転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

12 / 42
レベル12 キメラの翼

 ネイル村出立から2日目のこと。

 俺達は魔の森にて野良モンスターの群れと戦闘していた。

 

「俺がライオンヘッドを担当する。他の皆は雑魚を頼んだ! ただキメラだけは生け捕りにしてくれ!」

 

「「了解!」」

 

 マァムは人面樹の群れに向けて魔弾を放つ。

 ソレには真空呪文が籠められており、命中した瞬間に相手は全身を切り刻まれて薪束と化す。

 まさしくソレは鋭利なブーメランのようだ。

 

「キシャアア!」

 

 するとコウモリ男がマァムに向けて封印呪文(マホトーン)をかけた。

 だが問題はない。

 魔弾銃はアイテム扱いだから魔法を封じられても使うことが出来る。

 

「メラゾーマ!」

 

「くらいなさい!」

 

 ポップとマァムが火炎呪文を放ちコウモリ男の群れを焼死体へと変える。

 これで雑魚モンスターは一掃された。

 もちろん俺は2人の活躍を見ているだけではない。

 モンスターのボス格であるライオンヘッドの相手をしている。

 

「ヒャド×アバン流刀殺法……氷結大地斬!」

 

 魔法をエンチャントしたナイフでライオンヘッドの首を刎ねる。

 コイツは閃熱呪文(ベギラマ)という強力な魔法を使う。

 なので出来るだけ早く大火力で倒すのが最適解である。

 

「これで全部倒したな」

 

 襲い掛かってきた敵モンスターは全て排除できた。

 そして俺達はようやく一息ついた。

 

「ダイ~! キメラは生け捕りにしたわよ!」

 

「ありがとう!」

 

 そう言ってマァムが生け捕りにした複数体のキメラを此方に持ってきた。

 

「それにしてもよ、コイツらを生け捕りにしてどうする気だ?」

 

「こうするんだよ、デイン!」

 

 俺はポップの疑問に答えるべくキメラに雷撃呪文(デイン)でトドメを刺す。

 するとキメラの遺灰からキメラの翼が出て来た。

 

「うおッ! それはキメラの翼か!?」

 

 それを見たポップが目を見開いて驚く。

 彼の反応からも分かるようにキメラの翼はダイ大世界では希少なアイテムだ。

 まあ、いつでも瞬間移動が出来るとかブッ壊れだから仕方ないね。

 

 そしてドラクエの公式ガイドブックによると、キメラが雷に打たれて死んだらキメラの翼が出来るらしい。

 つまり『雷』撃呪文を使える(ドラゴン)の騎士ならキメラの翼を量産することが出来るんじゃないか、という話だ。

 

 これは俺の考察になってしまうが、ダイ大世界でキメラの翼が貴重なのは地上で雷撃呪文を使えるのは(ドラゴン)の騎士のみだからなのではないか?

 他の製造方法としてはキメラを生け捕りにして避雷針に配置してから、天候呪文(ラナリオン)で雨雲を呼んでから雷を撃たせるというのも考えられる。

 しかし、それは余りにも非効率的だ。

 だいたい天候呪文(ラナリオン)が使えるクラスの魔法使いなら、もっと他に稼ぎの良い職場がある。

 それに魔王が復活すればキメラなどのモンスターは凶暴化するので家畜にするのも現実的ではない。

 

「それにしても早くロモスの城下町につかねぇかな。もう野宿はごめんだぜ」

 

「仕方ないでしょ。敵に見つからないように遠回りをしているんだから。それともまたあの獣王クロコダインとバッタリなんてことになってもいいの?」

 

「ごもっともで、おまかせします」

 

 ポップはクロコダインの恐怖を思い出したのかマァムに敬語を使う。

 ネイル村を出立してから2日経ったが、俺達はまだ魔の森の一角にいる。

 本来なら1日で到着する距離なのだが、クロコダインの勢力圏を避けて大きく迂回しながらロモス王国に向かっている為に王都までは3日程度かかるようだ。

 

 それはともかくとして、辺りは薄暗くなってきている。

 夜行性のモンスターであるコウモリ男が活動を始めたあたり、もうそろそろ夜に差し掛かってきたあたりだろうか?

 

「なあ、野営の準備をしないか?」

 

「そうね。丁度ここが広場になっているから、ここで野営しましょ」

 

 俺達は野営の準備を始める。

 マァムは道具の点検し、俺はかつて人面樹だった薪束を整えてからメラで火を起こす、ポップは料理の準備を行い、ゴメちゃんは空を飛んで索敵を行う。

 実は3人と1匹の中で一番料理が上手いのはポップなのだ。

 まあアバンシェフと共に生活していたら料理技術も自然と上達するだろうな。

 

「ポップ、軽くシャワーを浴びる?」

 

「おう!」

 

 こうして俺達はマァムに見えないように物陰ですっぽんぽんになる。

 そして手加減した水流呪文(ザバ)で体を軽く洗い流す。

 うーん、気持ちいい。

 まさしくコイツ(水流呪文)は非戦闘時にも役に立つ万能魔法だ。

 後はシャンプーやボディーソープがあれば汚れと臭いが完全に落とせたんだけどな。

 まあ旅をしている最中だから多少の汚れは仕方ないな。

 

