転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル20 気球船

 俺達は地底魔城があった場所を遠くから眺めていた。

 ヒュンケルの兄者は悲しそうな表情をしている。

 兄者にとって地底魔城とは幼少期に父親(バルトス)と過ごした思い出の場所だからな。

 まあ俺としては不死騎団のモンスターを倒す手間が消えて大助かりなわけだが。

 

「大丈夫ですか、兄者?」

 

「……踏ん切りをつけるには丁度良いだろう。それに、どうせ処刑される身だ」

 

 そう言ってヒュンケルの兄者は前を向く。

 まあ生きて魔王軍と戦って貰うんですけどね。

 

「これから俺達はバダックさんというパプニカの老兵と合流する予定です。ちなみにヒュンケルはパプニカの兵士達に顔は知られていたりします?」

 

「知られていないだろう。王都を陥落させた時は鎧をつけていたからな。軍団長が人間だとは思ってもいないはずだ」

 

「なら変装する必要は無さそうですね。だけど名前は知られている可能性がありますし偽名を名乗って下さい」

 

「ならば好きにつけてくれ。俺にはセンスがない」

 

「じゃあ『ああああ』で」

 

「承知した」

 

「いや、ダメだろ!」

 

 するとポップが異議を唱えた。

 最も著名な勇者の名前の何が悪いんだ?

 

「なら『ユンケル』はどうだ?」

 

「まあ、それならOKだな」

 

 ポップからも許可が出た。

 なんというか滋養強壮に効きそうな名前だな。

 ちなみに名前の由来は『ヒュンケル』から『ヒ』を取っただけだ。

 そして俺達は神殿跡地でバダックさんと合流する。

 

「おお! 不死騎団のアジトがある山が噴火したから心配しておったぞ! ……おや? 1人増えているようじゃが、オヌシは?」

 

「彼はアバンの使徒のユンケルです。地底魔城の牢屋から助け出しました」

 

「なるほど! 4人目のアバンの使徒というわけじゃな! これは頼もしいのう!」

 

 そう言ってバダックさんはユンケルを歓迎する。

 この様子なら他のパプニカ関係者に出会っても大丈夫だろう。

 

「というわけでレオナを助けにいきましょうか!」

 

「じゃが問題は姫様達が一体どこにいるかじゃ。この広いホルキア大陸のどこを探せばよいのやら……」

 

「気長に探すしかないな」

 

「でも、うかうかしてると魔王軍の新たな軍団長がやってくるかもしれないわよ!」

 

 マァムの言う通り、ヒュンケルを倒したということは次の軍団長がやってくる。

 原作通りならフレイザードだな。

 もちろん奴への対策は練ってあるが、その前にレオナと合流しないとな。

 早いとこ助けにいかないと殺されてしまうかもしれない。

 

「とはいえダイくん達も疲弊しているじゃろう。今日の所は休むべきじゃ」

 

 というわけで俺達はバダックさんの隠れ家で休むことにした。

 そして夜が明けた。

 

「……そっ、そうじゃああっ! 神殿じゃ! 神殿に行くのじゃあッ!」

 

 朝っぱらからバダックさんが叫びだす。

 どうやらアレを思い出したようだな。

 そして俺達は言われるがままに神殿跡地へと向かった。

 

「で、神殿に来たはいいんだけどよ、ここに何があるんだ?」

 

 目の前には廃墟と化した神殿が広がっている。

 こんな風になったのはヒュンケルの兄者のせいだ。

 なので非常に申し訳なさそうにしている。

 

「神殿跡地のどこかに、地下倉庫があるんじゃよ」

 

「倉庫の中に何かあるんですか?」

 

「火薬玉じゃ。パプニカでは戦場の合図として信号弾を用いるんじゃよ。火薬玉を見つけ出して撃ち上れば大陸のどこかにいる姫様の目に届くかもしれんじゃろ?」

 

「なぁるほど!」

 

 質問の答えを聞いて、マァムが納得したようにポンと手を叩く。

 その反応を見てバダックさんはニヤリと笑った。

 

「『我れ勝てり』の赤い信号弾を見れば、きっと姫様も安心して姿をお見せになるはずじゃ!」

 

 そして全員で廃墟の探索を始めた。

 とはいえ瓦礫などが大量に存在しており、景観すら完全に変わっている。

 元の姿を知るバダックさんであっても、どこになにがあるか分からないほどだ。

 

「これは大変そうだなぁ……」

 

「ピピィ!」

 

「見つけたのか、ゴメちゃん!」

 

 突如としてゴメちゃんが瓦礫の上をクルクルと回る。

 どうやら、そこにあるようだ。

 彼はスライムだから体が非常に柔らかい。

 なので色んな場所に入り込むことが出来ることが可能。

 それを活かして見つけたのだろう。

 お手柄だな。

 

「確かに、ここにあるわ!」

 

 マァムが件の場所に近寄ると声を上げた。

 確かに瓦礫が折り重なった僅かな隙間の下に地下倉庫への階段が見えている。

 

