ゲラート召喚〜Flight to another world〜   作:大公と愉快な仲間達

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第十話です!


第十話『陸戦』

 

ロウリア王国東方征圧軍 先遣隊

 

「将軍、先鋒がエジェイに到着しました」

「わかった」

 

 先遣隊二万人を率いるジューンフィルア伯爵は、このところ気が気でなかった。

 最近、偵察に出ている騎兵隊が消息を断つことが多くなっていた。強力な魔法が使用された形跡も、大軍と出くわした形跡もない。原因は分からないままだ。

 そんな中、先遣隊にはエジェイの西側3kmまで前進するよう副将のアデムから通達された。

 正直言って敵の正体もわからぬまま前進するのは気が引けたが、アデムの命令を断ればどのような処分が降るか分からないため、前進した。

 

「隊列を整え、エジェイの正面に立て」

 

 ジューンフィルアの命令を受け、二万人の兵達が街道から散開し、平原に整列する。

 そこからでも、エジェイの堅牢な姿がよく見えた。あの城壁、高さは25mもありそうである。梯子で登るのは容易ではなかろう。

 やはりエジェイの防御力は、噂に聞くだけあって凄まじいものだと予想できた。まさにクワ・トイネが民族の存亡を賭けて造った城塞都市である。

 

「さて……」

 

 ジューンフィルアは一抹の不安を抱えながらも、この平原を見据えた。

 二万人の兵でエジェイを落とすことは叶わない。この堅牢なエジェイをどうやって攻め落とすかは、本隊が考えることだ。自分たちは時間稼ぎさえしていればいい。

 いっそのこと、夜間に妨害でもしてやろうか。そうしばらく考えていると、何かの轟音がして思考が遮られた。

 

「ん?」

 

 その轟音はエジェイのさらに東から聞こえている気がして、ジューンフィルアは目を凝らす。

 その時、確かな死の予感が彼の予感に冷たく触れた。

 

「(なんだ、この悪寒は……?)」

 

 人間の第六感とも言うべき超常的な感覚が、ジューンフィルアに警告を鳴らす。だが周りを見ても死の予感はしない。敵はいない。

 勘違いかと思ったその時だった。

 轟音のした方向から、何かが光と共に登っていくのが見えた。

 

「ん、なんだあれ?」

 

 兵の一人がそれに気づく。

 

「ワイバーン……ではない?」

「こっちに来るぞ!」

「なんだあれは!?」

 

 それは煙の軌跡を伸ばしながら上昇していくと、今度は水平に機動し、こちらに接近してきた。

 それは硬い箱に見える。ブロックを積み上げて作ったような形をしているが、そのあちこちから炎が迸り、煙を拭きながら空を飛んでいる。

 その次の瞬間、箱から閃光が迸った。

 

「え?」

 

 光の弾が箱から飛んできた。

 兵士たちが攻撃だと思って身構えるが、そのその弾はあまりにも速かった。そして弾が地面に触れた瞬間、爆発が起こった。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「ぐわぁっ!!」

 

 弾が当たった箇所にいた兵士たちが吹き飛んだ。比喩ではなく、文字通り木っ端微塵に。

 

「こ、攻撃だ!戦闘体制!」

 

 その途端、ジューンフィルアは叫ぶ。

 

「隊毎に散開!狙われるぞ!」

「散開だ!散開しろ!!」

 

 ジューンフィルアは命令を発するが、爆発音のせいで周りへ伝達しきれてない。その間にも空飛ぶ箱はこちらに爆裂の魔法を放ってくる。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「お、俺の足が……!」

「いてぇ、いてぇよぉ!」

「散開だ!散開するんだ!!」

 

 爆散し、次々と兵達が巻き込まれる。

 中には四肢を欠損し痛みに悶え苦しむ者もいた。それでもなんとか秩序を保ち、散開しようとするも、鉄の箱はさらに接近して迫ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

ダイタル平原 ゲラート艦隊先遣隊

 

「撃て、撃ち続けろ!地面を全部耕してやれ!」

 

