転生ダイの大冒険 作:ジャガン大好き民
ロモスの港町から出航して1日目のこと。
俺達は大海原の上にいた。
鼻孔に磯の香りが漂ってくる。
「潮風が気持ちいいな!」
「ピピィ♪」
「絶好の航海日和だね」
今の俺達はロモス王から貸与された船の上にいた。
そして、そこで潮風と太陽光を体一杯に浴びている。
海のモンスターも魔王の邪気で活性化して危険だろうに立派な船を一隻、ポンと貸してくれるなんて流石は王様、太っ腹だ。
しかも国家元首が所有している船なので当然、普通の船ではない。
これは聖水船という常に聖水を流しながら進むというリッチな船だ。
つまり並みのモンスターは近づけないので心置きなくリラックス出来るな。
「俺達がロモスに来る時に使ったボロ船とは大違いだぜ」
「アレは大変だったな……」
「ピピィ!」
確か軍隊ガニに船底を破壊されて危うく浸水しかけたんだっけな。
そして氷系呪文ヒャドで蓋をして事なきを得た。
しかも途中で雨が降ったりしてズブ濡れにもなったよな。
今では遥か昔の事のように感じる。
一方の俺達が乗っている船は速いし、浸水しないし、モンスターも襲ってこないし、雨風も凌げるし、専用のコックもいるし、ベッドはフカフカだし至れり尽くせりだ。
「さてと、修行を始めるか!」
そう言って俺はヒノキの棒(ロモスの城下町で購入した)を構える。
ロモスからパプニカまでは、波風の機嫌にも左右されるが、船では最速でも5日は掛かる。
たった数日のことだが無駄には出来ない。
なので修行をしているわけだ。
もちろん船長と船員達には事情を話し船を壊さないことと運航を邪魔しないことを絶対条件とすることで許可を取り付けてある。
決して無許可ではない。
「空裂斬!」
俺は普通の闘気を纏った斬撃を放つ。
これは光の闘気を放つ技である空裂斬ではない。
ただ技名を叫んだだけである。
要するに失敗だ。
「でやああっ!」
時折ゆらゆらと揺れる不安定な甲板上で何度もヒノキの棒を振るう。
空裂斬の習得は難航している。
なぜなら光の闘気の習得が難しいからだ。
そもそも親殺しをした男が光属性なわけがない。
どちらかというと怒りや憎しみなどの感情が力の源泉である暗黒闘気の方が向いてるはずだ。
「おお、やってるな」
「自分の修行はどうしたんだ、ポップ」
「とっくにMPが尽きたぜ。その後も瞑想をしていたんだけど、お前の声がうるさくて集中できなかったんだ」
「それはごめん」
ポップは真面目に修行していたようだ。
どうやら邪魔をしてしまったな。
だけど周囲の音程度で瞑想を邪魔されているようじゃまだまだ未熟なのでは?
まあいいか。
「じゃあ別の修行をしますかね」
こうして俺は袋から葉巻を取り出す。
そして葉巻を弱めの
この世界ではライターを持ち歩く必要が無いのが非常に便利だ。
流石は剣と魔法の世界である。
「なんで葉巻を吸ったら修行になるんだ?」
なぜなら、これはルラムーン草で作った特別製の葉巻だ。
この草はドラクエ5では
つまりコイツはルーラに関連した草なのだ。
それで作った葉巻の煙を吸えばルーラを習得できる……かもしれない。
ぶっちゃけ根拠はない、全ては推測だ。
だけどプラシーボ効果もバカには出来ない。
ちなみにルラムーン草はロモスの城下町で購入した。
「もちろん、これだけじゃないぜ」
そう言って俺はキメラの翼を使って甲板から船首へと移動する。
このアイテムは瞬間移動呪文ルーラと同じ効果を持つ。
つまりルーラの感覚を掴むことが出来るのだ。
そして俺とポップはキメラの翼を何度も使いまくってコツを掴みに行く。
「本当にもったいねぇな」
ポップがそう言う。
本来ならキメラの翼が貴重すぎるので絶対に出来ない修行方法だ。
だが雷撃呪文でソレを量産することにより不可能を可能にしていた。
こうしてキメラの翼を2枚だけ残して(この2枚はマァムを迎えに行くときに使う)使い切ったら……
「勇者ダイ、行きまーす!」
荒縄に重りを繋ぎ、その縄で自分の手を縛った。
そして船から飛び降りて大海原にダイブ!
