転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル25 勝利の宴

「斬った……! 手ごたえあり……!」

 

 そう言って俺は剣を静かに納刀する。

 同時に宙に浮かぶ小さなフレイザードの核が小さな音を立てて割れた。

 ちょうど幻惑呪文(マヌーサ)の効果も切れたので間違いないだろう。

 

「グワアァァァッ! や、やべえ! 左右の身体が維持できなくなってきやがった!」

 

 フレイザードは悶え苦しみだすと、氷と炎の半身が分離する。

 

「今よ!」

 

 マァムは閃熱呪文の魔弾をフレイザードの氷部分に命中させると、凄まじい蒸気を発しながらソレは消滅した。

 残るは炎の半身だけだな。

 

「ハドラー様ァ! 助けてくれぇ!」

 

 フレイザードが助けを求めるが、そのハドラーはヒュンケルとの死闘で忙しいようで返事をすることはない。

 

「これでトドメだ! ザバラ!」

 

「ギャアアアアッ!」

 

 こうしてフレイザードは完璧に退場した。

 魔炎気にしてキラーマシンを操らせるのも悪くないと思ったんだけど、流石に信用できないからな。

 これがハッスルダンスを使える個体だったら話は別だった。

 

「ハドラー、残るはアンタだけだ!」

 

「おのれぇ、負けるとは役立たずめぇ!」

 

 その光景を見ていたハドラーは怒りを露わにする。

 これで3対1なわけだが油断してはいけない。

 コイツはここから捲ってくるほどの強さがあるからな。

 特に極大呪文を底なしのMPで放ってくるので、魔法無効のヒュンケルの兄者が倒れたら形勢は逆転してしまうだろう。

 つまり、この戦いは如何に兄者を補助するかで決まる。

 

「まあ、良いわ。味方を巻き込む心配も無くなった! 仲良く焼け死ぬが良い!」

 

 ハドラーの両手から発せられた熱エネルギーがアーチを描く。

 あの構えはマズい!

 魔法を無効化する兄者ならまだしも俺達は丸焦げになってしまう。

 

「ベ・ギ・ラ・ゴ・ン!」

 

 極大閃熱呪文(ベギラゴン)が俺達に迫りくる。

 マァムは移動呪文(ルーラ)の魔弾を自らに撃って退避済みだ。

 魔弾の目的地は全てバルジの塔に設定してあるので彼女はこれで戦線離脱だろうな。

 とはいえ死ぬよりはマシだ。

 

「ザバラ!」

 

 俺は両手から水流(ザバラ)を放出、つまり回避ではなく迎撃を選択した。

 なぜなら移動呪文(ルーラ)で逃げるとヒュンケルが1人になってしまうからな。

 そして極大の閃熱が体を包み込む。

 如何に水流呪文が閃熱呪文に相性が良いとはいえ、魔法の格が違い過ぎる。

 

「ダイ! 大丈夫か!?」

 

「ハァ……ハァ……! 爺ちゃんのゲンコツよりは痛くないな」

 

「クックックッ! 強がりを。俺の極大呪文を受けていて生き残るのは流石だが最早戦うことはできまい」

 

 確かに今にもダウンしてしまいそうだ。

 なので俺は手の甲をパプニカのナイフで貫いた。

 痛みで目が冴えたので、もう少しだけ戦える。

 

「極大呪文だけは絶対に撃たせんぞ!」

 

 そう言ってヒュンケルはハドラーにインファイトを仕掛ける。

 こうすれば極大呪文は使えないだろう。

 だけど、それは地獄の爪(ヘルズ・クロ―)に被弾しやすくなってしまう。

 もちろん俺の体力(HP)で斬った張ったは出来ない。

 ならば魔法で援護だ。

 ヒュンケルは鎧の魔剣を装備しているので巻き込んでも問題はない。

 

「ヒャダルコ!」

 

「死に損ないがッ!」

 

 遠距離からチクチクと攻撃を加える。

 本当は得意系統にして回復阻害もできるエビルデインを撃ちたいんだけど、それをやるとヒュンケルの兄者がダメージを受けるからな。

 こうして俺達は順調にハドラーを追い詰めていく。

 まあ原作の時点で兄者はハドラーとほぼ互角の勝負をしていたから、そこに竜の血による強化と俺の援護が加われば状況が良くなるのは当然だろう。

 

