ゲラート召喚〜Flight to another world〜   作:大公と愉快な仲間達

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第六話です!


第六話『動乱』

 

数ヶ月後

中央暦1639年3月22日

 

「すごいものだな、ゲラート連邦という国は……我が国の文明水準は三大文明圏を超えるかもしれん」

 

 首相のカナタは、目覚ましい発展を遂げるクワ・トイネ公国の首都を見てそう言った。

 あれから数ヶ月、ゲラート連邦との国交が正常に締結したクワ・トイネ公国では、目覚ましい発展を遂げていた。

 彼らは各地の街に空中艦が着陸するドックを建設する傍ら、街にもインフラ開発の手を伸ばしていた。

 空中艦により陸上移動は過去のものとなり、毎日のように都市間で物資がやり取りされている。

 電気と呼ばれる不思議なエネルギーにより、夜でも明るく暮らせるようになった。

 水道の水を濾過するシステムを導入し、真水が飲めるようになった。

 空中艦の燃料の副産物であるガスを使った炊事場が各家庭に導入され、罐焚きや炊事が楽になり、主婦は大助かりだ。

 

「彼らが友好的で助かりました。あの技術力で覇を唱えられていたらと思うと、ゾッとします」

 

 カナタのつぶやきに対し、秘書が答える。

 実際、彼らは比較的平和的であり侵略などは望んでいない。

 技術力差を考えればやろうと思えばいつでも侵略できるのに、それをしないのはマーク大公がそういう主義だからである。カナタとてそれは理解していたが、おかげで助かった。

 

「そうだな。しかし、欲を言えば軍事同盟の締結までは行きたかった。あくまで輸送艦隊の護衛戦力、とのことだったが、それではロウリア王国は退けまい……」

 

 カナタは街の様子を見ながら、これから起こるであろうロウリア王国との戦争を心配し、そんな言葉を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日

ロウリア王国 王都ジン・ハーク 御前会議

 

 綺麗な月の夜。間も無く春が近づくこの季節、王都ジン・ハークに聳え立つハーク城では、王が配下の者を集めて会議をしていた。

 

「ついにこのロデニウス大陸が統一される!忌々しい亜人どもが根絶やしにされると思うと、私は嬉しい!」

 

 ロウリア王国34代大王、ハーク・ロウリア34世は来る侵攻作戦の計画を聞き、配下の者達に対してそう言った。

 大王の言葉を受け、配下の者達は頭を深々と下げ、その喜びを共有する。彼らの憎む亜人達に対し、これから行われる血の虐殺に舌なめずりする者もいた。

 

「大王様、統一の暁には、あの約束も、お忘れ無く、クックック……」

「解っておるわ!!」

 

 そんな中、真っ黒のローブをかぶった男が王に向かってささやく。大王に対して敬意のかけらもない、気持ち悪い男だ。

 それに対して王は、怒気をはらんだ声で言い返した。内心この男のウザさには腹が立っているが、ロウリアの支援者であるためなかなか言い返せなかった。

 

「(まずいな……このことをアルザヒル様に伝えなければ……)」

 

 そんな中、近衛兵に紛れて運よく会議に入り込んでいた密偵の一人が、内心そう呟いて考えをまとめていた。

 その夜、彼の報告が王都ジン・ハークの秘密通信施設から暗号化され、ある人物の元へ送信された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

ゲラート連邦 暫定首都ヒヴァ

 

「……以上が、彼らの侵攻計画になる」

「ふむ……事態は悪い方向に進むのか」

 

 その翌日、ヒヴァにあるゲラート連邦政府の庁舎にて、一人の少年がマーク大公に密偵の情報を報告していた。

 少年の名はアルザヒル。マーク大公に付き従うタルカンの一人であり、元々この名前は彼の父親が名乗っていたのだが、その人物は内戦中に共和国の総督に空中艦から突き落とされて死んだ。