「ガボボボ!」
もちろん重りによって俺の体は徐々に深海に向けて沈んでいく。
すると塩っ辛い味が口いっぱいに広がる。。
このままだとマジで死ぬだろう。
だけどルラムーン草とキメラの翼によって感覚は掴んでいる。
そして大魔道士マトリフ曰く、ルーラのコツは呪文じゃなく魔法力そのものを身体全体から放出するというものらしい。
「
海中で魔法の言の葉を唱えると重りと一緒に何とか甲板の上に飛んでいくことに成功する。
……何とか、成功したな。
もちろん失敗したら死ぬので割と危険な修行だ。
「ルーラ!」
今度は甲板からマストの上にルーラで移動すると、いとも容易くソレは成功した。
そして再度、ルーラを唱えて甲板に戻る。
短距離の瞬間移動は良い感じだな。
後は長距離の移動が課題である。
まあ、ここら辺は船が停泊しているタイミングでデルムリン島と船を往復するとしよう。
「それにしてもルーラを契約しているなんて流石は勇者様ですね」
甲板を掃除していた水夫の1人は驚いた表情でつぶやく。
言うまでもなく魔法とは便利なものだ。
とりわけ
現にパプニカの三賢者ですら習得していないわけだしな。
これはルーラが難しい魔法だということも原因の1つだが、それ以上に各国が悪用されることを恐れて、習得を規制しているからだ。
術者のイメージ次第で瞬時に人やモンスターを運べるのだ。
テロ対策の観点から各国がルーラを契約できる魔法陣の規制をかけるのは当然の発想だろう。
なにせ砦や城を築いてもその防壁を呪文一つで無意味にしてしまうのだから。
一応、15年前の地底魔城やバーンパレスに張られていた、特定の相手のルーラによる侵入と脱出を封じる結界とかも無くはない。
だが、それを全ての要所に張るのもコストがかかる。
つまりルーラ習得を規制するのが手っ取り早い。
実際、騎士で学者の家系でフローラ姫のお気に入りであるアバン先生ですら、ルーラを契約したのはマトリフの蔵書からだった。
おそらくルーラを契約できるのは宮廷魔道士ないしそれに準じる高い地位を持った魔法使いのみなのだろう。
まあ民間人であるはずのシュプレやフォブスター*1は普通にルーラを使えたりするわけだけどね。
流石にソレは例外だろう。
シュプレはドラゴンキラーや隼の剣などの高級品を所有する資産家の孫娘だし、フォブスターは良く分からん。
ちなみに俺は旧魔王軍の幹部であるブラス爺ちゃんに育てられたのでルーラは契約できている。
人間の国の事情とかモンスターにとっては知ったことではない。
むしろ悪用する側だからな。
話を戻すとして、国が習得を規制しているのでルーラの民間利用は難しい。
とはいえ規制がなくとも大々的な民間利用は難しかったりする。
なぜならば貨物の輸送にルーラを用いるとして、一度に運べるのは数人前後にプラスして多少の手荷物のみだからだ。
ナンバリング世界のようにルーラと一緒に船が付いてきたりはしない。
なので数十、数百単位でルーラ使いを集めねば大商人や国家の取引規模を満たすことはできないだろう。
更には術者によっては着地が雑になりがちなので、硝子や陶器のような脆い物資は運べない。
そしてキメラの翼は希少であり簡単に購入することが出来ない。
故に、この世界での主な移動手段は陸路なら馬車が、海路なら船が一般的なのだ。
……というのがパプニカにルーラで移動するのではなく船で移動している理由だ。
まずパプニカに行ったことがあってルーラを使える人間がロモス国内にいないんだわ。
まあ、そんな一銭にもならない情報はどうでもよい。
というわけでポップに話しかける。
「ポップ、頼みがあるんだ」
「なんだ?」
「
その魔法の効果は円内の邪悪を祓い清め、外部からの邪悪な力の侵入を阻むというもの。
ポップにはソレを習得して欲しい。
なぜなら後々になって活躍する場面があるからだ。
「そんなの無理だぜ。俺はアバン先生じゃない」
「だけど、魔法玉を触媒にすれば?」
そう言って俺は5つに割られた魔法玉を見せる。
ちなみにコレはロモス王から贈られた魔法のステッキの末路だ。
原作のポップはマジカルブースターを5つに割ることで
ならば同じ条件を整えれば出来るだろう。
「……まあ出来なくはないな」
「じゃあ練習してくれ」
というわけでポップは
まあ彼は天才だから航海中に習得することが出来るだろう。
「精が出ますな」
「ネルソン船長!」
俺達が修行をしていると口髭の似合う気さくな男、ネルソン船長がやってくる。
「みんな船室に来てくれ。パプニカへの航路を説明しよう」
こうして俺達は船室へと向かう。
そして、そこでは世界地図を見せてもらった。
……割とデルムリン島って広いんだな。
いや、世界自体が狭いのか?
