ゲラート召喚〜Flight to another world〜 作:大公と愉快な仲間達
中央暦1639年4月25日 港湾都市マイハーク
ゲラート連邦空軍 "タイタン"打撃群 旗艦〈ヴァリャーグ〉
港湾都市マイハークに建設された空中艦ドックに、停泊しているゲラートの艦隊がいる。その中でも一際目立つ巨大艦が、中央のドックに着陸していた。
大型の燃料タンクが三つ、ガッチリと装甲の内側に固められている。搭載された巨大な主砲と副砲が各所に配置され、その殺意を物語っている。そして船はとてつもなく大きかった。
この船はファジル王子が率いる打撃群の旗艦〈ヴァリャーグ〉。かつては反乱軍の総旗艦として運用されていた艦艇だ。
マーク大公はそれを戦闘で撃破し、鹵獲したのだが、当時激しかった損傷は全て修理され、内装もファジル王子の仕様に変更されてある。ただし、強力な武装はそのままだ。
そんな数奇な運命を辿っている艦の艦橋にて、ファジル王子は身なりを整え、艦長と共にいた。観戦武官を出迎える準備のためだ。
「ファジル王、間も無く観戦武官のブルーアイ殿が到着いたします」
「分かった」
ファジルは〈ヴァリャーグ〉艦長のルスタムにそれだけ告げる。
このルスタムという男は、歴戦かつ長年ファジルに付き従っていた艦長だ。王国が内戦によって稼働艦が一隻のコルベット艦しかない中、その船の艦長を務めていた男である。
そんなルスタムを、王子は信頼していた。艦長の手にはいつも水筒がある。彼はいつも紅茶を持ち歩いていて、喉が渇いた時に飲んでいるのだ。無類の茶好きとしても知られている。
「さて……」
そんな彼を見送りつつ、ファジルはまた海の方へと向き直った。
美しい海だった。砂漠であるゲラート、及びそこに住まう人々にとって、この光景はあまりにも新鮮だった。
その光景が見られる場所に建てられた空中艦のドックには、現在五隻の大型艦が停泊していた。旗艦〈ヴァリャーグ〉に加え、コルモラン級が一隻、主力のボレイ級が二隻、巡航ミサイルを搭載したベガ級が一隻。
内戦時、コルベット艦一隻しか生き残っていなかった王国艦隊は、内戦終結後にこうして復活しつつあった。壮観な光景だった。
そう考えていた時、傍のルスタム艦長の下に一人の参謀がやってきた。彼の手元には電報を印刷した紙が携えられたいる。
「失礼します。敵の通信を傍受しました」
「内容は?」
「はっ。場所は海上、ロウリア王国海軍の定時報告かと思われます。すでに出港し、予定通りマイハークへ向け強襲を行うとの事」
艦長であり指揮官も務めるルスタムは、一度ファジルの方を向くと、王子に今後の方針について問いかける。
「では我々は海上でこれを撃滅する。観戦武官を迎え、明日出発する。王子、それでよろしいですな?」
「ああ。問題ない」
王子がそれを了承し、作戦は決まった。
ルスタムは各参謀に物資の搬入を急がせるように伝え、艦隊に明日出発する旨を伝える。参謀達はテキパキと動き始めた。
しばらく経ったのち、艦橋の扉がノックされた。観戦武官が入ってきたのだろう。ルスタム艦長が入室を許可する。
「失礼します。観戦武官のブルーアイ殿を連れて参りました」
「クワトイネ公国第2海軍所属のブルーアイです!この度は援軍感謝いたします!」
ブルーアイの声を聞き、ルスタム艦長は敬礼し、ファジルと共に挨拶を交わす。
「艦長兼指揮官のルスタムです」
「外交特使のファジル王である。この度はゲラートの王国から貴国の援軍に参った」
「改めて深く感謝いたします!ファジル王!」
ブルーアイは敬礼をファジルに投げかけ、改めて感謝を述べた。そんな彼を見据えつつ、ファジルは伝える。
「早速だが、我々は明日出撃する。敵艦隊の位置は大体把握しているため、これを殲滅する」
「は、はぁ……しかし空中艦であり大砲を積んでいるとはいえ、相手は4000隻を超える大艦隊だと聞きます。果たしてこのわずかな艦隊だけで大丈夫なのでしょうか?」
「心配には及ばない。我が軍は勝つ」
自信を露わにしたことで、ブルーアイの不安そうな表情は少し和らいだのが見えた。
そんな彼の表情を見つつ、ファジル王子はマーク大公の名で届いた電文の内容を思い出していた。
