転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル5 ネタバレⅠ

「出来た!」

 

 レオナ暗殺未遂事件から数週間後。

 俺は魔のサソリから毒を抽出することに成功した。

 とりあえず毒針から取れた分だと1回の使用で終わってしまう。

 これは使い所を見極めないとな。

 

 そして俺はブラス爺ちゃんにソレ()を自慢しようと家へと向かう。

 するとそこには体を痙攣させている様子の爺ちゃんがいた。

 どうしたのだろうか?

 

「うううっ!」

 

「爺ちゃん!?どうしたの?」

 

 爺ちゃんは苦悶に満ちた表情をしており頭を両手で抑えている。

 明らかに普通ではない様子だ。

 

「なにかドス黒い血が全身を駆け巡るようじゃ!気を抜くと大暴れをしてしまいそうで……」

 

 窓の外を見ると爺ちゃん以外のモンスターは外で暴れている。

 ……遂にこの時が来たか。

 さあ、ここからが正念場だぞ。

 

「はぁ……はぁ……! 考えられることは1つ。魔王が復活したのじゃ!」

 

 元来、この島に住んでいるモンスター達は魔王の手下だった者達だ。

 しかし勇者が魔王を倒したことで邪気から解放され平和に暮らせるようになった。

 つまり通常の怪我や病気と違って、魔王を倒さなければ問題は解決しない。

 

「ダイ、今すぐにデルムリン島を出るんじゃ!さもないとワシはお前を殺してしまうかもしれん!」

 

 こうしてブラス爺ちゃんに促されるままに俺達は海岸への道を歩く。

 日の光も差さないような曇天の空模様は魔王の復活を暗示しているかのようだ。

 そして遂に海岸が見えた。

 すぐ近くには小舟が置いてある。

 これは偽勇者が使っていたものだ。

 

「さあ、早く島を出るんじゃ!」

 

「でっ、でも!」

 

「このままではせっかく育てたお前をワシ自身の手で傷つけてしまうじゃろう!」

 

「分かった。俺が魔王を倒すよ。そうしたらまた平和に暮らせるよね」

 

「その通り! いい事を言いますねダイくん!」

 

 海岸に見知らぬ声が響き渡る。

 そして音がした方を振り向くと、青髪をカールした髪型とメガネが特徴的な優男と黄色いバンダナがトレードマークの黒髪の少年がいた。

 

「ですが島を出る必要はありませんよ」

 

「だ、誰じゃ!?」

 

「まあ、この場は私に任せてください」

 

 そしてメガネをかけた優男は腰に差していた剣を鞘ごと抜き取ると、鞘尻で地面を軽く突きさす。

 

「ちょええええええ~!」

 

 メガネの男は奇妙な掛け声と共に剣で地面を削りながら島の内部に向かって駆けだしていく。

 もちろん島内には凶暴化したモンスターが大量にいるので危険だ。

 だけど問題はない、なぜなら彼こそは……。

 

「危ないですぞ!」

 

「心配しないでくださいよ。先生はすげぇんだから」

 

 ブラス爺ちゃんの忠告に少年はそう返す。

 いまいち要領を得ない回答だ。

 そして少し待っているとメガネの男はそのままの勢いで戻って来た。

 おそらく地面の上に線を引きながら島を覆うように巨大な五芒星を描いてきたのだ。

 

「邪なる威力よ、退け……マホカトール!」

 

 そして男は呪文を詠唱する。

 すると、それに応じるように地面に描かれた魔法陣が光輝いた。

 光は島全体を覆いつくすと天へと上り、上空の暗雲と邪気を払い飛ばす。

 

「こ、これは……奇跡か?」

 

「爺ちゃん、大丈夫?」

 

「ああ、あの方が呪文を使った途端に今まで襲ってきていた苦しみが消えたんじゃ」

 

 これこそが破邪呪文(マホカトール)か。

 その効果は円内の邪悪を祓い清め、外部からの邪悪な力の侵入を阻むというもの。

 おそらく原理としてはスカウトリングみたいに、モンスターの体内に含まれるマ素を減少させているのだろう。

 

「貴方はいったい?」

 

「これは申し遅れました。私……こーゆー者でございます」

 