「……しかし、なぜパプニカに向かうのかね? 他にも軍事力が高い国はたくさんある。北の大陸マルノーラはともかく中央大陸のギルドメインには豊かな王国が3つもあるんだぞ」
パプニカの軍事力はそこまで高くない。
なにせ周りに外敵がいない島国だから陸軍に金をかけなくてもいいのだ。
三賢者がいる分だけロモスよりはマシとはいえギルドメイン大陸の王国達(テランは除く)には及ばないだろう。
先の大戦では相性が悪いとはいえキラーマシン1つで国が陥落しそうになっていたしな。
時代が異なるとはいえ北の勇者ノヴァがいるリンガイア王国や騎士団長ホルキンスがいるカール王国だったら、そうはいかないだろう。
個人的な軍事力の格付けはリンガイア≧カール>ベンガーナ>パプニカ>ロモス≧オーザム>テランの順だ。
「それはダイのお友達であるお姫様に合う為さ」
ポップの言う通り、俺とレオナはダチ公だ。
だから助けにいく。
しかし、それを聞いた船長の顔は曇った。
「……そうか、だがよりによってパプニカのお姫様とはな」
「なにかマズいんですか?」
「うむ、魔王軍はその軍団をそれぞれの大陸に送り込み侵略を続けとるが……中でもパプニカは最大の激戦区と言われているんだ。聞いたところによるとホルキア大陸は15年前に魔王の拠点があったらしい」
「ハドラー……」
確か旧魔王軍はカール騎士団、ギュータの元住民、サババの荒くれ者、パプニカ軍、アバン先生達の連合軍によって倒されたんだよな。
主要な幹部もガンガディア、キギロ、バルトスと精鋭揃いかつ横の連携も取れており、役割分担も出来ていた。
規模こそ今の魔王軍には劣るが、組織の完成度では遥か上だっただろう。
もしかして大魔王バーンって組織の長としては無能なのでは?
「それゆえかパプニカには魔王軍の中でも最も恐るべき軍団が送り込まれているそうだ……。なんでも不死身の軍隊だとか」
不死身の軍隊、つまりヒュンケル率いる不死騎団だな。
アバン先生が15年前に魔王ハドラーを討伐した後に地底魔城から連れ出した少年。
そして先生の指導を受け、卒業の証である『アバンの印』を貰っていながらも、密かに先生の命を狙っている。
ヒュンケルは何としてでも仲間にしないとな。
アバンの使徒の長兄にして意味不明なくらい不死身だからな、戦力として頼りになるぜ。
だが、どうやって仲間にする?
ヒュンケルを改心させるアイテム『魂の貝殻』を見つかるのは本当に偶然のことだ。
もしかしたらバタフライエフェクトが発生して見つからない可能性もある。
そうなると困るな。
そもそも俺はヒュンケルに勝てるのか?
奴は接近戦で無類の強さを誇る戦士であり、その剣術は俺よりも格上だろう。
なにせアバンの使徒の長兄であるから年季が段違いだ。
おまけに攻撃魔法を無効化する『鎧の魔剣』を装備しているので仲間達の支援はアテにならない。
そして気を付けるべきは必殺技『ブラッディ―スクライド』だな。
あの技の射程距離は魔法に匹敵するだろう。
うーむ、一筋縄ではいかないな。
まあ何とかなるか。
自分の実力を信じて修行を続けよう。
というわけで俺は空裂斬と
ルーラはともかくとして、空裂斬を習得すれば勇者の奥義アバンストラッシュが完成してヒュンケルには必ず勝てるようになるはずだ。
頑張るぞ!
※ルラムーン草
原作ではアバン先生が魔法の砂の材料に使っていた。
※国の強さ順について
リンガイア≧カール>ベンガーナ>パプニカ>ロモス≧オーザム>テラン
ノヴァ抜きのリンガイアはバラン相手に一週間で陥落。
カールは5日間で陥落。
よってリンガイアの方が強いと判断。
ベンガーナはホルキンスやノヴァなどの強者がいないが戦車があるのでリンガイアやカールの次。
パプニカの三賢者はフレイザードにそれなりに評価されていたが、オーザムの最強の騎士が雑魚扱いされていたのでパプニカの方が格上だと判断。
ロモスは正規兵ではないがブロキーナとレイラががいる分だけ少し厄介だろうからオーザムより少し強い。
テランは論外。
※ルーラの表記について
原作では瞬間移動呪文ですが、ルビを振ると違和感が出てしまうので移動呪文にしています。