超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

92 / 120
どうも、白宇宙です!

今回から始まる新たな物語!

そして新たに始まったコラボ!
今回のコラボは、”狼の騎神ガロ”さんの「牙狼~ゲイムギョウ界に吹き荒れる金色の嵐~」でございます!

物語はとある噂から始まる……。
そして、新たに交差した物語がどんな結末を迎えるのか!

それではお楽しみください、どうぞ!




コラボステージⅢ 黄金騎士、来る! 二人の牙狼と新たな“繋がり” 編
stage,81 俺と神隠しの噂


 

 

「えっと……これでクエストのノルマ全部ですね」

 

「はい、確かに受け取りました、お疲れ様です」

 

プラネテューヌのギルド、ここはランクに合わせて提示されたさまざまな依頼を受け付け、その依頼をクエストとして受けた者たちが結果を報告し、報酬を得る場だ。

そのギルドの受付にて、俺こと天条 宗谷は今日も教会の仕事の一環としてギルドを訪れ、ちょうどいま報告を終えた所だ。

 

クエストの受諾を行う受付のお姉さんが、見るのも眩しい完璧な笑顔でそう言ってくる。

これが営業スマイルと言う奴なのだろうか。

 

「いつもありがとうございます、教会にはいつもお世話になってばかりで」

 

「いや、仕事なんで当然の事ですよ………やるべき奴がやらないから、俺達がやらなきゃいけないんだけどな……」

 

教会関係者としてすっかり顔が知れた俺、最近ではこのお姉さんとも何気ない会話を時折交わす仲になった。

思えば、いつの間にかクエストランクもAランクを受けられるようになっていたしな。

月日と努力の結果ともいえるんじゃないか?

 

……まあ、仕事上ということもあるけど、実際はネプテューヌがやるべき仕事の一環を代行してやってるんだけど……。

 

「それに、俺以外にも一般の方でも十分な実力者がいるじゃないですか、そう言うキャリアが長い人に比べれば俺なんてまだまだですよ」

 

「そう謙遜しないでくださいよ、実際ギルドの間じゃ天条さんって結構な有名人なんですよ?」

 

「え? それってどういう?」

 

「赤い剣を片手に、不思議な力を使って次々とクエストを熟して、危険種モンスターもあっさりと倒す期待のルーキーだって、ギルドの職員の中ではもっぱらの噂です」

 

なんと、俺はいつの間にか、ここの常連さんみたいな扱いになっていたらしい。

いやまあ確かにクエストを受けていく中でエンシェントドラゴンとかフェンリルとかとやり合うこともあったし、ランクが高くなっていくにつれて難易度の高いクエストもクリアしてきたけど、まさかそんな有名になっていたなんてな…。

 

「それに、クエストを受ける人たちの間でも有名なんですよ? 二つ名もあるとかで」

 

「二つ名?」

 

知らないうちにそんなものまで出来ていたのか?

ふーん、俺に二つ名ねぇ……どんなのだろう?

 

 

「俺その二つ名っていうのでなんて呼ばれてるんですか?」

 

「誰かが言っていたのをこっそり聞いたんですけど、確か………“紅血の狩人(ブラッディ・イェーガー)”とかだったと思います」

 

「……予想以上に痛々しい二つ名だったぜ……」

 

 

読み方はカタカナだけど、このカタカナは絶対にルビとして表示される気がする。

ていうか、なんでそんな痛々しい名前になったの?

いや、悪くないけどさ、俺もそう言うの好きだけどさ、せめてそこは同じ赤でも“スカーレット”とか“ロッソ”とかあっただろ……“ブラッディ”って俺悪役みたいじゃん。

 

ちなみに、“スカーレット”は緋弾のアリアの英語版タイトルでも使われている緋色という意味で、“ロッソ”はイタリア語で赤を示す言葉だ。

 

なんでそんなの知ってるのかって?

