返り始めた二人が抱いていた疑問は徐々に不信感に変わり始めていた。

 

曲がり角に多数設置された不審な工事現場。

 

明らかに多すぎる数。

 

作業員の姿をあまり見ない。

 

不審な点を挙げ、これらが何を意味しているのかを考え始めたハルキ。

 

「………まるで、何かを誘導しているみたいだ………」

 

それらを踏まえて彼が感じたことは何かを誘導しているということだった。

なら、何を……ハルキが思考を巡らせ、辺りを見回していると……。

 

「………あれは?」

 

何かを見つけたのか、ハルキは工事現場の先へと目を凝らした。

ここからだと遠くてわからないが、何かを見つけたハルキは徐に工事現場の標識を越えて、カラーコーンのサークルも通り過ぎてその先へと向かっていった。

 

「は、ハル殿!? 勝手に入ってはだめでござる!」

 

「どうせ人もいないんだし、見られなければ大丈夫だよ」

 

ステマックスにそう言ったハルキは工事現場を越えてその先の道路を進んでいった。

 

しばらく行くと、ハルキは道路の真ん中にぽつんと残された一台のバイクを見つけた。

 

「なんで、こんな所にバイクだけ……?」

 

不信に思いながらも横倒しになったバイクに近づき、そっと何者かが乗っていたのであろうシートに手を付ける。

まだシートからはほんのりとした温かみが残っている、誰かがさっきまで乗っていた証拠だ。

 

「まだ乗っていた人はそう遠くには行ってないはず……」

 

「ハル殿! 先に行かないでくだされ!」

 

「あ、ステマックス、丁度いい所に」

 

遅れてきたステマックスにハルキはさっと手に持っていたかじりかけのチョコバーを向ける。

 

「ちょっと、このあたりに誰かいないか高いところから探してみてくれないかな? なんだか、妙に嫌な予感がするんだよね…」

 

「はあ……承知したでござる、ハル殿がそう感じたならば!」

 

ハルキの指示を受け、ステマックスは早速とばかりに近場にあったビルの壁に飛びつくと、その壁を蹴るようにして上へ上へと高く飛んで行った。

あっという間にビルの上にまで到達したステマックス、そしてさっそく上から下の道路を見下ろし何かがないかを探し始める。

 

「………む、あれは………」

 

そして、何かを見つけたのかステマックスはハルキから少し離れた位置へと目を凝らす。

 

「……予感的中でござるな」

 

自分が見たのが何かを確認したステマックスはビルの上から飛び降り、軽い身のこなしで数回壁を蹴りながら降下し、ハルキの目の前に降り立った。

 

「ハル殿、ここから南に離れた場所に二人ほどの怪しげな者を見つけたでござる、しかも、二人の少女を抱えていたでござる………おそらくは人攫いかと」

 

「やっぱりね……そうだと思ったよ」

 

ハルキは疑問を確信へと変えると、残っていたチョコバーをすべて平らげて包装紙を丸めた。

やはり、邪な何かが絡んでいた。

それを確認したハルキは自分が今、倒すべき存在、悪の姿を見たのだということを確認すると人攫いを行った悪を打倒すべく動き出す。

 

 

「それで、その人たちはどこに向かったの?」

 

「方向から察するに、おそらくは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻ってプラネテューヌ教会、そこでは先程までぬいぐるみ作りをしていたが眠気が来たのか昼寝を始めたプルルートと、それに触発されて一緒に寝てしまったネプテューヌ、そして同じように眠くなっていつの間にやらネプテューヌの膝の上で眠ってしまったピーシェたちがいた。

三人とも昼頃の陽気に誘われて穏やかな顔つきで寝息を立てている。

 

「………気持ちよさそうに寝てるな」

 

「ええ、なんだか見ていてすごく和んじゃいますね」

 

普段ならサボるなと言ってネプテューヌは起こすところだが、三人仲良く眠っているこの姿を見ていては起こすのも忍びなく思えてくる。

それに、小さいピーシェもいるのだ、無理矢理起こすのもかわいそうだ。

 

特別にしばらくこのままにしておくか、と宗谷が考えていると…。

 

「た、大変! お姉ちゃん! 宗谷さん!」

 

突然、部屋に慌ただしい声を上げてネプギアが入ってきた。

 

「なんだ、どうかしたのかネプギア?」

 

「ん~……もう食べられないよ」

 

「べたな寝言を言ってないで、とにかく今は起きてくださいネプテューヌさん!」

 