 後継者として家を継いだ彼は、彼の父がそうしたように各地の隠された都市*1を束ね、その経験を活かして諜報活動を行なっている。

 そんな彼はロウリア王国を警戒しており、国交開設のためにゲラート側が出向くよりも先に、ロウリア王国へ密偵を送っていたのだ。

 

「もしロウリアによるクワ・トイネ侵攻が発生した場合、彼らは我々に支援を求めるだろう」

 

 アルザヒルはそう結論付けた。

 それに対してマーク大公は顎に手を当て、少し考える。

 

「大公。今はクワ・トイネとは同盟を結んでいない。確かな大義名分も何もない。ここで無用な争いに巻き込まれる必要はないのでは?」

 

 ピョートルはこの問題に対して慎重派だった。

 クワ・トイネ公国は同盟を求めていたとはいえ、ゲラート側には参戦する具体的な根拠がない状態だ。

 そんな状態で駐留部隊を増やしたり、先制攻撃でロウリアを叩き潰したりすることがあれば、後々クワ・トイネに「侵略の意図あり」と警戒され、問題になることを予感していた。

 マーク大公としてもそれは理解している。だが元はと言えば彼らの方から同盟を求めていたのだ。警戒する可能性は低いと見ていた。

 

「そうだな……しかしもしものこともある。ここは大部隊と言わずとも、少数の打撃群(ストライク・グループ)を一つだけでも駐留できないだろうか」

 

 ただピョートルの意見も一理ある。そこでマーク大公は妥協案を示す。

 打撃群とはロマニ帝国艦隊がよく行なっている部隊編成の一つだ。少数の巡洋艦で戦隊を組み、集中させた高い打撃力を、相手に向かって投げつける……この場合、マーク大公が言うのは即応部隊の意味合いも強い。

 その言葉を受け、アルザヒルは何か妙案があるのか発言を求めた。

 

「サヤディの子よ、事態は逼迫している。もし艦隊の派遣が憚られるのであれば、親善訪問と題してファジル王子の艦隊をクワ・トイネへ派遣してはどうか?」

「ファジル王子の艦隊を?」

「彼らはたまたまそこにいたということにすればいいのだ」

「ああ。なるほど、それは妙案だな」

 

 マーク大公は合点がいって頷き、アルザヒルの言葉の真意を掴んだ。

 大規模な艦隊を派遣するのを躊躇うなら、親善訪問の艦隊を差し向け、開戦するまでそこにいればいい。開戦したなら、たまたまそこにいた艦隊を使って即応部隊を作り上げる。大義名分も得られて一石二鳥だ。

 

「ファジル王子には私が直々に相談しておこう。多忙を極める王子には申し訳ないが、必要なことだ」

「艦隊物資の手配は私がしておこう。その際の旗艦は……ドックから〈ヴァリャーグ〉を回しておこう。ちょうど修理が終わっているはずだ」

「ありがとうピョートル。助かるよ」

 

 こうしてゲラート連邦は親善訪問と題し、ロウリア王国との緊張が続くクワ・トイネ公国へ向けて一隻の船を出した。

 それは、ファジルの旗艦としての改修が終わったばかりの戦略型重巡洋艦〈ヴァリャーグ〉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央歴1639年4月11日

クワトイネ公国西部 国境の街ギム

 

 運命の日がやってきた。

 クワトイネ公国軍、西部方面騎士団の団長モイジは、焦燥感にかられていた。

 西部方面隊の兵力は歩兵2500人、弓兵200人、重装歩兵500人、騎兵200人、軽騎兵100騎、飛龍24騎、魔導師30人ほど。

 今は準有事体制であり、クワトイネの総兵力である5万人から考えると、かなりの兵力を貼り付けていることがわかる。

 しかし、国境沿いに張り付いている敵兵力はこちらの兵力を遥かに凌駕していた。

 目測で歩兵2万人、重装歩兵5000人、騎兵2000騎はいる。ここからは見えないがワイバーンは一体いくらいることやら。

 それに加え、敵はこちらからの通信を一切無視し、ロウリア王国側はそこに陣地を張っていた。

 敵はギムを落とす気である。

 ギムの住民が疎開するのは遅かった。というのも、ギムに住むのは土地を持つ農民ばかりで離れるに離れられない、離れても行き場のない者達ばかりである。

 

