転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル27 デパート

「いいのかい? これって泥棒なんじゃないの!?」

 

 気球船はどんどん上昇していき、それと反比例してパプニカの街並みは小さく見えてくる。

 俺達は三賢者やバダックさん達に無断でベンガーナ王国に向かうことにした。

 そして、その過程で見張りの兵士を催眠呪文で眠らせて気球を勝手に使用したわけだ。

 

「王宮の物をあたしが使って何で泥棒なのよ、いーじゃない!」

 

「この気球を勝ったゴールドだって、元を立たせば国民の血税からだし、それを考えると私的なことに使うのはちょっと……」

 

「そ、それは……!」

 

 俺が苦言を呈するとレオナは申し訳なさそうな顔をする。

 まあ前世でも自分の誕生日に軍事パレードを開催した大統領もいるし、これくらいなら大したこと無いか。

 それに気球を勝手に使おうとした時点で止めてないので俺も共犯だ。

 

「でも今回は国防の要である俺の装備を買う為という理由があるからセーフか」

 

「そうよね! これは平和の為よ!」

 

 レオナはフンスと胸を張り、仲間達は疑惑の目線を向ける。

 そんなこともありつつ気球は風に揺られながら進む。

 そして数日後、俺達はベンガーナ王国に到着する。

 ちなみに気球船は同国内にあるパプニカ大使館に預けておいた。

 

「あはははっ! そおれっ!」

 

 手綱を握ったレオナは上機嫌で馬車を疾走させる。

 そのあまりのスピードにポップが文句を言うが、レオナはどこ吹く風だ。

 まあパプニカで重責に耐えるよりも、快活に暴れる方が彼女らしい。

 とはいえ危ないから安全運転を心掛けてよね。

 

「それにしても流石は大都会ね、魔王軍の侵略があるとは思えないくらい栄えているわ」

 

「そうね、マァム。なにせベンガーナは世界一とも言われる経済力をバックに物資を潤沢に揃えて魔王軍の侵攻を防いでいるの。最も安全な国とも呼ばれているわ」

 

 最も安全な国ねぇ……。

 まあベンガーナ担当の軍団長がザボエラだからな。

 他人の仕事にちょっかいをだしたり、息子を担当地域以外に派遣したりと彼にはやる気というものが感じられない。

 そりゃ防衛できて当たり前だ。

 

「だけどパプニカだって負けてないわよ。見てなさい、侵攻前よりも繁栄させてやるんだから!」

 

 レオナが対抗心をメラメラと燃やす。

 ホルキア大陸からは魔王軍を一掃したんだし後は復興あるのみだろう。

 きっと彼女ならベンガーナ以上に繁栄した国に出来るはずだ。

 

「おっ! 城が見えて来たぜ!」

 

「バカねぇ、お城にあんな気球がついてる?」

 

 レオナは城のように立派な建物の上に浮いているアドバルーンを指さすと、そこの垂れ幕には『激安! 大特価セール』と書いてあった。

 つまりアレがデパートである。

 その事実に気づいた田舎者達(ポップとマァム)は目を見開いて驚く。

 まあ彼らの常識では大きい店と言われても2階建てくらいが限界だろうからな。

 

 そして俺達は馬車から降りてデパートの中へと入る。

 ……外観だけでも立派だったデパートは内側も負けないくらい凄い。

 建材は大理石をふんだんに使っており、ランプやインテリアも上品である。

 これは伊勢丹にも負けないんじゃないか?

