転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル22 竜の血

 俺達はバルジ島の対岸にある洞窟へと向かっている。

 そこにクロコダインから助けてくれた人物がいるはずだからだ。

 現に洞窟の中からは照明呪文(レミーラ)による明かりが灯っている。

 つまり誰かが生活しているということだろう。

 

「なんだ!? さっきの連中か。無事に助かったのなら、さっさと帰れ。俺は誰とも関わり合いたくないんでね」

 

「あなたは!?」

 

「んんっ?」

 

 そこには魔術師風の出で立ちをした1人の高齢男性がいた。

 原作と同じ格好と顔だ。

 この人こそが大魔道士マトリフで間違いないだろう。

 

「マトリフおじさん!」

 

 マァムがそう言って反応する。

 そういや彼女はマトリフさんと知り合いだったな。

 

「おおっ! おっ、お前……マァムかっ! 大きくなったなぁ~!」

 

 そう言ってマトリフさんは俺達の所まで走ってくるなり、マァムの胸を揉みしだき始めた。

 彼女の豊かな双丘は若さと相まって瑞々しさとハリがあり、強い弾力で指先を押し返している。

 

「なっ……! なにすんのよっ!!」

 

 突然の事に驚いたマァムがマトリフさんの頭部に殴りかかるが、それは魔法使いらしくない機敏な動きで躱された。

 

「マァム、この変態と知り合いなの?」

 

「そうです、レオナ姫。この人は……」

 

「そうじゃっ! マトリフ! 確か勇者と共に魔王と戦った魔法使いがかつてパプニカ王家に仕えていたという…」

 

 バダックさんがマァムの代わりにマトリフさんの素性を説明する。

 まあ彼は15年以上前からパプニカ王家に仕えていた老兵だからな。

 知っていてもおかしくはあるまい。

 

「大魔道士マトリフ、私も聞き覚えがあります。父が貴方に申し訳ない事をしたと常々申していました」

 

「父ねぇ、という事はアンタは……」

 

「はい。私はパプニカ王国第一王女レオナです。ここでマトリフ殿に会えた幸運に感謝します」

 

 そう言ってレオナは惚れ惚れするような所作でマトリフさんに挨拶をした。

 

「マトリフ殿、力を貸してくれませぬか? 我がパプニカ王国はクロコダインとフレイザードという2人の軍団長に襲われておるんじゃ!」

 

 バダックさんは土下座をして頼み込んだ。

 原作通りなら、これから魔王軍はパプニカに対して総攻撃を行うだろう。

 なのでマトリフさんの協力は是非とも得たい

 しかし彼の答えは1つだ。

 

「……やだ」

 

「なんですと!?」

 

「もう、くだらん王家の手助けなんかごめんだね」

 

「なぜ王家がくだらないの!」

 

「王家だけじゃない。人間はみんなそうさ。魔王軍に襲われている時は一生懸命ごきげんを取って俺達を戦わせた癖に平和になった途端にコロッと掌を返しやがった。俺なんか戦いが終わって国王の相談役になったのはいいけど側近の男どもにイジメられちゃってさ。だから俺は人間に嫌気がさして辺境の洞窟に移り住んだのさ」

 

 やはりマトリフさんは俺達に協力的じゃなかった。

 まあ最近までテムジンやバロンがいた宮廷だし碌でもないことは想像に難くない。

 というかマトリフさんに愛想を尽かされたせいでヒュンケルに王都を滅ぼされたり、テムジン達に娘を殺されそうになったり、後継者がレオナしかいないとかパプニカ王って為政者として無能なのでは?