『戦闘に際し、核兵器による攻撃は禁ずる』
──マーク・サヤディ・レムスキー
翌日
ロウリア王国東方討伐海軍 海将シャークン
「いい景色だ。美しい」
海が船で覆い尽くされていた。
大海原を美しい帆船が、風をいっぱいに受けて進んでいた。その数4400隻以上。大量の水夫と揚陸軍を乗せ、彼らはクワトイネ公国経済都市、マイハークに向かっていた。
見渡す限り船ばかりである。
今なら何者にも勝てる気がして、彼に野心が燃えた。
「っ、いかんいかん!」
慌ててそれを振り払う。
第三文明圏には船ごと破壊可能な兵器があると聞く。上には上がいるのだと、常に自分を戒めた。
そう決意を改めて、東の海を見た時だった。
「ん?」
何か遠くの空に、小さい点のようなものが見えた。それらは鳥のように見えたが、何かおかしい。まるでこちらに迫ってきているようだった。
「ん〜?」
目を凝らしてよく見るが、距離が離れすぎている。こういう時、第三文明圏には望遠鏡なる便利な道具があるらしいが、ロウリアにはそれがなかった。
巡航ミサイル、順調に飛行中……
妨害なし、目標に到達……
敵艦隊からの迎撃なし……
………………
…………
……
爆発。
『
「な、なんだ今のは!?」
シャークンは混乱していた。
突然の爆発は、あの鳥のような物体がこっちに向かってきて、軍船の方に突入した瞬間に起こった。
あんな素早く飛ぶ物体など見たことがなく、シャークンが狼狽すれば、艦隊全体が混乱に陥る。
「将軍!また飛翔体が来ます!」
「なに!?」
側の部下がそう言うのを聞き、また東の空を見ると、光の矢みたいなものが艦隊に向かっているのが見えた。
「くそっ、避けろぉ!」
シャークンは叫ぶが、軍船の機動性はあまりにも低い。手漕ぎで動いても何も避けられない。光の矢はそのまま軍船に突入する。
「な、なぁっ!?」
またも爆発。
一撃で二十隻以上が吹き飛んだ。その高威力の魔導かなにかにより、軍船は粉々に砕かれ、人は海に投げ出された。
シャークンはこれが敵の攻撃だとなんとか理解して、冷静さを取り戻す。
「くっ……このままではいかん!付近の本陣にワイバーンの支援を要請しろ!艦隊の空を守るのだ!」
「そ、それが……」
「どうしたのだ!?」
魔導通信を携えていた部下が、冷や汗をかいて言いづらそうにこう言った。
「ワイバーン隊本陣との連絡が途絶しています!なんらかの攻撃を受けた模様!」
「な、なんだとぉ!?」
部下の言葉を受け、シャークンは今度こそ冷静さを失いかけた。
ワイバーン隊の本陣は、ここからでもかなり遠く離れているはず。そこが攻撃を受けるなんて想像もしなかったからだ。
とにかく、航空支援は望めない。となるとあの光の矢に対して自分たちで対処しなければならない。
しばらく長い時間が過ぎて、攻撃が止んだ。それを見計らい、シャークンは損害を聞き出した。
「くそっ……こちらの損害は?」
「軍船800隻以上が撃沈……そのうち、船頭を多数損失しました!」
「くっ、案外馬鹿にならんな……」
船頭は育成が困難だ。
彼らがやられてしまっては戦力の補充もままならなくなる。これがなかなか痛い損害だった。
「将軍!前方の空に何か黒い影が見えます!」
「なに?」
その時だった。誰かが空に物影を見た。
ワイバーンかと思ってシャークンも空を見上げる。目を凝らすと、そこには巨大な島のようなものが空に浮いていた。
「な、なんだありゃ!」
「島が浮いているみたいだぞ!」
「て、天変地異か!?」
艦隊が狼狽する。その正体はわからない。
だが分かるのは、その物体が空を飛んでこちらに近づいていると言うことだった。
同時刻
ゲラート連邦空軍 "タイタン"打撃群 旗艦〈ヴァリャーグ〉
巡航ミサイル"Kh-15"による、敵艦隊と後方基地への攻撃は成功した。敵艦隊は混乱の最中にあり、後方のワイバーンの基地からの増援は認めれない。今のところ作戦は順調だった。
「
見張り員が敵艦隊を見つけた。
海が敵の艦隊とその残骸で埋め尽くされている。
「敵艦隊上空にワイバーンなし。巡航ミサイルの効果を認む」
その報告を聞き、ルスタム艦長は弾け飛ぶように反応して命令を下す。
「全艦、近接戦闘用意!第一種戦闘配置を継続、これより目標を殲滅する!」
