ゲラート召喚〜Flight to another world〜   作:大公と愉快な仲間達

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第四話です!


第四話『会談』

 

数時間後

クワトイネ公国 政治部会

 

 蓮の花で囲われた水辺に、その会議場はあった。

 クワ・トイネ公国の首都の地下奥深くにある、国の代表が集まるこの会議場で、同国首相のカナタは悩んでいた。

 つい数時間前、軍務郷から正体不明の物体が、マイハークに空から進入し、町上空を旋回して去っていったとの報告が上がっている。

 空の覇者ワイバーンが全く追いつけないほどの高速、高空を侵攻してきたらしい。これは軍の威信、そして国の国防に関わる重大な案件だ。カナタの胃がキリキリとする。

 国籍は全く不明。機体には翼を広げる怪鳥の紋章が書いてあったとの事であったが、そんな国旗を持つ国など、この世界には存在しない。

 

「皆のもの、この報告について、どう思う?どう解釈する?」

 

 情報分析を司る貴族が手を挙げ、発言する

 

「情報分析によれば、同物体は、三大文明圏の一つ、西方第二文明圏の大国、ムーが開発している飛行機械に酷似しているとのことです。しかし、ムーにおいて開発されている飛行機械は、最新の物でも最高速力が時速300km以上との事。対して今回の飛行物体は、目測で1200kmを超えています。ただ……」

「ただ、なんだ?」

「……はい。ムーの遙か西、文明圏から外れた西の果てに第八帝国と名乗る新興国家が出現し、付近の国家を配下に置き、暴れ回っているとの報告があります。彼らの武器については、全く不明です」

 

 会場にわずかな笑いが巻き起こる。

 文明圏から外れた新興国家が、三大文明圏の列強国までも敵に回す勢いで暴れているとなれば、無謀にも程がある。

 そんなことよりも、今考えるべきなのはこの飛行機械についてだ。

 

「そんな地域から飛行機械が飛んでくるわけなかろう。いずれにせよ全く不明、と言うわけかね?」

「そうなります……申し訳ないです」

 

 彼の言葉で会議は振り出しに戻る。

 結局、何も解らないのだ。

 ただでさえ、ロウリア王国との緊張状態が続き、準有事体制のこの状態で、頭の痛いこの情報は首脳部を悩ませた。

 味方なら、接触してくれば良いだけの話、わざわざ領空侵犯といった敵対行為を行うという事自体敵である可能性が高い

 その時、政治部会に外交部の若手幹部が息を切らして入り込んで来た。通常は考えられない。明らかに緊急時であった。

 

「何事か!」

「報告します!東の空に空飛ぶ艦隊が出現!こちらの通信に割り込まれ、それによると、彼らは我々と外交による会談を求めています!」

「な、何ぃ?」

 

 外務卿が素っ頓狂な声を上げる。

 まず空飛ぶ艦隊とは何か、カナタが質問した。

 

「それはなんだ、空飛ぶ艦隊とはどのようなものだ?」

「そう表現するしかないと言いますか……なんと言いますか……とにかく、外交による会談を求めているので、無下に追い払うことは出来ないかと」

 

 その言葉を受け、首相のカナタは頭が痛くなるのを感じた。なぜこうも次々と訳のわからないことが起きて、私を悩ませるのだと恨めしく。

 とにかく、相手が外交を求めている以上、手荒な真似はできない。カナタは彼らとの会談を了承することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

経済都市マイハーク

 

ファイナルアプローチ開始(Final approach begins)

 

 小型のコルベット── イントレピッド級砲撃コルベット艦──が、艦隊から離れてマイハーク近郊の平野に着陸しようとしていた。着陸脚を展開し、側面に取り付けられたエンジンを微調節し、ゆっくりと地上へ向かう。

 今回は地上に誘導員がいないため、乗員は自らの計器類と勘だけを頼りに着陸しなければならない。

 難しいことだが、この船の乗組員はマーク大公の下で長年付き従ってきた乗員がほとんどだ。その練度には確かな信頼がある。

 

「500……」

 

 地上が近くなってきた。高度計を見ている乗員が報告をしながら、適切な速度で着陸を目指す。

 

「100……総員着陸準備」

 

 着陸に備え、乗組員は手頃な手すりに掴まった。

 そしてその数秒後、少しの揺れ。着陸脚が衝撃を吸収し、マイハークの近郊にイントレピッド級が着陸した。

 

タッチダウン確認(Touchdown confirmation)

 

 安全な着陸を確認したのち、着陸したイントレピッド級に同乗していた艦隊司令官のアドミラル・ワンは、側のファジル王子に語りかける。

 

「ではファジル王子、行きましょう」

「ああ」

 

 そう言ってマーク大公から外交特権を得た二人は、艦橋から階段で下に降りて地上に降り立った。出迎えてくれたマイハークの女性兵士と共に、彼らは外交の場として設けられた建物へと馬車で向かった。

 

 一方で、会談の席で待っている首相のカナタは緊張した面持ちだった。

 早馬でマイハークに辿り着いてから目に止まったのは、空に浮かぶ鉄の箱のような艦隊。若き外交官達が言っていた空飛ぶ艦隊が、確かに目の前にいた。

 しかも海軍によれば、艦隊には多連装の魔道砲のようなもの搭載されているという。もしもそれが上空で火を吹けば、マイハークは火の海になるだろう。

 明らかな砲艦外交。カナタは相手の出方次第では戦争になることを覚悟し、交渉に臨もうとしていた。

 

