ゲラート召喚〜Flight to another world〜   作:大公と愉快な仲間達

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今回からSteamで配信中の艦隊戦ゲーム「High Fleet」と、日本国召喚のクロスオーバーを開始します。

Q.「High Fleet」の世界観ってどんなの?
A.簡単に言えばポストアポカリプス世界で空中艦が戦ってる。とはいえ国が新しくできていたり新しく船を造船したりと、技術や秩序はある模様。

Q.技術力はどんなの?
A.普通にミサイルあるしレーダーもある上、古代の遺物だけど核兵器もある。ゲーム内だとプレイヤーの意思で核兵器を撃てちゃうったりする(なおその場合は核戦争が発生する模様)。ただし火砲は180mm止まり。


第一話『転移』

 

 惑星エラート。

 かつて栄華を誇った古代文明は過去の話、今や月は破壊され、古代文明は"機械の心"と共に道連れに滅んだ。

 

 それから数百年、あるいは数千年過ぎた世界。

 

 現代暦214年、広大なゲラート砂漠を統治するロマニ帝国は、長年手を焼いていたこの地域での大規模反乱に際し、ダウド提督とスコベレフ提督の二個艦隊を送り込んだ。

 またダウド提督の麾下には皇太子であるマーク・サヤディ・レムスキー大公と、その補佐官のピョートル・イグナヴィチの第三作戦部隊の姿もある。

 一説によれば、この計画が決定された背景には反乱軍──ゲラート共和国と名乗る叛逆者達──の拠点であるヒヴァが古代の原子炉を手に入れたという情報があり、それの真を確かめるという意図もあった。

 とにかく、これで反乱軍との戦いに終止符を打ち、砂漠に平和をもたらす……はずだった。

 

 彼らがゲラート南部に到着したものの、戦況はゲラート共和国が圧倒的優位に進めており、対してゲラート王国は共和国が巡航艦複数隻に対し王国側はコルベット艦一隻しか用意できないという絶望的な状況に陥っていた。

 そのような中でマーク大公はゲラート王国のファジル王子と会談、またメルカでダウド提督の主力部隊と合流し順調に北に向かって進撃していった。

 こうして帝国の艦隊が領土を奪還していくさなか帝都から来た山のように巨大な巡洋艦〈セヴァストポリ〉からある衝撃的な情報が届く。

 

 それは、ロマニ帝国の帝都が核攻撃を受けたという知らせだった。

 

 その知らせを受け、艦隊は一度帝都へ引き返して体制を立て直すことも考えた。しかしマーク大公をピョートル補佐官が説得する形で、当初の計画だったヒヴァ占領を目指し、講和を有利に進める算段を立てた。

 

 艦隊は多少の反対派あれど、それを実行。厳しい戦いが始まった。

 

 少しずつ北へ向かい、占領軍を撃破し、輸送船を拿捕したり、時にはタルカン──船を拠り所とする貴族将校──と取引をし、着実にその規模を拡大。

 強力な打撃部隊(ストライク・グループ)を退け、そしてついにヒヴァへ……

 だが艦隊がヒヴァに入ってからが本番だった。ヒヴァにあったのは古代の原子炉だけでなく、とてつもない量の核兵器と弾道ミサイルだったのだ。

 それが不味かった。

 

 元々帝国に反発を持っていた諸侯軍(ギャザリング)は、この核兵器を自分達への脅威と見做し、同じ核兵器を持ってしてヒヴァの排除を試みた。

 彼らの手には新型の弾道ミサイルが満載されており、ヒヴァから2000kmの範囲に陣取られたが最後、都市は丸ごと消滅するという危機が発生する。

 

 これに対し、マーク大公はヒヴァを守るために立ち上がった。

 

 マーク大公に着いてきたタルカン達もこれに賛同し、核戦争を阻止するための最後の戦いが勃発。

 多くの船がこれに参加し、また多くの将校達がこれまで活躍してきたマーク大公のカリスマ性に感化され、義勇軍として参加した。

 航空機や核兵器が乱れる防衛戦を勝ち抜き、マーク大公は艦隊を指揮。結果、ギャザリングに二隻いた核兵器搭載艦は両方とも完全に破壊された。

 

 こうして、全ての戦いが終わった。

 

 結果として核兵器が残ったヒヴァが講和の主導権を握り、ギャザリングと停戦。

 それを率いたマーク大公の寛大な処置のもと、この砂漠に久方ぶりの平和が訪れた。

 