 メガネの男は1本の巻物を取り出して俺達に見せつける。

 そこには『勇者の育成ならおまかせ!! この道15年のベテラン アバン・デ・ジニュアールⅢ世』と書かれていた。

 何とも気の抜ける感じだ。

 

「まあ、平たく言えば勇者の家庭教師というやつですよ」

 

「家庭教師ィ!?」

 

「そう! 正義を守り悪を砕く平和の使徒を育て上げ超一流の勇者へと導くことが私の仕事なのです!」

 

「はぁ……」

 

 それを聞いたブラス爺ちゃんは困惑するばかりだ。

 少しおどけているが実力は本物であることには変わりはない。

 

「これは弟子のポップ、現在魔法の修行中の身であります」

 

 アバンがポップの肩を軽くたたくと、彼はペコリと頭を下げた。

 

「それで……その家庭教師がなぜこの島へ?」

 

「もうすでにお気づきでしょうが、魔王が再び現世に復活してしまいました」

 

「や……やはり」

 

 俺達は魔王の洗礼とでも言うべきモンスターの凶暴化の脅威を味わったばかりだ。

 その言葉に疑いなど持てようはずもない。

 

「魔王の配下の邪悪なモンスター達が世界中にあふれ出し人々を苦しめ始めています。ロモスやパプニカなども同様ですね」

 

「ロモス王やレオナまで…」

 

「私はパプニカの王に頼まれてここに来たんですよ。デルムリン島に住むダイという少年こそまさしく未来の勇者!彼を1日も早く真の勇者に育てあげてほしい…とね」

 

「そうだったんですね」

 

「ダイくん、どうしますか?魔王を倒すために私の修行を受けてみますか…もちろんムチャクチャハードな修行ですが」

 

 もちろん答えは1つだ。

 

「やります!」

 

「よろしいっ! では……この契約書にハンコを。サインでも結構ですよ」

 

 どこからか契約書を取り出すアバンの姿に、緊張していたはずの空気はぶち壊された。

 もちろんデルムリン島にハンコ文化なんてないので俺はサインを選択した。

 こうして俺はアバンの使徒となった。

 

 ……さてと、記憶が正しければもうそろそろアレが来る頃だな。

 そう思っていると上空から風切り音が聞こえる。

 なので俺は空を見上げる。

 

「あれは!」

 

 初めに見えたのは、ゴマ粒のように小さく2つの点であった。

 その点は徐々に大きくなり、その輪郭も鮮明になっていく。

 

「な、何じゃアレは!?」

 

「ガーゴイルだっ!」

 

 ガーゴイル、つまり剣を手に持ち背中に羽を生やした鳥人間のモンスター2匹が此方に向かってくる。

 

「ケケケッ! 人間だ! 人間がいたぞ!」

 

「殺せ殺せ!」

 

 紡ぐ言葉からして友好的な感じではないな。

 やはり原作通り敵か。

 そしてガーゴイルは更に距離を詰めて空から急降下し……

 

「グェッ!」

 

 聖なる結界にぶつかり弾き飛ばされた。

 マホカトールは外部からの邪悪な力の侵入を阻む。

 ガーゴイル程度の(レベル)では力業で破ることも技術ですり抜けることも不可能だ。

 

「どうやら魔王軍の偵察隊のようですね。逃がしても面倒です。ポップ、あいつらを倒してください」

 

「ええー! おれ1人でですかぁ~」

 

「その通り、私はマホカトールを使ってベリーベリー疲れているのです」

 

「ちぇ~っ、ずりぃな先生」

 

 ブー垂れながらもポップは聖なる結界を抜けてガーゴイル達の前に立ちはだかる。

 

「おいカラス野郎ッ! おれが相手をしてやるから降りて来い!」

 

「このガキがぁ!」

 

「メラゾーマ!」

 

 ガーゴイルBは激昂しながら斬りかかる。

 しかしその前にポップの杖から放たれた上級火炎呪文のカウンターを喰らってしまう。

 

「グワワッ!」

 

 巨大な火球はガーゴイルBを一瞬にして包みこむ。

 威力も見た目に恥じず凄まじいもので一瞬でガーゴイルBは人型の炭へと姿を変えた。

 

「凄い……」

 

