冒険者を引退する。メスガキゴブリンを買う   作:照喜名 是空

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荒野の奥にひそむもの

 どーしようか考えてたサルーンの娼婦問題は気分悪いがまあ解決した。

 その分の食糧増産っていうかライリーがとってくる量は増えるけど。

 ついでに言えば、あいつら用にまたテントみたいな簡単な家も作ったけど。

 

 だがここでさらに新たな問題が発生した。

 ゴブリンだ。やつらどこから来た?5匹だけはぐれるもんなのか?

 違うだろう。おそらくは巣穴がある。

 奴らを養うに足りる森がある。いずれ、調査する必要があるだろう。

 森があればだいぶ使える資源が増える。

 ゴブリンという危険を排除する必要もあるだろう。

 

「ってわけでライリー、森見なかった?」

「いやァ、俺もそう思ってあちこっち探したし、狩りに行くときもオアシス探してたんだけどよォ、ねえんだよ。ただ……トレイルを西へいとよォ、デケェ岩がごつごつしてる辺りあるだろォ?あン中に案外遠くの山と繋がってる洞窟の一つもあんじゃねェかァ?」

「洞窟か……ありそうだな。客が来たら噂話も集めてみるか。客が来ればな」

 

 俺たちは簡易サルーンでダラダラしながらいつもの会議をする。

 すぐ横には作りかけの本設のサルーンだ。

 今回は面倒だしこの方が涼しいから斜面を掘りぬいて半地下にする。

 今日の作業は終わって夕方だ。

 毎日にわか雨が降るが、雨があがるとスゲエ涼しいのなすだれって。

 

「っていうか、あいつら本人に聞けばよくねェか?」

「あっ、そうか……まあ、問題は場所と数次第だな……」

「洞窟に大勢でいるとなれば一筋縄ではいかんな……森ならばなんとかなろうが」

 

 ライリーが珍しく考え込んでつぶやいた。

 

「なァ、初見の場所で村に残ってるやつらも気にしながら3人で洞窟攻略って無理臭くねェか?」

「だよなあ……じゃあ突っ込んでくるやつらを潰すか、最悪ソーさんの術で洗脳して客とらせようぜ。最悪な」

「うむ……まあそうなるな……しかしゴブリンではなくメスガキゴブリンの野生種か……アレは品種改良の賜物と聞いたが」

 

 ここでソウザブロウが顔を上げた。

 この幼女狐はこの時間になると俺たち向けに魔導書を写本してくれてるんだよ。

 オイルランプの灯りとサニーたちが糸から作った布を束ねてノートにしたものにな。

 

「おそらく、あるのじゃろう。女体化温泉がのう。ふたなり温泉をあれから調べましたがの。あれは女体化鉱石と男体化鉱石をたくみに組み合わせて作られた人工のものでしたじゃ。この辺りにはそういった鉱石が多いようじゃの」

「マジかよ……じゃあつまり……」

「うむ、知性なき亜人を女体化温泉に漬ければ……できてしまうのう。奴隷工場が……」

 

 それはそれで嫌だなあ……奴隷工場の村とか。

 いかがわしい村すぎるだろ。そのうち憲兵が来そう。

 無法の開拓荒野だからってなんでもしていいわけじゃない!

 

「ダメだ。やめよう。俺たちの手には余るわ。今はやめとこう。本当に。出てきたのを潰すだけでいいわ」

「うむ、あまりにも倫理にもとる。そもそも奴隷商売の村というのは目指す方向性ではない」

「女だらけの村なんて狙われるしなァ。巣穴の場所と規模だけ聞いとこうぜェ」

「うむ、今は把握するだけにとどめておくのじゃ。ふたなり温泉もわしの術でしっかり隠すのがよかろう。ついでに村の周りに索敵結界も張るのじゃ」

「そうしよう。とりあえず見なかったことにしよう」

「うむ」

「だなァ……」

 

 とりあえず引き続き来たやつらを迎撃するだけにしといた。

 まあ最悪……本当に最悪は洞窟ごと燻し殺すか、入り口を埋めちまおう。

 燻し殺して毒殺するのは裏口があれば逃げられるし、かといって成功してもその洞窟は毒がたまってもう使えないことが多い。

 リスクある判断だけど、そもそも女体化温泉自体があまりにも手に余るわ。

 生命の倫理に踏み込み過ぎてる。

 

「そんでよォ、次は何作んだリーダー」

「あー、本物サルーンが出来たら?そうだなあ、丘の上に貯水槽とウインドキャッチャーかな」

「ウインドキャッチャーとは?」

「ああ、砂漠の国の技術でさあ。こう……構造的にどの方向から風がきても風の向きを一方向にできる塔があるんだよ。そこに水で濡らした布をたくさんかけとくとな……」

 

 俺はここで一区切りして皆を見渡した。

 

「……なんと涼しい風が来る」

「マジかよォ!?」

「いかほど涼しくなるのだ?」

「なんど水温度換算で5℃だ。5℃涼しい風がくる」

「やる価値はあるな……サルーンの目玉にもなろう」

「おっ、乗り気だな!やるか!」

「うむ!」

 

 そうして、サルーンの建設と経営が始まった。

 トレイルを通る商隊や開拓隊は週に二度ほどだ。

 だいたい30人から多ければ50人……

 まともに飯を食わせればあっという間にこっちの食料が尽きてしまう。

 そこでまっとうに稼げないのは残念だが女と酒だ。

 俺たちの歌や演奏でのおひねりもある。

 こういう物があまりかからない『サービス』で利ザヤを稼ぐ。

 稼いだ金で食料を買うわけだ。逆にな。

 

 客が落とした金で客のための飯を買い、客に出す。

 このサイクルでなんとか綱渡りだが当面はしのげた。

 メスガキゴブリンも時々来たのでたまに捕獲して売り払うのでもかなり稼げたのはある。

 嫌な気分になるけどね。

 

 そうして、一年目の夏が過ぎ、秋に近い気候が来た。

 といっても暑いまま雨が降らない季節が来ただけだが。

 

 とりあえず、とりあえずその頃にはサルーンと貯水槽はできた。

 余った金で買った樽や木材をバラして隙間は粘土やニカワで埋めてかなりデカい貯水槽にした。

 蓋をすれば当分の水の心配は遠のく。井戸と小川に頼らずに済むんだ。

 

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