転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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約束の30話です。


レベル30 絶対に忘れない

 途轍もなく頭が痛い。

 確か自分はトラックに追突されたはず。

 ……ということは病院に搬送されたのか?

 それにしては思いっきり野外なんだけど。

 

「バラン義父(とう)様! 貴方、ダイくんに何を!?」

 

「息子にはもはや不要なものを……奪った」

 

「なんですって!?」

 

 髭を蓄えたイケオジと茶髪の美少女が会話をしている。

 彼らの容姿と服装には見覚えがある。

 

「その為に力を使い過ぎたわ。この場はひとまず退かせてもらう。いずれ改めてディーノを貰いにくるぞ! ルーラ!」

 

 イケオジがそう唱えると彼は空の彼方へと消えていった。

 明らかに通常の物理法則を無視している挙動だ。

 確か『ルーラ』という言の葉はドラクエというゲームに出てくる移動系の魔法だったはず。

 

「助かったのかな……おれ達?」

 

「ダイくん、大丈夫?」

 

 美少女は俺をダイと呼称したこと……そしてダイ、バラン、ルーラ、3つの固有名詞と状況からして導きだされる答えは1つ。

 自分は『ダイの大冒険』の主人公ダイに憑依してしまった。

 それもバラン編で記憶を喪失するタイミングで。

 

 しかし漫画の世界に転生とは一体どういう事なんだろう?

 当たり前だが漫画というのはフィクションで、全て想像し考案したのは原作者達のはずだ。

 フィクションとほぼ同一の世界に転生などということがあり得るのだろうか。

 いや、実際に転生しているんだからあり得るもあり得ないもないんだけど。

 うーむ、考えれば考えるほど分からなくなる。

 

「自分、記憶を喪失しちゃったんだよね」

 

「「「ええッ!?」」」

 

 するとレオナ姫、ポップ、マァムと思われる人物が驚愕する。

 なんでブロキーナの下で修業しているマァムがここにいるんだ?

 

「……そうだわ! これを見て! 記憶を失う前のキミが何かあったら渡してって言っていた紙よ!」

 

 そう言ってレオナ姫は折りたたまれた紙を渡す。

 もしかして記憶を失う前のダイは記憶喪失を予見していた!?

 ということは、もしかすると……。

 

 早速、紙に書かれた日本語を読んでみる。

『俺へ

 この文を読んでいるという事は、前世以外の記憶が喪失した後でしょう。

 ゴメちゃんの奇跡によって俺は5歳の時に前世の記憶を思い出しました。

 そのせいで原作とは展開が異なっていたりします。

 なんとか記憶を思い出してください。

 以下に記憶を失ってから取るべき行動を書いておきます。』

 と書いてあった。

 

 出来るわけないだろ、バカタレ。

 確か原作ではポップが死をトリガーにして記憶を思い出すんだよな。

 だけど原作とは展開が異なるから上手くいくかは不明であると。

 

「このままだとバランの部下になる可能性が高いかも」

 

「そんなの許さねぇぞ! 魔王軍がアバン先生とブラスさんを殺したことまで忘れたのかよ!」

 

 ポップが自分の胸ぐらを掴んで叫ぶ。

 まあアバン先生は生きているんですけどね。

 そしてブラス爺ちゃんを殺したのは魔王軍じゃない。

 

「ブラス爺ちゃんを殺したのは俺だろ」

 

「あれは仕方な……それを覚えてるってことは記憶が戻ってないか?」

 

「……ホントだ」

 

 紋章の共鳴が起きようと親殺しだけは絶対に忘れない。

 つまりブラス爺ちゃんの死をトリガーにして記憶が完全復活した。

 そして折りたたまれた紙を火炎呪文で焼き払う。

 

「とりあえず近くの宿屋で休もうか」

 

「そうね!」

 

 戦いで疲弊した俺達は近くの宿屋へと向かう。

 ちなみにベンガーナの町民の殆どは避難を開始したので宿屋は無断で使用している。

 まあ正義の活動の為だから仕方ないね。

 