 そして──あの戦いから数ヶ月が経ち……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピョートル、助けてくれ!書類仕事が終わらないんだ!」

「はぁ……またですか大公……」

 

 金髪の若い男、マーク大公は解放されたヒヴァの下で、書類仕事に明け暮れていた。あまりに膨大な仕事量に目が眩みそうだった。

 時刻は夜の一時過ぎ。マーク大公がいるヒヴァの行政庁舎の執務室にて、マーク大公は側のピョートルに助けを乞うた。

 次期皇帝の座を持つ若きカリスマにしては、なんとも情けなく大人に縋り付くその光景を見て、ピョートル補佐官は呆れてため息を吐く。

 

「このところ全然寝れてない……マジで終わらねぇ……」

「仕方ありませんよ。大公が色々と無茶をしましたからね。復興も大事でしょうし」

 

 とはいうものの、マーク大公はここのところ起きている時間はずっと仕事仕事、書類と向き合ってハンコを押して、数字やサインに間違いがないかにらめっこしている毎日だった。

 それでも書類仕事は終わらなかった。何せ帝国が色々とごたついている間に、彼は無茶をやらかし過ぎた。

 なにせ防いだとはいえ核戦争まで引き起こしかけたのだ。書類の中には始末書や各所への対応の書類もあった。

 今ではこのゲラート砂漠はマーク大公が率先して復興事業を行っている。ゲラート砂漠は長年紛争状態にあったがために、復興には多大な支援が必要だ。それをマーク大公が自分の立場で帝国に要請していたのだ。

 復興なくして真の平和はないだろう。マーク大公を始め、誰もがそう思っていた。

 とはいえ帝国も核攻撃からの復興が最優先であり、援助は少なかった。本国からの支援も心許ない中、マーク大公はあえてヒヴァに残り、この復興の指揮をしているのである。

 

「あー……もうダメだ、気分転換だ、少し休憩する!」

「まだ書類は残ってますぞ」

「分かってる!でも休ませてくれ!」

 

 あまりの書類の多さにくたびれたマーク大公は、上質な椅子から立ち上がり、ぐっと背伸びをしながらピョートルにそう言った。

 伸びが終わると、マーク大公は執務室に設けられたソファに横になり、どこからか持ってきた毛布を被った。

 

「少し寝る……このところ寝れてないからな」

「かしこまりました。頃合いを見て起こしますね」

「そうしてくれ……お前も休んだ方がいいぞ、ピョートル」

「そうさせていただきます」

 

 マーク大公はピョートルに休むように促すと、流石の彼も言葉に甘え、自分の机から立ち上がった。

 だが、彼がマーク大公の向かい側にあるソファに腰掛けようとした時だった。

 カーテンを閉め切っているはずの外が、ぴかりと強い閃光に彩られ、その光は執務室にまで入ってきた。その強い光に、これから寝ようとしていたマーク大公は思わず起き上がる。

 

「ん……なんだ、雷か?」

「さぁ?にしては音が聞こえませんが……」

 

 マーク大公が聞くと、ピョートルは不思議に思った。

 実のところ、ここ最近のゲラート砂漠は雨続きだった。原因は帝都への核攻撃による気温の低下だと見られており、雷が鳴ることも珍しくない。

 だがそれにしては、落雷の音が聞こえないのは不思議に思えた。マーク大公とピョートルはお互いに顔を見合わせる。

 その時、廊下から誰かが走ってくる音が聞こえ、扉が荒々しくノックされた。マーク大公は毛布をそっぽに置き、扉の前に行く。

 

「なんだ?」

「夜分遅くに失礼します!サヤディ大公、ピョートル補佐官殿、緊急事態です!」

 

 駆け込んできた伝令は冷や汗を流しており、随分と慌てているようだった。彼は言葉を続ける。

 

「通信障害です!現在ゲラートの地から帝国への通信が全て音信不通、全く連絡が取れないのです!」

「なんだと……?」

 

 その報告を受け、マーク大公は目を見開き、耳を疑った。ピョートル補佐官も最悪の事態を想像し、顔を顰めた。

 

 まだこの時は知ることができなかったが、のちに真相が明らかになる。

 すなわち、広大なゲラート砂漠は、この時刻をもってして異世界に転移してしまったのだった。




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