転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル14 勇者に非ず

 必殺の一撃(アバンストラッシュ)がクロコダインの鋼鉄の如き肉体に炸裂する。

 これにより奴の右脇腹は深く切り裂かれ、胴体を半ばまで切断していた。

 そして、そこからは青い血がとめどなく流れている。

 

「グ……グフフッ! 見事な技だ……俺の負けだ。どうせ負けるなら正々堂々お前と戦って負ければ良かったよ」

 

 そう言ってクロコダインは吐血する。

 ぶっちゃけ卑怯な手を使わなかったら負けていたのは俺の方だったはずだ。

 なにせ相手はバラン父ちゃんのギガブレイクを2度も耐えてくる超耐久の持ち主だからな。

 相手のメンタルは卑怯な手を使ったことでボロボロであり迷いしかなかった。

 そして迷う奴は弱い。

 

「……目先の勝利に狂った俺はバカだった」

 

 そう言ってクロコダインは男泣きしながら壁に空いた穴の近くへ向かう。

 そして俺に「強くあれ」という言葉を送り空中へと身を投げ出す。

 彼は王都中に響き渡るほどに大きな断末魔を上げながら落下し、少し遅れて重々しい地響きが聞こえる。

 それを聞いた百獣魔団のモンスター達はリーダーを失った獣の群れが四散するかのように魔の森へと逃げていく。

 

「ブラス……爺ちゃん……」

 

 そして俺は爺ちゃんの亡骸を抱きしめる。

 青い血がとめどなく流れ出ていた。

 原作通りなら生きていはず。

 つまり俺が悪いんだ、俺が殺したんだ。

 

「ダイ、貴方は悪くないわ。全部、魔王軍が悪いのよ!」

 

「そうだぜ、だから気を病むな」

 

「ピピィ!」

 

 仲間達はそう言って慰めてくる。

 違うんだよ、違うんだよ。

 本当なら全て円満に終わっていたはずなんだ。

 

「ああ、俺は前を向くよ」

 

 もう後戻りはできない。

 死んだブラス爺ちゃんの為にも必ずや魔王軍を倒さないと。

 というわけで俺は周囲を見渡す。

 すると兵士達がモンスターを追撃していた。

 

「兵士の皆さん! 出来るだけキメラは生け捕りにしてください!」

 

 魔王軍の軍団長を倒した英雄としての権限を使い兵士に指示を与える。

 これはキメラの翼を少しでも確保する為だ。

 やはり便利なアイテムは量産しておかないとな。

 

「次はお前だ」

 

 俺は中庭に落下したクロコダインの死体へと近づく。

 そして懐からワニ型の笛を見つけ出した。

 

 こいつの名前は獣王の笛。

 吹き鳴らすとモンスターが呼び寄せられ、そのまま倒すことが出来れば必ず仲間になるという、スカウトリングもビックリのチートアイテムだ。

 これは戦利品としてありがたく頂戴させて貰うぜ。

 もしかしたら今回の原作ブレイクでクロコダインが仲間にならない可能性があるからな。

 それを想定して回収させてもらった。

 

 もちろん要件はこれで終わりではない。

 俺はクロコダインの体を見る。

 原作と同じように竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏った斬撃を喰らったので傷は深い。

 なので氷系呪文(ヒャド)で奴の傷口を凍らせて止血する。

 これで少しは蘇生確率が上がるだろう。

 確か外伝『勇者アバンと獄炎の魔王』でバーンがハドラーに同じこと*1をやっていたしな。

 ……お前まで死なないでくれよ、クロコダイン。

 早くアンタと肩を並べて戦いたいんだから。

 

「さあ、自由に持っていけ」

 

 俺がそう言うとガルーダというモンスターがクロコダインの体を掴んで何処かへと飛んでいく。

 主が敗北しても忠誠を失わないとは大したモンスターだ。

 流石は15年前から獣王に仕えていた古参の部下なだけはある。

 

「ダイ殿、ここにいましたか!」

 

 すると若い兵士が此方にやってくる。

 どうやら俺の事を探していたようだが。

 

「ロモス王がお呼びです。戦後の処理は我らに任せて玉座の間に向かってください」

 

「分かりました」

 

 というわけで俺は玉座の間へと戻る。

 道中では兵士と国民達が勝利に沸き立ち大いに喜んでいた。

 王都中に勝利を喜ぶ声が、風に乗って聞こえてくる。

 

 ■□■□■□■□■□■□■

 

「ダイ、ポップ、マァム、そして王都の兵士諸君! みんなよく戦ってくれた! 特にダイ、この度の勝利はお前のおかげじゃ! それとダイよ、ブラス殿を殺したことを気に病むでないぞ。悪いのは魔王軍じゃ」

 

 クロコダインとの戦いの傷跡が残る王座の間でロモス王が俺達に向けてそう言う。

 ゴメちゃんもポップもマァムもロモス王も皆、良い人ばかりだ。

 だけど俺にとっては逆に苦しい。

 いっそのこと軽蔑された方が楽だったかもしれない。

 