「でも……ちょっとこれをどかすのは無理そうね」

 

 階段の上には瓦礫の山がある。

 これを撤去していたら日が暮れてしまうだろう。

 ならば、原作通りにやるしかないな。

 

「氷系呪文×アバン流刀殺法……氷結大地斬!」

 

 大岩をも両断する大地斬が魔法によって強化されたのだ。

 瓦礫の山程度なら簡単に塵へと帰ることが出来る。

 もちろん原作と同じように火炎大地斬を使って火薬玉に引火するヘマはしない。

 しかも冷気を伴っているので衝撃で起爆することもないだろう。

 

「おお、魔法剣か! とんでもない技じゃのう! では後は任せておれ!」

 

 というわけでバダックさんは地下倉庫へと入る。

 少し待っていると、やがて彼が手に何かを持ちながら出て来た。

 

「これが、信号弾じゃ」

 

 それは火薬玉と筒であった。

 きっと打ち上げ花火みたいな要領で信号弾を放つのだろう。

 そしてバダックさんは信号弾を撃ちあげた。

 これにより大空に赤い煙が舞う。

 

「みんな……! あれを見てっ!」

 

 俺達がしばらく待機していると、突如としてマァムが空の彼方を指す。

 すると、そこにはパプニカ王家の紋章が刻まれた気球船がこちらに接近してきている。

 どうやらパプニカ軍の関係者が信号弾を見てやってきたらしい。

 

「あれが気球船……初めて見たよ」

 

「そりゃそうじゃ。パプニカにだって1つしかないんじゃからの」

 

 バダックさんは俺の疑問にそう補足してくれる。

 気球船は便利な乗り物なのに何で量産しないんだろう?

 ガスの壷*1のような貴重なアイテムでも使っているのだろうか?

 

 そう思考している間にも気球はどんどんと高度を下げていき、遂には目視で乗っている人間が見えるほどまで近づいた。

 そして、俺達から少しだけ離れた場所にゆっくりと着陸する。

 すると気球船から1人の女性が降りて来た。

 

「「おおっ!」」

 

 女性は長めに伸ばしてある黒髪と額にあるサークレットが輝いており、白い法衣と水色のマントを纏っている。

 しかも途轍もない美人だ。

 俺とポップは思わず声が出てしまった。

 

「エイミ殿ではないか……!」

 

「バダックさん、貴方が打ち上げた信号弾だったのね」

 

「いかにも。それでは紹介しようかの。このお方こそ、パプニカ三賢者の一人、エイミ殿じゃ!」

 

 バダックさんが紹介するとエイミと呼ばれた女性はペコリと俺達に礼をする。

 

「赤い信号弾を確認したから調べに来たの。姫様はアポロとマリン姉さんに任せたわ」

 

「やはり姫様は無事じゃったか!」

 

 これでレオナの生存は確定した。

 負のバタフライエフェクトにより彼女が死んでる可能性もあったから割と心配だったんだよな。

 本当に良かったぜ。

 

「それで、レオナはどこにいるんですか?」

 

「……あなたは?」

 

「俺はダイと申します!」

 

「ダイ!? あ、あなたが! 本当に?」

 

 思いもよらない名前を聞き、エイミさんと周りの兵士は大きく目を見開いた。

 どうやら彼女達もレオナから話を聞いているらしい。

 そして俺が本物かどうか疑われている。

 これはアレの出番だな。

 

「これが証拠です」

 

 そう言って俺はパプニカのナイフをエイミさんへと渡す。

 すると彼女はナイフの宝玉を確認した。

 ちなみにバダックさん曰く、そこにはパプニカの紋章の透かしが入っているらしい。

 形だけ真似たナイフを作るような不届き者がいた場合、この透かしを見れば真贋を判定できるというわけだ。

 前世の紙幣にあった透かし技術のようなものだ。

 

「確かに本物ですね」

 

「うむ! ワシもナイフの真贋はこの目で確認したわい。そして既にパプニカを侵略していた不死騎団はダイくん達によって滅ぼされておる! 赤い信号弾を上げたのもソレを知らせる為じゃ!」

 

 バダックさんがそう言うとエイミさん達は更に驚く。

 まさか不死騎団を滅ぼしたとは思ってもいなかったらしい。

 

「……わかったわ、皆さんをお連れしましょう。姫の待つ、バルジ島へ!」

 

 こうして俺達は気球船へと乗り込む。

 そしてエイミさん達は気球船を動かす準備を始めた。

 

「あら、彼は乗らないのかしら?」

 

 エイミさんの言葉に俺達は後ろを振り返る。

 そこにいたのはヒュンケルの兄者だった。

 彼だけは気球船に乗る素ぶりすら見せずに廃墟の瓦礫に腰かけている。

 

「俺は遠慮しておこう」

 

「どうしたのよ? 一緒に行きましょうよ」

 