 

「マトリフ殿。これまでのパプニカ王国の振る舞いを、パプニカ王家を代表して謝罪いたします。どうか、私達に力を貸していただけませんでしょうか」

 

 レオナはマトリフさんに頭を下げた。

 もちろん高貴な身分の謝罪は軽くはない。

 

「謝罪の話はもう、どうでも良いんだよ。別にお前やその親父に、何かされた訳じゃあないんだからな。さっきは気まぐれで助けたが、これ以上は助けない。どうせ力を貸しても危機が去ったら平気な顔で恩を忘れるに決まっているからな」

 

 確かに正論だな。

 人間って奴はどうしようもなく怠惰で臆病な生き物だ

 レブレサック(ドラクエ7に出てくる村。現代の村長がガチクズ)とかが良い例だ。

 なので俺も大魔王を倒した後は迫害されてしまうだろう。

 とはいえ、ここはアバンの使徒として反論しなければならない。

 

「そんなことありませんっ! 自分のことばかり考えている人間が全てじゃない! アバン先生の仲間だった人ならそれが分かるはずです……!」

 

「誰だお前は?」

 

「俺はダイ……アバン先生の最後の弟子です!」

 

「……そうか、アバンの奴も逝ったのか」

 

 そう言ってマトリフさんは悲しそうな表情をする。

 好敵手ガンガディア、戦士ロカ、勇者アバンと気の合う奴らばかり先立たれるのは老体に堪えるだろう。

 まあアバン先生は生きているんだが。

 

「先生は俺達を救うために死にました! だから俺達も先生の死に報いるために魔王軍を倒したい! お願いします! 力を貸してください!」

 

「……やはりダメだ。お前は勇者の目をしていない」

 

 だろうと思ったよ。

 (ダイ)には原作ダイのような正義感も勇気も純朴さもない。

 なにせ前世という異物が混入している最低最悪の親殺しだからな。

 やはり大魔道士は見る目があるな。

 

「だがアバンの知り合いとしての誼だ。少しくらいなら協力してやろう」

 

 なんだかんだでアバン先生の仲間なだけあって優しいな。

 ということで俺達は今までの事情を説明する。

 もちろんヒュンケルの兄者も重要な戦力なので移動呪文(ルーラ)を使い隠れ家へと連れて来た。

 ちなみにポップが人質にされたので罪の告白は後になる。

 

「……ふむ、そいつぁ伝説の禁呪法だな。使うと術者の間じゃ外道扱いされちまう呪文さ」

 

「どうすればよいのですか?」

 

「結界の外から回っていって要石の代わりになっている2本の塔を破壊する以外にないな。その為には爆弾が必要だ。材料はその辺に転がってるから適当に使ってやってくれ」

 

 つまり原作通りバルジ島で魔王軍と戦わないといけないわけだ。

 だが俺にはクロコダインとポップがいない。

 割と絶望的な気がする。

 こうなったらアレを使うしかないな。

 今のタイミングなら出来るはずだ。

 

「マトリフさん、俺に火竜変化呪文(ドラゴラム)をかけてください」

 

 ドラゴラム系統の魔導書はガンガディアからマトリフさんを経由することでアバン先生の手に渡った。

 つまりマトリフさんなら使えても不思議ではない。

 

「確かに使えるがソレで何をするつもりだ?」

 

「俺は(ドラゴン)の騎士です」

 

「……ほう、アバンも大した存在を弟子に取ったな」

 

「そして伝説の竜の血を飲んだ人間は強靭な力を得ると言われています。そして(ドラゴン)の騎士は伝説の竜でもあります」

 

 古の時代、天界の神々は地上の覇権を賭けて抗争を繰り広げる竜族と魔族と人族の3種族を疎ましく思った。

 そこで竜、魔、人の神は究極の裁定者を生み出して地上に降臨させた。

 竜族の戦力、魔族の魔力、人族の心力を持つ最強の生物兵器、それこそが(ドラゴン)の騎士だ。

 

 人族の心を持った裁定者とか人族に有利な判定ばかり下しそう。

 現に魔族と竜族は地の底にある魔界に押し込められているし。

 よく竜と魔の神はそれを許容したよな。

 もしかしたら人の神が交渉上手だったとか?