 

……一時期俺もあったからだよ、そう言う時期が……

 

「確か、読んでいたのは青髪に三角帽子をかぶった女の子でしたね、どことなく5pb.ちゃんに似てる感じの…」

 

「………すっげー見覚えがあったし、それで納得した………」

 

あー、確かにあの人ならつけてそうだこんな名前を…。

新・犯罪神騒動の時以来、あまり会ってないけど、あの人なら納得できてしまった……。

 

今度会ったらなんでこんな二つ名を考えたのか問い詰めてみよう。

俺は人知れず心に誓うのだった。

 

「それに、そんな有名な天条さんのお力もあって、最近は大助かりなんですよ」

 

「大助かりって……そんな俺、ギルドに貢献してましたっけ?」

 

「いえ、ここ最近は特に……」

 

「……どういうことですか?」

 

何処か物々しい雰囲気を醸し出すお姉さんに俺はそう問いかけた。

すると、お姉さんは周りを見回してから俺にこっそりと耳打ちするように顔を近づけた。

 

「………実は、最近ギルドの中で変な噂が流れてるんです」

 

「……噂?」

 

「……ほら、まわりにあまり人がいないでしょう?」

 

「……言われてみれば、確かに」

 

お姉さんの言う通り、クエストを受けるべくいつもならにぎわっているはずのギルド内の人数は明らかに少なかった。

多くて十数人、というところだろうか。

 

 

「……最近、妙な事件の噂が広まってみなさんそれを警戒してクエストを受けなくなってしまってるんです」

 

「妙な事件?」

 

「……所謂、“神隠し”ってやつです」

 

 

俺はその言葉を聞いて、どこか嫌な予感のようなものを感じた。

神隠し、人が突如としていなくなる現象を意味する言葉、俺の世界でも超常現象の一つとして有名な言葉だ。

 

「なんでも、クエストを受けた人の何人かがあるダンジョンに向かって、実際にそこで消息不明になったとかで……しかも、ここ数週間でそれが4件も報告されていて……」

 

「……それで気味悪がってみんなクエストを受けないのか……」

 

「巷では、そのダンジョンの近くを通るだけでも神隠しに会う、なんて話まで上がっている始末で……」

 

……何とも奇妙な話だな。

まあ、当然と言えば当然か……。

突然人がいなくなるなんて人知を超えた現象が実際に起きた以上、気味悪く感じても仕方がない。

しかし、神隠しに会うダンジョンか……。

 

「……それって、どこのダンジョンなんですか?」

 

「え? まさか天条さん、行くつもりじゃあ……」

 

「念のために聞いておくだけですよ、別に興味本位で行こうとか思ってませんから」

 

心配してくれた様子のお姉さんにフォローをしてから、俺が再度問いかけるとお姉さんは少しためらうようなそぶりを見せながらもそっと俺に耳打ちをしてきた。

 

 

 

「………“魔卿館”………プラネテューヌの外れにある、古いお屋敷です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙な噂話の事を聞き、ギルドを後にした俺は教会に戻るべくプラネテューヌの街を歩いていた。

賑やかな雑踏に紛れて歩を進める中、俺の脳裏にはさっき聞いた噂の事が気にかかっていた。

神隠しに会うと言われる謎の屋敷、魔卿館。

この噂のせいでギルドの運営も乏しくなっているので、このままではいけないというのもあるが、そこで何が起こっているのだろうか気になる所だ。

 

この件について報告するべきだろうか…。

 

俺がそのことを考えながら歩き続けていると……。

 

 

「あ、宗谷さん!」

 

 

不意に名前を呼ばれた俺は、声が聞こえた後ろに顔を向けた。

目を凝らして人混みの中を見ると、行きかう人の間から見覚えのある金色のツインテールがちらりと見えた。

 

「おろ、いーすん?」

 

俺を呼んだのはすっかり長い付き合いになっている実質俺の上司にして、頼れる相棒のプラネテューヌ教会の教祖、イストワールこといーすんだった。

彼女は俺が気づいたのを確認すると、駆け足で俺の方に近づいてきた。

 

「お疲れ様です宗谷さん、もうクエストは終わったんですか?」

 

「ああ、今さっき報告してきたところだよ、いーすんの方は外回りの仕事?」

 