「オオオオッ!」

 

 するとハドラーは悪い笑みを浮かべながら捨て身の攻撃を仕掛けた。

 それを見たヒュンケルも見得を切るように剣を構えた。

 

「ブラッディースクライドッ!」

 

 爪と剣の頂上決戦はリーチの差もありヒュンケルの勝利に終わった。

 これによりハドラーの心臓の1つが貫かれる。

 

「ウウッ……お、おのれヒュンケル!」

 

 そう捨て台詞を吐いてハドラーは倒れた。

 ハドラーの心臓が2つある、つまり俺達の油断を誘う為に敢えて心臓を貫かせたのだろう。

 

「狸寝入りもそこまでにしたらどうだ?」

 

「なにっ!? なぜ俺が死んでいないと確信できた!」

 

「教えるとでも?」

 

 もちろんハドラーの心臓が2つあるという情報はヒュンケルにも共有済みなので奇襲は不発に終わる。

 流石の魔軍司令も心臓を失った状態では運動機能が低下するはず

 つまり戦況は益々、此方側が有利になったな。

 

「さあ、これ終わりだ」

 

 そう言ってヒュンケルは手にした剣を兜に戻し両手を交差させる。

 すると途轍もない程のエネルギーが彼の額に集中していく。

 ならば俺も出し惜しみ無しで行こうか。

 今の状態でもギリギリ一発くらいは放てるはずだし。

 というわけで剣を逆手に構えた。

 

「グランド……」

 

「アバン……」

 

「い、いかんッ!」

 

 ハドラーは回避しようとしているが俺の技はともかく広範囲を攻撃するヒュンケルの攻撃から逃れる事は出来ないだろう。

 しかも相手は心臓が潰れて身体機能も落ちているし、キメラの翼は使い切っているので緊急離脱することも出来ない。

 今までの戦いが確実に背中を押しているな。

 

「クルス!」

 

「ストラッシュ!」

 

 次の瞬間、途轍もない光が辺りを覆った。

 原作での起死回生グランドクルスと違って、状況は俺達が非常に有利なので威力は控えめにしてくれたはず。

 なのでハドラーの体内にある黒の核晶が誘爆することもないだろう。

 そして光は徐々に収まっていき、目の前には青い血を流すハドラーがいた。

 

「み……見事だ! 貴様らこそ……真の戦士!」

 

 そう言い残してハドラーは倒れる。

 これで氷魔塔を守っていた猛者達は全て倒したな。

 というわけで赤い信号弾を打ち上げて勝利を伝えよう。

 

剣化(アンアムド)! それにしても、なんとか勝てたな」

 

「流石にフレイザードまでいた時はビビったけどね」

 

「しかし、なぜハドラーの心臓が2つあることを知っていたんだ?」

 

「……今は言えない」

 

 周りに何がいるか分からないからな。

 もしかしたら悪魔の目玉が盗み聞きしているかもしれない。

 迂闊に原作知識を話すわけにはいかないのだ。

 そして俺達はボロボロの身体を引きずりながらバルジの塔に到着する。

 するとそこには彼がいた。

 

「よお、ダイ!」

 

「ポップ姫!」

 

 元気そうな姿のポップがいた。

 近くにはパプニカ組とマァムがいる。

 どうやら先に彼らが塔に到着して禁呪法の氷を溶かしていたようだ。

 ちなみにバルジ島には大量の魔法使いがいるから原作のように氷を溶かすのに苦労する展開にはならない。

 つまり魔弾銃くんは生存ルートだ。

 まだまだ使い倒してやるからな。

 

「姫ってなんだよ!」

 

「魔王軍に囚われるとかレオナ以上に姫だろ」

 

「ちょっとダイくん! 聞き捨てならないわよ!」

 

 すると、じゃれあいにレオナが参戦する。

 そして周りからは笑い声が飛び出す。

 とりあえず、一件落着だな。

 

 ■□■□■□■□■□■□■

 

