転生ダイの大冒険   作:ジャガン大好き民

9 / 42
レベル9 魔の森

 ロモス王国、それは雄大な自然を抱えるラインリバー大陸全域を支配する南方の国家だ。

 俺達は国内に位置する巨大な森林地帯、魔の森へと足を踏み入れていた。

 木々は折り重なるように群生しており、まだ時刻は昼で天気は快晴だというのに空は常に薄暗い。

 もちろん中には直射日光が地面を照らしている場所もあるが、そういう場所には大抵モンスターが占拠している。

 どうやら彼ら(モンスター)も薄暗いのは嫌らしい。

 だから大魔王バーンは魔界に太陽を齎そうとしたのかな?

 

「メラミ!」

 

「海波斬!」

 

 ポップの放った火炎呪文(メラミ)で悪魔の目玉がローストされた。

 そして空を飛んでいる人喰い蛾は俺の放った飛ぶ斬撃(海波斬)によって切り裂かれる。

 今更、雑魚モンスターごときでは相手にならないな。

 だけど戦場の監視役である悪魔の目玉に遭遇したということは、魔王軍に俺達の位置を補足されてしまったということでもある。

 これは近いうちに俺達を狙う刺客が来るだろう。

 

「悪魔の目玉焼きに人喰い蛾の刺身の出来上がりだな」

 

「おいおい、食べる気かよ?」

 

「これも貴重なタンパク源です」

 

「ピピィ!?」

 

 俺の冗談をゴメちゃんは真に受けて驚く。

 でもビルダーズではモンスターの肉を食べていたし、割といけるかもな。

 少しだけ味見でもしてみるか。

 ……うーん、マズい!

 ドラクエ界のベア・グリルスには成れなかったよ。

 

「冗談はこれまでにして……ゴメちゃん、頼んだよ」

 

「ピピィ!」

 

 魔の森は複雑なので道に迷いやすい。

 なので定期的にゴメちゃんが上空から俯瞰して見ることで正しい道のりに進んでいるかチェックしている。

 

 これにより俺達は迷うことなく進めている。

 原作通り森を迷ってマァムに遭遇するなんていう偶然に頼る気はない。

 なにせバタフライエフェクトによりイベントが発生しない可能性もあるしな。

 こういう細かい気遣いが重要なのだ。

 

「さあ、あと少しで村につくよ。今日はそこで一泊しよう」

 

 そこにはアバンの使徒の1人であるマァムがいるはずだ。

 彼女は是が非でも仲間にしたい。

 それに距離的にも村に着く頃には時刻は夕方になっているはずだ。

 一泊するには丁度よい時間である。

 

「村ねぇ……こんな森の中に本当に村なんてあるのかよ?」

 

「ゴメちゃんを信じろ」

 

 辺りを見回せば、暗さと湿度が相まって何とも言えない恐ろしさを感じる。

 確かにこんなモンスターがウジャウジャいる場所に村を作るなんて逞しすぎるな。

 流石は勇者の仲間を輩出した村だ。

 

「それによぉ、モンスターが凶暴化した影響で村人なんてとっくに避難していることもあるんじゃないか?」

 

 確かにポップの指摘は正論だが、俺は原作知識で村に人がいる事を知っている。

 とはいえ客観的にはネイル村に人がいる可能性は少なそうだ。

 

「それでもいいじゃないか。人のいない家でも一泊くらいは出来るし。それに住民が残した物資とかも回収できるから一石二鳥さ!」

 

「お前って割と邪悪だよな」

 

 まあ原作の原作(ナンバリング)の勇者達だって他人の家のタンスやクローゼットを勝手に漁るくらいしているからな。

 これくらいは当然である。

 

「それに魔王復活してから数日だし流石に人もいるだろ。というわけで行こう!」

 

「ピィー♪」

 

 そうして会話しつつ、モンスターを倒しながら先を急ぐ。

 魔の森は迂闊に足を踏み入れれば彷徨い続けて二度と出ることの出来ない樹海のように思われるかもしれない。

 だが曲がりなりにもロモスの王都付近に存在する森が、そのような魔境であるはずもないのだ。

 森の中には街道が整備されているので、その道に沿って移動すれば迷うことはない

 まあ魔王復活の影響でモンスターが凶暴化しているので普通の旅人にとっては危険かもしれないが、アバンの使徒のような実力者にとっては脅威にすらならない。

 なので簡単に森の中を移動できる。

 

「やっと着いた!」

 

 それから数時間ほど経ち、なんとか俺達はネイル村に到着した。

 

「それに村人もいるぜ」

 