何事かと和やかな雰囲気に包まれていた一瞬にして変わった。

ネプギアの声に驚き、目を覚ましたプルルートとピーシェも交えその場いた全員が一斉にネプギアの元へと集まる。

そして、全員が集まったのを確認したネプギアは彼らの前にNギアを差し出した。

 

「なっ……これは!」

 

「ひどい~……」

 

「アイエフさんが、どうして……」

 

その画面にはアイエフが太い木の棒に磔にされた画像が映し出されていた。

全員に緊張が走る。

一体、誰がこんなことを…。

真っ先に疑問を感じる宗谷だったがそれよりも、まずはアイエフの安否が最優先だった。

 

「助けに行こう! あいちゃんがこんな目にあってるのを見過ごせないよ!」

 

「ああ、誰がやったかしらないけどあいつに何かされる前に助けないとな」

 

「ネプギアさん、場所はわかりますか?」

 

「知らないアドレスでしたけど、画像と一緒に地図も添付されていたので場所はもうわかっています……確か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う」

 

頭がぼんやりする、自分はさっきまで何をしていたのか…。

思考が徐々にクリアになっていく中、アイエフは閉じていた瞼をゆっくりと上げた。

体の自由が利かない、体にロープでも巻かれているのだろうか……だとしたら、得物のカタールも今は使い物にならないだろう。

 

それに、なんだろうか……この独特な香りは……どこかで嗅いだことのある様な気がする。

 

「………?」

 

クリアになっていく思考の中、アイエフはそれらの事象を感じ取る。

そんな時、半分ほど空いた自分の目が目の前にいる何者かの姿を捉えた。

 

黒と紫の色合いが施された、魔女を思わせる服装。

およそ健康的とは言えないような肌の色に、吊り上がった三白眼。

それらの姿を見た時、彼女の脳内が一気にクリアになり、今誰が自分の目の前にいるのかをすぐに理解した。

 

 

「マジェコンヌ……!」

 

 

そう、そこにいたのは以前にリーンボックスでネプテューヌたち女神を捕縛し、亡き者にしようと考え、それを救助しようとしたネプギアをも苦しめ、さらには宗谷の暴走を引き出すきっかけを作り出した悪党、マジェコンヌだった。

 

何故、彼女がここに……?

 

そんな疑問がアイエフの脳内に真っ先に浮かんだが、その疑問に対する答えはマジェコンヌが発した言葉によりすぐにわかった。

 

 

「復讐の時は来た……」

 

「復讐、ですって……? ……なるほどね、あんた性懲りもなく……」

 

 

復讐、その言葉だけでマジェコンヌが何を目的とするか、そして自分がその復讐のための柄さとして捕まったということを瞬時に理解したアイエフは鋭い眼差しを彼女に向ける。

 

「言っとくけどね、こんなことをしても無駄よマジェコンヌ! ねぷ子やネプギア……それに、宗谷とイストワール様がまたあんたを倒すわ!」

 

あの事件から時間が経ち、彼らもまた多くの経験を得た。

得に宗谷は新たな力を会得し、以前よりも格段に力を上げている。

さらには彼の力を介することによって女神であるネプテューヌ達もさらなるパワーアップを得た、前回のようにやすやすと彼女たちがやられる訳はない。

 

しかし、それに対し、マジェコンヌは余裕綽々と言いたげな不敵な笑みを口元に浮かべている。

 

「ふっ……私には秘策がある、女神共を倒す秘策がな……」

 

自信満々にそう言い放ったマジェコンヌ。

まさか、アンチクリスタルに変わる何かを彼女は得たというのだろうか…。

アイエフの脳裏に僅かに緊張が走る…。

 

 

 

「それは………この“ナス”だ!!」

 

「………はぁ!?」

 

 

 

しかし、その緊張はマジェコンヌが言い放ったまさかの秘策とやらを聞いた瞬間に、泡のように消え去った。

 

マジェコンヌが示した先には広大な畑が広がっており、そこには色鮮やかな紫色が所々に見えた。

どうやら、ここはナス畑らしい、先程アイエフが感じた匂いはナスによるものだったようだ。

 

「ナスが女神の弱点であることは調査済みだ、このナス畑でこの世の地獄を見せてやる!!」

 

こいつ本当に復讐する気があるのだろうか……。

 

敵ながらあまりにばかばかしい秘策を目の当たりにし、アイエフはその復讐の餌として捕まったのだという事実に恥を感じた。

 

「私たち、こんなのに苦戦したの? ………でもね、何やったって勝ち目はないわよ、あんたみたいなおばさんに!」

 

おばさんのあたりに恨みやら何やらの意志を込めて強調しながらアイエフがマジェコンヌに言い放つ。

その言葉を受けたマジェコンヌの片方の眉がピクリと動く。

 