「ええ、さっきまでアイエフさんのいる諜報部の方にいまして、これから昼食にしようかなと」

 

「そう言えばそろそろ昼飯か……」

 

俺はいーすんの話を聞いてポケットに入れていたブイホを開いて時間を確認した。

時刻は丁度お昼時、そうわかると心なしか空腹感を感じた。

いーすんもいることだし、何処かで昼飯にしようかな? 教会にはコンパさんもいることだし心配ないだろう。

 

「よし、じゃあせっかくだしどこかで昼飯にしようか、いーすんも一緒にどう?」

 

「え、いいんですか?」

 

「せっかく合流できたんだしさ、一緒に食べようぜ? たまには外食もいいだろ?」

 

俺がそう言うと、いーすんは少しの間考えるような仕草を見せてから、微笑みを浮かべた。

 

「………それじゃあ、せっかくですし、お言葉に甘えます」

 

「うっし、そうと決まればどこにしようか………ん? あれは、ハンバーガー屋か?」

 

話しも決まり、俺は早速あたりに丁度いい店はないかと見回すとチェーン店とは違う、個人経営と思われるハンバーガー屋を見つけた。

 

「よし、あそこにするか、久しぶりにハンバーガーも食ってみたいし、いーすんもあそこでいいか?」

 

「はい、大丈夫です、たまには私もこういうのを食べてみたいですし」

 

「オッケー、じゃあ混んでくる前に早く入ろうか」

 

どこかアメリカンな装いをしたその店が目に留まった俺は、いーすんと一緒に店内に入店した。

数人の客が席に座り、談笑しながら頼んだハンバーガーとサイドメニューを食べている。

見た目からして本場の感じがするハンバーガーはボリュームがあって食べごたえがありそうだ。

 

「いらっしゃいませ、二名様ですね? こちらにどうぞ」

 

店員さんに案内されて、俺といーすんは二人用の席に座る。

 

「さってと、何にしようかな……」

 

「結構本格的ですね、それにサイドメニューも充実してます」

 

「そうだな、ポテトにシェイク、チキンにソーセージ……ん?」

 

メニューを上から見ていく中、俺はふとある物が目に留まった。

無難に表記されたハンバーガーやチーズバーガーと言ったものとはどこか違う、名前で表記されたそれに興味が湧いてしまったのだ。

 

 

「“隊長の民族解放バーガー”? 変わった名前だな……」

 

 

なんとも特徴的な名前だな。

民族解放って、一体民族を何から解放するんだろうか……というか、それがハンバーガーと何の繋がりがあるのだろうか?

 

……うまいのかな?

こんなに自信満々の名前で売り出すくらいだし、相当な自信があるのかもしれないな…。

もしかしたら、この店の売りなのかもしれない。

 

「宗谷さん、決まりましたか?」

 

「え? あ、うん、一応は…」

 

せっかくだ、ここはこのハンバーガーにするとしよう。

俺といーすんは何を食べるのか決めるとウェイターさんを呼んで注文を伝えた。

 

「私は普通のハンバーガーとミニサラダ、あとアイスコーヒーを」

 

「そんじゃあ、俺はバニラシェイクと………この、隊長の民族解放バーガーで」

 

俺達の注文にウェイターさんはかしこまりましたと言うと、その場を去っていった。

いったいどんなものが来るのだろうか……。

 

「……あの宗谷さん、ちょっといいですか?」

 

「ん? どうかしたのか?」

 

待っている間どうやって時間を潰そうか、俺が考えているといーすんの方から話を振ってきた。

どこか真剣な面持ちで俺を見つめるいーすん、何か重要な話なのだろうか…。

 

「……実は先程諜報部の方で聞いたんですけど、最近妙な事件が起きているらしいんです……」

 

「………妙な事件って、もしかして……神隠しの事か?」

 

真剣な顔つきでそう言ってきたいーすん、しかし、妙な事件という言葉に先程聞いた神隠しの事を思い浮かべた俺はいーすんにそう返した。

すると、いーすんは少し驚いた表情を浮かべた。

 

「え? は、はい……もう知ってたんですね」

 

