転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

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レベル8 魔軍司令

「さあ、死ぬが良い!」

 

 そう言って魔軍司令ハドラーは満身創痍になりながらも此方に向かってくる。

 一方の俺は原作知識のせいで紋章の力を使えないわけだが、このままだと殺されるので戦うしかない。

 というわけでパプニカのナイフを構え直す。

 

「やるぞ、ポップ!」

 

「だけど、先生を倒した相手に勝てるわけないぜ……」

 

「大丈夫だ、既にハドラーは疲弊している。今の奴はクソ雑魚おおナメクジだ!」

 

「おおナメクジだとぉッ!? 許さん! メラミ!」

 

「ザバ!」

 

 ハドラーはアバン先生と戦って消耗している。

 その証拠に上級呪文(メラゾーマ)ではなく中級呪文(メラミ)を撃ってきた。

 なので水流呪文(ザバ)でギリギリ相殺することに成功する。

 おそらくハドラーはこれで魔力切れだろうな。

 アバン先生の魔力(MP)に余裕があったおかげで原作よりも疲弊している。

 

「クソッ! こうなったらヤケだ! メラゾーマ!」

 

 ポップはハドラーに向けて攻撃を行う。

 これによりハドラーの粘膜が蒸発し皮膚はローストされる。

 とはいえ獄炎の魔王だっただけあって大したダメージにはならない。

 だが、俺達の攻撃はまだ終わっていない。

 

「デイン!」

 

「グワアアッ!」

 

 俺の雷撃呪文(デイン)がハドラーの肉体を貫いた。

 すると次の瞬間、彼は驚愕の表情をした。

 

「まさか、貴様……その呪文はぁッ!?」

 

「そうだ、俺が(ドラゴン)の騎士だ」

 

「バカな!? 天に2つの太陽がないように、地上に2人の(ドラゴン)の騎士がいるなどありえぬわッ!」

 

 どうやらハドラーは雷撃呪文が(ドラゴン)の騎士にのみ許された権能であることを知っているようだ。

 まあ部下にバラン父ちゃんいるから当然である。

 その為に俺はコレ(デイン)を習得したわけだしな。

 

「じゃあ、証拠を見せてやる」

 

「証拠だと?」

 

「はあっ!」

 

 アバン先生は生きている可能性が高いから腹の底からは怒れない。

 とはいえ爺ちゃんを邪気に染めたり、デルムリン島を襲撃したり、アバン先生を殺しかけたり、俺達を殺そうとしたりしているから、少しくらいはハドラーに怒っているのは事実。

 なので一瞬だけ竜の紋章を発現させることができる。

 まあ本当に一瞬だけなので戦闘で活かせることはできないが。

 

「バカな……あの紋章は……!!」

 

 俺の額を見ながらハドラーは戦慄した。

 これでバラン父ちゃんと俺の関係性を知らしめることが出来たな。

 バルジ島での魔王軍総攻撃の際に父ちゃんがいたら面倒だからな。

 今のうちに布石を仕込まないといけない。

 

「益々ここで殺さねばならんな、貴様は……」

 

 そう言ってハドラーは両拳から硬質化させた中手骨、地獄の爪(ヘルズ・クロ―)を突出させて襲い掛かる。

 アレは俺の柔肌くらい余裕で貫いてくるので絶対に当たってはいけない。

 

 それにしても部下の縁者だと分かっているのに殺そうとするってマジ?

 まあ俺とバラン父ちゃんが合流したら魔軍司令としての立場が危うくなるから仕方ないんだけどさ。

 でも獄炎の魔王時代ならそんなことしなかったと思うぞ。

 ガンガディア達も冥府で泣いてるぜ。

 

「死ねッ!」

 

「海波斬!」

 

 闘気で強化したパプニカのナイフと地獄の爪(ヘルズ・クロ―)がぶつかり火花を散らす。

 すると闘気で強化された物質同士は破裂音のような悲鳴を上げる。

 そして俺達は何合か撃ち合う。

 竜闘気(ドラゴニックオーラ)なしだが何とか拮抗出来ている。

 やはりアレが効いているな。

 

