転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル21 氷炎将軍

「きゃああああっ……!!」

 

「ケケケケッ!」

 

 気球船から見る限り、塔の最上階では今まさにフレイザードがパプニカ三賢者のマリンさんの顔面を左手で掴み、晒し者にするかのように持ち上げていた。

 フレイザードの左半身は高熱を帯びているので彼女の顔は酷い火傷を負ってしまう。

 

「き、貴様……女の顔になんということを!」

 

「女ァ……? 笑わせるな! ここは戦場だ! 殺し合いをする所だぜ! 男も女も関係ねぇ! 強い奴が生きて弱い奴が死ぬんだよ!」

 

 激昂する三賢者筆頭のアポロさんを右足で踏みつけながら、フレイザードは言い放った。

 前世は男女平等が基本の現代日本に住んでいたから奴の気持ちはよく分かるぜ。

 戦う覚悟を決めた以上は傷つくことも死ぬことも誰でも平等に訪れる。

 もちろん、それはフレイザードも例外ではない。

 というわけで奇襲しよう。

 

「海波斬!」

 

 飛ぶ斬撃がフレイザードの右足を切り落とした。

 そして奴は予期せず片足を失ったことでバランスを崩し転倒する。

 ようやく気球船がバルジの塔に到着したぜ。

 

「もう大丈夫! 何故って? 俺が来た!」

 

「テメェは!? 生きてやがったのか!」

 

「……ダイくん! 来てくれたのね!」

 

 近い世界(ジャンプ本誌)勇者(ヒーロー)の名言をサラっとパクリつつ俺はフレイザードに向けて宣言する。

 

「さあ、俺が相手だ!」

 

「ああ!? 逆に返り討ちにしてやるよぉ! マヒャドォ!!」

 

「火炎大地斬!」

 

 フレイザードは氷系呪文(マヒャド)を放ってくる。

 だが、それは火炎呪文で強化された斬撃(大地斬)によって無効化された。

 

「ウオオオッ!」

 

 灼熱の剣閃がフレイザードの脳天を襲う。

 奴は辛うじて氷の右手で防ぐが、代償として右腕は切断されてしまった。

 だがフレイザードは禁呪法によって生み出された生命体であるため欠損した部位の再生も出来る。

 なので腕や足が無くなったくらいでは大したダメージにはならない。

 

「それが魔法剣って奴か! 映像で見た時よりも威力が上がってんなぁ!」

 

 なにせ初級呪文のメラではなく中級呪文のメラミを纏わせているからな。

 俺は今までの激戦を経てレベルアップした。

 故に中級呪文くらいなら使えるようになっている。

 なおライデインは例外だ。

 アレは並みの魔法より難易度が高いからな。

 使うには天候が雨じゃないといけない。

 

 そしてフレイザードはヒュンケルと違って悪魔の目玉から得た情報を共有済みか。

 上昇志向が強いだけあって随分と努力家だな。

 軍団長相手に一度、見せた技を出しても大したダメージにはならないのは知っている。

 つまり奴を倒すには初見の技で屠るしかない。

 

「なら、コイツはどうだ! メ・ラ・ゾー・マ……」

 

 フレイザードは左腕の指を順番に立て、そこに火を灯していく。

 何も知らなければ、それはメラにも満たない小さなチョロ火にしか見えない。

 だが実際には1つ1つがメラゾーマという途轍もなくヤバい技の前準備だ。

 

「ダイくん、避けてぇ!」

 

「遅ぇッ! 五指(フィンガー・)爆炎弾(フレア・ボムズ)!」

 

 5発の火炎呪文(メラゾーマ)が俺に向けて襲い掛かる。

 後ろにはレオナがいるから避けることは出来ないが問題はない。

 俺は鋼鉄の剣を納刀し両手でこう唱える。

 

「ザバラ!」

 

 これは水流呪文(ザバラ)だ。

 炎は水に弱いというのは常識。

 とはいえメラゾーマ5発を相殺するのは流石に無理だ。

 せいぜい無効化できるのは2発が限界だろう。

 なので……

 

「くらいなさい!」

 

「ザバラ!」

 

 仲間に助けてもらう。

 マァムは水流呪文が装填してある魔弾を放ち、ポップには水流呪文(ザバラ)を教えている。

 つまり水の量が3倍になった。

 これによりメラゾーマ5発は完全に鎮火された。

 