「食料と薬草……その他にも要りそうな物を手に入れてきました」

 

「ありがてぇ、助かったよ」

 

 ポップはメルルに感謝を述べる。

 ちなみに彼女達は町へ帰った時に合流した。

 

「そういや2人は逃げないんですか?」

 

「どこへ逃げても一緒さ。占いによるとベンガーナ全土にモンスターの群れが暴れているさね」

 

「なるほど」

 

 俺の疑問にナバラさんが答えた。

 これはベンガーナ王国軍が俺達に加勢させない為の陽動作戦だな。

 まあ相手が妖魔士団だとはいえ仮にも魔王軍に滅ぼされていないくらいには精強な軍隊だもんな。

 万全を期して対策するのは当然の思考だろう。

 

「さてと、これからどうしようか」

 

「バランは必ず襲ってくるはずよ」

 

「なら迎え撃つしかないな」

 

「でも宿屋じゃ防御力なんてないぜ。パプニカに戻ろうにも迷惑がかかるしなぁ……」

 

「ならデパートで迎え撃ちましょ! この町は民達の大半は避難しているし被害は最小限で済むはずよ!」

 

 確かにレオナの言う通り、デパートは城のように大きな建物なので最低限の防御力ある。

 もちろん無断使用になるわけだが、どうせ従業員も逃げ出しているし構わんだろう。

 

「次は戦力を確保しないとな。パプニカから精鋭を連れてくるよ」

 

 というわけで俺は外に出て移動呪文(ルーラ)を唱えてパプニカへ向かう。

 そして神殿内でアポロさんと面会した。

 

「ダイくん、姫様は一緒じゃないのか!?」

 

「実は旅先で魔王軍の襲撃に遭いました。だから援軍が欲しいんです」

 

「実は此方もモンスターがパプニカ各地で暴れている。既にエイミとマリンは前線で戦っている。だから我が国からは援軍は出せない状況だ。申し訳ない」

 

 これは偶然ではないよな。

 おそらくバラン父ちゃんが手を回したな。

 流石に俺達のことを舐め切ってはいないか。

 というか原作よりも用意周到だな。

 魔王軍側に何か変化が生じているのか?

 

「だが元軍団長達は連れて行ってくれても構わない。彼らはキミの仲間だからな」

 

「大丈夫ですか? 王都の守りが薄くなりますよ」

 

「三賢者がいればパプニカの守りは安泰なはずだ」

 

「了解です」

 

 むしろ心配なんだけど。

 まあ俺達が負けたら元も子もなくなるから連れていくけどさ。

 というわけで元軍団長がいる詰め所へと向かう。

 

「ヒュンケルの兄者、ちょっと用があるんだけど」

 

「ダイか。ベンガーナに向かったと聞いていたがどうしたんだ?」

 

「そこで竜騎将バランに襲われた。何とか撃退できたけど次は分からない。だから援軍に来てくんない?」

 

「了解した」

 

 というわけでヒュンケルの兄者がパーティーに加わった。

 原作知識が正しければ敵側はバラン父ちゃんと竜騎衆が3名のはず。

 彼らと互角に戦えるのは俺と兄者くらいだ。

 ポップとマァムもまだ成長途上だし状況的には割と厳しい。

 

 だからこそ彼が参戦してくれるかは重要なのだ。

 俺は詰め所の奥を見ると、そこには大柄なワニの獣人がいた。

 

「やあ、クロコダイン」

 

「……ダイか。俺の命を助けて何のつもりだ?」

 

 獣王クロコダインはバルジ島の戦いで死んだ。

 だが竜の血とレオナの蘇生呪文(ザオラル)によって生き返したのだ。

 原作的にも彼が味方であった方が良いだろうしね。

 簡単に殺すわけにはいかない。

 

「魔王軍と戦ってくれるかい?」

 

「お前には命を助けられた恩もある。……1度だけなら味方しよう」

 