 

 話を戻すとして、(ドラゴン)の騎士は神々が作り出した竜の因子持ち。

 実質的に伝説の竜でもある。

 なので、その血を飲めば強靭な力を得ることが出来る。

 

「つまり仲間に俺の血を飲ませて強化します」

 

「なら、お前の血をそのまま仲間に与えれば済む話じゃねぇか。なぜドラゴラムを使う必要がある?」

 

「俺は人族と(ドラゴン)の騎士のハーフなので竜の因子が薄くて普通に血を与えても他者を強化できません。なのでドラゴラムで竜の因子を濃くします」

 

 要するに火竜変化呪文(ドラゴラム)で伝説の竜に変化するということだ。

 そうすれば俺の血で仲間達を強化することが出来るかもしれない。

 まあゲームのグリッチのようなもんだな。

 ちなみに、これはアバン先生の提案だ。

 大魔王が警戒する叡智の持ち主だけあって目の付け所が違うな。

 

「……考えたな、なら早速やろうか」

 

 というわけで俺達は洞窟の外にある砂浜へと移動する。

 

「じゃあ、やるぞ。ド・ラ・ゴ・ラ・ム!

 

 そう言ってマトリフさんは火竜変化呪文(ドラゴラム)を俺に使った。

 すると視界がグングンと高くなる。

 しばらくすると俺の肉体は赤い鱗を持った巨大な飛竜へと変貌していた。

 

「それでは竜の血を出しますね」

 

 俺はリストカットをして手首から青い血を流す。

 そして流れた血はパプニカ兵が用意した大きな杯に注ぎ込まれる。

 

「飲んでください!」

 

 というわけでマァムとヒュンケル*1とゴメちゃんはもちろん、レオナ、三賢者、バダックさん、パプニカ兵の皆さんも俺の血を飲む。

 これで彼らは強くなったはずだ。

 

「ピピィ!」

 

 血を飲んだゴメちゃんが声を上げると彼の体が一回りほど巨大化した。

 おそらく竜の血によって強化された証だろう。

 効果があって何よりである。

 

「マトリフさんも飲みませんか? 長生きできるかもしれませんよ」

 

「バカいえ、十分長生きしたさ」

 

 マトリフさんに竜の血を飲むように進めたら断られた。

 まあ彼はそのままでも十分に強いから大丈夫だろう。

 それにバルジ島の戦いには参戦しないしね。

 

「アバンの使徒のガキども―ッ!」

 

 するとフレイザードの声が砂浜に響き渡る。

 だが奴の邪悪な気配は感じない。

 どうやら悪魔の目玉を経由して声を伝えてきているようだ。

 

「テメェら、まさか仲間が凍らされたまま無事だと思ってるんじゃねぇだろうな。残念だが氷の中でドンドン生命力は失われてんだぜ。もって明日の日没までだっ!」

 

 これは明らかな挑発だ。

 おそらく魔王軍全軍(バラン父ちゃんを除く)で待ち伏せをしているのだろうな。

 望むところだ。

 絶対にポップを助けるぞ。

 

 なにせ彼は将来的に極大消滅呪文(メドローア)の使い手になるんだからな。

 死んでもらっては困る。

 これが、もし氷漬けになったのがアポロさん当たりだったら見捨ててたな。

 ……いや、流石にアバンの使徒として助けないとダメか。

 

「マァム、ユンケルの兄者、助けに行くぞ」

 

「ええ!」

 

「当たり前だ」

 

「もちろんパプニカ王家も協力するわ! 今度は私達がダイくんを助ける番よ!」

 

「ありがとう、レオナ!」

 

 こうして俺達は洞窟の中で作戦会議をすることにした。

 

「バダックさん、塔を破壊する爆弾は作れましたか?」

 

「うむ! 神殿の地下倉庫に残っていた信号弾の火薬を転用したから製造は簡単じゃった。腐るほどあるわい!」

 

 確か原作では2発だけだったよな。

 信号弾を全部起爆させなかった恩恵がこんなところで発揮されるとは。

 ちなみに火薬は兄者を回収するついでに入手しておいた。

 

「でも、どうやって上陸するんです? 気球船は壊れてしまったし……」

 

「安心しろ。俺が魚釣りに使っている小舟がある。ソイツを岸からルーラの応用で飛ばしてやる。海面スレスレでな」

 

「お……大渦の上を!?」

 