 さて、彼らが会談場所で待っていると、扉がノックされた。開かれると、外務局の係員に誘導されて二人の身なりのいい人々が入ってきた。

 一人は真っ黒な仮面をつけていて、素顔が見えない。だが彼の纏う服装は金の刺繍で彩られており、相当な名家の出身だと分かった。

 もう一人の人物は無骨なマスクを付け、煌びやかなバッチを胸に携えた軍人のようだった。艦隊の指揮官だろうか。残りの人員は従者だったり記録員だったりと様々に見える。

 

「このような会談の場を設けていただき、誠に感謝する。私はゲラート王国の後継者、ファジルと申す」

「私は艦隊司令官のアドミラル・ワンだ。よろしく頼む」

 

 相手の方から挨拶をしてきたのを受け、カナタ達は不意を突かれた。相手が横暴な列強国の場合、いつまで経っても挨拶をしないということもあり得たので、拍子抜けしたのだ。

 しかも王子ときた。どうやら相手はとんでもない重鎮を外交に差し出してきたらしい。これは本気だとカナタは理解し身を引き締めた。

 

「これはご丁寧にどうも……私は首相のカナタです」

「外務卿の、リンスイです」

 

 カナタ達も釣られて挨拶を交わすと、ファジル王子は気さくな言葉を語り始める。

 

「言葉が通じるのは安心した。運命か、必然か、あるいは神の奇跡か……しかし、貴方達とは話が通じるだろう」

「は、はぁ……私もそのように願います」

 

 少しスピリチュアルな言葉に困惑したが、挨拶を交わした後、彼らはスムーズに階段に移る。

 

「まず第一に、我が艦隊の偵察機があなた方の都市に迷惑をおかけしたこと、謝罪申し上げる」

 

 その言葉でカナタはまた驚いた。

 どうやらかの未確認飛行機械はこの艦隊のものだったらしい。本来なら領空侵犯を追求したいところだが、それを謝罪してきたとなれば、話は変わってくる。

 カナタは念のため聞き返した。

 

「やはりあの機体は貴殿らの?」

「ええ。経緯を説明しますと、我々はゲラート連邦という場所からやってきたのですが、突如として我々を庇護下に置く帝国との通信が途絶え、混乱が広がったのです」

「………」

「我々は確認のため帝都へ向かうはずだったが、そこには何もなく、広大な()()()()だけが広がっていた。そこで我々は、偵察を飛ばして状況を把握しようと努めた。その結果、あなた方の都市の領空を侵犯してしまったのです」

 

 その言葉を聞いて、カナタは困惑した。

 それはまるで、この地域に突然現れたかのような言い方だからだ。

 

「つまり、あなた方の土地はいきなりこの場所に転移してきたとでも?」

「そんなことがあり得るはずが……」

「私自身も信じられない思いです。ですが事実として、我が王国を庇護下に置いていた帝国は消滅し、広大なゲラート砂漠だけが残った。そして帝都があった場所には、貴方達がいた。これは神の悪戯ではなく現実です」

 

 カナタは頭を抱え、傍らのリンスイと顔を見合わせた。

 彼らが嘘を言っているようには思えない。それにあのような空飛ぶ艦隊のことだ。この地域にあんな高度な物を作れる国は存在しない。突然現れたと言われてもなんだか自然と納得してしまう。

 

「混乱するゲラートを統治するべく立ち上がった我らが皇帝──マーク・サヤディ・レムスキー大公は、あなた方と外交を開きたいと考えている。我々はこの見知らぬ世界で孤独のままいるわけにはいかないのです」

 

 そこまで聞いて、会談の席には沈黙が流れた。カナタはしばらく黙っていたが、少し疑問に思ったことを彼らに問いかけてみた。

 

「少し疑問に思っていたのですが、ファジル王子はゲラート……でよろしかったですかな。その土地を支配する王ではないのでしょうか?皇帝というお方がその上にいる、ということで間違いないのですかな?」

「そうです。私はあくまでゲラートの一部を支配する王国の後継者。今では外交特権を有する数少ない者ですが、私の国はサヤディ大公の庇護下であるのです」

 

 なるほど、合点がいった。

 どうやらこのゲラート連邦という国は、複数の王国を束ねる皇帝を頂点とした連合国家のようだ。おそらくだが体制で言えばロウリア王国のようなものなのだろう。

 ならば──

 

「ではファジル王子、頼みがあります。あなた方がどのような国であるのか、この目で確かめるために、あなた方の艦隊に乗せていただき皇帝陛下に会わせていただきたい」

「なっ──!」

「カナタ首相!?」

 

 その言葉にはクワ・トイネ側の重鎮達が拒否反応を示した。それもそうだ、いきなり素性のわからない国へ首相が向かうのだ。もしものことがあればただでは済まない。

 しかしカナタは冗談ではなく、本気で行こうと思っていた。このような聡明な王子すらも纏めるサヤディ大公という人物が、どのような人柄なのか気になるのだ。

 

「……わかりました。カナタ首相、私が直接サヤディ大公にこの事を頼んでみます。おそらく大公は、あなた方を我々の首都ヒヴァへ快く歓迎するでしょう」

「ありがとうございます」

 

 こうして急遽、クワ・トイネ公国首相のカナタがヒヴァへと案内される事となった。

 彼に加えて名乗り出た外務卿のリンスイと、他の数名を乗せ、艦隊は一度ヒヴァへと帰還することとなった。

 




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