 ちなみに兵士や民間人の重軽傷者は多数ではあるものの、初動の対応が早かったおかげか死者はそこまで出ていないらしい。

 王様曰く、前日に俺が門番を介して警告してくれたおかげで犠牲者が少なく済んだとのことだ。

 原作よりも犠牲者が減って何よりだ。

 

「もはや名実ともに勇者に相応しい男に成長したと言えよう。晴れて今日から『勇者ダイ』を名乗るがよい!」

 

「陛下、辞退させてください。親を殺すような人間が勇者であるはずがありません」

 

「ダイよ、気持ちは分かるがアレは仕方なかったんじゃよ」

 

 そう言ってロモス王は悲しい表情をする。

 もう俺は勇者を名乗ることはないだろう。

 そして王様が合図すると役人達が3つの宝箱を俺達の目の前へ置く。

 

「……それはワシからのせめてもの贈り物、上質な装備一式じゃ。これを使いブラス殿の仇を討つんじゃよ」

 

 装備の贈与は本当に助かる。

 パプニカのナイフと覇者の冠とアバンの印は一流の装備だが、胴体の装備は布の服というショボイあり様だったからな。

 しかも経年劣化と激戦によってボロボロだ。

 

 というわけで俺は宝箱を開ける。

 すると、そこには鋼鉄(はがね)の剣、鉄の盾、鋼のプロテクターがあった。

 しかも、普通の装備じゃない。

 国家元首が用意しただけあって品質は通常の装備よりも遥かに良い。

 ドラクエ11で例えるなら鋼鉄(はがね)の剣+3みたいなものだろう。

 

 でも本音としては覇者の剣が欲しかったよね。

 アレはオリハルコン製だから鋼鉄(はがね)の剣よりも遥かに性能が良いはずだ。

 まあソレ(覇者の剣)を貰ったらロモス武術大会の展開が変わる可能性があるので仕方ないか。

 

「それを身に着けて国民の前に姿を見せてやってくれい! みんな国を救った英雄達の姿を見たがっておるからな」

 

 というわけで俺達は城の空き部屋で新装備に着替えることにする。

 さあ、気分を入れ替えるとしよう。

 いつまでもお通夜気分じゃ天国にいるブラス爺ちゃんも悲しむだろうし。

 

「似合っているぜ、マァム!」

 

「ありがとう!」

 

「おいおい、俺の事は褒めてくれないのかよ」

 

 新装備に着替え終えた俺はマァムの新衣装を褒めてみる。

 女性のオシャレはとりあえず肯定しておかないとな。

 

 彼女の装備は分類的には旅人の服であるものの、最高級の品であるので防御力は通常の物よりも高い。

 王様曰く、生地は魔法の法衣と同じものを使っているので魔法耐性も高く、裏地には身躱しの服と同じ魔法を籠めてあるので回避力も高いとのことだ。

 それでいて造りは旅人の服なので法衣と違って動きやすい。

 

 しかしマァムの装備を用意したのはどこの誰なんだろう?

 あんなミニスカじゃパンツが丸見えだろう。

 まあ指摘したら彼女に殴られるので何も言わないでおくが。

 

「ダイも馬子にも衣装って感じよ」

 

「マァム、それ褒めてる?」

 

「さあね?」

 

 そう言って彼女達は笑う。

 確かに俺はデルムリン島という僻地で育った野蛮人だからな。

 それはともかくとして、俺達は庭園へと急ぐ。

 

「新しい勇者様ってどんな人なんだろうな?」

「なんでも、まだ小さな少年らしい…」

「とにかく、ひと目だけでも勇者様を拝みたいものじゃ」

 

 急遽、一般に開放された王城の庭園には大勢の国民が集まっていた。

 散乱した自宅や店を建て直している途中であったり、自身や家族が怪我をしてまだ治療中という人達も大勢いる。

 とはいえ祖国の危機を救った英雄がお披露目すると聞けば、見たくなるのは当然だろう。

 

 パンパカ♪ パパパアーン♪

 

 辺り一帯に鳴り響くファンファーレの音。

 その音と共に幕は開き俺達はテラスから国民達に姿を見せる。

 そして一斉に庭園から歓声が上がる。

 もちろん俺達はそれに答えて手を振る。

 

「アバン先生、ブラスさん。天国から見ててください。絶対に魔王を倒しますから」

 

 ポップは空を見上げてそう呟く。

 まあアバン先生は生きているけどね。

 

 その夜、ロモスでは祝賀会が開催された。

 獣王クロコダインと配下の百獣魔団を相手に国を守り抜いたことを祝してのものだ。

 怪我人や壊れた建物などが散見され、復興が後に控えている為か平時よりも慎ましやかだが、それでも辺境の野蛮人と田舎者達にとっては十分なものであった。

 そして渦中の人物である俺・ポップ・マァムの3人はひっきりなしに訪れる人の対応に追われて大変であった。

 たぶん祝賀会を仲間達の中で一番楽しんでたのはゴメちゃんかもな。

 やがて、そんな宴も終わる。

 そして夜が明けた。

 