「な、なんだとおぉッ!?」

 

 フレイザードはワナワナと震えだす。

 五指(フィンガー・)爆炎弾(フレア・ボムズ)は彼の必殺技の1つ。

 そして魔力(MP)を多大に消費し、寿命すら削りかねない大技でもある。

 まさか無効化されるとは思わなかったのだろう。

 

「さあ、他の皆は負傷者を回復呪文で助けつつ、気球船の中に収容してくれ!」

 

「「「了解!」」」

 

 こうして最上階にいる怪我人は仲間達によって気球船に収容されていく。

 これで周りに気を遣わなくて良くなるはずだ。

 

「さあ、覚悟しろ!」

 

「クッククククッ! グワ~ッハッハッハッ! その首ィ……俺が貰うぜ!」

 

 そう言ってフレイザードは欠損した四肢を復活させ、襲い掛かって来た。

 

「ザバラ!」

 

「グワアアッ!」

 

 水流がフレイザードの体に直撃しダメージを与える。

 フレイザードは氷と炎の半身を持つ。

 故に氷を溶かす為に火炎呪文を撃てば炎が、炎を消す為に氷系呪文を撃てば氷が吸収してしまう。

 つまり半身同士が互いの弱点を打ち消し合っているのだ。

 だが水流呪文なら炎を消しつつ氷でも受けることができない。

 要するに氷炎タイプに水技は効果抜群だ(ポケモン並感)。

 

「クオオオッ! 氷炎爆花散!」

 

「バギ!」

 

 すると追い詰められたフレイザードは自身の体である岩石を全方向に途轍もない速度で射出した。

 それによりバルジの塔の最上階が明るく光り出す。

 もちろん俺は予期していたので真空呪文(バギ)をクッションにして防いだ。

 

「……お前はもう負けだよ」

 

「ああ、氷炎結界呪法か」

 

 氷炎結界呪法、それは炎魔塔と氷魔塔の2つを使ってフレイザード本人以外の戦闘力を5分の1に低下させるという禁呪法の結界だ。

 俺がそのことについて言及するとフレイザードは驚いた顔をする。

 

「なっ! テメェ、なんで知ってやがる!」

 

「敵に教えるわけないだろ」

 

 そう言って俺は懐からアレを取り出して作為的に散らばせる。

 これで塔内に五芒星が出来た。

 

「だが、知っていても防げるものじゃねぇ!」

 

「……と、思うじゃん」

 

「何ッ!?」

 

 既に準備は完了した。

 後は唱えるだけだ。

 頼んだぜ、ポップ。

 

「邪なる威力よ退け! マホカトール!」

 

 事前の打ち合わせ通りポップは破邪呪文(マホカトール)を発動した。

 それによりバルジの塔限定という小さい範囲だが聖なる結界が展開される。

 この結界の効果は円内の邪悪な力を祓い清め、外部からの邪悪な力の侵入を阻むというもの。

 つまり氷炎結界呪法によるデバフという邪悪な力の侵入も阻まれる。

 同じジャンプ漫画である呪術廻戦で例えるなら領域展開に対して簡易領域で中和したようなもんだ。

 結界には結界をぶつけるんだよ!

 

「なにぃっ!?」

 

「これがウチの大魔道士の力だ!」

 

 もちろんポップは魔法使いなので当然、賢者の魔法は使えない。

 つまり、ちゃんとタネがある。

 それは先程、塔の淵に散らばせたアレのおかげだ。

 

 アレとは魔宝玉を5つに砕いた物だ。

 これが触媒になることでポップのレベルであっても破邪呪文(マホカトール)を使うことが出来る。

 まあ原作ポップはロモスで魔法玉の補助ありで使用していたし、パプニカの船旅では習得の為に修行していたからな。

 理論上は出来て当然である。

 

「さあ、氷炎将軍解体ショーの始まりだ!」

 

 そう言って俺は鋼鉄の剣を抜刀する。

 

「海波斬!」

 

 斬撃をフレイザードに喰らわせる。

 これにより炎で出来た左腕は肩口から一気に切断された。

 良い切れ味だな。

 

「クソがっ……!」

 

「ドンドン行くぞ!」

 

 状況的には俺が圧倒的に有利だが決定打に欠けるな。

 空裂斬を習得していないのでフレイザードを殺し切ることができない。

 

「ハァ、ハァ、畜生!」

 

 俺達は何合か撃ち合った。

 現在のフレイザードは息も絶え絶えで追い詰められている。

 炎の左腕は欠損したままだ。

 どうやら消耗しすぎたのか再生すら出来なくなっているようだ。

 さあ、これで終わりだ!