「さっきギルドの方で聞いたんだ、なんでも魔卿館っていうダンジョンで行方不明になった人が何人かいるとか……」

 

「……はい、その事件は諜報部でも持ちきりになっていまして……」

 

「諜報部の方でもか……何かわかったことはあるのか?」

 

「それが、実際に調査に向かった諜報員の方にも行方不明者が出たらしいんです……何人かでチームを組んでいったらしいのですが、そのうちの一人が行方不明に……」

 

「マジかよ…」

 

いよいよただの噂話って感じじゃなくなってきたな。

実際に諜報部の方にも被害が出ているのなら、真実味が増して聞こえる。

 

「それと、帰還した人は特にこれと言った証拠は出なかったけど、妙な気配を感じたと言っていたらしいです……」

 

「気配?」

 

「はい、誰かに見られているような……そんな気配を強く感じた、と……」

 

「………」

 

俺は無意識の内に無言になって、その話を聞いていた。

魔卿館で今何が起きているのか、分からないままだがこのままにしておくわけにはいかないのは確かだ。

 

「……宗谷さん、これ以上被害を増やさないためにも一度この事件、調査してみませんか?」

 

「………そうだな、このまま放っておくわけにはいかないだろうし………」

 

俺はいーすんの提案に頷いた。

 

これ以上、行方不明者を増やさないためにも原因を突き止めておいた方がいいだろう。

出来れば、行方不明になった人の救出も出来るかもしれないしな。

 

 

でも、それに刺しあたって問題がある……。

 

それは………。

 

 

「それでさ、いーすん………その魔卿館って、けっこう古い?」

 

「え? ………えぇ、大昔に建てられたお屋敷なので、相当古いと聞いていますが」

 

「………そうか」

 

 

俺はそれだけ聞くと、それ以上は追及しておかないで置いた。

古い洋館、今はそれだけにとどめておいた方がいい気がするからだ……。

 

これ以上追及して、“変な話”でも掘り出したら、一気に行く気をなくしてしまいそうだからな……。

 

そうこうしているうちに、さっきのウェイターさんが俺達の頼んだハンバーガーを運んできてくれた。

 

そして、出されたハンバーガーを前にした俺は………一瞬、目を疑った。

 

 

 

「………あの、宗谷さん………それ、ハンバーガーですよね? すごい色してますけど……」

 

「………ハンバーガーだと思う……すっげー色してるけど」

 

 

 

いーすんが頼んだハンバーガーは極めて普通な、ごくごくみんなが予想できるハンバーガーだった。

バンズの間にこんがり焼けたパテにトマトとみじん切りの玉ねぎ、ケチャップで味を調えられたタイプの物と言えば予想がつくだろう。

 

それに対し、俺が頼んだこの“隊長の民族解放バーガー”は、想像することも難しいだろうおどろおどろしい色をしていた。

形はちゃんとハンバーガーだ、ハンバーガーで間違いないと思う、ハンバーガーでないならそれはハンバーガーと言えないからだ。

ただ、色がとてつもない…。

 

なんだろう、このダークマターをそのまま固形にしたかのようなカオス溢れる色………。

 

何色とかそう言う概念がまったくない、むしろそんなことは考えるなと訴えてきているかのようだった。

 

「………あの、すいません、これ民族解放バーガーで合ってますよね………ハンバーガーの形をした暗黒物質とかじゃなくて………」

 

俺があまりにも気になったのでウェイターさんに確認を取る、するとウェイターさんはどこからサングラスを取り出して目元に掛けた。

元々がたいのいい体つきにサングラスが相まって妙な迫力を放つウェイターさん、その雰囲気はどこか緊迫した軍人の様なものを感じさせる。

 

「色は確かにあれだが、味は自身がある……このハンバーガーこそ、すべての食糧難に苦しむ人々に食の平和を与える、究極のハンバーガーだからな!」

 

なぜか急に強気な口調になった店員さん、食糧難に苦しむ人々を救うって言っても、この色だとむしろその人々を殺しかねないのではないだろうかと心配になってくるのだが……。

 