 

「えっと……武器は4階、服や鎧は5階ね。じゃあ5階から見ましょ」

 

「おいおい、姫さん。階層的に4階から見た方がいいんじゃないか?」

 

「デパートは少し違うのよ。さ、ここに入って」

 

 そう言ってレオナは窓がない小部屋に入る。

 豪華絢爛なデパートに似つかわしくない部屋の様子にポップとマァムは不思議そうな顔をする。

 

「そんな部屋に何の用があるんだ?」

 

「良いから入って入って」

 

 レオナに促されて俺達は室内に足を踏み入れる。

 

「みんな乗ったわね。じゃあ行くわよ」

 

 そう言うと彼女は部屋の隅に配置されたパネルを踏む。

 すると今度は部屋全体が上昇していった。

 

「なにこれぇ!?」

 

「ゆっ、床が動いたぁっ!」

 

「ピィィィ!」

 

「やーね、田舎者まるだしで。これはエレベーターっていって最上階まで運んでくれるのよ」

 

 レオナは呆れた表情で彼らに説明する。

 まあ初めてのエレベーターだから仕方ないだろう。

 それにしても動力はなんなのだろうか?

 ドラクエ10に出てくる神カラクリ(エレベーター)の動力は太陽の石だったよな。

 

「あら、ダイくんは平気なの?」

 

「驚きが一周回って冷静になっているんだよ」

 

 そう返答するとレオナは少し残念そうな表情をする。

 驚けなくてすまんな。

 

 やがてエレベーターは止まり最上階へと到着する。

 そこから降りると視界には防具が大量に陳列されている様子が映る

 デパートが武器や防具をメインに売っているというのは前世のある俺からすれば珍妙な光景だ。

 しかも思ったより人がいるな。

 まあ魔王が復活したから武器や防具に需要が高まるのも仕方ないのかもね。

 

「じゃあ各々、買いたい物があると思うから別れましょ。30分後にここに集合ね。ちなみに予算は5000ゴールドよ!」

 

「5000ゴールド!? レオナ、そんなの高過ぎよ!」

 

 レオナの言葉に思わずマァムが突っ込んでしまう。

 ドラクエの創造神曰く1ゴールドは100円くらいだから、前世の通貨に直すと50万円が予算か。

 流石は王族の財力である。

 

「平気よ! パプニカの金属や布はすっごく高値で売れるのよ。アタシのドレスを売れば2~30000ゴールドになるわ!」

 

「……ええッ!?」

 

 30000ゴールドという言葉の凄さにマァムは何も言えなくなってしまった。

 こうして俺達は分かれて各エリアを散策することにした。

 俺が欲しいのは鎧なので案内を見ながら移動する。

 

「これとか良さそうだな」

 

 目の前には成人男性サイズのマネキンに立派な鎧が装備させてある。

 値段は3800ゴールドだから予算の範囲内だな。

 

「いらっしゃいませ。こちらの騎士の鎧をお求めですか?」

 

「はい」

 

 店員の一人が揉み手をしながら近寄って来た。

 おそらく、買う客だと思われたのだろう。

 

「試着してみていいですか?」

 

「もちろんです! こちらへどうぞ!」

 

 というわけで俺は試着室で騎士の鎧に着替えた。

 着替えたのだが……

 

「流石にサイズが合わなかったな」

 

 鏡の前には『鎧を着た』のではなく『鎧に着られた』という表現が的確であろう自分の姿があった。

 元々が大人が装備することを想定した防具なので、チンチクリンの俺では背丈が足りんな。

 

「あの、サイズ調整とかできます?」

 

「もちろんです! 専門の職人が調整をしてくれますよ」

 

 店員の人に聞くとそう返された。

 こういう大きい店だとサービスが充実しているのは今世でも同じのようだ。

 ということで俺は騎士の鎧を購入してサイズ調整してもらう。

 原作では自分でサイズ調整していたが、この世界では専門の職人にやってもらったので防御力は原作よりも高くなっているはずだ。

 

「ねぇねぇ、ダイくん! これどうかな?」

 

 すると偶然にも近くの試着室にいたレオナが水着のような服を見せつけに来た。

 露出度が高く非常にシコリティが高い。

 だけど俺としては着てほしくないな。

 

「俺以外の前でその姿は見せないでよね」

 

「もぉ~、ダイくんったら♡ 独占欲が強いんだから♡」

 

 姫様がこんな服装で他国を出歩くとか普通に国辱ものである。

 というわけで別の服を着る用に勧めた。

 そして俺は試着室を後にした。

 するとゴメちゃんが何か言いたそうに俺の周りをパタパタと飛ぶ。

 

