ゲラート召喚〜Flight to another world〜   作:大公と愉快な仲間達

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第二話です!


第二話『連邦』

 

翌日

ゲラート王国 旧首都ヒヴァ

 

 翌日、ヒヴァには大量の空中艦が集まっていた。大小様々な空中艦にはそれぞれ固有の紋章が描かれており、彼らがゲラートの各地からここに集合していることを表していた。

 そして、荘厳な作りをしているヒヴァの庁舎。そこにある上質なカーペットが敷かれた会議室にて、集まった面々は座布団を敷いて胡座を掻き、会議が始まった。

 

「皆、それぞれ忙しいだろうが集まってくれて感謝する」

 

 ピョートルが挨拶をした後、状況の説明が始まった。

 

「まず私が状況を説明する。昨晩の夜に発生して謎の発光現象の後、大規模な通信障害が発生している。現在、この地域から帝国本土へ連絡を取ることができない状況だ」

 

 彼の言葉を受け、集まった面々はざわめき立つ。帝国との音信不通、ともなればあの時と起こった帝都への核攻撃の再来かと、皆は最悪の事態を想像した。

 そんな彼らの驚きようが静粛になるまで待ち、ピョートルは言葉を続けた。

 

「大公は日が昇るのを待ち、帝国本土へ伝令艦を派遣するように命じた。しかし伝令艦が南へ到着した際、彼らは帝国本土が()()()()()()()()()()()……さらに各所のパトロール艦隊からも報告があり、ゲラート砂漠の周辺にいたはずの諸侯軍(ギャザリング)の支配地域も、同様に水の中へ消えていたそうだ……」

 

 更なるピョートルの言葉に、集まった面々は耳を疑った。だが彼が会議室のメインモニターに偵察写真を映し出すと、皆言葉を失って静寂が流れた。

 

「この報告を受け、我々はなんらかの要因でゲラート砂漠以外の全ての地域が消滅したと判断。大公はファジル王子に要請し、ゲラート砂漠における連絡の取れる地域全てに非常事態宣言を発令してもらっている。これが今判明している状況、そして我々の対応だ」

 

 帝国が消滅した。

 信じられない報告を受け、皆言葉が出なかった。会議室に静寂が流れる。

 

「これらを踏まえ、皆の意見を聞きたい。我々は今後どうするべきだろうか?何が起こっているか分かる者はいるか?」

 

 沈黙の中、まず先に手を挙げたのは、背の高いエライム人*1の男。

 彼は顔を隠しておらず、その背中に携えられた上質な剣が、彼が貴族であることを指し示している。

 彼はマーク大公に忠誠を誓うタルカンの一人、オマール・カーン。あの戦いで一番最初にマーク大公に付き従ったタルカンである。

 

「発言を求める。帝国が消滅したということは、南の地域には何がいるんだ?伝令艦はそれ以上行かなかったのか?」

「伝令艦は現在位置で待機させている。それ以上のことは今のところわからない。原因も不明だ」

 

 ピョートルが答える言葉に嘘はなかった。伝令艦は連絡が取れる南端の地域で待機させており、それ以上進んでいない。現状把握が最優先だったからだ。

 だがオマールはそれでは足りないとばかりに、自身の考えを提案してきた。

 

「なればこそ、艦隊をその方向に偵察に向かわせるべきではないか?とにかく帝都があった場所に向かわなければ、状況把握もできないだろう?」

「確かに、それはそうですな……」

 

 オマールからの指摘を受け、ピョートル補佐官は頷いた。確かに状況を把握するのが優先なら、偵察はもってこいである。

 その言葉を聞き、すかさずマーク大公が口を開いた。

 

「ピョートル。航続距離に自信があり、広範囲を偵察できるのはどんな船だ?」

「それでしたら、航空母艦を主軸とした艦隊になるでしょう。偵察機の行動半径は2000km以上、偵察も容易になります」

「なるほど。それに加えるなら航続距離の観点から見て、油槽艦と護衛のフリゲートもつけた方が良さそうだな……」

「艦隊を派遣するのですか?」

「ああ。私の配下から航空母艦を見繕って帝都の方へ向かわせてくれ。なるべく大きい航空母艦がいい」

「了解しました。直ちに」

 

 マーク大公の指示により、ピョートルは早速艦隊を帝都へ派遣する準備を部下に命じた。彼らが慌ただしく動くのを見送り、頃合いを見てもう一人が手を挙げた。

 

「大公、一つよろしいですか?」

「なんでしょう、ファジル王子」

 

 手を挙げたのは黒いマスクで顔全体を覆い、金のローブに身を包んだ若い男だった。

 彼はファジル王子。帝国庇護下のゲラート王国と呼ばれる国の王族であり、マーク大公と共に戦った者の一人である。

 彼はマスクの裏から声をくぐもらせながら発言する。彼の声のトーンはあまり高くなかった。

 