 こうして条件付きではあるがクロコダインが仲間になってくれた。

 しかも魔王軍に逆らわせたことで彼が元鞘に戻ることもないだろう。

 

「じゃあ2人とも、決戦の地へ行こうか!」

 

 俺は元軍団長達をベンガーナへと移送する。

 ちなみにマトリフさんも回収しようとしたが、彼は留守だった。

 まあ老人を無理させるのもアレだしな。

 同じ理由でブロキーナ老師にも援軍要請を行わない。

 

「みんな! 頼りになる援軍を連れてきたよ!」

 

「ヒュンケルにクロコダイン……ちょっとした魔王軍気分だな」

 

 ポップがそう感想を述べる。

 幹部が裏切りまくるあたりハドラーって人望が無さすぎる。

 まあ今は三流魔王だから仕方ないね。

 

「じゃあ、どうやって迎え撃とうかしら?」

 

「バラン父ちゃんは俺の記憶が無くなっていると思い込んでいる。だからソレを活かして騙し討ちをしようと思っている。だから皆も話を合わせてね」

 

「分かったわ」

 

 流石に(ドラゴン)の騎士に正面から勝つことは出来ないので騙し討ちを行う。

 アバンの使徒らしくない卑劣な作戦だが、勝つ為には仕方ない。

 もちろん作戦はこれだけではない。

 

「マァム、コイツを返すよ」

 

 俺は懐から取り出した魔弾銃の弾丸をマァムに返却する。

 コイツはマトリフさんの魔法が詰められている。

 

「これには、どんな魔法が充填されているの?」

 

「ドゴラムだ」

 

 火竜化呪文(ドゴラム)、それは火竜変化呪文(ドラゴラム)の下位呪文である。

 その効果は術者の頭部が竜と化し強力な炎ブレスを吐けるようになるというもの。

 これはバラン父ちゃんとの戦いにおける切り札の1つだ。

 

「俺が指示したタイミングで使ってくれ」

 

「分かったわ」

 

 そして俺達は防衛線を構築していく。

 するとメルルがスライムのように震えだした。

 ……遂に来たか。

 

「あああ……!」

 

「ど、どうした!?」

 

「来ます! 凄いぞ憎悪のエネルギーが!」

 

「バランの野郎が来やがるのかっ!」

 

「それだけじゃありません……同じようなエネルギーが他に3つ!」

 

「ワシが水晶に映し出そう!」

 

 ナバラさんはそう言うと水晶玉に向けて念じ始めた。

 しばらくするとソレに明確なビジョンが投影される。

 そこにはバラン父ちゃんと竜騎衆の3人が竜に騎乗していた。

 

「なっ、何者だぁっ!?」

 

「もしや……こやつらが噂の竜騎衆……!?」

 

 するとクロコダインが口を開く。

 知っているのかワニ電!

 

「バラン配下の最強のドラゴンライダー達だ! こやつらが竜を操った時の力は我ら魔王軍の軍団長に匹敵するという!」

 

 つまり竜騎衆とはバラン父ちゃんの私兵である。

 さてと、じゃあ詳細を仲間に開示するとするか。

 

「そいつらの名前は空戦騎ガルダンディー、海戦騎ボラホーン、陸戦騎ラーハルトだ」

 

「なんでダイがソレを知っているんだよ!?」

 

 俺の言葉にポップがツッコミを入れる。

 魔王軍に在籍していたクロコダインですら、噂程度でしか知らない相手を何故デルムリン島にずっといたクソガキが知っているのか。

 混乱して妄言を口にしていると思われても仕方ないだろう。

 だけど理由を説明することなく話を進めることにした。

 

「ガルダンディーは鳥人間の剣士だ。騎乗しているスカイドラゴンは彼の兄弟同然で他の竜よりも少し厄介だ。そして白い羽は相手の身体から魔力(MP)を奪い、赤い羽根は体力(HP)を奪う。コイツはポップとレオナが相手してくれ」

 

「よく分かんねぇけど最善は尽くすぜ」

 

「ええ、頑張るわ」

 