「ピピィ!」

 

「どうしたんだい、ゴメちゃん?」

 

「ピピピィ!」

 

 なるほど、自分も装備が欲しいか。

 いいだろう、とっておきの防具を用意してやろう。

 というわけで俺はコレを購入した。

 

「どたま金槌だ!」

 

 兜の頭頂部に丸太が直接くっついている非常にダサ……個性的な防具をゴメちゃんに勧めてみた。

 デルムリン島にいた時のゴメちゃんならサイズ的に厳しいが、竜の血を飲んで巨大化した今なら装備可能なはず。

 

「ピピィ♪」

 

 ゴメちゃんは非常に嬉しそうだ。

 気に入ってくれたようで何よりである。

 そして色々と装備を見た後、俺達は皆と合流した。

 

「ポップは何か買ったの?」

 

「俺はいいよ、武器もマントも師匠から貰ったからさ」

 

 そう言ってポップは輝きの杖を見せた。

 確かにマトリフさんから貰った装備があるなら買わなくていいな。

 

「……ま、こんなトコかな!」

 

「私も装備を更新したわ」

 

 目の前には旅人の服を着たレオナと武闘着を着たマァムがいた。

 

「2人とも似合ってるよ」

 

「ありがとう!」

 

「当然ね!」

 

 女のオシャレは褒めるものだ。

 そしてポップの反応は……

 

「タイツが逆にエロいな」

 

 それを聞いたマァムはポップの股間を蹴り上げた。

 まあ、そんな恰好をしている彼女も悪いと思うけどね。

 俺は逆ギレが怖いので何も言えないわけだが。

 

「服とかも高くなったわね~」

 

「仕方ないわよ、魔王軍のせいで物価が上がっているから」

 

 魔王軍によって世界各地が被害を受けたことによる原材料費高騰。

 そしてモンスターの凶暴化によって流通コストが増大。

 更には人間の国が次々と滅びることによるゴールドの信用下落によるインフレ。

 

 これらの要因によって食料から装備に至るまで色々な物資が高くなっている。

 一般庶民にとっては苦しい時代だろう。

 まあ我がパプニカはキメラの翼を量産したことによって流通コストを抑えてるから、そこまで物価高に苦しんでないけどね。

 

 それはともかくとして集合した俺達は4階へと向かう。

 確かここではドラゴンキラーのオークションがやっていたはず。

 キメラの翼を量産したことで原作よりもパプニカは豊かだ。

 なのでデパートに持ってきた予算も多くなっている。

 つまり買える可能性は高くなっているはずだ。

 

「いい武器があるかしら?」

 

「ロモスの王様に貰った鋼鉄の剣以上の物は中々無いと思うけどね」

 

 マァムにそう返しつつ俺は辺りを散策する。

 だが一向にオークション会場は見つからない。

 やはり、そういうことか。

 

「なになに……ドラゴンキラーのオークション開催!?」

 

「ドラゴンキラーってあの有名な?」

 

「そうよ、鋼鉄よりも硬いと言われているドラゴンの皮膚を容易く貫くという最高級の武器よッ!」

 

 その代わりに見つけたのは、大きく張り出されているポスターである。

 なおドラゴンキラーは刃と手甲が一体化したジャマダハルのような形状をしており、腕にはめて使う。

 ぶっちゃけ勇者や戦士よりも武闘家の方が似合っている武器である。

 ちなみに予想落札価格は15000ゴールドとのことだ。

 最高級の武器が150万円と考えると割と安いのかも。

 単純比較はできないがオスプレイなんて1機あたり100億円以上だしな。

 

「……すいません、この会場ってどこですか!?」

 

 俺は店員に声をかけた。

 すると、すぐさま寄ってきて説明を始めた。

 

「ああ、ドラゴンキラーのオークションですね? 会場は四階のここになります。ただ、開催は明日ですので……」

 

「明日!?」

 