「黙れ小娘が! ……せっかくだ、お前にもこの紫の恐怖を教えてやろう」

 

そう言うとマジェコンヌは徐に一本のナスを取り出した。

そして、ゆっくりとアイエフに近づくとナスを持っているのとは反対の手で彼女の顔を持ち上げる。

 

不敵な笑みを浮かべるマジェコンヌ。

反抗の眼差しを向けるアイエフの瞳を覗き込むように一瞥すると、彼女は持っていたナスを彼女の顔に近づけた…。

 

そのまま………。

 

 

「むっ……ふぐっ…!?」

 

 

なんと、アイエフの口にナスを生のまま、しかも丸ごと突っ込み始めたのだ。

良く知っていると思うが、ナスの形状は舌に行くにつれて丸く肥大化していく形状になっている。

その肥大化している下の部分を彼女の口に押し当てたマジェコンヌはぐいぐいとそれを彼女の口の中に押し込んでいった。

 

 

「んぐっ……んむ…じゅる……んっ……ぐむ……んんっ!」

 

「全部食え、残さず食え、人生の三分の一を損するぞ?」

 

「んっ…げほっ! けほっ、けほっ……何するのよこの年増!!」

 

「うるさい!!」

 

「むぐぅっ!?」

 

 

丸のみすることが難しい形状と知っているだろうに…。

無理矢理ナスを口に押し込まれ、息苦しさと口内に広がる異物感で吐き出しそうになるがマジェコンヌがそれを許さない。

涙目になりながら、アイエフは苦しさを堪えるために反射的に服の裾を強く握りしめる。

 

 

(く、苦しい……息、出来ない……無理、こんなの無理! こんな大きいの入るわけないでしょ…!)

 

 

抵抗しようと身をよじらせるアイエフ、しかし、無情にもマジェコンヌはナスを口に押し込み続ける。

 

 

 

(うっ、やだ……いやなのに……そんな、押し込まないでぇ…! ……奥……奥まで…きてる……奥まで……!)

 

「ほれほれ、ナスの皮にはポリフェノールもいっぱいだぞ?」

 

 

 

健康的な野菜でも、使い方次第でこんなにも残酷な拷問道具になるのか…。

アイエフはその恐ろしさを身をもって体験しつつ、生のナスを喉の奥まで押し込まれるという苦しみに耐えるしかなかった。

苦しい、下手をすれば窒息してしまうかもしれない…。

 

その苦しみを味わう中、アイエフはこう感じたという……。

 

 

 

(やだ………もうやだ……こんなの……誰か、助けて……ナスは……もういやなのぉ…!)

 

 

 

ナス、恐るべし…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイエフがまるでナスを使ったまるで同人誌の様な拷問を受けている頃、ナス畑から少し離れた林ではマジェコンヌがアイエフとコンパの二人を攫ったことを知ったハルキとステマックスがマジェコンヌが逃げた先であるナス畑を目指して歩いていた。

草木を掻き分けて進むハルキ、ナスの独特なにおいが少し離れた位置でもほのかに香ってきた。

 

「……ナスの匂い? なんでよりによってナス畑になんか……」

 

不意に香ってきた新鮮なナスの香りに疑問を抱くハルキ。

すると…。

 

 

 

「お前たちが知っても仕方のないことだ……」

 

 

 

不意に聞こえた声にハルキとステマックスはすぐさま反応し、その声が聞こえた方に目をやった。

自分たちよりも上の位置、丁度目の前に生えていた一本の木の上からだった。

二人は上を見上げると、そこには一人の男が太い枝の上に立ち、二人を見下ろしていた。

 

黒いロングコートに赤い髪の男、切れ長の目からこちらを睨み付けてくる黒いダイヤの様な瞳には冷酷さを感じさせる。

 

男はハルキ達にそう言うと、ばさりとコートを翻しながら木の枝から飛び降りると、二人の目の前に着地した。

 

「……あんた、だれ? もしかして人攫いの仲間?」

 

「……言ったはずだ、知っても仕方のないことだと」

 

「じゃあ、通してくれない? 知って仕方がないかどうかはボクが決めることだよ」

 

目の前に立ちはだかる男にハルキがそう言うと、男はふんと鼻を鳴らしてコートのポケットに手を突っ込んだ。

 

「……悪いが、邪魔をされては困る……この先でこれから始まることはふざけてはいるが利用価値はある物でな……」

 

「そう、じゃあ、あんたも関係者って判断していいわけね」

 

ハルキはそう言うと、パーカーのポケットから一つの端末を取り出した。

正方形の形をした青色の端末を取り出す。

 