「デイン! デイン! デイン! デイン! デイン!」

 

 祝賀会翌日、俺はロモス兵によって生け捕りにされたキメラ達に向けて雷撃呪文(デイン)を連射して息の根を止める。

 これにより死骸からキメラの翼が出てくる。

 

 ……彼らにも家族はいたんだろうな。

 それを虐殺するなんて俺はクズだ。

 

「これで全部終わったよ!」

 

 そんな内心を隠して近くにいるマァムに報告をする。

 そしてキメラの翼を4枚だけ手元に残して残りを袋に仕舞う。

 これらは後々、アレの習得に使うのだ。

 

「じゃあ、行こうか!」

 

 そう言って俺達は集まってキメラの翼を使う。

 このアイテムの効果は使用者が行ったことがある場所に瞬時に移動するというものだ。

 要するに瞬間移動呪文ルーラと同じである。

 ちなみに消耗品なので無駄遣いは出来ない。

 

「よし、到着!」

 

 こうして一瞬で目的地に到着した。

 ここは俺が生まれ育った故郷、デルムリン島だ。

 そして魔法の筒を構えた。

 

「デルパ!」

 

 その言の葉と共にブラス爺ちゃんの死体が魔法の筒から解放される。

 そして俺は死体を埋葬した。

 デルムリン島なら安らかに眠れるだろう。

 

「絶対に勝つからね……」

 

 これ以上、悲劇だけは増やさない。

 俺はそう誓った。

 

「じゃあ行こうか」

 

「ええ!」

 

 俺とマァムはキメラの翼を使って瞬間移動してデルムリン島から立ち去る。

 次の目的はもちろん……

 

「ついたか、ネイル村に」

 

「ダイくん、それにマァム! いったいどうしたの?」

 

 ちょうど到着地点にはレイラさんがいた。

 これは話が早く済みそうだ。

 

「レイラさん。突然ですがマァムを武術の神ブロキーナ氏に短期間だけ弟子入りさせたいです。このキメラの翼を使って彼がいる場所まで連れて行ってください」

 

「ええ、別に構わないわよ」

 

 こうしてレイラさんに事情を説明してからキメラの翼を渡す。

 そして俺とマァムが彼女の傍に近寄る。

 

「じゃあ使うわよ」

 

 レイラさんがそう言うとキメラの翼が使われる。

 すると風景は瞬時に変わり、ロモスの山奥へとワープした。

 

「ここがブロキーナ老師が住んでいる山小屋よ」

 

「おや? 誰かと思ったらレイラじゃないか」

 

 すると山小屋から丸レンズの黒眼鏡をかけた小柄な老人が出て来た。

 彼こそが武術の神、ブロキーナ老師で間違いないだろう。

 そして俺はパプニカへ向かうまでの5~6日ほどマァムを弟子入りさせること、マァムがレイラさんの娘であることを語った。

 

「しかしワシは『おしりぴりぴり病』という病に罹患していて弟子を今は取っていないんじゃよ」

 

「なら、これをどうぞ。万病に効く薬草です」

 

 そう言って俺はパデキア草を渡した。

 これは飲めばあらゆる病をたちまち治すという薬草だ。

 確かドラクエ4ではクリフトを救うために必要だったり、15年前にアバン先生が料理に使ってたんだよな。

 ちなみにコレはロモスの城下町で購入したものだ。

 

「……それはいらないけど弟子は取ってもいいよ」

 

 こうして無事にマァムはブロキーナ老師に弟子入りすることが出来た。

 まあ原作でもマァムを弟子に取ってたしな。

 

「じゃあ、ダイ。私、ここで少しの間だけど修行をさせて貰うわね。でも、ちゃんとパプニカに着いたら迎えに来てね」

 

「ああ、もちろん。この後、ソフィアの港に向かって、だいたい5~6日くらいでパプニカにつく。だからそこら辺で迎えに来ると思っていてくれ」

 

「分かったわ」

 

「それじゃあ、ブロキーナ老師。マァムの事をよろしくお願いします。それとパデキア草はちゃんと飲んで持病を治してくださいね」

 

「いやいや、ワシの持病は常に病名が変わっておるから、治療は必要無いんじゃよ」

 

 常に病名が変わるとは、いったい?

 

「……そ、そうですか。じゃあ俺はこれで」

 

 最後に俺はこの修行場の景色を目に焼きつける。

 なにせ覚えてないとキメラの翼で戻ってこれないからな。

 最悪、ネイル村経由で戻れるけどキメラの翼を多く使うことになるからな。

 貴重なアイテムだから無為に消耗したくない。

 

 その後、俺は無事にロモスの王都へと帰還する。

 そして活気が戻りつつある大通りで、いくつか船旅で使う物を購入してからポップ達と合流した。

 さあ、明日はパプニカ王国へ出発だ。

*1
44話に描写がある




※パデキア草
原作でアバンが料理に使っていた。
ドラクエ4では万病を治す貴重なアイテムでしたがダイ大世界では貴重じゃなさそう。
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