 俺達はバルジ島で魔王軍の総攻撃を退け、氷炎将軍フレイザードと魔軍司令ハドラーを撃破した。

 それを記念してパプニカ王家の者達は神殿の跡地で勝利の宴を開かんとしていた。

 とはいえ王都が壊滅している状態なので規模はささやかではあるが。

 だが魔王軍に勝利したことによって人々の顔には確実に希望が戻っていた。

 

「しかし、よく生き残れたもんだな。魔王軍の集中攻撃からよ……」

 

「マトリフさんのおかげですよ」

 

 竜の血による強化が無ければ俺達は普通に負けていただろう。

 それほどまでに戦いはギリギリだった。

 本当にポップとクロコダイン無しでよく勝利できたもんだ。

 

「おーい! ダイ!」

 

「ポップか、その後の体調はどうだい?」

 

「元気だぜ!」

 

 どうやら後遺症とかもない様子だ。

 本当に良かった。

 

「ふーん、アイツがポップか」

 

「見どころありそうだろ」

 

「いんや逆だ。あんな弱そうな魔法使いは初めて見るぜ」

 

 何という辛辣な評価だ。

 確かに魔王軍総攻撃時に囚われていたので、原作のように閃熱呪文(ベギラマ)を習得していないんだよな。

 まあポップは追い詰められるほどに味が出てくるから。

 これからに期待ってヤツだ。

 

「……アイツ、俺に預けんか?」

 

「ええ、お願いします」

 

「アレ!? おれの意思は!?」

 

 ということでポップの出荷が決まった。

 

「おおっ! ひ、姫っ……!」

 

「レオナ姫!」

 

 すると俺の耳にレオナの登場に沸くパプニカ関係者の声が届いた。

 そしてレオナがアポロさんとバダックさんを伴いながら宴の中心へと向かう。

 これから彼女は皆に向けてスピーチをするのだ。

 

「みんな……本当によく戦ってくれました。特にダイくん達、アバンの使徒の皆さんにはお礼の言葉もありません。アバン殿に勇者の家庭教師をお願いした亡き父の目に狂いは無かった」

 

 亡き父、つまりパプニカ王は原作通りヒュンケル率いる不死騎団によって殺されている。

 可能なら助けたかったな。

 まあ恨むならマトリフさんの迫害を止めれなかった自分の政治力を恨んでくれい。

 それはともかくとして俺の出番だ。

 なのでレオナの前で跪き(こうべ)を垂れる。

 

「アバンの使徒ダイ、危急に際し我が師アバンより託された使命とレオナ殿下への友誼をもって馳せ参じました。殿下が無事であったがことが何物にも代え難き誉にございます」

 

 完璧に決まったな。

 俺の言葉に会場からは拍手と歓声が沸き上がる。

 月明かりに照らされた姫と英雄の姿は間違いなく歴史の1ページに刻まれるだろう。

 後世の人間は俺のことをどう評価するだろうか?

 

「ダイくんったら、かっこつけちゃって! ポップくんの方が姫に相応しいと言ったことは忘れてないわよ!」

 

「そりゃないよ、レオナァ……」

 

「もちろん冗談よ」

 

 俺達のやり取りを受けて笑い声が巻き起こる。

 この歴史は後で焚書しておかないとな。

 暗黒闘気で性格が悪くなっているから独裁者ムーブも普通にやるぞ。

 

「パプニカ王国、魔王軍の手によって一度滅ぼされました。ですが、勇者ダイとその仲間たちの手によって取り戻すことが出来ました。よってここにレオナの名の下に王国の復興を宣言します!」

 

 レオナの言葉に一同は色めきだつ。

 当たり前だが宣言だけで国は復興しない。

 だが、こういうのは公に行うことが大事なのである。

 公的に復興を宣言することにより、臣民達は安心して祖国に戻ってくるだろうし、パプニカ関係者の心にも変化をもたらす。

 現にバダックさんはレオナのスピーチを見て涙を流している。

 

 さぞかし辛かったのだろうな。

 15年前は国内に旧魔王軍の本拠地があったり、現在は不死騎団によって国を滅ぼされるなどパプニカは苦難の歴史が続いている。

 それを体験してきた老兵の涙は重い。

 

「さて、堅苦しいのはここまでよ。それじゃあ、乾杯~ッ!」

 

「「「乾杯ッ!!!」」」

 

