転生ダイの大冒険 作:ジャガン大好き民
励みになっております。
「久しいな……勇者アバンよ!」
「「えっ!?」」
ハドラーの言葉にポップとブラス爺ちゃんの2人が慌ててアバン先生を見る。
魔王を倒した勇者だというのに意外と知名度が無いんですね。
まあ情報伝達とか発展してなさそうな世界だから仕方ないか。
それに先生自体も表立ってソレをアピールする人種じゃないし。
「かつて貴様はこのオレの野望をことごとく打ち砕き、あまつさえわが命をも奪った! あの痛みと屈辱は決して忘れん……!」
ハドラーはアバン先生に向けて忌々しそうに言い放つ。
15年前に獄炎の魔王ハドラーは勇者時代のアバン先生によって討伐されている。
だが、大魔王バーンの超魔力により復活を果たしたのだ。
「お前は、その数百倍にも及ぶ人間の生命を奪ったではないか!」
「フンッ! 笑わせるな。人間など我々魔族に比べれば家畜のような存在にすぎん……たとえ数万数億集まったところで、オレの生命とは釣り合わんわ!」
「……変わらんな。いや、以前にも増して愚劣極まりない性格になった!」
「なんだとぉ~っ!」
「さあ、皆さん。離れていてください」
アバン先生は俺達に避難するように促す。
もちろん俺達はその言葉に従い、遠くから戦いの経過を窺う。
先生は原作と違って、この日は
なのでハドラーにダメージを与えすぎたせいで黒の
そうなったら俺達はお終いだ。
「あれが貴様の弟子か……。聞けば"勇者の家庭教師"などと抜かして、正義の使徒を育成しているらしい。我が魔王軍の侵攻を邪魔する者は誰であろうと許さん! まずは貴様を血祭りにあげてから、貴様の弟子どもを抹殺してやる!」
物陰に隠れて様子を窺う俺達を一瞥すると、ハドラーは口を開いた。
漆黒のマントを翻すと、奴は右腕に魔法力を集中させる。
15年の時を経て、魔王と勇者の対決が再び繰り広げられようとしている。
「あの世で仲良く学芸会でも開くがいい! イオラ!」
それは偽勇者のソレとは桁違いの威圧感を放っている。
だが先生は自らの魔法力を使い光弾を掻き消した。
「魔王が自ら出向いてくるとは考えようによってはちょうどいい! この場で倒して世界の暗雲を晴らしてやる!
ベギラマッ!」
お返しとばかりにアバン先生は
だがソレはハドラーが纏っていたマントこそ焼き尽くすものの、その肉体には焦げ跡一つついていない。
「何の真似だアバン……閃熱と爆裂の呪文は俺が最も得意とするところ。この程度の炎で倒せるとでも思ったのか? 見ろ! 本当のベギラマとはこういうものを言うのだっ!」
「むうううっ! 海波斬!」
ハドラーは
先生は海波斬で呪文を切り裂いて防ぐものの、その威力を完全に殺しきることは出来なかった。
周囲に爆炎が立ち上り、デルムリン島を赤々と照らす。
そして先生は少なくないダメージを受ける。
「す、凄まじい威力だ。以前、戦った時よりも遥かに強くなっている! なぜだ?」
「知りたいか。知ればきっと後悔するぞ。貴様は相変わらず俺が魔王だと思っているらしいからな」
「なんだと!」
「貴様に敗れた俺は大魔王バーン様の手によって蘇ったのだ!以前よりも強靭な肉体を与えられてなっ!」
「大魔王バーンだと!?」
「そして俺は大魔王様の片腕として魔王軍の全指揮権を与えられた……
魔軍司令ハドラーだ!」
魔王よりも遥かに強大な敵がいる。
その事実は俺達を絶望させるのには十分であった。
俺にとっては既知の事実だが、魔軍司令ハドラーの実力を目にした後では抱く感想も違う。
正直、大魔王バーンどころかハドラーに勝てるビジョンが思い浮かばない。
ちなみにアバン先生は既に俺経由でバーンの事は知っている。
つまり先程のやり取りは演技だ。
「クックックッ……! アバンよ。覚えているか15年前のあの戦いを?あの時と同じ言葉を今一度、貴様に贈ろうではないか。己の敗北を悟った今なら素直に聞くことが出来るだろう。俺の部下になれ! そうすれば世界の半分を与えてやるぞ!」
世界の半分ねぇ。
どうせビルダーズの闇の戦士のように『セカイノ ハンブン』と書かれた建物に幽閉とかするんだろう。
というかアバン先生が仲間になったらヒュンケルの兄者が離反するだろうけど大丈夫なんですかね?