「このような緊急事態が起き、私の王国では混乱が広まっています。ヒヴァ、タルシシュ、メルカを始めとした各所で市民が暴走しているのです」

「ええ、私もそれについて把握しております。今は各所の憲兵を市民の沈静化に当たらせているはずですが……」

 

 実際、昨晩の発光現象と帝国と連絡が取れない状況を受け、一部の都市では暴動が起きている。

 民衆というのは非常事態に敏感であり、また迷信深い地域ではそれが顕著に現れた。ゲラート砂漠に厄災が降ってきただの、エラートの終わりだの、適当騒ぎてて暴れているのである。

 それを各都市の憲兵を動員して鎮圧していたのだが、ファジル王子はそのことを知っている。そうではなく、別のことを言おうとしていた。

 

「違うのです。憲兵でもいずれ抑えきれなくなるでしょう。私が抑えようにも、今の求心力はもはや貴方の前では霞むようなもの……」

「何を言うのです、ファジル王子……」

「大公、情けないことですが、もはやこの砂漠は貴方無くして統率は取れないでしょう。このことを踏まえ、私は配下の者達と話し合い、以下の結論を得ました」

 

 ファジル王子は黒いマスクの下で目つきを真剣なものに変えると、マーク大公に向けてこう言った。

 

「マーク大公、この事態が治るまでで良いのです。私の王国の上……すなわちこのゲラートの皇帝となり、この砂漠を導いていただきたい。どうか、お願いします」

「なんですと……?」

 

 ファジル王子の言葉に、マーク大公は少し耳を疑った。それはすなわち、王族である自分の上に立ってほしいという言葉である。

 

「王子……本気なのですか、それは?」

「私がこの状況で冗談を言う男に見えますか?」

 

 いや確かに、帝国の庇護下だった頃はゲラート王国より帝国の皇帝の方が上だった。

 しかしせっかくヒヴァが解放され、王国も復興の途中。王子が自らそのようなことを申し出るというのは、信じられないことに聞こえた。

 だがマーク大公は彼の真剣な言葉に耳を傾け、その言葉を飲み込み、そしてその真意を読み取った。

 

「王子の立場はそのまま。ただしそれらの王国や他の諸侯達を纏める事ができる、絶対的な"皇帝の位"が必要……その適任がロマニ帝国の血を引く私である、というわけですな?」

「その通りです。今のこの混沌とした砂漠には、絶対的な専制者が求められます。それはすなわち、ゲラートを解放した貴方に他なりません」

 

 マーク大公は真意こそ分かったものの、あまりに大きな決断に少し悩んだ。

 帝国の継承者であるとはいえ、自分が勝手にこの砂漠の皇帝になるなんて、あまりに責任が大きすぎる。

 見かねてピョートル補佐官が語りかけてきた。

 

「…………」

「大公、どうする?確かに王子の言う通り、この砂漠の混乱を鎮められる人間はそうそう居ない。いるとすれば貴方だ。貴方が決めなければ」

「……皆、もし私がこの砂漠の皇帝になった時であれも、着いて来てくれるか?」

 

 マーク大公は自信がなさげにそう言う。

 だが集まったタルカンの面々は、当然のことと言わんばかりに彼を歓迎した。

 

「何を言うのです。我らは大公の元で戦い続けてたではありませんか!」

「我らは大公と共にあります」

「体勢が変わっても、私は大公に着いていく」

「この身が老いぼれ朽ち果てるまで、私は大公と共にある」

「私もだ、サヤディの血を吐く者よ」

「我が一族も一緒です」

 

 皆が揃ってそう言うので、マーク大公は顔を上げ、彼らに感謝を述べる。

 

「ありがとう、皆の者……」

 

 マーク大公は彼らの忠誠心を受け、心を動かした。そして、地面に拳を突き、力強い言葉でこう言った。

 

「改めて宣言する!私はファジル王子からの推薦を受け、ゲラートを統治する皇帝となり、この混乱を鎮める!

これからこの砂漠は、各地の街やタルカン達を統合した国家──"ゲラート連邦"となる!私はその初代皇帝として、皆を導くことを誓おう!」

 

 こうしてファジル王子の推薦の元、このゲラート砂漠に新たな国家が誕生した。

 名はゲラート連邦。

 初代皇帝はロマニ帝国の血を引くマーク・サヤディサ・レムスキー大公。

 彼らはこの異世界の地で、混乱を収め、新たな歩みを始めるのであった。

 

*1
ゲラートの原住民族の事。エライム人の肌は外気に弱く、彼らはマスクをしていることが多い。




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