 イツハクは乗艦のグラディエーター級装甲フリゲート艦の艦内で、ひたすらに砲撃を続けさせていた。

 グラディエーター級には片舷四基のAK-100 連装100mm砲が備え付けられている。火力は平均的だがその連射力と砲門数が凄まじかった。

 カートリッジに四発ほど装填されるのを待ち、それを一気に地面へ投射する。するとあちこちで爆発が起こり、地上の兵士たちが薙ぎ払われる。

 一方的な蹂躙だった。後方支援に徹しろと言われていた艦隊は、今や戦場を牛耳り彼らの独壇場にしてしまった。

 

「敵地上兵、四割を制圧」

「残りは順次逃亡しています」

「よし、敵は総崩れになった。ノウ将軍に連絡、騎兵隊を敵にけしかけさせろ!」

 

 イツハクは乗艦からエジェイに連絡を取り、ノウ将軍に総崩れになった敵を騎兵で殲滅するように伝えた。

 これに対してノウ将軍は、シュージャに斬られたことをかなり根に持っていて不服に感じていたが、チャンスなのは変わりないのでそれに応じた。

 エジェイの門が開き、騎兵隊が出撃した。艦隊は彼らの道を作るかのように砲撃し、逃げる敵を追い込んでいく。

 

「ふう、なんとかなりそうだな」

 

 イツハクは現れた敵が撤退しつつあることを見届けて、一息吐いた。そこでハッと思い出したように僚艦の存在を問いかける。

 

「シュージャの艦は何処にいる?」

「はっ。シュージャ様は南側を掃討しているはずですが……」

 

 慌てて双眼鏡を手に取り、周囲を見回した。すると奴はすぐに見つかった。

 南側を掃討していた彼のグラディエーター級は、敵軍を追い越し、そのまま彼らが撤退する方に陣取っていた。

 しかも、着陸脚を展開している。そしてゆっくりと地面にタッチダウンしていた。

 

「なっ、あいつ何してやがる!」

 

 その途端、シュージャの艦の揚陸ハッチが開き、陸戦隊が飛び出してきた。しかも全員バイクに乗っている。あの量、乗組員のほぼ全てを動員しているように見えた。

 大方、斬り合いができると思って意気揚々と飛び出して行ったのだろう。その途端、逃げる敵兵を撃ち殺したり斬り付けたりするシュージャの姿を見つけた。

 

「くそっ、シュージャを援護するぞ!艦を移動させろ!」

 

 イツハクは胃がキリキリするのを抑えながら、とにかくシュージャを援護しなければと、自艦を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

ロウリア王国東方征圧軍 先遣隊

 

 ジューンフィルアは絶望していた。

 今まで戦ってきた戦友や、歴戦のベテラン、優秀な将軍、家族ぐるみの付き合いのあった上級騎士……そして共に強くなるため汗を流した仲間たち。

 皆一様に、爆発に巻き込まれて死んでいく。彼らは効率的に殺処分されていた。このままでは皆死んでしまう。

 

「将軍!エジェイからクワ・トイネの騎兵隊が!!」

 

 ジューンフィルアが絶望しかけていたその時、側近が悲鳴のような報告をする。

 見れば、平原を走る土煙が見えた。それらはエジェイからずっと長く伸びており、足の速さからして騎兵であることが見て取れた。

 

「くっ……撤退だ!撤退せよ!!」

 

 敵の反撃を見て、彼は迷うまでもなく撤退を選択した。その命令はすぐさま伝達され、撤退のための角笛が吹かれる。

 

「撤退!撤退だ!」

「くそっ、バケモノめ!」

「あんな奴らに勝てるかよ!」

 

 兵士たちはその角笛を聞き、今すぐここから脱出しようと、我先に撤退を開始した。もはや敗走と言ってもいいくらい、一目散に逃げていく。

 だがその逃げっぷりも、鉄の箱が逃げた先に降りてきたことで、状況は絶望に変わった。

 

「お、追いかけてきやがった!」

「くそっ、挟み撃ちだ!!」

 

 兵士たちが挟み撃ち攻撃に驚愕し、絶望して散り散りになる。今度は横方向に逃げようとするが、そこは敵の魔導の射程内で、彼らは爆散した。

 

「おらぁっ、突撃ぃ!!」

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

 何処からかそんな声が聞こえてきた。

 見れば、着陸して挟み撃ちをしてきた鉄の箱からも土煙が見えた。彼らの真正面だ。

 それは騎兵のようだった。だが彼らは馬には見えない黒い鉄輪の乗り物に跨り、より速い速度で向かって来ている。

 