「こ、こんなはずはない! いかにメガンテで受けたダメージが大きいとはいえ! いかに相手がアバンの弟子だとはいえ! こんなチビが俺と戦えるはずかない! それに、この倦怠感はなんだ!?」

 

「それはナイフに魔のサソリの毒を塗っておいたからだな」

 

「小癪なぁ!」

 

 魔のサソリの毒は解毒呪文(キアリー)でないと治療できない。

 だが既にハドラーはアバン先生との戦いでMPを消耗しているので満足にソレを唱えることも出来ないはずだ。

 つまり毒に苦しんだまま戦わないといけない。

 しかし、結構前に毒を喰らわせたのにようやく効果が出るとは大したタフネスだ。

 だけど、そのせいでナイスタイミングで症状が発生した。

 結果オーライだな。

 

「海波斬!」

「ヒャダルコ!」

 

 そうして戦いは続く。

 フォーメーションとしては俺が前衛で足止めをしてポップが魔法を乱射するという鉄板戦術だ。

 更には……

 

「ベホイミ!」

 

「ブラス爺ちゃん!」

 

「可愛い孫を傷つける者は魔王だろうと許せんわい!」

 

 爺ちゃんの回復呪文(ベホイミ)で体力が回復する。

 ハドラーが弱ったことで島を覆う邪気も弱まったので爺ちゃんも戦えるようになったと。

 回復役の登場で状況はますます有利になったな。

 さあ、これでフィニッシュだ。

 

「先生の技がどれだけ凄いか受けて見ろ!」

 

 俺はパプニカのナイフを逆手に持ち替えてから後ろへと引いた。

 これこそは世界を救いし勇者の奥義……

 

「アバンストラッシュ!」

 

「ぐおおおおおっっ!!」

 

 A(アロー)タイプのストラッシュが凄まじい勢いでハドラーに襲い掛かる。

 ハドラーは両腕を交差させて防御を試みるが、右腕が切り落とされて防御が不完全に終わる。

 そして斬撃は胸元から腹部にかけて斜めに切り裂いた。

 既に奴の右腕は切断寸前だったから何とか落とすことが出来たな。

 

「お……おのれ! 小僧め! 忘れんぞ、この屈辱と貴様の名は…! 必ず殺してやる…ダイ!」

 

 そう言ってハドラーはキメラの翼を使って撤退する。

 用意が良いことで。

 

「何とか乗り切った……」

 

 そう言って俺は地べたに寝転がる。

 紋章の力が無くても何とか撃退することが出来た。

 この調子で原作を全うするぞ。

 

 ■□■□■□■□■□■□■

 

 ハドラー襲撃から一日が経った早朝の事。

 穏やかな日差しがデルムリン島に降り注ぐ。

 天気は快晴、海の機嫌も穏やかそのもので風は強く絶好の航海日和だ。

 そんな朝日の中、俺とブラス爺ちゃん、そして島のモンスター達は海岸にいた。

 海岸近くには小舟が置いてある。

 

「行くのか、ダイ……」

 

「うん!」

 

 爺ちゃんの言葉に俺は迷うことなく頷く。

 

「できることなら、ワシもついていってやりたいのじゃが……この島を覆う結界を一歩でも出てしまったら、ワシは魔王の手先になってしまう」

 

「平気さ、爺ちゃん。この島でみんなと待っててよ。俺が必ず大魔王を倒してやるからさ」

 

「ダイ……」

 

 その言葉にブラス爺ちゃんは涙を流す。

 おいおい、涙は大魔王を討伐した後だろう。

 

「それで、ポップは?」

 

「……泣き疲れて、眠っとるよ。アバン殿の死がよほどショックだったんじゃろうなぁ……」

 

 爺ちゃんは顔を沈ませながら答えた。

 昨日ハドラーを撃退してからというもの、ポップはほぼ泣き通しだった。

 夕飯も碌に食べることなく、ずっと涙を流していた

 まあ気持ちは分かるよ。

 

「さてと、これで全て積み終わった」

 