ルスタム艦長の指示を受け、艦内全体に赤いランプが点り警報が鳴る。これより艦隊は目視圏内での戦闘に移る。
各艦の主砲が動き始め、砲弾を装填し始めた。副砲や機関砲なども同じように戦闘準備を整える。
「目標帆船群、射程圏内に到達!」
「撃ち方はじめ!」
「ファイヤ!」
艦長の号令一下、艦隊の第一斉射が放たれる。ヴァリャーグ、コルモラン、ネゲヴの側面にそれぞれ搭載された"MK-6 スコール 180mm六連装砲"が、雨霰のように敵に砲弾を降り注がせた。
砲弾は軍船の構造を貫通し、海面に着弾した。すると周りにいた船も巻き込み、大爆発を起こした。
「
今ので軍船を八隻以上破壊した。そして心地の良い稼働音と共に、砲座に新たな砲弾が装填される。
装填を確認次第、手頃な目標に撃ち込んだ。またも大爆発が起こる。
「各砲座は各個の判断で撃ち続けろ!あらゆる武装を使え!」
あまりに目標が多いため、統制射撃は必要なかった。艦長が端的な命令を発すると、それに従い、各砲座が各々の判断で敵に向かって砲撃を続けた。
各砲座がとにかく撃ちまくる。その装填時間に合わせ、今度は57mm連装機関砲の"AK-725 ヴィンペル"が射撃を開始した。
これは小さく脆い軍船に絶大な効果を発揮した。機関砲が薙ぎ払えば軍船は全て沈んでいく。
僚艦のコルモラン、ネゲヴの各艦級も撃ちまくる。大型の軽巡洋艦から放たれる砲撃により、さらに多くの軍船が殲滅されていく。
そして、先ほどの巡航ミサイル攻撃でミサイルを撃ち尽くしたベガ級も戦列に加わり、熾烈な砲撃は続いた。
「相手が退くまで攻撃を続けろ!」
ルスタム艦長はそれだけ告げると、あとは各砲座に射撃を任せた。そして手に持っていた水筒の茶を一杯飲む。
この光景を、ブルーアイは信じられないものを見るかのような表情で見ていた。
たった数隻の船が、空の上に陣取って一千倍の軍船相手に無双している。
いくら魔道砲があり、空を飛んでいるとはいえ、こんな一方的な蹂躙があり得るのか。我々は悪魔でも味方につけてしまったのか。
ブルーアイはそう感じていた。それ以上の言葉が出なかった。
数分後
ロウリア王国東方討伐海軍 海将シャークン
「ああ!またも爆発!船が!!」
「ちくしょう!化け物どもめ、あんなのに勝てる訳がねえ!」
一隻、また一隻と、時間を追うごとに信じられない速さで味方の船が撃沈されていく。
辺りは狩場の様相だった。もはや勝てる術はなく、ロウリア王国海軍は敵の空中艦に馬乗りにされ、一方的に殴られているに等しかった。
「……だめか」
シャークンは言葉を漏らす。
もはやあの相手に勝てる術はない。しかし降伏しようにも、ギムで虐殺を行った自分たちがどうなるかは保証できない。
彼に残されたのは撤退の二文字だった。
「全艦に通達!撤退せよ!」
シャークンはそれだけ告げたが、その直後、砲弾が彼の旗艦に直撃し、シャークンは海に投げ出された。
なんとか水中を泳ぎ、海に浮かびながら見えたのは、彼の乗っていた船が真っ二つに折れて沈んでいく様子だった。
他の船が撤退していくのを見て、頭上の敵は攻撃をやめた。
シャークン、南無阿弥陀仏。
解説
『Kh-15巡航ミサイル』
ロマニ帝国の亜音速巡航ミサイル。射程は1600km。敵、プレイヤーの双方が使用する。
ゲーム内でこのような長距離ミサイル類はマップ上で使用する。弾数と方向を指定したら発射ボタンを押すだけ。ミサイルが敵またはプレイヤーに到達すると迎撃を行う演出がある。
通常弾頭に加えて核弾頭仕様、電波探知仕様、電波探知核弾頭仕様などバリエーションも豊富。
『MK-6 スコール 180mm六連装砲』
180mmの六連装砲。ゲーム内で一番デカくて強い。
その分占有スペースは大きく、一番デカい構造物でないと搭載できない。また装填速度も遅い。しかしその威力は絶大で、六発同時発射のため相手のアーマーを簡単に剥がせる。
『AK-725 ヴィンペル』
57mm機関砲。ゲーム的には37mmガトリングの2A37よりも連射力は低いが一発の威力が高め。対艦戦闘にも使えるのでセヴァストポリやヴァリャーグとかだと180mmの装填時間の穴埋めに使う。