 俺達の視線の先には小さな村があった。

 木製の簡易的な柵が村の周りを囲んでおり、その内側には木造の家々が立ち並ぶ。

 そして村の広場では子供達の遊ぶ姿が見え隠れしている。

 魔王が復活してモンスターが凶暴化しても緊迫している様子はないようだ。

 

「そろそろいい時間だし。今日はここに泊まらせてもらおうぜ」

 

 ポップがそう言いながら指を空に向ける。

 既に西の空には夕日が赤くに輝いており、もうじき夕暮れ時を迎える時間だ。

 このまま進めば、ロモス王城に着く前に間違いなく夜となるだろう。

 無理に進んで森の中で野宿するよりも、ここで一泊させてもらった方がいい。

 

「うん、そうだね。どこかで泊めてもらえればいいんだけど」

 

 旅人の先輩であるポップ曰く、このような小さな村に宿屋があるとは限らない。

 どこか親切な村人の家に泊めて貰えれば御の字。

 最悪、馬小屋で一夜を明かす可能性もあることを覚悟すべきとのことだ。

 

 まあゴールドもそれなりにあるし、宿泊費代わりになるアイテムも持っている。

 泊まるくらいなら何とかなるだろう。

 ということで村の中へと入る。

 するとポップが軽快な足取りで村人Aへと近づいた。

 

「ちゃっす、どうも」

 

「おや、こんにちは。旅の人かい? ここはネイル村だよ」

 

 ポップは村に入るなり、入口近くにいた村人Aへと挨拶をする。

 対する村人Aも彼の存在に気付くと挨拶を返した。

 

「はい、ロモスの王都へ向かう途中なんです」

 

「なるほどねぇ。お城までなら少し遠いね」

 

「じゃあ今日はネイル村に泊まって明日あらためて出発しようと思うんですけど、この辺りに宿屋はあります?」

 

「近くに宿屋はないね。小さな村だし、ここら辺は旅人も少ないからねぇ。なにせ魔の森には大量のモンスターがいるから」

 

 やはりネイル村に宿屋は無いか。

 まあ殆どの町や村に宿屋があるナンバリング世界が異常なだけだな。

 

「なら、どこか泊めてくれる親切な人なんて知りませんか?」

 

「うーん、とりあえず長老様に相談してみるといいよ。村の奥の家がそうだから、訪ねてみなさい」

 

「あいざいますぅ!」

 

 ポップは一瀉千里に村人Aと会話を繰り広げる。

 それはまるで芝居のようにスラスラと進んでいた。

 アバン先生と長く旅をしているだけあって、この手の交渉はお手の物か。

 流石だな。

 

「じゃあ長老さんの家に行こうぜ!」

 

「おう!」

 

 そして俺達は長老の家へと向かおうとする。

 その途中で事件は起きた。

 

「動かないで!」

 

 えー、我々はピンク髪の美少女から銃口を向けられております。

 それにしても銃なんてドラクエには似合わない近代的な物を持っているな

 ということは……

 

「待ってくれ。俺達は普通の旅人だ。怪しいものじゃない」

 

「なら、なんでモンスターを連れているのかしら?」

 

「ピピィ!?」

 

 少女はそう言ってゴメちゃんを指さす。

 そういや彼はモンスターだったな。

 そしてモンスターの殆どは魔王の邪気によって人類の敵になっているので警戒するのは無理もないな。

 だけど、いきなり銃を向けるのは酷くないか?

 これだからネイルッパリは。

 

「俺はアバンの使徒だ」

 

 そう言って俺は装備しているアバンの印を少女に見せる。

 これは輝聖石という貴重な物質をアバン先生の家系にのみ伝わる呪法で加工したアイテム。

 つまり偽造は不可能なので分かる人には身分証明書代わりにもなる。

 

「確かに本物ね……」

 

「それでアンタは何者だ?」

 

「私の名前はマァム、貴方達と同じアバンの弟子よ」

 

 そう言って少女はアバンの印を俺達に見せつけた。

 やはり彼女がマァムだったか。

 まあ薄々感づいていたけど。

 

「それでネイル村に何の用かしら?」

 

「ああ、ロモス王に助太刀すべく王都に向かっていたんだ。それで日が傾いてきたから今日はここに泊まろうと思っていた」

 

「なら、私達の家に泊まるのはどうかしら? 同じアバン先生の弟子の誼みよ」

 

「おお、それはありがたい!」

 

 こうして俺達は目的地を長老の家からマァムの家へと変更する。

 

「それで、マァムだっけ? お前はアバン先生からどんな修行を受けたんだ?」

 

「私は僧侶の修行を受けたわ。その教えを活かして村を守っているわ」

 

「けど、村の近くにはモンスターが出て来るだろ? 攻撃力のない僧侶がバギ系の呪文だけでそこまで戦えるのかよ?」

 

 ポップが質問をすると、マァムは腰のホルスターから銃を取り出して俺達に見せびらかす。

 

「それは?」

 

「確か、鉄砲って武器だろ」

 

「ええ、これはアバン先生が私にくれたの。魔弾銃といって、魔法を撃ち出せるのよ」

 

「魔法を!?」

 

「そう、この弾丸の中に予め魔法を詰める必要があるんだけどね」

 

 そう言いながらマァムは弾丸を取り出した。

 弾丸の先には宝石が付いており、そこに魔法を封入する構造になっているようだ。

 俺も欲しいくらいには便利な武器である。

 こんなことならアバン先生に造ってもらうべきだったか?