「認可された安全な化学調味料をふんだんに使い、保存料もどっぷり使用、そう簡単には腐らないタフさを兼ね備え、原価も驚くほど安い! これさえあれば飢餓に苦しむ人を救うことができる!」

 

「ハンバーガーにタフさって必要なのかな!? あまりにもケミカルすぎて逆にやばいことになりそうだよ!?」

 

「大丈夫だ、そう簡単に死にはしない……まあ、物は試しだ、食ってみろ、そうすればわかる」

 

サングラス越しのかなり強い視線でそう言われた俺は一度どうすればこのケミカル感が半端ないハンバーガーを食べずに済むかを考えた。

だって、こんな色合いのものを食べたら体がどんなことになるかわかったもんじゃないぞ!?

下手したら、内臓から爆発しそうなんだけど!?

 

食糧難を救うとか言ってるけど、それ以前に安全性とか考えようよこれを作ったのであろう隊長さん!

 

民族どころか、俺の魂が解放されちゃうよ成仏的な意味で!

 

……一体どうしたものか……。

 

俺が思考を巡らせていると…。

 

 

「あの、宗谷さん……無理しなくてもいいですよ? 代わりに私のでよければ……」

 

 

いーすんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!

 

この状況でそのやさしさはありがたいけど、それをやったら俺一生後悔しそうな気がする!

そのやさしさがあまりにも申し訳ないし、無謀だし、恐れ多い!

ていうか、むしろ痛ましい!!

 

「だ、大丈夫!! 俺が頼んだんだし、無理してなんかないし、俺けっこう体頑丈だし!」

 

あぁ、やばい、これでもう完全に逃げ場ないよ…。

ウェイターさんはサングラス越しでもわかるめちゃくちゃ鋭い眼光で俺のこと見てるし、ここでいーすんのと交換したら俺の良心が耐えられない…。

 

(……こうなったら、覚悟を決めろ……いーすんの優しさを無駄にするな天条 宗谷! 漢になれ!!)

 

覚悟を決めた俺はもはや死を覚悟するくらいの勢いで目の前のハンバーガーを手に取った。

おどろおどろしい色がこれでもかと俺を威圧する……もしかしたら俺は今日この日、天寿を末等するかもしれない……。

ああ、あっけない物だったな俺の人生………しかも、最後の晩餐がこのおどろおどろしい色のハンバーガー………どんな罰ゲームだよチクショウ!

 

だが、もう後戻りはできない。

いーすんにあんなことを言った手前、もう後には引けない……。

 

このまま残したら残したで、ウェイターさんに何されるかわかった物じゃないし……。

 

あぁ、人の人生って案外あっけない物だったんだな……。

 

さらば、人生。

 

ありがとう、生命。

 

そして、いただきます………本当はいただきたくないけど………。

 

俺はもう半ばやけくそでハンバーガーを口に近づけ、一思いに………かぶりついた。

 

 

 

そして………。

 

 

 

 

 

「………あれ? うまいんだけど………」

 

「えぇ!?」

 

 

 

 

 

おどろおどろしい色をしたこの世の物とは思えないハンバーガーは、見た目の割には意外とおいしかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ということがありまして」

 

「………それって、宗谷さん大丈夫だったんですか? 味は良かったかもしれないですけど、体に悪そうな気が……」

 

「むこう一週間は野菜中心のご飯にした方がいいんじゃないかしら……」

 

「じゃあ、宗谷さんだけ特別メニューにしておくです!」

 

その夜、イストワールはとある部屋で今日の昼の出来事を話していた。

その話を聞いたネプギア、アイエフ、コンパの三人はケミカルすぎるハンバーガーを食べた宗谷の身を案じて向こう一週間の彼の食事メニューを決めた。

 

今彼女たちがいるのはプラネテューヌを納める女神、ネプテューヌの自室である。

窓の外は暗闇に包まれ、電気がついたこの部屋に集まっているのは彼女たちだけではない。

円形の形をした大きめのベッドの上にはこの部屋の主であるネプテューヌと、最近になってこの国に身を置くこととなった異世界のプラネテューヌの女神、プルルートもいた。

そして、話をしていたイストワールの傍には教会で保護している迷子、ピーシェもいる。

 