 

「水流大地斬!」

 

 俺はフレイザードの首を刎ねようとした。

 しかし、それは出来なかった。

 なぜならば途轍もなく大きな斧が飛んで来たからだ。

 誰だ!?

 いや、待てよ……この斧はどこかで見覚えがある。

 

「そうはいかんぞ!」

 

 バルジの塔の外、つまりは上空の方から聞き覚えのある声がする。

 おそらくソイツが斧を投擲したんだ。

 俺は声がした方角を向くと、そこにはガルーダに肩を掴まれて飛翔する獣王クロコダインがいる。

 

「助けに来たぞ、フレイザード!」

 

 ……マジかよ。

 発言的にクロコダインは味方ではないな。

 おそらく俺がブラス爺ちゃんを殺した件でドン引きして仲間になっていないと思われる。

 これは非常にマズい。

 彼以外の誰がタンク役になれるんだ。

 

「今だっ!」

 

「うわあああッ!」

 

 すると一瞬の隙をついてフレイザードはポップを氷の右腕で捕らえる。

 しまった!

 クロコダインが味方にならないショックで呆然としていたせいだ。

 

「クカカカカ~ッ!」

 

 フレイザードはポップを氷漬けにする。

 あれは原作でレオナに行っていた禁呪法による凍結。

 そして術者を失ったことでマホカトールの聖なる結界は解除されてしまう。

 これによりバルジの塔に氷炎結界呪法のデバフ効果が流入して俺達の戦闘力は激減する。

 

「助かったぜぇ!」

 

「礼はいらん。共にダイを倒すぞ!」

 

「よしきた!」

 

 これはガチでヤバいな。

 消耗したフレイザードはともかくとして、クロコダインの堅牢な肉体を傷つけるには魔法剣が必要だ。

 だが氷炎結界呪法によって肝心の魔法が使えなくなっている。

 つまり奴らには絶対に勝てない。

 

「マァム、気球船に逃げるぞ! どのみち全滅したらポップも死ぬ。ここは一旦、態勢を立て直す。そして必ず奪還するぞ!」

 

「分かったわ!」

 

 三十六計逃げるに如かず。

 というわけで俺達は気球船に急いで乗り込む

 そして無事に離陸することに成功した。

 

「何とか逃げれたわね」

 

「いや、まだだ!」

 

「炎魔闘のフレイム軍団ッ! そいつらを島から出すなッ!」

 

「カカカカ~ッ!」

 

 フレイザードがそう命令すると大量のフレイムが迫ってきている。

 彼らは全身が炎で出来ている。

 なので接触すれば気球船の球皮は炎上してしまうだろう。

 そうなれば墜落だ。

 

「ヒャダイン!」

 

「「「ギャアアアッ!」」」

 

「みんな! 結界を抜けたから力が戻ったわ!」

 

 エイミさんが氷系呪文(ヒャダイン)を使いながらそう言う。

 だけど、それは相手も同じである。

 

「待てェ! ダイ!」

 

 ガルーダに掴まれた獣王クロコダインが此方に迫りくる。

 空中での機動力は相手の方が圧倒的に上だ。

 しかも氷炎結界呪法によるデバフも無い。

 

「唸れ! 真空の斧よ!」

 

 クロコダインの斧から真空呪文が放たれる。

 弱めの真空呪文なら気球船は加速する。

 しかし、そうじゃないなら気球を傷つけるだけだ。

 つまり……

 

「うわっ! 球皮に穴が開いたぞ!」

 

「このままじゃ大渦に落ちるわ!」

 

「ダメじゃ、どんどん高度が下がっとる!」

 

 パプニカ勢がそう言って焦り始める。

 上には獣王が、下にはバルジの大渦。

 どちらにせよ俺達は全滅してしまう。

 このままじゃマズいな。

 流石にここまで大人数のルーラは成功するか微妙だ。

 

「バギ!」

 

 ということで真空呪文(バギ)を唱えて気球船を吹き飛ばした。

 通常なら気球船を壊してしまうが、既に壊れているなら関係ない。

 これにより俺達は何とか対岸にある砂浜に墜落することに成功した。

 

 そういやキメラの翼を使えば安全に避難できたな。

 とはいえ残り1つしかないアイテムだし気軽に使うのもアレなんだよね。

 まあ助かったからヨシ!

