転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル26 ゆうべはお楽しみでしたね

 宴は順調に盛り上がっていく。

 するとバダックさんが何やら荷物を会場の中心に置いた。

 なんだろうか?

 

「バダックさん、それは?」

 

「銀の竪琴じゃ。地下倉庫に隅に転がっておったからの。せっかくの勝利の宴じゃ。音楽が無いと寂しいじゃろう?」

 

 確かに、こういう場面で音楽を奏でるのはとても良い。

 なにせ一体感が出るからな。

 どうやら宴会にはミュージックが必要なのは前世も今世も同じのようだ。

 

 それにしても銀の竪琴か。

 原作の原作ではモンスターを呼び寄せる効果があったはず。

 本当に演奏しても大丈夫なのか?

 まあいいや、モンスターが来ても撃退すればいいし。

 というわけで俺は竪琴へと近づいた。

 

「演奏しますか!」

 

「おお! ダイくんは竪琴を使えるのか!」

 

「ええ、故郷の島に竪琴があったので」

 

 旧魔王軍の兵士育成施設であるはずのデルムリン島には割と楽器がある。

 前世でも自衛隊音楽隊とかが有名だったように兵の士気を上げるには音楽がつきものだからな。

 それに『軍政に曰く、言うとも相聞こえず、故に金鼓を(つく)る』*1と孫子にも書いてある。

 つまり軍隊と音楽は密接な関係があるのだ。

 

 そして俺は音楽隊に所属していたモンスター達から楽器の扱いを習った。

 というかデルムリン島は辺境の孤島なので娯楽が音楽と勇者ゴッコくらいしかない。

 娯楽のリソースは全てそれらに費やされたので腕前はかなりのものだと思う。

 それに前世は吹奏楽部だったしな。

 

「なら、お任せしようかの」

 

「分かりました」

 

 しかし、問題は選曲だ。

 何にしよう?

 モンスターから習ったのは旧魔王軍の音楽だ。

 そしてパプニカ王国は15年前にその旧魔王軍と戦った。

 つまり敵の音楽なので勝利の宴には似合わないだろう。

 

 うーん……。

 俺が知っていて旧魔王軍と関係ない曲かぁ。

 そうだ!

 せっかくなら前世の曲を表現しようか。

 俺は、ゆっくりと竪琴の弦をはじき始めた。

 

「~~~~~♪ ~~~~~~♪」

 

 曲を演奏すると、この場の皆の視線が俺に集中する。

 流石にソロで演奏するのは緊張するな。

 しかも、この世界の皆は初めて聴く曲だろうし。

 

 俺が奏でている曲は『序曲』だ。

 要するにドラクエのタイトル画面で流れるオープニングテーマ、つまり最も有名なドラクエの音楽だろう。

 実質、国歌斉唱である。

 まさかドラクエ世界でドラクエの曲を奏でることになるとは……人生とは分からないものである。

 そして俺は奏で終わった。

 

「ピピィ!」

「アンコール! アンコール!」

「もう一度、やってくれぇ!」

 

 会場からはアンコールの言葉が聞こえてくる。

 ドラクエを創り出した偉大なる創造神の曲なだけあって皆も大盛り上がりである。

 じゃあ、リクエストに応えますかね。

 というわけで俺は『序曲』のアンコールから初めて、『木洩れ日の中で』『おおぞらをとぶ』『遥かなる旅路』『勇者の挑戦』『敢然と立ち向かう』等々、ドラクエの神曲達を演奏した。

 ドラクエは歴史があるだけに音楽のバリエーションも豊富だ。

 

 静かな夜空に、大勢の人々の思いを乗せたメロディーが染みこんでいく。

 ……前世への郷愁を感じていたのは俺だけなのだろうな。

 

「いやー、さっきのダイくんの曲は実に良かったの~! なんというか神々が作ったような曲調じゃったわい。初めて聴く曲じゃったが、あれはデルムリン島のモンスター達の曲かの?」

 

「いえ、島に偶然にも流れ着いた楽譜から習得しました」

 