 もちろんマァムも水流呪文でシャワーを浴びている。

 女の子だし体臭には敏感なのだろう。

 ちなみ浴び方は魔弾銃に手加減した水流呪文を装填してソレをシャワー代わりにするというものだ。

 武器である魔弾銃を有効活用しているな。

 ちなみにポップは彼女のシャワーシーンを覗こうとしてボッコボコにされた。

 

「2人とも戻ったのね。じゃあ、弾丸に魔法を充填してくれるかしら?」

 

「いいぜ!」

 

 そう言ってマァムは俺達に弾丸を渡した。

 魔弾銃の弾丸は10発であり、それぞれに魔法が装填されている。

 攻撃魔法は火炎呪文(メラミ)氷系呪文(ヒャダルコ)真空呪文(バギ)雷撃呪文(デイン)水流呪文(ザバ)で5つ。

 回復魔法は回復呪文(ベホイミ)麻痺解除呪文(キアリク)覚醒呪文(ザメハ)の4つ。

 補助魔法は幻惑呪文(マヌーサ)加速呪文(ピオラ)の2つというバランスの良い構成だ。

 

 ちなみに幻惑呪文(マヌーサ)は村の長老が、加速呪文(ピオラ)はレイラさんが充填してくれた。

 もちろん使ったらそれっきりである。

 なんというかラストエリクサー症候群になりそうだな。

 

 そんな魔弾銃だが利点は大きく分けて5つ存在する。

 それは誰でもソレ(魔法)を使用できる点、魔法の挙動が変わる点、魔法を封じられても使える点、通常よりも早撃ち出来る点、呪文を詠唱しなくても良い点だ。

 

 魔法の挙動が変わる点については、例えば雷撃呪文は普通に使うと雨雲から雷撃を放つという感じだが、魔弾にすると銃口から電撃が発射されたりするし、回復呪文は遠隔で使用可能になる。

 先のクロコダイン戦ではこの仕様のおかげで九死に一生を得た。

 

 通常よりも早撃ち出来る点については、並みの魔法使いは『詠唱して』『狙って』『撃つ』と3アクション必要だが、魔弾銃は『狙って』『撃つ』という2アクションで済む。

 戦闘において速度は命なので、この仕様はデカい。

 

 そして呪文を詠唱しなくて良いのもデカい。

 相手からすれば何の効果が来るか分からないわけだからな。

 まあ熟練の術者は詠唱しなくても魔法を使えるわけだが。

 

「さ、魔法を充填できたよ」

 

 俺は充填が終わった魔弾をマァムに返した。

 すると彼女は真剣な顔つきになる。

 何かを言いたげだ。

 

「……ねぇ、ダイ。話は変わるんだけどさ。私ってパーティの役に立っている?」

 

「もちろんさ。回復が出来て、魔弾銃で遠距離攻撃が出来て、ハンマースピアで近接もいける。まさに器用万能じゃないか」

 

「だけど回復だけじゃダメだと思うの。それに魔弾銃は強敵相手に通用しないわ」

 

 この2日間、マァムは自身の戦い方に悩んでいる節がある。

 確かに僧侶戦士+魔弾銃というバトルスタイルは良く言えば万能型だが、悪く言えば中途半端だ。

 故に原作の彼女は魔弾銃が壊れたタイミングで武闘家へと転職を選択した。

 

 だけど現在のマァムは魔弾銃が健在なのに強くなろうとしている。

 おそらくクロコダイン戦で相手に決定打を与えられなかったことが影響しているな。

 つまり原作より早いタイミングで自己を見つめ直したという所か。

 良いバタフライエフェクトが起こっている。

 

「なら、父親譲りの馬鹿力を活かしたらどうだ? 例えば武闘家になるとか」

 

「武闘家……」

 

「そう、銃と格闘を組み合わせるんだ。名づけて『ガン=カタ』だな。きっと攻撃効果は120%上昇、防御面では63%上昇するはずだ」

 

「やけに具体的な数値ね。だけど悪くないかも」

 

 やはりマァムは原作通り武闘家にならないとな。

 そして彼女も武闘家の転職に乗り気のようだ。

 何よりである。

 

「まずは、この我流で武闘家としてのキャリアを積もう。その後はロモスの山奥にいるという武術の神に弟子入りしたらどうだ?」

 

「だけど、修行の間、ダイと一緒に旅が出来ないわ」

 

「問題ない。クロコダインを倒した後はロモスからパプニカまで船で移動するだろう? 船旅は5日間くらいかかると思うから、その期間を利用して修行したらどうだ?」

 

 原作ダイですら3日で大地斬と海波斬を習得したんだ。

 そしてマァムは戦士ロカと僧侶レイラという英雄同士の娘、つまりはサラブレッドなので5日あれば同じくらいの急成長が見込めるだろう。

 現に原作での彼女は1か月弱で武神流の奥義を習得した。

 まあ、そこまで強くならない可能性もあるけどね。

 とはいえ船上で無為に過ごすよりはよっぽどいいだろう。

 