 ……いや、流石に3日で用意するのは無理か。

 

「なるほど、それがあるから攻撃力の低さもカバーできるってわけか」

 

「ええ、私は攻撃系の魔法が使えないから助かってるわ」

 

 マァムの説明に納得したようにポップは頷く。

 まあ彼女の強さは魔弾銃だけではないけどな。

 戦士ロカ、つまりは父親譲りのパワーも長所の1つだ。

 

「さ、ここが私の家よ」

 

「あら、マァム。今日はお友達を連れて来たのね」

 

「あっ、母さん! 紹介するわ母のレイラよ」

 

「ええ、母のレイラです」

 

 そう言うとレイラさんという美しいマダムはペコリと丁寧に会釈をした。

 この人が15年前には対魔忍をやっていたんだから分からないものである。

 

「ねぇ、母さん。この子達もアバン先生の弟子なんですって!」

 

「まぁ、アバン様の……」

 

「えっ! アバン先生を知っているのか!?」

 

「知っているも何も母さんと死んだ父さんはアバン先生と一緒に魔王と戦ったんだから」

 

「ええっ!?」

 

 それを聞いたポップは驚愕する。

 マァムの両親、戦士ロカと僧侶レイラはかつてアバン先生と共に15年前に地底魔城で旧魔王軍と戦った。

 つまりマァムは英雄の娘、サラブレッドというわけだ。

 

「魔王を倒し世界が平和になった後にアバン様は一度この村を訪ねてこられて、その時にマァムを教えてもらったんです。もう4~5年前になりますかしら…」

 

「そっか、もうそんなになるのね……」

 

 レイラとマァムは在りし日の記憶を思い出すように遠い目をする。

 一方のポップは何とも言えない表情をした。

 

「ねぇ、母さん。これも何かの縁よ。だから彼らを私達の家に泊めてくれないかしら?」

 

「それがいいわ。ぜひ泊っていって。久しぶりにアバン様の話を聞きたいわ」

 

「えっ! で、でも……」

 

 するとポップはバツが悪そうな顔をする。

 アバン先生が実は生存していることを知らない彼からすれば、マァム達に先生が死んだと言いたくないのだろう。

 そして彼女達の家に泊まれば必然的に先生の話をしなければならない。

 

「喜んで!」

 

「おっ、おい! ダイ!」

 

「人の善意は受け取っておくもんだぜ、ポップ」

 

 だけど俺としては原作通りマァムを仲間にしたいので断る理由が見つからない。

 というわけで諸手を挙げて賛成する。

 

「それで、宿泊代金なんですけど……」

 

「あらあら、アバン様のお弟子さんからゴールドなんて取りませんわ」

 

「いえ、モンスターが凶暴化してネイル村も色々と大変でしょうから……」

 

 そう言って俺はレイラさんに1つの袋を渡した。

 すると彼女は中身を見て喜色を浮かべる。

 

「あら、これは薬草と毒消し草ね」

 

「はい、つまらないものですが…」

 

「そんなことないですわ。今はゴールドよりも薬草類の方が助かります」

 

 ネイル村は魔の森という危険地帯の中に存在する村だ。

 なので住民が森に生息するモンスターに襲われる可能性もあり、ましてや魔王復活によりその可能性は以前よりも高くなっている。

 決してゴールドが不要というわけではないが、薬草類を買うゴールドがあっても現物が無いという事もありえる。

 つまり現物の方が助かるというわけだ。

 

「……それに質もいいですわ」

 

「わかりますか」

 

「ええ、元僧侶ですから」

 

 この世界の僧侶は回復系の魔法を使えるので、聖職者よりも医療従事者としての側面が強い。

 なので薬草を使った医療の心得があるのだろう。

 そしてデルムリン島は温暖湿潤な気候で土壌も豊かなので薬草の質が高い。

 

「じゃあ、家に入って下さいな。今日は腕によりをかけて料理を作りますわ」

 

 こうして俺達はレイラさんの家で一晩厄介になることになった。




ここまで見てくれてありがとうございます。
良ければ高評価、お気に入り登録、感想をつけてくださると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告