 こうして俺は積み荷を全て小舟に詰め終わる。

 背嚢の中には数日分の食糧、薬草類、500ゴールド(アバン先生の私物から拝借した)などを用意してある。

 しかも原作と違って覇者の冠を装備してあるし準備は万端だ。

 

「人間の世界は貨幣経済。ゴールドさえあればある程度の事は出来るはずじゃ」

 

 言われるまでもなく、お金が重要なことは前世でよく思い知っている。

 ちなみに原作の原作(ナンバリング)と違ってダイ大世界のモンスターは倒してもゴールドを落とさない。

 まあアレはモンスターから剥ぎ取った素材や装備品を入手し、それらを売って通貨に変換する作業を省いたものなのだろう。

 

「路銀が尽きたら薬草を売るのじゃぞ。あれは質が良い物じゃ。人間の世界でも高く売れるはず」

 

 デルムリン島は植物系のモンスターが増殖しやすい土壌をしている。

 現に15年前には旧魔王軍幹部である亜人面樹のキギロは島で力を蓄えていた。

 更には温暖な気候でもあるので薬草の原料になる植物も育ちやすいのだ。

 

 おそらく旧魔王軍時代のブラス爺ちゃんは薬草の質の高さを重視してデルムリン島をモンスター養成所に選んだのだろうな。

 モンスターを兵士にするには戦闘訓練が必要だ。

 そして戦闘訓練をするということはそれ相応に傷つくこともあるだろう。

 つまり効率の良い訓練を行う為には医療設備、つまりは質の良い薬草が潤沢に必要なのだ。

 そう考えると魔王時代のハドラーが兵士育成の責任者に回復呪文(ベホイミ)を使える鬼面道士(ブラス爺ちゃん)を担当させた理由も良く分かる。

 この世界でも医療従事者は重要だ。

 

「それとゴメちゃん、隠れてないで出てきてよ」

 

 俺は小舟に積んである袋の1つに近寄りながら言葉をかける。

 すると金色に輝くスライムことゴメちゃんが出てきた。

 

「ゴメのやつ隠れておったのか……」

 

「ピー……」

 

 自分は俺の親友だから、旅について行きたかった。

 でも正直に言えば反対されるだろうから、こうして忍び込んで行こうと思っていた。

 彼はバツが悪そうにしながらもそう答えた。

 

「……ゴメちゃんは、魔王の邪悪な意志の影響を受けなかったしな。一緒に行こう!」

 

「ピィ―!」

 

 まあ足手纏いにはならないだろう。

 それに空を飛べるのはデカい。

 ロモスではソレ(飛行能力)が役に立つはずだ。

 

「しかし危険ではないかのう?」

 

「ピー! ピー!」

 

「……はぁ、わかったわい」

 

「へへへ、よろしくなゴメちゃん」

 

「ピー!」

 

 しばしの押し問答の末に、ブラス爺ちゃんも折れた。

 ゴメちゃんは魔王の邪気を受けても凶暴化しなかったのは事実であり、俺という強力な用心棒がいるなら大丈夫という判断だろう。

 

「まずはどこへ行くんじゃ?」

 

「ロモス王国さ。まずは近場から行こうと思う。それに魔の森の地図もあるしね」

 

 ロモス王には国宝である覇者の冠を貰った恩があるからな。

 それに原作通り話を進めた方がこれからの展開を予想しやすい。

 

「無理をするでないぞ……ダイよ」

 

「うん!」

 

 そう言って爺ちゃんは保護者として心配の言葉をかける。

 まあ大魔王討伐の旅は割と無理をしないといけないんだけどね。

 全ては地上破壊を防ぐためだから仕方ない。

 

「それじゃあ、みんな元気で……」

 

「ダイ~っ!!」

 

 船出の準備は完了して見送りのモンスター達も集合し、今まさに大海へと漕ぎ出さんとした瞬間のことだ。

 突如としてポップの声が聞こえた。

 声がした方向へと視線を向けると彼が大急ぎで駆け寄って来た。

 もちろん俺は船出の準備を止めた。

 