「それだと、私がパプニカに行けないじゃない!」

 

「大丈夫、キメラの翼で迎えに行く」

 

 そう言って俺は雷撃呪文で生成したキメラの翼を見せびらかす。

 このアイテムは望んだ場所にワープすることが出来るというもの。

 つまり最低でもコレが2枚あれば、マァムを迎えに行くことが出来る。

 

「そんな貴重品を私の為に使ってくれるの!」

 

「もちろんさ!」

 

「とても嬉しいわ! ありがとう、ダイ!」

 

 そう言って彼女は抱きついてくる。

 こうしてマァムの育成方針が決まった。

 ちなみに武神ブロキーナ氏が住んでいる場所までの道案内は、彼の知り合いであるレイラさんを頼るつもりだ。

 

 そして、この日からマァムは武闘家スタイルで戦いだした。

 元々、魔の森を駆け回っていたことで体幹が鍛えられていたので我流でも割と様になっている。

 まさに蝶のように舞い、蜂のように刺す、だな。

 

「正拳突き!」

 

 強烈な一撃がリカントという獣人モンスターの鳩尾を穿つ。

 正拳突き、それはハッサンの代名詞となるほどに強力な特技だ。

 元からの積み重ねもあったのかマァムは順調に強くなっている。

 

 ■□■□■□■□■□■□■

 

 ネイル村出立から3日目の夜のこと。

 

「遂に着いた、ロモスの王都に!」

 

 俺達はようやく目的地へと到着した。

 実に3か月ぶりの王都である。

 しかし夜だというのに町の至る所に武器を持った兵士が立って、哨戒任務を続けている。

 もしかしたらネイル村から徴兵された人もいるのかもな。

 

「さあっ! 早くロモス城へ行こうぜぇいっ!」

 

 というわけで俺達は王城へと向かった。

 しかし……

 

「既に王様はお休みになられておる。今日は宿屋にでも泊まって明日こられるがよい!」

 

 もちろん夜だったのでロモス王に謁見することは出来なかった。

 前世のコンビニのように24時間営業ではないらしい。

 

「そもそも、得体の知れぬ者と王を合わせるわけにいかぬ!」

 

「じゃあ、これはどうですか?」

 

 そう言って俺は覇者の冠を門番の兵士に渡した。

 これは世界でも1つしかない貴重な装備にしてロモスの国宝だ。

 なので経緯を知っている人からしたら間接的な素性の証明にもなる。

 

「こ、これは覇者の冠!? ということは貴方が未来の勇者ダイですね! 分かりました。明日、上役に貴方が来たことを伝えますね!」

 

「ありがとうございます! 後、魔の森に魔王軍の軍団長を見つけました。たぶん数日以内に魔王軍が王都に攻め込んでくると思うので警戒するようにと王様に伝えてください!」

 

「分かりました!」

 

 そう言って門番達はペコリと頭を下げる。

 これで百獣魔団による犠牲者が少しでも減ればいいが。

 俺としては原作に無い行動は極力取りたくないのが本音だが、この世界は物語じゃない。

 当たり前だが人間は普通に生きているので、出来る限り犠牲者は減らしたいのだ。

 ロモスの兵がどこまで頼れるかは未知数だが、やって損はあるまい。

 

「じゃあ、さようなら!」

 

 こうして俺達は城下町の宿屋へと向かった。

 さあ、原作知識が正しければ彼らがいるはずだ。

 

「いらっしゃい。こんな夜遅くまで御苦労ですな」

 

「1部屋4人で泊まりたいんですけど…」

 

「4名様ですか、1晩20ゴールドになりますがよろしいですかな?」

 

「おねがいします!」

 

 こうして俺達は宿屋の主人に部屋へと案内される。

 その道中で彼と世間話をすることにした。

 

「えっ? 魔王軍と戦っている?」

 

「そうそう、まあ言ってみりゃ俺達は勇者様御一行ってわけよ」

 

「そりゃあ立派なことですな」

 

 主人は感心した様子で俺達を見る。

 なんか原作と展開が違う気がするな。

 この宿にニセ勇者パーティーはいないの?

 

「俺達以外に勇者パーティーを名乗る輩は泊ってないんですか?」

 

「いえ、泊ってませんよ」

 

 なるほどね、かなりマズいことが分かった。

 確かロモス編ではポップがニセ勇者一行に所属する魔法使いに勇気を貰うはずだ。

 なのに肝心のニセ勇者達がいない。

 

 もしかして原作と違う行動をしたせいで、負のバタフライエフェクトが発生したのでは?

 城下町にはたくさん宿屋があるから原作で泊った場所、つまりニセ勇者がいる場所なんて分からないんだよね。

 片っ端から探してたら夜が明けてしまうし、そもそもロモスに彼らがいない可能性もありえる。

 ……これは非常にマズいな。




※キメラの翼が貴重品な設定
 勇者アバンと獄炎の魔王の24話でブロキーナが『ジニュアール家に残されていた数少ないキメラの翼』と称していたように人間界では希少な品と推察できる。
 そしてドラクエの公式ガイドブックによればキメラが雷に打たれて死ねばキメラの翼になるとのこと。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告