 演奏を終えた俺はバダックさん達と一緒に酒を酌み交わしている。

 もちろん前世のことは話さない。

 なぜならば大魔王バーンに原作知識を持っている事がバレてしまえば戦略を変えてくるかもしれないからだ。

 何処から情報が漏れるか分からないからな。

 

 それに、ただでさえ(ドラゴン)の騎士という人外なのに転生者であることがバレたら気味悪がられるかもしれない。

 もちろん彼らがそんな対応をする人間ではないことは分かっているが万が一が怖い。

 俺は勇者とは程遠い臆病な性格だ。

 

「ふぅ……」

 

 演奏会もひと段落したので俺は会場の外で休むことにした。

 そして、そこにはヒュンケルの兄者もいた。

 どうやら原作通り旅に出るつもりのようだな。

 

「兄者、どこへ向かうんです?」

 

「俺は魔王軍の本拠地、鬼岩城に向かう」

 

「敵の動向を探る為ですか。だけど、その必要は無いですよ」

 

「……どうしてだ?」

 

「鬼岩城は既に移動しているはずなので」

 

「城が移動だと!?」

 

 鬼岩城は魔王軍の移動要塞、つまりは城自体が巨大なゴーレムなのだ。

 そして、その情報はミストバーンやキルバーン等の腹心しか知らない。

 

「だから追跡しても意味はないです。それよりはパプニカを守って欲しいかなって」

 

「了解した。にわかには信じ難いが、お前はハドラーの心臓が2つある事を言い当てたからな」

 

 半信半疑ながらもヒュンケルの兄者はパプニカに留まることを了承する。

 原作での彼はバラン父ちゃん戦の時にナイスタイミングで俺達を助けに来てくれたが、この世界では上手くいくとは限らない。

 つまりバタフライエフェクトを警戒しているのだ。

 ということで移動呪文(ルーラ)で直ぐに召集できるパプニカにいて欲しい。

 

「じゃあ、そういうことで!」

 

 そう言って俺は会場へと戻った。

 これでミッションコンプリートである。

 

「ひ、姫……大丈夫ですか? かなり酔っているみたいですけど」

 

「らぁいじょーぶよ。ワインなんてお酒のうちに入らないわ。……それにね! 姫じゃなくレオナって呼んでよね。さもないと貴方の事をマァムさんって呼ぶわよ! キャハハハッ!」

 

 会場の中心ではレオナとマァムの2人は女子会を開いていた。

 特にレオナは完全に酔っぱらっている。

 まあ今日くらいは好きなだけ酔わせてやろう。

 そして宴も(たけなわ)となった頃……

 

「もう、のめにゃい~!」

 

 レオナは王族であるにも関わらず完全に出来上がっていた。

 俺もかなり酔っているが彼女は更に酷い。

 

「すまんが、ダイくん。レオナ姫を寝室まで連れて行ってくれないか?」

 

 するとアポロさんが俺にそんなことを言ってくる。

 そういうのは同性の部下であるエイミさんかマリンさんの役目では?

 まあいいか、俺は素直に従ってレオナをお姫様抱っこして寝室へと連れて行く。

 寝室とは言っても、まだ神殿は再建されてないので布で仕切られている程度の仮設寝室だが。

 

「ほら、横になって。レオナ」

 

「ダイく~ん♡」

 

「なんだい?」

 

「えい!」

 

 そう言うとレオナは俺の事を押し倒した。

 もちろん突然の奇襲に俺は対応できずにベッドに倒されてしまう。

 なにごと!?

 

「知ってるかしら? 勇者アバンは魔王討伐後にフローラ姫と結婚しなかったらしいわよ」

 

「そうだね、アバン先生は家庭教師の仕事があるから……」

 

「でも私は違うわ♡ 強引にでも責任を取らせる♡」

 

 おい、コイツ酔ってないぞ。

 もしかしてアレは演技だったのか!?