「ふ、ふざけんじゃねえぞ! 俺を置いて行こうなんて……!」

 

 ここまで全力で走ってきたのだろう。

 額に大粒の汗を浮かべ、息を切らしている。

 旅立ちに際して格好はまともに整えているが、身軽にするためか荷物は持っていないようだ。

 だが問題はない、積み荷はちゃんと3人と1匹分用意してある。

 そして俺は小舟へとポップを乗せた。

 

「ポップ! 来てくれたんだ!!」

 

「か、勘違いするんじゃねぇぞ! 別に、魔王軍と戦いに行くんじゃないんだ! あんな島にのんびりしていたくねぇだけなんだからな! そこらへんハッキリさせとくぞ! いいな!」

 

 男のツンデレは需要ないぞ。

 まあ、いいか。

 (ダイ)、ポップ、ゴメちゃん、これで役者は全て揃った。

 

「それじゃ、出発だ!」

 

 小舟を海に浮かべると、畳んでいた帆を張る。

 帆は風を掴むとその勢いでグングン進んでいく。

 

「今日は良い天気で絶好の航海日和、だから目的地まであっという間に到着しそうだな」

 

「だけど気を付けて。魔王の邪気は海にまで及んでいるはず。だから……」

 

「クオオオ!」

 

「海波斬!」

 

 俺達が乗っている小舟めがけて大王イカが突進してきた。

 それほど脅威を感じるモンスターではないが、小舟が攻撃を受けると沈みかねない。

 なので先制して海波斬で切り捨てた。

 

 破邪呪文(マホカトール)の聖なる結界の範囲は地上だけ、なのでデルムリン島に住んでいた水棲のモンスターは普通に凶暴化している。

 現に、あの大王イカはデルムリン島防衛戦で活躍した友達の1人だ。

 なので殺しはしていない。

 ……俺に友達を傷つけさせた報いは必ず受けてもらうぞ、大魔王バーン!

 

「そういやポップ達はロモス王国のある大陸から船でデルムリン島に来たんだろう? 島にキメラの翼があれば一瞬で移動出来たのになぁ…」

 

「仕方ないだろ。キメラの翼は高価なんだぜ」

 

「そうなの?」

 

 確かに原作でキメラの翼を使ったのはハドラーのみだ。

 そして人間側は黒の核晶を凍らせる時ですら誰も使っていなかった。

 まあ誰でも瞬間移動できるアイテムなんて便利すぎるもんな。

 そんな凄いアイテムが原作の原作(ナンバリング)みたいに簡単に買えるわけないか。

 

「俺かポップがルーラを覚えてくれたらいいんだけどなぁ…」

 

「ルーラかぁ。確かにあったら便利だな」

 

 さりげなく俺はポップに移動呪文(ルーラ)を覚えるように促した。

 これには原作よりも早く彼を強くしたい意図がある。

 

 ――バッシャーン!!

 

 俺達がそんな会話をしていると、急に船底から軍隊ガニというモンスターのハサミが垂直に飛び出してきた。

 いつの間に!

 ……というか船底を攻撃されたらマズいのでは?

 嫌な予感を覚えて足元に目を移すと、既に小舟の底板が破られており、そこから大量の浸水が始まっていた。

 

「うおおおおお! まずいよ、ポップ!」

 

「うわぁぁぁ! マジで沈む!」

 

 この後、俺達はすんでの所でヒャドの氷で穴を塞ぐことに思いつき、どうにか危機を乗り切ることが出来た。

 そして数日後、どうにかしてラインリバー大陸 ロモス王国南にある魔の森近郊の海岸にたどり着いた。

 ……前途多難すぎるな、この旅は。




 マホカトールの結界って地上だけですから海のモンスターは範囲外ですよね。

※キメラの翼が貴重品な設定
 勇者アバンと獄炎の魔王の24話でブロキーナが『ジニュアール家に残されていた数少ないキメラの翼』と言っていたことや、黒の核晶凍結時に人間側が一切使っていないなど人間界では希少な品と推察できる。
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