「ギムを守るのだ!せめて民間人が避難するまでの時間稼ぎでいい!」

 

 団長モイジは絶望に駆られる自分を奮い立たせ、そして戦いに赴いた。

 だが奮戦虚しく、ギムの兵士たちは圧倒的な兵力を前に押し潰されて敗北。数の利を前に勝てるはずもなかった。

 その後──

 西部方面騎士団団長モイジは、後ろに縄をかけられ、捕虜となっていた。ギムはすでにロウリア軍により包囲されている。

 

「あのモイジも、こうなると形無しだな、弱い。魔獣を投入するまでもなかった」

「ふんっ、煮るなり焼くなり好きにしろ……」

 

 ロウリア先遣隊副将アデムは、モイジを見下し、勝ち誇っている。アデムはそんな惨めなモイジを見定め、そこであることを思い付いた。

 

「そういえば、お前の妻と娘はギムにいたな」

「っ、何をする気だ!」

「おい!」

 

 アデムは部下を呼び出し、恐ろしいことを命じる。

 

「モイジの妻と娘はここに連れて来い。こいつの前で散々嬲った後に、魔獣に生きたまま食わせろ」

「なっ、き、貴様ぁ!」

 

 モイジは噛みつこうと飛び掛るが、すぐに取り押さえられて地面に頭を押さえつけられる。

 

「ほほほ、大丈夫だ。全て見届けた後で、お前も魔獣の餌にしてやるからな!」

「おのれ!おのれぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日 港湾都市マイハーク

ゲラート連邦暫定首都ヒヴァ

 

「……以上が、密偵からの報告だ」

 

 ヒヴァの政府庁舎にて。そこでアルザヒルは悲惨な報告をしなければならなかった。

 密偵はギムで強盗、強姦、虐殺、焼き討ちなどが起こっていると報告。それによると、生き残った者は少なく、彼らもわざと逃したのだろうという。

 

「なんという非道だ!神よ、奴らに最も惨たらしい罰を!」

「私もそう願う。大公、この件を見過ごすわけにはなりません」

「ああ、そうだ、その通りだ」

 

 マーク大公は静かな怒りを抱きつつ、改めて立ち上がり、こう宣言する。

 

「我がゲラートは、この卑劣なジェノサイドに対し、クワ・トイネ公国を守るべくこの戦争に正式に参戦する!」

 

 大公は声を高らかに、さらに続ける。

 

「各員、各地のタルカンを招集、増援を送れ!」

「ははっ」

「ピョートル!すでにマイハークにいるファジル王子には、海上から迫り来る敵艦隊を撃滅するよう伝えよ!」

「御意に」

 

 こうしてゲラート連邦は、即座にクワ・トイネ公国への救援のため艦隊を派遣した。

 すでに現地にいる部隊にはマイハークへ集合するように伝達がなされ、現地で打撃群が形成されることとなった。

 戦争が始まった。

 

*1
廃墟などを装って空中艦から巧妙に隠された都市のことで、内戦中はマーク達の秘密基地となった。




ご意見ご感想などお待ちしております!

解説
打撃群(ストライク・グループ)
ゲーム中で出交わす強力な敵戦隊。みんなのトラウマ。
大体がコルモラン級やネゲヴ級、ベガ級などを含む巡洋艦で固められており、その火力は強力。普段は決められた航路を適当に通っているが、通報があるとこちらに巡航ミサイルを撃ってくる。
攻略法はこちらも巡航ミサイルを撃つか、航空攻撃で数を減らすか、もしくは情報を収集して相手を避けるかの何れかになる。
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