 とりあえず俺の言うことを信じてくれたようだ。

 まあポップとレオナのコンビなら地形によるサポート込みで何とか勝つことが出来るだろう。

 

「ボラホーンは青いトドマンだ。ガメゴンロードを投げ飛ばす怪力を持っていて、武器は鎖つきの錨。そして放つブレスはマヒャド級の威力がある。これで凍らせて錨を叩きこむのが必勝の戦術だとか。コイツはクロコダインが相手してくれ」

 

「うむ、了解した」

 

 原作の兄者(ヒュンケル)曰く、ボラホーンのパワーはクロコダインの半分以下だからな。

 ぶっちゃけ余裕な相手だろう。

 唯一の懸念点は前世の某同人誌を知っている俺が笑ってしまうことくらいだ。

 

「最後の1人がラーハルトだ。魔族と人族のハーフで人族から迫害されたという悲しい過去を持ち、竜騎衆の中でも別格の強さだ。他の竜騎衆は竜の戦力込みで軍団長級だけど、コイツは竜が足手纏いになって軍団長級かもな」

 

 原作ではハドラーと互角だったヒュンケルの兄者を一方的にボコしていたからな。

 相性もあるので純粋な比較は出来ないが、魔軍司令以上の実力があるということだ。

 ウマとロバの合いの子であるラバが両親のどちらよりも優れた特徴があるように、魔族と人族の合いの子であるラーハルトも両種族を超越した強さを持っている。

 いわゆる雑種強勢というやつだ。

 

「そして鎧の魔剣と同作者が鍛造した鎧の魔槍という武器を持っている。圧倒的なスピードだから海波斬であっても捉えきれない」

 

「……それはオレよりも強いかもしれんな。そしてオレならば分かり合えるかもしれん」

 

「そうかもね。だからヒュンケルの兄者は全力でコイツを倒してくれ」

 

 原作でも兄者は辛勝していたわけだし、ラーハルトを倒すくらいは出来るだろう。

 

「そしてマァムは魔弾銃で俺を援護してくれ」

 

「任せて!」

 

 戦いに備えて魔弾銃には様々な魔法を仕込んである。

 例えバラン父ちゃんが相手でも対応することは難しいはずだ。

 

「これで作戦会議は以上! みんな、頑張ろう!」

 

 というわけで俺達は防衛線を構築しながらバラン父ちゃんと竜騎衆を待ち構えることにする。

 そして遂にその時は来た。

 

「迎えに来たぞ、ディーノ!」

 

 デパート前の大通りでバラン父ちゃん達は嬉しそうに近づいてくる。

 

「さあ、ダイくん! 戦うのよ!」

 

「無理だよぉ! ボク、そんな怖い目にあいたくない!」

 

「貴様ら、まさか記憶を失ったディーノを強引に戦わせようと……」

 

 バラン父ちゃんは激昂しながら近づいてくる。

 完全に俺達の演技に騙されているな。

 後は奇襲をするだけである。

 

「おじさんはだれ?」

 

「私は……お前の父親だ!」

 

「本当?」

 

「これが証拠だ」

 

 すると互いの額にある(ドラゴン)の紋章が輝きだす。

 

「分かる! 分かるよ! おじさんは嘘をついてない!」

 

「その額の紋章こそが何よりの証。私達を繋ぐ無言の絆だ」

 

「父さん……」

 

 俺はバラン父ちゃんに駆け寄って抱き着いた。

 完全に油断している。

 つまり奇襲をするなら今だ。

 もちろん殺意を悟られないように闘気は完全に消した。

 

「死ねェ!」

 

「な……なにィッ!?」

 

 俺はパプニカのナイフで父ちゃんの腹を刺した。

 この武器は本当に親殺しと縁があるな。




パプニカのナイフ「呪われた武器扱いされたでござる」

ゴメちゃんの奇跡は紋章の共鳴よりも優先されます。
前世の記憶は魂に刻まれていますからね。
もちろん親殺しも同様です。
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