 

「ならば、対岸で戦うのみ!」

 

 もちろん話はそれで終わりではない。

 獣王が此方へと迫ってきている。

 今の俺達はフレイザード戦で疲弊しているから勝てるかは微妙だな。

 

 そう思いながら剣を構えていると、突如として近くの洞窟から閃熱が放たれた。

 そしてソレはガルーダの翼を撃ち抜く。

 これによりクロコダイン達はバランスを崩しバルジの大渦に落下した。

 奴は軍団長なので流石に死にはしないだろうが、足止めになっただろう。

 

 とりあえず何とか助かったな。

 でもフレイザードを倒し切れなかったし、クロコダインが敵のままだし、ポップは人質になるし結果としては大敗北だ。

 まあ命があるだけ幸運だったと思っておこう。

 これが余の武器、どんな時でもポジティブハート。

 

「ダイくん!」

 

 レオナが俺の方へと近づいてくる。

 感動の再会って奴だな。

 何しろ出会ったのは数か月も前なのだから。

 

「ごめん! 魔王軍相手に逃げちゃって……」

 

「大丈夫よ。ダイくんが来てくれなかったら、きっとアタシたちは全滅していたと思う。本当に助かったわ。勇者アバンに助けられた時のフローラ姫はきっとこんな感じだったのね」

 

 レオナは柔らかい微笑みを浮かべながら最大限に礼を言う。

 そこにはパプニカ王家の生き残りである姫としてのカリスマが込められていた。

 

「ところで凍っちゃった子とピンク髪の子はダイくんの仲間かしら?」

 

「ああ、凍ったのが魔法使いのポップで今も無事なのが武闘家のマァムさ。2人ともアバン先生の弟子なんだ」

 

「そうなのね……ポップくんが奪還出来なかったのは残念だわ」

 

 原作と違ってポップが人質になってしまった。

 正直、野郎を助ける為に戦うとか盛り上がらないよね。

 それにレオナよりポップの方が強いから、原作通りの展開の方が良かった。

 

「姉さん! マリン姉さん! 返事をして!」

 

 するとエイミさんが姉であるマリンさんに駆け寄って絶叫する。

 そういえばマリンさんはフレイザードに顔を焼かれていたな。

 

「大丈夫よ、安心しなさい」

 

「姫!」

 

 レオナは姉妹に近づくと、跪いてマリンさんの顔にある火傷跡に手を添えた。

 そして彼女はこう唱える。

 

「ベホマ!」

 

 ベホマは回復呪文の中でも最上級であるので重傷すら一瞬で治癒してしまう。

 なので焼け爛れたマリンさんの顔を元通りの美しい姿へと戻していく。

 レオナはドラクエ世界の王族なだけあって、回復系の魔法なら並みの賢者以上の腕前だ。

 これにより三賢者は原作と違って完全復活を果たした。

 

「ありがとうございます! 姉さんの為にここまでしてくれて!」

 

「なに言ってるのよ。顔は女の命で所。いつも綺麗にしとかなきゃねっ!」

 

 未だ目を覚まさないマリンさんに代わり、エイミさんが深々と頭を下げる。

 だがレオナはそれが当然の事のように振る舞う。

 

「さて、これで全員の治癒が完了したわね。とりあえず私達を助けてくれた閃熱を放った人物の方へと行きましょ!」

 

 そう言ってレオナはガルーダを撃墜した魔法が放たれた洞窟の方を指さす。

 さあ、記憶が正しければそこには彼がいるはずだ。

 何とかして協力を得なければな。

 こうして俺達は洞窟へと向かったのであった。




※転生ダイのステータス
・魔法
火炎呪文(メラ、メラミ)、氷系呪文(ヒャド、ヒャダルコ)
真空呪文(バギ、バギマ)、雷撃呪文(デイン、エビルデイン)
水流呪文(ザバ、ザバラ)、瞬間移動呪文(ルーラ)

・特殊技能
アバン流刀殺法(大地斬、海波斬、アバンストラッシュ)、魔法剣、暗黒闘気

一気にレパートリーが増えた。
どうせ竜闘気を覚えたら上級魔法も使えますしね。
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