それはともかくとして先生の答えは1つだ。
「断る!」
「答えは変わらんか。俺の情が分からんとはなぁ…」
「お前に情などない!もしYESを答えてもいずれは私の生命を奪うだろう。それに大魔王の使い魔に成り下がったお前に世界の半分を与える権力があるとは思えんしな!」
「なんだとぉっ!使い魔だとぉ!」
「図星をさされたみたいだな」
ハドラーは魔王時代より今の方がスペック的には上昇しているだろう。
だがアバン先生に敗北したことやバラン父ちゃんみたいな圧倒的格上を部下につけられたことで精神的に摩耗している。
なので、この指摘は煽り抜きで正しい。
そしてそれを自覚しているのは他でもない本人だ。
「黙れぇっ! もはや生かしておかん! 弟子の見ている前で灰にしてやるわ!」
そう言ってハドラーは両手に魔力を充填する。
あれこそは
対するアバン先生は逆手に剣を持つ。
つまり勇者の名を冠した奥義、アバンストラッシュを放つ気だ。
それにしても自分の名前が奥義とかセンスが凄いよな。
ひぐちカッターみたいなもんだぞ。
「くらえ! イ・オ・ナ・ズ・ン!」
「アバンストラッシュ!」
魔王と勇者の奥義がぶつかり合い大爆発を起こす。
轟音が鳴り響き、爆風が辺りを包み込んだ。
そして結果は……
「ぬぅぅぅっ! 流石は我が命を奪った奥義、大した威力だ……」
ハドラーは胸を大きく切られて青い血を大量に流している。
しかし魔王特有の自動再生能力により傷口は直ぐに塞がってしまった。
「だが……蘇った俺の魔力にはわずかばかり及ばなかったようだな! 衰えたなアバン。いや所詮はその程度が人間の力の限界なのかもしれん」
アバン先生は爆裂呪文を相殺しきれずに攻撃を被弾してしまい膝をついた。
ダメージはハドラーよりも先生の方が大きそうだ。
やはりMPに余裕があったとしても最大火力の撃ち合いでは不利だったか。
このままでは先生が負けてしまうだろう。
……それは原作通りの展開だ。
最終的にアバン先生は俺達守るために
そしてハドラーは深手を負い、後のことを自分の教え子たちに託して散っていくはずだった。
しかし、とあるアイテムの効果によって先生は生き延びることになる。
ここでアバン先生が生き延びたことが露呈すれば、魔王軍の警戒度は跳ね上がる。
同時に教え子達も先生に対する頼り癖がついてしまい成長が阻害されるだろう。
だから今は待機が正解なはずだ。
それに原作通りに動いてほしいと依頼したのは外ならぬ俺だ。
なのに、なのに……。
どうして自分はアバン先生に負けて欲しくないと願うのだろう。
「うおおおっ!」
そう思った時には体が自然と動いていた。
俺の馬鹿野郎!
だけど動いてしまったものは仕方ない、こうなったらなるようになれだ。
「そんなに死に急ぎたいのかアバンの弟子よ。メラ!」
そう言ってハドラーは
やはり俺の事など取るに足らない雑魚だと認識しているのか明らかに手を抜いている。
だが、それが命取りよ。
俺は息を吸い込んでから、こう唱えた。
「ザバ!」
「なにぃっ!?」
炎は水に弱いというのは常識だ。
水流呪文は他の魔法と比べて攻撃力は弱いが、火炎や閃熱属性への対策になるという一点で需要がある。
そして俺は動揺するハドラーに向けてパプニカのナイフで斬りかかる。
「大地斬!」
「ぬぅぅぅっ!」
流石に切断までは出来なかったか。
だけど良いダメージになったはず。
そして俺は直ぐにナイフを抜き離脱しようとする。
「小癪なぁ! メラゾーマ!」
ヤバい、思ったよりもハドラーの動揺が消えるのが早かった。
巨大な火球が此方へと迫る。
回避は無理、未熟な
これは死んだか?