「悪いけど、ボクは“悪”って存在を倒すって決めてるんだ……だから、人を攫った悪党をボクは倒させてもらうよ」

 

ハルキはそう言うと端末の電源を入れ、空中に立体映像の画面を映し出すとその画面に映し出されたアイコンの内の一つを素早くタップする。

 

 

『ライバライデント』

 

 

電子音が鳴り、ハルキの目の前に長い柄の先に三叉の刃が施された一本の槍、トライデントが突如として出現した。

端末の中に粒子状にして保管していたハルキの武器、“ライバライデント”を握ったハルキはそれを地面に突き立てて端末を前に突き出す。

 

 

「“Jデバイザー”、セット!」

 

 

叫び、ハルキは持ったいた端末“Jデバイザー”をライバランスの矛先にあるくぼみにセットした。

途端に、画面に眩い光が灯り、ハルキの体を蒼い光が包む。

 

 

 

『セットアップ、クロス・ジャスティス!』

 

 

 

眩い光がハルキの体を駆け巡り、小柄な彼の体に変化を促していく。

体格が見る見るうちに大きくなり、その体に青く輝く近未来の装甲が装着されていく、そして首元にはためくマフラー。

それらが装着されたのを確認し、ハルキは……いや、勇者 クロス・ジャスティスは自身の周りを覆う光を徐にライバライデントで薙ぎ払った。

 

 

 

「覚悟しろ、ここからは……俺のヒーロータイムだ」

 

「………ほう」

 

 

 

現れた青き勇者の姿を見た赤髪の男は簡単にも似た声を上げて、僅かに眉を潜めた。

予想外、と言いたげな態度を見せた男にクロス・ジャスティスは変身によって変化した声音を用いて威圧するように言いながらライバライデントの刃を向ける。

だが、男はそれに対し怯むような仕草も見せずに、表情一つ変えず、興味深そうにクロス・ジャスティスを見つめていた。

 

「その姿、お前も天条 宗谷と同じ力を持つ者、ということか……」

 

「……あいつのことを知っているのか……ということは、目的はこの世界の女神、あるいは奴そのものか?」

 

「さあな、ただ……」

 

男はクロス・ジャスティスの言葉にそう答えると、コートのポケットに突っ込んでいた手を引き出した。

そして、その引き出された手には何かが二つ、握られていた。

 

 

 

「奴が邪魔な存在だということは、間違いないがな……」

 

 

 

男はそう言うと、両手に握っていた果実のエンブレムが施された錠前、ロックシードを同時に開場した。

男の目の前の空間に出現する、ファスナーの様な形をした時空の裂け目。

その奥から二体、青と赤の怪物がクロス・ジャスティスの前に立ちはだかった。

 

「………この化け物は……この世界のモンスターじゃないな」

 

片方は青いカミキリムシを模した様な怪物、もう片方は山羊を模したような巨大な角が特徴的な怪物だった。

二体のモンスターを順番に一瞥したクロス・ジャスティス、素早くライバライデントを身構えて臨戦態勢を取る。

 

「お前の相手はこのインべスがしてやる………せいぜい、邪魔をしないことだな」

 

「っ! 待て!」

 

二体のモンスター、インべスを残してその場を去ろうとする男。

クロス・ジャスティスはそれを追おうとするが、二体のインべス、カミキリインベスとヤギインべスが立ちはだかりクロス・ジャスティスを妨害しようとする。

 

だが、しかし…。

 

 

「セイっ!!」

 

 

クロス・ジャスティスに向かってきた二体のインべスを、彼の後ろで待機していたステマックスが取り出したクナイを使って素早く斬りつけた。

怯んだインべス、その前にステマックスが右手にクナイを、左手に巨大な手裏剣を携えて立ちはだかる。

 

「ハル殿、このモンスターは拙者が引き受けるでござる!」

 

「ステマックス………すまない、頼んだ」

 

クロス・ジャスティスはステマックスの言葉に頷き、彼の肩を叩くとすぐさま逃げた男を追おうと走り出す。

当然、インべス達はそれを阻止しようとするが…。

 

「ハル殿の邪魔はさせないでござる!」

 

そうはさせまいと、忍者ステマックスが奮起する。

 

左手のクナイでカミキリインべスの胴体を横薙ぎに切り付け、ヤギインべスの角を右手の手裏剣で抑え込み、立ち上がり反撃してこようとしたカミキリインべスに後ろ蹴りを見回して寄せ付けようとしない。

 

押さえつけていたヤギインべスを回し蹴りで蹴飛ばすと、ステマックスは二体のインべスを前にして身構える。

 

「主君、ハルキ・ラピスリーに仕える者として……ステマックス、いざ参る!」

 

 

 

 

 

インべス達をステマックスに任せたクロス・ジャスティスは逃げ出した男を追って林の先へと進んでいった。

そう離れていないためすぐに追いつけると確信していたクロス・ジャスティス、だが男が逃げた先に走っても一向に姿は見えない。

 

何処かに身を隠したのか?