 暗黒闘気の使い手である俺を騙すとは悪い奴だぜ。

 

「ちょっ! まっ!」

 

「あはっ♡ いただきまーす♡」

 

「ぬわーっ!!」

 

 俺はパパスの断末魔のような声を上げる。

 辺りには大勢の人がいるはずのに誰も助けにこない。

 つまりパプニカ全体がグルだな。

 

 そして俺はレオナと枕投げ(意味深)をした。

 ちなみに、これは何も関係ないことがウマとロバのハーフであるラバには基本的に生殖能力がないらしい。

 そして俺も竜の騎士と人間のハーフであるので子供は出来ないだろう。

 つまり責任は取らずに済むはず……。

 いやドラクエの創造神である鳥山明先生が作り出した有名漫画『ドラゴンボール』では、サイヤ人と地球人のハーフである孫悟飯が問題なく子供(パン)を作っていたし分からないか?

 俺は将来に怯えつつ寝ることにした。

 そして夜が明けた。

 

「おはようございます……」

 

「ゆうべはお楽しみでしたね」

 

 神殿跡地で朝食を食べようとするとアポロさんからドラクエ伝統のセリフを言われる。

 うるさいわい!

 

「さてと、楽しい時間はここまで! 今日からパプニカを復興するわよ!」

 

 レオナが高らかに宣言をする。

 復興は大変だろうな。

 なにせ王都と神殿は不死騎団によって完膚なきまでに破壊されているからな。

 だけど諦めてはいけない。

 俺も微力ながら協力するぞ!

 

 ■□■□■□■□■□■□■

 

 勝利の宴から数日後。

 パプニカの復興は他に類を見ないほど驚異的な速度で進んだ。

 

 第1にヒュンケルの兄者は騎士道精神からか民間人をあまり殺戮していなかった。

 なので王家の勝利を聞いた臣民達は少しずつ祖国へと戻ってきている。

 これにより大量のマンパワーを確保したパプニカ王国は復興の速度を加速させる。

 

 第2にロモス王国からの援助があった。

 お人よしの王様は見返り無しで援助を約束してくれたが、流石にそれだと悪いので俺が新たに製造したキメラをお礼に渡した。

 キメラの翼は貴重なアイテムだから有益な取引だったろう。

 

 第3に雷撃呪文でキメラの翼を量産できること。

 そのまま使えば移動が効率化できるし、他国にも高値で売れるので需要は高い。

 おかげでホルキア大陸に生息するキメラは絶滅危惧種になりそうなほどだ。

 なのでレオナが慌ててキメラを勝手に狩ってはならないとお触れを出した。

 これなら前世のリョコウバトみたいにはならなそうだな。

 

 まあ、俺達が頑張る余地なんか無かったよね。

 というわけで復興事業はパプニカ組に任せて、俺とポップはマトリフさんの隠れ家で修行をしている。

 ちなみにマァムはブロキーナ老師の所で修行、ヒュンケルとフレイは王都に駐屯中だ。

 

「……随分と魔法力が上がって来たじゃねぇか」

 

「このぐらいで驚くなって……ギラ!」

 

 ポップの掌から閃熱(ギラ)が迸る。

 今の彼はマトリフさんと模擬戦をしている最中だ。

 バルジ島ではずっと氷漬けだったせいで碌にレベルが上がっていないからな。

 ここらでテコ入れをしないといけない。

 

「甘いな、ヒャド!」

 

「あっ……りゃあっ!?」

 

「イオラッ!」

 

 マトリフさんは右手で閃熱を消滅させ、左手で地面を凍らせてポップの足を拘束した。

 そして畳みかけるように爆裂呪文(イオラ)を投げつける。

 流石は大魔道士なだけあって魔法の使い方が上手いな。

 だが未来の大魔道士も負けてない。

 

「トベルーラ!」

 

 飛翔呪文(トベルーラ)を使い空中に逃げた。

 ポップは竜の血の摂取とマトリフさんのスパルタ指導により、移動呪文(ルーラ)飛翔呪文(トベルーラ)を習得するに至っている。

 

「まっ、少しはやるようだな」

 

 マトリフさんはそう言ってから空中に飛び上がり、ポップに頭突きを行う。

 それによりポップは吹き飛ばされて近くの砂浜に墜落する。

 こうして模擬戦は終わった。

 そして俺も瞑想を中断して彼の下へ向かう。

 

「マトリフさん、頼みごとがあるんですけど……」

 

「なんだ?」

 

「ドゴラムを魔弾銃の弾丸に装填して欲しいです」

 