「パプニカが奪還されたのであればレオナ姫が身を隠す理由もない。お前達が会いに行けば、ここへ戻ってくるはずだ。それに信号弾と気球船を見て、フレイザードが来るかもしれん。殿(しんがり)は必要だろう」

 

 それは俺としても嬉しい。

 バルジの塔でヒュンケルの兄者がフレイザードと対面すれば不死騎団長であることがバレてしまう。

 そうなったらパプニカ勢が怒りにより仲間割れする危険性がある。

 そして軍団長はソレを見逃す程、甘くはない。

 

 しかも兄者の傷は深いし鎧の魔剣も修復していないからな。

 万が一を想定すると同行しない方が良いはずだ。

 ゆっくりと神殿跡地で休んでいてくれ。

 

 なにより俺達だけでもフレイザードは余裕で倒せるだろう。

 昨日、ポップと打ち合わせをしたからな。

 倒す為の策は既に練ってある。

 

「ただでさえ俺達にはマァムがいるからな。そこにユンケルが加わったら重量オーバーにならぁ」

 

「ポップ……それはどういうこと?」

 

 ポップの冗談を受けてマァムは鬼棍棒の如き凶悪な形相になった。

 その後に起こったことは言うまでもないだろう。

 

 ■□■□■□■□■□■□■

 

「島が見えたぞっ!」

 

 先頭で見張っていたパプニカ兵が声を上げる。

 どうやら目的地付近のようだ。

 なので俺達は気球の先頭部へと向かう。

 

「あれがバルジ島!」

 

「海が渦巻いているわ……」

 

 バルジ島はパプニカ近海にある小さな島1つ。

 そして、その小島のすぐ隣には巨大な渦が発生している。

 その勢いは凄まじく、巻き込まれれば小舟などではすぐに沈没し、例えロモスの聖水船のような大型船であっても油断できないだろう。

 気球船が墜落したら絶対に助からないな。

 

「あれがバルジの大渦よ。あの渦のせいでバルジ島は滅多に人の寄らない場所になっているの。島に行くには凄く遠回りをして渦を避けて行かなきゃならいしね」

 

 なるほど、だから大魔導士マトリフが近くに住んでいるわけだな。

 隠遁するには丁度よい場所というわけだ。

 

「おまけに島にあるのはバルジの塔だけじゃからな。まさかあそこに姫様がおられるとは……」

 

「この気球船があったおかげよ。これを連絡船として塔を拠点に我々は反撃の機会を伺っていたの」

 

 エイミさんがそう言って前方を指さす。

 確かに島の中央に塔が見える。

 

「レオナ……」

 

 バルジの塔を見て俺は気を引き締める。

 原作通りに行けばフレイザードがレオナを襲撃するはず。

 ならば一刻も早く到着する為に、ここは手を打とう。

 

「エイミさん、この気球はもっと急げますか?」

 

「ごめんなさい、それはちょっと難しいわね。風の機嫌にも左右されるから」

 

 当たり前だが気球というのは人の手で操作するのは上昇と下降の垂直移動のみ。

 水平移動の具合は風の速さで決まる。

 だが、それではダメなんだ。

 バタフライエフェクトが発生してレオナがフレイザードに殺されてしまうかもしれない。

 だからこそ……

 

「だったら魔法で風を起こすのはどうですか?」

 

「確かに効果はあるけど……」

 

「なら、少しだけ気球を加速しますね。バギ!」

 

 俺は手加減した真空呪文(バギ)を唱えて風を発生させる。

 それにより気球船は少しだけ加速されて、吊り篭は大きく揺れる。

 これで原作より早く到着できるはずだ。

 ……なんというかTRPGみたいな魔法の使い方だな。

 まあマンチキン(わがままなプレイヤー)として頑張ろう。

 

「どうしたの!? ダイくん!」

 

「お説教は後で! 今だけは許してください!」

 

「後でって……」

 

「見ろ! 何か様子が変じゃぞ!」

 

 バダックさんがバルジの塔を指さすと塔から黒煙が立ち上り始めていた。

 おそらくアレはフレイザードによる攻撃だな。

 本当なら移動呪文(ルーラ)を使ってでも行きたいが、俺の技量では着地に失敗してしまう。

 そして軍団長ほどの猛者はその隙を見逃さないだろう。

 なので今は我慢だ。

 

「もしや……姫の身に何か!?」

 

「ダイくんは、これを見越して急がせたわけね!」

 

「ええ、そうです! だから急いでください!」

 

「分かったわ。難しいかもしれないけど屋上へ降ろして!」

 

 エイミさんは気球船の操縦者に指示を出す。

 塔の屋上は狭いので着陸は難しいだろうが頑張ってくれい。

 こうして俺達はバルジの塔へと急いだ。

 到着するまで死ぬなよ、レオナ!

*1
ドラクエ4で気球を動かすのに必要なアイテム




※ユンケルについて
偽名の元ネタが分かる人は流石にいないでしょう。
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