冒険者を引退する。メスガキゴブリンを買う   作:照喜名 是空

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ポストマン

 秋が来たら、ソウザブロウに任せていた畑が実った。

 赤ヒユにトウモロコシ、小豆だ。

 赤ヒユの穂やトウモロコシの実は最初に作った小屋に干しておく。

 小豆も冷暗保存の方法として二重壺を作る。

 

 この二重壺は構造は簡単だ。底に穴をあけたデカい壺、中に一回り小さい壺を作り、その隙間に砂を入れておく。

 この砂を時々適度に濡らしておけば、砂が乾くときに熱を奪い、壺の内部はかなり涼しくなる。いや、ハッキリ言って冷たくなる。凍るほどじゃないけど。

 

 この二重壺は小豆の豆を冷やしておくだけじゃない。

 さらに量産してサルーンにも置く。

 こうすることで冷たい酒や水が提供できるわけだ。

 まあ、儲かったよ。

 

「サルーンもずいぶん立派になったわね」

「まあできるだけのことはしたからな」

 

 実際大変だったよ。本設のサルーン建設は。

 レンガ造りに瓦屋根で広々した酒場で……暖炉も作った。

 床までタイル焼いたんだよ?ガレンには頭上がらねえよ。

 カウンターは相変わらずレンガ製だけど、背後の壁を凹ませて棚も作って酒の瓶や壺を並べておけるし、水瓶も二重壺を埋め込んである。

 風呂場も作ったしな……レンガで。

 バスタブの栓も木を削ったりしてなんとかしたし。

 上にはデカいバケツを吊るして、わざわざ高い金出して買った蛇口をつけた。

 テーブルはさすがにかさばるし金がかかるから樽を買い取ってなんとかした。

 椅子はこのへんの木の枝を編んだ奴と買った木箱を置いた。ヨシ!

 

「うーむ、この赤ヒユじゃが……ほぼヒエじゃな。味が。押し麦と混ぜて炊かんとおいしゅうない……じゃがまあ、備えとしては十分じゃろ」

「トウモロコシと混ぜてコーンブレッドかトルティーヤにした方がおいしいわよ」

 

 ソーさんが試しに炊いてみたアマランノヨ草こと赤ヒユの種で作ったご飯を何とも言えない顔で食べていた。おかずには魚の塩焼きだ。

 サニーは酒造りの余りでできたジャムをコーンブレッドにつけて暖炉で温めている。赤ヒユのご飯はやはり無理があったようだ。デザートで腹を膨らませている。

 しかし、こんな贅沢な……いや、まともな飯が作れる村になったんだ。

 感慨深いよ……

 

「すいやせん、郵便でさあ」

 

 夕方にそんなことを話してたらサルーンの扉がカランコロンと開かれてポストマン……郵便局員が立っていた。

 この荒野でも制帽に制服、腕にはかつて俺がしてたのと同じ魔弾の刻印だ。

 律儀に赤い郵便バッグ持ってる。

 

「ここって住所あんの?」

「ありやせんね。なもんで、新しく住所登録契約してくださりゃあ月一で手紙10通まで届けまさあ」

 

 ポストマンは懐から身分証明章のバッジと手帳を見せる。

 写真が貼ってあるしまあ本物なんだろう。

 

「……いくら?」

「月30ドル……と言いたいところですが、ここで飯と寝床をいただけましたら、20ドルに負ける契約になってますわ」

「ん~……良さそうじゃん。どう思う?」

 

 ガレンとライリーはうなずき、ソーさんが口を開いた。

 

「おお!それは助かるのう!ぜひとも契約すべきじゃ!わしが半額出してもよいぞ」

「決まりだな。契約するわ」

「まいどありィ。ハガキが新品で1枚5ドルで売りまさあ。いかがですかい?」

 

 そう言うとポストマンはテーブルに座ってカバンからキッチリしたハガキを取り出した。

 

「しっかりしてんなあ!はい飯だ!食え!とりあえず俺は1枚」

「わしも3枚買うのじゃ」

 

 コーンブレッドとジャム、焼き魚を陶製のお皿にのっけて出してやる。

 ちゃりちゃりと硬貨のやり取りが行われ、俺たちはハガキを手に入れた。

 さてどうすべきか……

 

「ところで住所はなんと登録しますかい?カフカス州ナボク郡オウレアトレイル沿い……あとはこの村の名前でさあ」

「そりゃお前……」

 

 周囲を見渡す。ライリーが親指を立ててサムズアップし、ガレンがうなずく。

 

「スリー・ジョリー・フェローズ村でいこう!」

「わかりやした。よろしくお願いしやす。明日の朝には出やすんで、それまでに書いてくださると助かりまさあ」

「はいよ」

 

 さて、何書こうかな……

 

 

 結局、元居た街のギルド宛にふたなり化は伏せて近況と移住募集の便りを出すことにした。

 ソウザブロウは大学やら家族やらに。あと一枚はなんと、新聞の購読依頼だ。

 

「マジ!?新聞あればだいぶ違うよ。1行広告も出せるし、通販もできるじゃん!」

「うむ、そう思ってのう。わしも世の中の動きは知りたいのじゃ」

「さすがに悪いから半分出すわ」

「かたじけない」

 

 まあ村の中でグルグルお金が回ってるだけなんだけどね?

 

「ほんじゃあ頼むわ」

「まいどあり。それじゃあ行きますわ」

「たのむぜ」

 

 そうして、ポストマンは馬に乗って東へと駆けて行った。

 しばらくしたら、猛禽種の翼人(ハーピー)族が週一で新聞をとどけてくれるようになった。

 料金はその場で毎回払う形式だ。3ドルか~。でも分厚いぜ!

 

 なお、サニーは新聞のパズル欄をよく読むのでいい機嫌取りになった。

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