「そうだ、だが舟は4人しか乗れん」

 

 小舟は4人乗りか。

 それだけあれば十分だ。

 というか1人乗りでも構わない。

 なぜなら俺にはアレがあるからな。

 

「人数問題は大丈夫です。魔法の筒がありますから」

 

 作戦会議直前に俺はキメラの翼でデルムリン島に向かい魔法の筒を回収したのだ。

 コイツは質量を無視して生物を収容できるので、理論上は小舟に100人乗っても大丈夫である。

 イナバ物置もビックリだな。

 

「本当に用意の良い奴だな」

 

「というわけで俺とマァムとヒュンケル、そして三賢者でバルジ島に向かいましょう」

 

「もちろんワシも行くぞい! 爆弾の製作者がいた方が何かと便利じゃろう!」

 

「あたしだけ仲間外れは許さないわよ!」

 

 するとバダックさんとレオナが自分も行くと言い出した。

 まあ人数制限はないから彼らも連れて行くとしよう。

 

 つまり味方側の主な戦力は俺、マァム、ヒュンケルの兄者、レオナ、ゴメちゃん、バダックさん、エイミさん、アポロさん、マリンさんの合計8名と1匹だ。

 もちろん、その他のパプニカ兵も連れて行く。

 彼らも竜の血で強化されているので弾避けくらいにはなるだろう。

 

 対して敵側は原作通りなら炎魔塔にミストバーンとザボエラ、氷魔塔にハドラー、そしてバルジの塔にフレイザードがいるはずだ。

 もちろんクロコダインもいずれかの塔にいると思われる。

 まあ戦力の偏り的に氷魔塔にいる可能性が高いな。

 

 ぶっちゃけ正面からは勝てないだろう。

 だが魔王軍は戦力を分散している。

 なので各個撃破してしまえばいい。

 

「チーム分けはどうしましょうか?」

 

「アバンの使徒組が氷魔塔、パプニカ組が炎魔塔でいいと思う。顔馴染みの方が連携しやすいはず」

 

 炎魔塔にいるザボエラとミストバーンは本気を出すことはないだろう。

 ぶっちゃけパプニカ組が総力を挙げれば何とかなるはずだ。

 

 逆に氷魔塔はハドラーとクロコダインという本気を出す奴らしかいない可能性が高い。

 なので実力があるアバンの使徒組が少数精鋭で対処を行う必要がある。

 それにハドラーの極大呪文を受けきれるのは鎧の魔剣で魔法を無効化できるヒュンケルの兄者だけだ。

 

「でもパプニカ組の前衛戦力が不足しているんじゃない?」

 

「大丈夫じゃ! ワシがおる!」

 

 バダックさんは胸を張ってマァムの疑問に答えた。

 実際、彼には前衛を任せることが出来る。

 

「ダイくんからキラーマシンが入った魔法の筒を貰ったからの。これを操って戦うわい!」

 

 ミストバーンを相手するのは厳しいがザボエラ相手なら有利に戦えるだろう。

 なにせキラーマシンの装甲は大半の魔法を無効化するので相性が良い。

 それに人数が多いのはパプニカ組の方なんだし、いざとなったら人海戦術で何とかなるはずだ。

 

「ピピィ!」

 

「自分はどうすればいいって? そうだな……パプニカ組についてやってくれ」

 

「ピピッ!」

 

 ゴメちゃんはパプニカ組に同行させる

 いざとなったら神の涙による奇跡で盤面をひっくり返せるからな。

 つまり最終保険ユニットである。

 

「これで作戦会議は終わりね。各自、準備してちょうだい!」

 

 レオナが作戦会議の終わりを告げる。

 さてと、勝てるかな?

 今の俺にはポップもクロコダインもいないので状況は絶望的だろう。

 だけど負ける気はしない。

 アントニオ猪木曰く、『出る前に負けること考えるバカいるかよ』だ。

 絶対に勝ってやる。

*1
ルーラで連れてきた。




ダイは人の血が濃いから他者を強化できない?
それならドラゴラムで竜要素を盛ればいいじゃない。
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