なぜ彼女たちが一堂にネプテューヌの部屋に集まったのか、それはネプテューヌからの唐突な提案からだった。

 

「というかいーすん、せっかくの“パジャマパーティー”なのに、話すことがそれなの!?」

 

彼女が提案したもの、それは女子限定の夜の集会、ちょっとしたイベントとしても知られる女子だけのイベント、“パジャマパーティー”だ。

 

そのためか、この部屋にいるメンバー全員、いつもの服装とは違い、パジャマに着替えている。

 

「え? でも、宗谷さんと最近どんなことをしたのかって聞いたのはネプテューヌさんじゃないですか」

 

「確かにそうだけど、なんだか私が求めてたのと違うんだよ!」

 

「なら逆にねぷ子はどんな話を求めてたのよ?」

 

イストワールが放した今日の昼頃に起きた会話に文句をつけるネプテューヌにアイエフが問いかける。

すると、ネプテューヌはぐっと腕を組み、ない胸を張った。

 

「そりゃあ、あれだよ! こう、聞いているだけで甘々な雰囲気が漂って来て砂糖を吐かずにはいられないような、ギャルゲーみたいなイベントに他ならないでしょ!」

 

「ギャルゲーって……なんでまた……」

 

「だってだって! こういう集まりでするのって、大抵はガールズトークじゃん? ガールズトークって言ったらやっぱり、これしかないじゃん!」

 

ネプテューヌはそう言うと、両手でハートマークを作りこれでもかとアピールするようにみんなに見せつけた。

 

「これって……別にそこに拘らなくてもいいと思うけど?」

 

「何言ってるのあいちゃん! 女子だけの集まりでこの話をしないなんて大損だよ! まるでカラメルソースの掛かっていないプリンだよ!!」

 

「じゃあ、逆にねぷねぷはそう言う話はないんですか?」

 

ヒートアップした様子でガールズトークとは何かを熱弁するネプテューヌに、ふとコンパが問いかけた。

すると、ネプテューヌはいやいやと片手をひらひらと振って否定の意志を見せた。

 

「いやいや~、あるわけないよコンパ~、だって私今の所これと言ったフラグ建ってないし~」

 

「ほえ? ふらぐが建たないとお話しできないの~?」

 

「そう言うものなんだよぷるるん、だからこそ、今のところフラグが立っている人がこういう場所でそう言うお話をできる権利があるわけなんだよ! だから、いーすん!!」

 

「は、はい!?」

 

プルルートにパジャマパーティーに置いてのガールズトークのお約束を熱弁した後、ネプテューヌはびしりとイストワールを指さした。

急に指をさされ、びくりと驚くイストワールにネプテューヌずいっと近づく。

 

 

「ぶっちゃけ、最近ソウヤとどんな感じなの?」

 

「ど、どんな感じと言われましても………何と言ったらいいのか………」

 

「もうさ~、二人のリリィランク的にはもうキスまで行っててもいいんじゃない?」

 

「なっ!?」

 

 

ネプテューヌのデリカシーのへったくれもない唐突な発言にイストワールは急速に顔を真っ赤に染めると壁際までものすごいスピードで後退った。

 

「そ、そ、そ、そんなの急すぎます!? 私と宗谷さんはそう言う関係じゃないんですよ!? ………それなのに、急に……き、キスなんて……」

 

顔を真っ赤に染め上げたイストワールはそう言うと顔を両手で覆ってしまった。

だが、まあ、実際の所は一度“してはいる”のだ。

あの時は応急処置として仕方なくだったのだが……近しいと言えば近しい行為だと思うし、ノーカンと言えばノーカンとも言えるから微妙なところではあるのだが。

 

「う~ん、でも、二人の距離感的にも、それくらいいってもいいと思うんだけどな~」

 

「お姉ちゃん、そうは言ってもさすがにキスは急すぎると思うよ……?」

 

唸るネプテューヌにネプギアがそう返す。

確かにイストワールの性格を考慮しても、急にキスというのはいささかレベルが高いように思える。

 