「な、なんだあれは!?」

「敵の騎兵だ!総員、ここで迎え討て!」

 

 眼前の鉄の箱、後門も鉄の箱。ついでにそのどちらからも騎兵が迫ってきている。

 ジューンフィルアはもはや逃げ場はないと、ここで乱戦に持ち込むことを決意した。

 

「うわっ!」

「がっ……!」

 

 鉄輪に追突され、軽装備の兵士たちは弾き飛ばされた。だが重装備の兵士たちはなんとか耐えるが、その隙に飛び降りた敵の騎兵に首元を斬りつけられる。

 そして、乱戦が始まった。敵の兵士は重装備の鎧を着た騎士から軽装のサーベル騎士、そしてよくわからない鉄の筒を持った兵士など、様々だった。

 だが軽装の敵ならまだしも、重装備の騎士は全身を鎧で覆っているため、なかなか倒せなかった。しかも彼らに苦戦している隙に、鉄の筒を持った兵士が魔導で兵士を撃ち抜いた。

 その合間を縫って、場外で爆発が起こる。鉄の箱がこの乱戦の中で味方を援護しにきたようだ。

 

「うおぉぉぉ!!」

 

 ジューンフィルアは馬に跨り、軽装備の兵士を一人討ち取る。だが直後、馬に対して大剣が振り翳されて彼は落馬した。

 

「ぐわっ!!」

 

 慌てて受け身を取り、立ち上がる。

 するとそこには重装備を着込んで周りに指示を出す、一人の大男がいた。見窄らしい格好だが、指揮官だと確信した。

 

「我が名は東方諸侯の長、ジューンフィルアである!そこのお前、名を名乗れ!」

 

 ジューンフィルアは叫ぶ。すると相手も面白がって反応してきた。

 

「俺の名はシュージャ・イ・サーニー!ダスタムの騎士、騎士団長だ!」

「そうか!では覚悟ぉっ!!」

 

 ジューンフィルアは立ち上がって、即座に彼に斬り掛かる。ジューンフィルアは剣を下手から振り上げようと、一気に距離を詰めた。

 対してシュージャという男は、肩に剣を担いだまま、大ぶりに頭へ振りかざす。

 

「おらっ!」

「なんのっ!」

 

 お互いに避けきれないと判断し、剣が接触。切先から火花が散る。そこから指揮官同士の斬り合いが始まった。

 剣の腕前はほぼ同じだった。だが相手のシュージャという男の方が腕力が強く、ジューンフィルアは押され始める。

 

「くっ……」

「どうしたどうした!ロウリアの将軍様はこの程度か!?」

「なんのっ!」

 

 侮辱されて、ジューンフィルアは剣を強く持ち押し込んだ。そしてお互いの剣が再び振り翳され、弾かれたのを見計らい、ジューンフィルアは奥の手を使った。

 回転しながら相手の鎧の隙間を狙う。世界が一回転し、ジューンフィルアは敵の脇腹を狙った。

 だが、不発に終わった。

 相手はこちらの回転に合わせて位置を変え、逆にこちらの背中に着いた。そして、ジューンフィルアがしまったと思った瞬間、首元に刃が通る。

 彼は、そこで意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

ゲラート艦隊先遣隊

 

「敵将!討ち取ったり!」

『うぉぉぉぉぉ!』

 

 乱戦の中、敵将を討ち取ったシュージャは、ジューンフィルアの首を掲げてそう宣言した。

 将軍が討ち取られたのを見て、多くの兵士たちはその場に武器を置いて降伏した。それを着陸してきたイツハクの陸戦隊が拘束していく。

 

「な、なんとか終わったか……」

 

 イツハクは疲れ切った様子で、艦長席に座り込んで、頭を抱えていた。

 この戦果と損害、そしてノウ将軍を切りつけた件、どうやってマーク大公に報告しようか……

 彼の胃はまたキリキリするのであった。

 




解説
『グラディエーター級装甲型フリゲート』
ゲーム中の中盤あたりから手に入る強力なフリゲート艦。なおこの世界ではコルベット→フリゲート→巡洋艦の順に大きくなる。
装甲を持っているため打たれ強く、しかも主砲は100mm連装砲を四基も搭載している。ミサイルなども搭載しているため、至れり尽くせりの艦。イツハクを仲間にすると使えるようになるので是が非でも取っておきたいところ。
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