 やはり原作とは進みが違うからドラゴンキラーのオークションにドンピシャで遭遇することは出来なかった。

 だが、それはそれで構わない。

 重要なのはオークション日の確認である。

 

 なにせ俺が転生した影響で原作とは展開が変わりまくっているからな。

 だから原作と同じ日程で開かれるだろうオークションは原作との差異を確かめる時に非常に役に立つ。

 オークションは明日だから、原作とのズレは1日だな。

 なら許容範囲内だ。

 理想を言えば原作よりも遅れた方が良かったんだけどね。

 少なくとも、アバン先生が破邪の洞窟を攻略するまでの時間は稼ぎたい。

 

「どうにかして今すぐ買えないの?」

 

「申し訳ありません。規則ですから。それに明日の開催を待ち遠しにしているお客様も大勢いらっしゃいますので……」

 

「まあ明日まで待とうよ、レオナ」

 

「ええ! 絶対に落札しましょ!」

 

 というわけで俺達は4階を後にする。

 マァムの為に新しい武器を買うことも提案したが、それは本人から断られた。

 なんでも『武闘着だけでお腹いっぱい』とのことである。

 まあドラゴンキラーのオークションもあるし、ゴールドを使いすぎるのも良くないしな。

 そして3階へと到着する。

 どうやら、ここは日用雑貨が売っているようだ。

 まあ特に買うものはないな。

 

「あら? ここは占いコーナーがあるのね」

 

「ほう!」

 

 そう言いながらレオナは占いコーナーを指さす。

 それにしても、ベンガーナで占いということは……。

 俺は興味本位で指の先へと向かう。

 

「いらっしゃい。占いかい? それとも冷やかしかい?」

 

 そこには前世の漫画内で見覚えのある老女と少女がいた。

 確か老女の方がナバラで少女の方がメルルだな。

 

「本物なら、俺が占いたいことを知っているはずだろう」

 

「戦いに勝てるか心配なんだろう。ほれ、5ゴールドを出しな」

 

 流石は占い師、一発で悩みを看破した。

 俺はバラン父ちゃんに勝てるかどうか不安で仕方ないのだ。

 なにせギガブレイクを2発もクロコダインがいないからな。

 というわけで俺は見料として5ゴールドをナバラさんに手渡す。

 すると彼女は水晶に手をかざした。

 

「見えるよ、光だね……大きな光……これはまさか!?」

 

「お、おばあさま!」

 

「何だいメルル? 占いの途中だよ!」

 

 ナバラさんが何かを言う前にメルルが声を上げる。

 大人しそうな彼女にしては珍しく強い言葉であり、思わずナバラさんは占いを中断してしまった。

 もちろん占いを邪魔したことナバラさんは少し怒った声色で話す。

 一方のメルルの様子は明らかにおかしかった。

 顔色を青白くさせて、怯えたような表情をしている。

 何かを感知したのかな?

 

「何かが来るわっ!! 恐ろしい力を持った生き物がたくさん!!」

 

「なんだって!?」

 

「来るわ! 今すぐに!」

 

 空を見上げながらメルルは断言する。

 まあ原作通りヒドラ1匹とドラゴン5匹だろう。

 ぶっちゃけ余裕だ。

 

「それに途轍もなく強力なエネルギーが1つ!」

 

 途轍もなく強大なエネルギー?

 ちょっと何かがおかしいな。

 これは一応、確認する必要がある。

 

「お姉さん、その大きなエネルギーを水晶玉に映し出せるかい?」

 

「はい、では行きます!」

 

 すると水晶玉にはバラン父ちゃんの姿が映る。

 ……なるほどね、これは非常にマズいな。




ヒドラやドラゴン相手に無双してもつまらんでしょう。
ということでサプライズ竜騎将です。

※ナバラとメルルがデパートで働いている設定
彼女達はたぶんデパートにある占いコーナーで仕事をした帰りだったんじゃないかなって。

※見料5ゴールドについて
ドラクエ7の現代パミラが5ゴールドで占いをしてくれたことが元ネタ。
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