しかし、それでもとネプテューヌは尚も渋る様子を見せる。

 

「でも、実際もうひと押しするべきなんだと思うんだよね~、何気にノワールまでライバルになってるし……後れを取らないようにさ?」

 

「別にペース配分についてはイストワール様のペースに任せればいいじゃない、ねぷ子は焦りすぎよ」

 

「大丈夫ですよ、いーすんさんと宗谷さんはすっごく仲良しですから、心配無用です」

 

「うんうん、いーすんとそーくん仲良しだからね~」

 

ネプテューヌの話に対し、一様にフォローを入れるアイエフ達。

あまり焦って変な失敗を起こせば元も子もないと思ったからであろう、極端な思考のネプテューヌの変なアドバイスのせいで二人の関係がぎくしゃくしては本末転倒だ。

 

焦りは禁物と全員に言われて、ネプテューヌは複雑そうな表情を浮かべる。

すると、

 

「………あれ? ピーシェちゃんどうかしたの?」

 

「………ぴぃ、ねむい………」

 

いつの間にか、ピーシェが眠そうにうつらうつらとし始めた。

傍にいたネプギアが時計を確認すると、もう時刻は子どもにとってきつい時間になってきていた様だ。

 

「も、もうここまでにしましょう! この話は終わりです!」

 

「え~! せっかくなんだからもう少しガールズトークしようよ~!」

 

「夜更かしはいけません! 明日だって仕事があるんですから!」

 

イストワールはそう言うと立ち上がってパジャマパーティーのために用意された自分用の布団に移動する。

これ以上話をややこしくされては身が持たないというものだ、イストワールはさっさと布団の中に入ると掛け布団で身をくるめた。

 

「むぅ、いーすんってば肝心なところで押しが弱いんだから……」

 

「まあまあお姉ちゃん、今日はもう寝よう? 心配しなくてもきっと大丈夫だから、ね?」

 

「あたしも眠い~……ねぷちゃん、もう寝ようよ~……」

 

「……そうだね、しかたない、今日はこのくらいにしておいてやるか! ということで、おやすみ~!」

 

ネプギアとプルルートに急かされ、仕方ないと判断したネプテューヌは今日のパジャマパーティーを切り上げて眠ることにした。

皆それぞれの布団の中に入り、電気が消され部屋が暗闇に包まれる。

 

皆が夢の世界に入ろうと寝息を立て始めた中、いち早く布団の中に入ったイストワールはあることを考えていた。

 

(………宗谷さんと………キス………)

 

先程言われたことが頭の中で反復してなかなか消えないのだ。

確かに、彼女自身そう言うことが出来たらいいなと感じることはある、しかし、そういうのはしかるべき手順を踏んでこそ、初めて出来ることだと彼女は思っている。

 

しかし、それでも、さっきの言葉のせいでどうしてもそう言う状況を想像してしまうのだ。

 

「………~~~!」

 

顔を再び赤くして布団に潜り込むイストワール。

何とかその思考を振り払おうと頭を振り、呼吸を整える。

明日は今日の昼に宗谷と話した噂の屋敷に調査に行くのだ、変に意識しては当日に支障をきたすかもしれない。

 

イストワールは思考を落ち着けるべく、一度深く深呼吸をして目を閉じた。

 

 

 

(………あれ? というか、皆さん私が宗谷さんの事をどう思っているのか……もしかして知ってるのでしょうか?)

 

 

 

ネプテューヌの話に対して、異様に落ち着いていたアイエフ達の様子を振り返り、最後にそんな疑問を抱きながら、イストワールは眠りに落ちていった。

 

 

 

この時、彼女と宗谷があのような事件に巻き込まれるということを誰も知ることはなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラネテューヌの外れにある、深い森の中。

辺りは夜の闇に沈み、不気味な暗闇を月明かりが木々の間を縫って照らしている。

森の中は異様なまでに静かで、まるでその空間だけ時が止まっているのではないかという錯覚すら覚える。

 

そんな森の中で、突如として光が湧き出した。

 