そう思った時、熱波が皮膚を突き刺した。
肌を焦がすほどの熱気が辺りに漂うが、そこまで痛くないし熱くもない。
魔王の獄炎がこの程度なわけがない。
ということは……
「先生!」
「大丈夫ですか、ダイくん?」
アバン先生が俺を庇ってくれたのだ。
無論、その代償として先生は大きく傷ついていた。
本当に申し訳ない。
「チッ! まだ、そんな余力があったとは…」
「先生こそ大丈夫ですか!?」
「そりゃあ痛いですよ。だけど痛がっている場合じゃありません。奴のパワーはかつて魔王だった時以上……しかも大魔王が上に控えているというんですからね。敵は私の想像をはるかに上回る存在でした。今の我々のレベルでは敵いません」
「やはり、そうですか」
「だからこそ奴だけは…魔軍司令ハドラーだけは私がこの場で倒します!そしてダイくん、ポップ。貴方達の手でいつか必ず大魔王バーンを倒してください!」
そう言ってアバン先生は俺に何かを渡した。
「それはアバンの印! 卒業の証だ! ま、まさか先生……」
最期の時が近いことを悟り、ポップは涙を流した。
そしてアバン先生はポップにもソレを渡す。
原作を知る俺は先生が何をしようとしているのかを知っている
だから何も言わないように口をつぐむ。
迂闊なことを言えば狙いがバレてしまうかもしれないからだ。
「弟子との別れは済んだのか?」
「……勝負だハドラー!」
アバン先生と魔王ハドラーの最後の戦いが始まる。
原作と違って先生は
だけど純粋な地力はハドラーの方が上なので徐々に追い詰められていく。
先生も魔法を放ってはいるが相手の嵐のような連撃の前には溜めの少ない中級呪文しか放てず、その程度では有効打を与えられない。
「死ねぇっ! アバン!」
そうして戦いは続き、遂にハドラーの痛恨の一撃がアバン先生の鳩尾を襲う。
やや大振りにも見えるその攻撃を先生は回避も防御もせずに喰らった。
「貴様、なぜよけん!?」
「でやあああっ!」
ハドラーが疑問を口にすると、アバン先生は奴のこめかみに両手を突き刺した。
「きっ、貴様、この呪文は!」
「ハドラー、お前も知っているだろう? 己の全生命エネルギーを爆発力と変えて敵を討つ呪文を……」
「まさか! まさかぁ!! やめろっ!!! やめんかあぁっ!!!」
先生の狙いを知ったハドラーは慌てて両手を引き剥がそうとするが、腕はびくとも動かない。
そして……
「メ・ガ・ン・テ!」
みなさん、あとはたのみますよ……アバン先生のそんな声が聞こえた気がする。
果たしたそれは幻聴だったのかそれとも……
そして
凄まじいエネルギーの奔流は天へと駆け上り、空に穴を穿ったと錯覚するほどだ。
そして地上には小さなクレーターと墓標のように突き刺さった先生の剣が残されていた。
「先生……!」
「なんということを……」
ポップとブラス爺ちゃんがが悲嘆の声を上げた。
そして俺は無言のままその光景を見つめて考える。
アバン先生はカールの守りがあるから生きているはずだ。
だけど本当に大丈夫か?
先生がカールの守りを持っていることを確認したのか?
原作と効果が同じだと誰が保証できる?
そもそも原作知識なんてものは俺の妄想に過ぎないのではないか?
自分の思考に、もしもの可能性が割り込んでくる。
大丈夫なはずだ、信じろ。
そう自分に言い聞かせながら心を落ち着かせる。
すると、不意に地面の一部が揺れ動く。
「先生っ……!?」
「違う!」
ポップの言葉を否定する。
そして俺の言葉を肯定するかのように出て来たのはハドラーだった。
「ハァ、ハァ、ハァ……クハハハハッ! やはり衰えたわアバンめ! 自らの命をかけたメガンテでも俺にトドメを刺すには至らなかった! これでもう恐れるものは何もない! 魔王軍の天下だ!」
ハドラーは全身から青い血を流しながら此方に向かってくる。
ここで退散してくれると嬉しかったが、そう簡単にはいかないよね。
俺はパプニカのナイフを構えた。
「だが念のために貴様ら、アバンの弟子共は根絶やしにしておかなくてはな!」
原作通りなら、ここでダイが怒りで
だけど俺はアバン先生が生きている可能性が高いことを知っているから怒れない。
これが原作知識の弊害という奴だ。
原作知識で有利に立ち回るだけじゃ不公平ですからね。
弊害も発生しないと。
※転生ダイの装備
武器:パプニカのナイフ
頭部:覇者の冠
胴体:布の服
装飾:アバンの印
原作では『印』ではなく『しるし』表記なのですが読みやすさを優先して変えております。