 思わず口に出てしまった。

 あれが上級火炎呪文(メラゾーマ)か。

 俺の扱う魔法とはレベルが違う。

 これがアバンの使徒の実力……。

 

「へっ、今度はお前をヤキトリにしてやるぜ!」

 

「魔王軍を舐めるなよ!」

 

 挑発に激昂するガーゴイルAであったが、奴はポップのメラゾーマで同胞が倒されている所を見ている。

 なので安易に突撃することはしない。

 その代わりに口を開く。

 

「マホトーン!」

 

 封印呪文(マホトーン)、それは相手の魔法を封じる魔法にしてガーゴイルの得意技である。

 調子に乗っていたポップはソレをモロに喰らってしまい魔法を封じ込められてしまう。

 これでは魔法使いは満足に戦うことも出来まい。

 

「あぐぅぅ! あぐっ!」

 

「死ねぇ!」

 

 ガーゴイルAがポップに襲い掛かろうとした瞬間、俺は間に割り込みパプニカのナイフで奴の剣を受け止めた。

 

「な……なんだこのチビはッ!?」

 

「魔王の手下め、この島から出ていけッ!メラ!」

 

 そして俺はガーゴイルAに向けて牽制にメラを放つ。

 もちろんメラゾーマと違って威力は低いので大したダメージにはならない。

 

「お前の魔法も封じ込めてやる! マホトーン!」

 

 俺は敢えてマホトーンを受けた。

 それを見たガーゴイルAはニヤリと笑みを浮かべて油断をする。

 つまりカウンターをするなら今だ。

 

「ずあああああっ!」

 

「かあっ!? あああああッ!」

 

 大上段から全力で振り下ろされる海波斬。

 ガーゴイルAは回避も防御も出来ずに後ろにある波ごと縦に真っ二つになった。

 そして断末魔の悲鳴と共に砂浜を青い血で汚していく。

 

 ……初めて知性のある相手を殺した。

 それにモンスターに育てられたからモンスターを殺すのは抵抗がある。

 だけど正当防衛だし仕方ないな。

 相手も俺の事を忘れないだろう、だから俺も相手の事を忘れないようにしよう。

 

「これはまさか……!」

 

「先生、どうかしたんですか?」

 

「いえいえ。見事な剣術だと思いまして」

 

 アバン先生は興味深そうにこちらを見てくる。

 原作ダイと違って俺は既に大地斬と海波斬を使うことができるからな。

 後は余裕をもって空裂斬を習得するだけだ。

 そうすればアバンストラッシュは完成である。

 

「では気を取り直して……明日より真の勇者となる為のキビシー修行が始まります。ポップ、貴方は兄弟子なのですから色々と面倒を見てあげなくてはダメですよ」

 

「はい先生!」

 

「よろしくおねがいします、ポップの兄者」

 

「ポップでいいよ」

 

 俺はポップと握手をする。

 そして兄弟弟子たちが短い交流をしている間に、アバン先生は懐から教本を取り出すとペラペラとめくる。

 

「さて、特訓のコースですが……なにしろ時間がない。世界中の人々が今こうしている間にも、魔王軍の猛攻に苦しめられているはずですからね」

 

 そう言うとアバン先生は教本のとあるページを見せつける。

 

「そこでダイくんにはズバリ!1週間で勇者になれる特別(スペシャル)ハードコースを受けてもらいます!」

 

「ゲエ~ッ!? 特別(スペシャル)ハードコースか! おい絶対にやめとけっ! 今まで誰もやり通した事が無いで有名なんだぞ」

 

「じゃあ俺が初めての弟子になるな。よろしくお願いします!」

 

 俺は特別(スペシャル)ハードコースを受けることにした。

 ここから加速していくぞ。

 だが、その前にやるべきことがある。

 

「アバン先生」

 

「なんですか、ダイくん?」

 

「ちょっと2人きりで話をしませんか」

 

「いいですよ」

 

 というわけで俺とアバン先生は近くにある物陰に移動する。

 この話だけはブラス爺ちゃんに知られてはいけないからな。

 

「それで用件は何ですか?」

 

「3日後に魔軍司令ハドラーが襲撃してきます」

 

「……はい?」

 

「そしてアバン先生は奴に敗北します」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 少し理解が追い付きません」