 火竜化呪文(ドゴラム)、それは火竜変化呪文(ドラゴラム)の下位呪文である。

 その効果は術者の頭部が竜と化し強力な炎ブレスを吐けるようになるというもの。

 これはバラン父ちゃんとの戦いで必ず必要になるはずだ。

 なので弾丸の1つをマァムから借りて来た。

 

「別にいいんだけどよ。本来なら魔弾銃の持ち主であるマァムが頼むべきだろ」

 

「セクハラしてくるから敬遠されてんじゃないですか?」

 

「……」

 

 マトリフさんは悲しい顔をして弾丸に魔法を詰めてくれた。

 自業自得とはいえ親友の忘れ形見から敬遠されているかもしれないのは辛いよな。

 まあマァムは聖母だからマトリフさんのことを嫌ってはいないはず。

 

「じゃあ俺達は神殿に戻るから」

 

「ピィ!」

 

「おう!」

 

 というわけで俺とゴメちゃんは移動呪文(ルーラ)で神殿へと帰還し、レオナがいる執務室へと向かう。

 

「レオナ、ちょっと相談があるんだけど……」

 

「あら、なにかしら?」

 

「武器を新調したいんだ」

 

 装備している鋼鉄の剣はそろそろ寿命を迎えそうだ。

 原作よりもパプニカの復興スピードは速いので鋼鉄の剣くらいなら武器屋でも買えるが、そんなんじゃ満足できない。

 もっとグレードの高い武器を入手したい。

 

「それならベンガーナ王国よ! あそこにはデパートまであるんだから!」

 

「ほう!」

 

「あたし小さい頃に一度だけお父様に連れていってもらったんだ。広くって大きくって薬草でも服でも武器でもなんでも売ってんだから! ダイくんも行きたい?」

 

「うんっ! 行きたいっ!」

 

「ピピィ!」

 

「フッフッフッ……そーこなくっちゃ!」

 

 そう言うとレオナは笑みを浮かべる。

 実質、デートみたいなもんだからな。

 

 ちなみにデパートに行く理由は強い武器の入手だけではない。

 例えばパプニカに魔王軍が襲ってきたら国民達が被害を受けてしまうだろう。

 折角、復興した国が破壊されるのは忍びないし、民達から『勇者がいるからパプニカが襲われるんだ! だから国から出ていけ!』と正論を言われるかもしれない。

 別に弾圧してもいいのだが、パプニカの民とは良好な関係を築きたいからな。

 

 なので先手を打ってベンガーナで魔王軍を迎え撃つ。

 もちろんベンガーナの民が被害を受けるだろうが、パプニカが被害を受けるよりはいいだろう。

 自国ファーストは当たり前である。

 まあ過激化すると逆に国益を損ねるのでグローバリズムも必要なんだけどね。

 何事もバランスが大事だ。

 

「じゃあ仲間達も誘うね!」

 

「ちょっとぉ! あたしとダイくんのハネムーンじゃないの!?」

 

「この機会に使徒達の恋愛を進展させたいじゃん」

 

 ポップはマァムが好きで、マァムはヒュンケルが気になっていて、ヒュンケルは人に愛される資格がないと思っているという複雑な関係である。

 そして恋愛要素はポップを賢者に覚醒させる為に必要不可欠。

 

「ダイくん……それは名案だわ!」

 

 その提案を受けてレオナは鼻息を荒くしながら俺の提案を承諾した。

 原作通りにいくとベンガーナに竜の群れが襲ってくるから、少しでも戦力が欲しいだけなんだけどね。

 そして俺は移動呪文(ルーラ)でポップとマァムを迎えに行った。

 さあ、ベンガーナへ出発だ!

*1
古い兵法書によると、口で命令しても遠くまで聞こえないから、進軍するときは太鼓や鐘などの楽器を使うという意味




※枕投げ(意味深)の元ネタ
ドラクエ6のひょうたん島の宿屋で泊まると『夕べはお楽しみでしたね。でも、枕投げはほどほどにしてくださいよ』と言われることが元ネタ。
安易なエロ展開は入れたくなったんですが伝説のセリフをどうしても再現したかった。
許してくれい。
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