 レオナの挨拶に続き、皆がグラスを合わせ乾杯と唱和する。

 すると宴会場に集った関係者達の間に弛緩した空気が漂う。

 ここにはバルジの塔に集っていた兵だけではなく、バダックさんのように散り散りになってパプニカ近郊で息を潜めていた兵達も集まっていた。

 皆、涙を流して互いの無事を確認し合いグラスを傾けている。

 

 もちろん俺もグラスに満たされたワインを軽く口に含んでいる。

 思いっきり未成年飲酒であるが、この世界は日本じゃないので合法だ。

 それに今日は無礼講だしね。

 

「意外にも地下倉庫に酒が多く残っていましたな」

 

「まあアンデッド共に酒の味は分かりますまい」

 

「全くですな」

 

 兵士達の雑談を聞きながらワインを舌で転がす。

 うん、12年ぶりのワインは芳醇な香りと味で途轍もなく美味しい。

 勝利の美酒とはこのことだな。

 パプニカは南方の位置する国なので温暖な気候だ。

 なので原料となるブドウが美味しく育っている。

 それだけでなく酒のツマミも中々にいけるな。

 パプニカの王都は海に面しているからか新鮮な海の幸が豊富だ。

 ロモスの宴で提供された山の幸とも違った味わいである。

 

「ダイ……」

 

 ヒュンケルの兄者が俺に話しかける。

 さてと、例の件を片付けないといけないな。

 

「レオナ、ちょっといいかな?」

 

「あら、ダイくん。ユンケルを連れてどうしたの?」

 

 俺は彼女に声をかけた。

 もちろん用件は1つだ。

 

「ちょっと真面目話をするね」

 

 そう宣言するとレオナは態度を改めた。

 主君の纏う雰囲気が変わると臣下達もソレに追随する。

 周囲に静寂が漂い始めた。

 

「実はユンケルは……」

 

「ダイ、オレから話すべきだろう」

 

 ユンケル、いやヒュンケルの兄者は俺の言葉を遮り、前に出てくる。

 

「レオナ姫。ユンケルというのは偽名だ。本当の名は、ヒュンケル。この国を滅ぼした魔王軍の不死騎団長だ」

 

 それを聞いた宴の参加者達は驚愕の声を上げる。

 

「例え、どんな償いをしたとしてもオレの罪は拭いようがない。その罰だけは受けねばならん。……幸いにもダイ達の力になることが出来た。もはや思い残すことは無い」

 

 そう言って兄者は片膝をつき魔剣をレオナに差し出した。

 

「レオナ姫……貴方の手で俺を裁いてくれ! この場で切り捨てられてもオレは構わん」

 

 そして俺はその言葉に続く形で口を開く。

 

「ヒュンケルの兄者に偽名を名乗らせていたのは俺の提案だ。魔王軍の総攻撃が終わるまで事実を隠蔽した方が混乱を招かずに済むと思ったからそうした。レオナ、裁くなら俺も裁いてくれ」

 

 一応、俺にも責任があるので裁かれておくべきだろう。

 するとレオナは清らかな目で俺達を見つめる。

 

「……まずはダイくん。緊急時のことだったので今回の件は不問に処します。そしてヒュンケル。望み通り、このパプニカの王女レオナが判決を下します」

 

 俺達は頭を下げた姿勢のまま、静かにその言葉を聞いていた。

 

「貴方には残された人生のすべてをアバンの使徒として生きることを命じます……!」

 

 それを聞いたヒュンケルの兄者は目を大きく見開いた。

 

「友情と正義と愛の為に己の生命をかけて戦いなさい。そして無暗に自分を卑下したり過去に囚われ歩みを止めたりすることを禁じます……以上! いかがかしら?」

 

「承知しました……!」

 

 兄者の眼から涙が零れ、周囲からは拍手が巻き起こった。

 俺だったら絶対に殺していたな。

 なにせ親を殺され故郷を滅茶苦茶にされたんだぞ。

 だからこそレオナは立派だ。

 

 こうしてヒュンケルの兄者は正式に仲間になった。




※ヒュンケルが偽名がユンケルなこと
忘れている読者は多いと思います。
実際、私も忘れかけていました。
まあフレーバー設定です。
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