クロス・ジャスティスがそう考えていた時……。

 

「っ!」

 

不意に、背後から殺気を感じ、クロス・ジャスティスはすぐさま振り返りライバライデントを振るった。

横薙ぎに振り、薙ぎ払おうとしたクロス・ジャスティス、だがその一撃は途中で動きを抑えられ、無理矢理止められる形で阻止された。

 

「まさか追ってくるとはな…」

 

「生身で俺の攻撃を受け止めるなんてな……あんた、何者だ?」

 

「その質問は、二回目だぞ」

 

クロス・ジャスティスの咄嗟の一撃を受け止めた、赤髪の男はそう言うと、ライバライデントを押し返し、後ろ回し蹴りで蹴飛ばしてクロス・ジャスティスの手から弾く。

弾き飛ばされたライバライデントは空中で弧を描きながら近場の木に突き刺さり、得物を手放したクロス・ジャスティスは丸腰となってしまった。

 

「はっ!」

 

「ちっ……」

 

武器を持たないクロス・ジャスティスに向けて、赤髪の男が素早い突きを撃ち出した。

しかし、クロス・ジャスティスはその攻撃を左手で受け止めると、その腕を押し返し反撃の裏拳を撃ち出す。

 

赤髪の男はその攻撃を身を後ろに倒し、勢いを乗せて身を翻しながら飛んで躱す。

逃がすまいとクロス・ジャスティスは身を翻し、鮮やかな回し蹴りを数回放ちつつ男との距離を詰める、だが男はそれらの攻撃を回避し続け、今度は連続で蹴りを撃ち出して反撃する。

 

下段、上段と連続して放たれた蹴り、それを腕で防御したクロス・ジャスティスはお返しにと回し蹴りを仕掛けるが男もその反撃を受け止める。

 

一連の攻防の後、両者は同じタイミングで力強く地面を踏みしめ、鋭い拳を互いの顔面に向けて打ち出した。

二人の拳が交差し、両者とも同じタイミングで空いているもう片方の手で相手の攻撃を受け止める。

 

「……なるほど、格闘にも心得がある様だな」

 

「変身した相手に対して、生身で挑んでくる方も並ではないと思うがな……」

 

ぎりぎりと拳を押し込み、撃ち出された拳を受け止める手、両方の手に力を籠める両者。

まさに一進一退の攻防が繰り広げられる。

 

「………もう一度忠告しておく、邪魔をするな……俺の目的は天条 宗谷だけだ」

 

「悪いが聞き入れられないな、同じ勇者の称号を持つ者として、あいつに先にやられたら困るんでな…」

 

「……そうか……」

 

最後の忠告を蹴ったクロス・ジャスティスに男は後ろに跳んで一度距離を取ると、ロングコートの裾をばさりと翻した両拳を握り、構える。

 

「なら、邪魔が出来ないようにするまでだ……」

 

赤髪の男が瞳に強い闘志を秘めてそう言うと、クロス・ジャスティスも対抗して右腕を和えに突き出し、左腕を腰だめに添えた独特の構えを取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ、ナス畑では……。

 

「やめなさい!」

 

今も尚、ナスによる拷問を続けられていたアイエフの元に、ようやく助けが来た。

ネプテューヌとネプギアが女神化した姿、パープルハートとパープルシスターがプルルートの両手を掴んで飛行し、その傍を宗谷が変身した戦士、クロス・ジャスティスがブーステッドフィアンマを装備した状態で並走し、その隣にモードアクティブを起動させたイストワールが並ぶ。

 

それぞれがアイエフをいたぶるマジェコンヌに向けて鋭い眼差しを浮かべる中、彼女は彼らの姿を見つけるとにやりと不敵な笑みを浮かべる。

 

「来たな、女神……そして、小僧と教祖よ」

 

そして、マジェコンヌは右手にある物を持つ。

 

キウイ、イチゴ、パイナップルを模した錠前、ロックシードを……。

 




いかがでしたか?

次回はマジェコンヌの復讐劇が本格的に始まる!
ナスの恐怖が、ロックシードが、マジェコンヌの復讐の炎が迫る中、遂にあの女神が……!

次回でお会いしましょう、それでは…。
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