 

 流石に単刀直入すぎたな。

 じゃあ前提から話すとしよう。

 

「俺は神の涙の影響で前世を思い出しました」

 

「前世……ですか」

 

「そして前世では『ダイの大冒険』という作品がありました。デルムリン島に住む少年ダイが大魔王バーンを倒すまでを描いた冒険活劇です。もちろん俺も読んでました」

 

「つまり私達は物語の中の住人だと?」

 

 もちろん、この情報は極力秘匿されるべきだ。

 なぜなら魔王軍に原作知識があることが露見したら、奴らは作戦を変えてくる可能性がある。

 そうなったら折角のアドバンテージが無くなってしまう。

 なのでザボエラに拉致される予定のブラス爺ちゃんには話すわけにはいかない。

 拉致を未然に防ぐことも出来なくはないが、そうしたらクロコダインが仲間になるフラグが立たなくなるしね。

 

 ちなみにポップにも伝えないのは原作知識を知ると成長が阻害されてしまうかもという懸念からだ。

 アイツは追い詰めれば追い詰めるほど良い味が出てくる。

 

「おそらく物語に限りなく近い世界でしょう。なぜなら俺、つまり主人公ダイに前世の知識など無かったのですから」

 

「なるほど、非常に興味深いお話ですね」

 

「証拠もあります。例えば、アバン先生が装備しているカールの守り。それは先生がカールから旅に出る時にフローラ姫から輝聖石と交換で頂いたのでしょう」

 

「ええ!? そんな話まで物語になっているんですか!」

 

「ぶっちゃけ先生は前作主人公的な扱いですからね」

 

 こうして俺は語った。

 魔王軍の首魁である大魔王バーンは地上を黒の核晶で破壊しようとしていること。

 アバン先生の修行と魔軍司令ハドラーとの戦いの顛末。

 ロモスでマァムに出会い獣王クロコダインと戦うこと。

 パプニカで魔剣戦士ヒュンケルを倒し仲間にすること。

 バルジ島で氷炎将軍フレイザードと戦いアバンストラッシュを完成させること。

 テラン王国にて(ダイ)が自分が(ドラゴン)の騎士だと自覚し、父親の竜騎将バランと戦うこと。

 戦いは激化していき、魔界の神とまで恐れられた大魔王バーンを倒すこと。

 そして最後には黒の核晶(コア)の誘爆を防ぐ為に(ダイ)は自身を犠牲にして行方不明となって話が終わることを。

 

「未来では想像を絶する出来事が待ち受けているのですね……」

 

 流石は大魔王が警戒する叡智を持つ男、アバン先生。

 あれだけの長い物語を一度聞いただけで理解したようだ。

 

「ですが色々と納得がいきました。ところで今のダイくんは原作よりも強いようですね」

 

「はい、ストイックな修行で格段に強くなってます。ですが前世の魂という異物が入り込んでいるので、原作より楽になるかは未知数です」

 

「大丈夫ですよ、キミならきっと大魔王バーンを倒せます」

 

「ありがとうございます」

 

 正直、自信はないけどね。

 とはいえ出来なかったら死ぬしかない。

 なので死に物狂いだ。

 

「アバン先生にやって欲しいことは2つです。まず原作通りに動くこと、そして破邪の洞窟に潜り3か月で破邪の秘法を身に付けてバーンとの決戦時に合流することです」

 

 原作通りに動く、これは一番大事だ。

 うっかりハドラーを倒したらミストバーンやバラン父ちゃん辺りが魔軍司令になってしまう。

 そうなったらバルジ島あたりで父ちゃんも参加する魔王軍総攻撃が起こって詰む。

 なにせ彼らは保身で戦力を制限したりしないからな。

 

 破邪の洞窟を3か月で攻略、これも割と大事だ。

 バタフライエフェクトが発生してアバン先生が間に合わなくなったら困る。

 なので時間を指定することで、早期に合流したいと思っている。

 ここだけは原作ブレイクを起こした方が良いのだ。

 

「分かりました。ですが原作に縛られてはいけませんよ。あくまでもダイくんはダイくんなのですから」

 

「ええ!」

 

 こうして特別(スペシャル)ハードコースが始まった。




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