木曜深夜に放送してそうなディストピア物に転生した。 作:蒼花河馬寸
俺には前世の記憶が在る。前世の俺は交通事故であっさりと逝った。轢かれそうな人を庇っただとか、歩きスマホ前方不注意だとかではなく、単に赤信号を悠々と無視した乗用車と衝突しただけだ。
キキーッ!!ドンッ!!御終い。という、実にあっけない最期だった。まあ……もう終わった事だし、さっさと次に進もう。
そんなこんなで第二幕。今世の名は海導燎(カイドウ リョウ)。木曜深夜に放送してそうなディストピア物に転生した。木曜深夜に放送してそうなディストピア物に転生した。大事な事なので二回言いました。
人類が『減り過ぎた』人口と『異常気象』対策から、各国で政変を起こして既に一世紀が経っていた。我が国「ジャポン」も例外ではなく、政府は迅速に集権化を進め、気が付けば誰も中央政府には逆らえない現状が出来上がっていた。
「海導君、此の書類も頼めるかい?」
「了解です。」
見ての通り、俺の職場は政府の匂いが微塵もしない。まあ何処もこんな感じらしい。『粛清!!修正!!承知しました、だろ!!』みたいなマジモンは中央政府にしか居ない。実在はするらしいんだよなぁ……
「そろそろ新人の時期ですし、また忙しく成りますね。」
「そうだね。『怪異』も年々強く成ってるからね。」
此の世界には怪異と呼ばれる異形の者共が存在する。妖怪や悪魔と呼んだり、其の辺は個人の自由だが、怪異は世界中に出現しており、確実に人類の命を脅かす存在と成っていた。そういった側面が有るからこそ、政府の締め付けが緩かったりもするのだ。
「さてと、そろそろ時間だ。私は帰るが、海導君も詰め過ぎるなよ。」
「係長、勿論ですよ。」
気の入った声に、俺は端末から視線を上げた。
「本当に無理はするなよ?一係は君が最古参なんだ。怪異との戦闘ではなくて、書類仕事にやられたなんて事に成ったら誰を恨めば良い?」
「はは、そりゃ政府しか居ないでしょう。」
「其れもそうだな……では、また明日。」
「はい。お疲れ様です。」
公安衛生局対人外課一係の長である野間口さんがそう言うと、自分の席に戻って行った。俺は其の背中を見送ると、端末の画面に視線を戻す。画面には一枚の報告書が映っており、身元不明の男性の情報が載っていた。
公安衛生局はジャポン中央政府に直属する機関であり、其の下部機関である対人外課は国内の怪異災害に関わる全般を担当する。性質上、怪異との戦闘が避けられない為、殉職率はかなり高いだろう。
いや、ちゃうねん。人の悪意で死んだ奴が、何で次は悪意の塊と戦ってんだって疑問だろ?
此の国、職業選択の自由無いねん。
ジャポンの国民は例外なく国立統党中央学院と呼ばれる教育機関に入学する。簡単に言うと、あらゆる教育機関を一ヶ所に集めた極大マンモス校という事である。
『未来の学校は全て一つの建物に集められているんDA。』じゃねぇだろうが!!糞が!!他国からもドン引きされてるじゃねぇか!!
国立統党中央学院で14歳と17歳の時に行われる職業適性検査によって、複数の選択肢は提示されるが、実質一択という具合で、俺の適正は公安衛生局対人外課しか無かったのである。
「はぁ……統党は燃えていいぞ。マジで。」