暗闇に包まれていた森の中が突然眩い光に包まれ、まるで昼の如く明るくなる。

地面から湧き出したようなこの異様な光、それはやがて地面に線を描き、一定の方角にその光の軌道を刻み、やがて一つの巨大な紋様の様なものを浮かび上がらせた。

 

巨大な円形の中に刻まれた六芒星。

輝きを放ちながら広がるその紋様はさらに光だけでなく、炎すらも上げ始めた。

だが、ただの炎ではない。

 

怪しく揺らめく、“緑色の炎”だ。

 

紋様を包み込むように揺らめく緑の炎、やがてその炎は中心へと集まっていき一つの塊を作り出した。

そしてその炎は輪を作り、その中心に“穴”をあける。

地面にではない、空間そのものに穴が開いたようにぽっかりと出来た穴、激しく炎が揺らめく中、人一人が丁度入れそうなその穴から、一人の人影が勢いよく飛び出してきた。

 

その人物は空中で身を翻しながら体勢を立て直すと、燃え盛る緑色の炎が揺らめく紋様の中心へと勢いよく降下していった。

真っ直ぐに撃ちあがった自身の体を垂直に立て、そのまま真下に向かって降りていく。

そして、地面に勢いよく降り立つと同時に、燃えていた炎が弾け、地面に浮かび上がっていた光の紋様が光の粒子となって弾けた。

 

暗闇に包まれた森の中、突如として現れたその人影は瞳を閉じたままゆっくりと立ち上がる。

 

その人物、見た目的にはまだ青年と言った感じだった。

ショートヘアーにした黒髪と、同じく黒色で纏めたロングズボンとロングコートに身を包んだ青年は深く深呼吸をして、ゆっくりと顔を持ち上げた。

 

「………無事に辿り着いたのか」

 

黒ずくめの青年は閉じていた瞼を開き、黒真珠の如き輝きを秘めた黒色の瞳を左右に動かし、まわりを確認する。

 

「初めての経験だったが、うまく行ったみたいだな……帰ったら“うずめ”にちゃんとできたって報告しないとな」

 

『何せ、膨大な魔力を使った“世界を飛び越える術”だ、あいつこんな大魔術をよく覚えてたもんだな』

 

立ち上がった青年の言葉に反応するように、何者かが答える。

その声はどうやら青年の左手から聞こえてきている様だった。

 

「ああ、だが、その分多用はできないし、なによりタイムリミットが存在している……」

 

青年はその声に答えるように左手を上げた。

すると、その左手の中指には一つの指輪が嵌っていた、“髑髏の装飾が施された指輪”が……。

 

『きっかり24時間、それまでに俺達の世界からこの世界に逃げ込んだホラーを狩らないと、戻れないぞ?』

 

髑髏の指輪がカチカチと顎を鳴らして返事を返す。

それに対し、青年は首肯し歩き出した。

暗闇に包まれた森の中を、黒ずくめの青年が迷いなく進んでいく。

 

彼が“世界を飛び越えてまで来た目的”を果たすために……。

 

 

 

「わかっているさ、早くケリをつけないとな……“ザルバ”、早速だが行くぞ?」

 

『最初からそのつもりなんだろ? とにかく、このあたりにいるのは確かだ………焦らずに行け、“稜牙”』

 

 

 

迷いなき瞳で闇の中を進む青年。

彼の中には一つの決意があった………揺るぎない強い決意が、瞳から色濃く表れている様だった。

 

その目はまさに、“狩人”。

 

だが、彼は同時に、“守りし者”。

 

異界より来たりし、その青年はこの世界に紛れ込んだ“闇”を狩るべく、世界を飛び越えてきたのだ。

 

 

 

その青年の名は、“叢雲 稜牙(むらくも りょうが)”。

 

 

 

今まさに、新たな物語と世界が交差しようとしていた……。

 




いかがでしたか?

また唐突に始まったコラボ、新たに始まった牙狼編。
次回は、謎の神隠しの噂にいーすんと宗谷の二人が挑む!

しかし、そこでアクシデントが!?

次回でお会いしましょう! それでは!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。