拠点にしていた城塞都市マクヘンリーを後にして、新大陸東部のオウレアトレイルに乗る。
これは新大陸を東西に横断する幹線街道だ。西の果てはまだ建設中で、全長なんと1万哩。
えーと1哩が千歩で……一億歩分の距離だ。
果てしない。あまりにも果てしない偉大なる黄金の道。
俺たちの村の予定地もそのオウレアトレイルの真ん中あたりにある。
西の果てのフロンティアは文字通りマジで原野でなんもない。
あるのは狂暴な獣と壮絶な自然ばかりだ。
それでも、だからこそ男たち西を目指す。手つかずの道の土地を求めて。
俺たちはそこの最前線までいかない。
だだっ広い荒野の中で「ちょうどここに宿屋とかあるといいなー」って感じのいいかんじの場所の土地だ。
だがその前に、目的地まで移動しなければならない。
通常は旅の中で宿場町に止まりつつ行くが……今夜だけは別だ。
とりあえずスケベするために荒野行こうぜ!
荒野なら逃げても死ぬだけだからな。
そういうわけで、キャンプの火を分けてそれぞれ気まずくないくらいの距離に毛布持ってって……
「あー、まあそういうわけだからさ。こんな所で悪いけどとりあえず一発やろう」
「いきなりアグレッシブね。でもまあ豪華さは期待してなかったからいいわよ。その代わりコッチでは期待させてよね」
サニーが俺の股間をズボンの上から撫でてくる。
俺はそっとかがんでサニーにキスをした。優しく、やがて深く。
「上手いじゃない。スケベね。そうこなくっちゃ」
「いいねー。そう言う感じだよそういう感じ」
サニーが妖艶に唇を舐めて笑った。
まあ……お互いに期待以上だったとだけ言っておこう。
あとライリーの遠吠えとガレンの腰振りの音がマジでやばかったとも。
■
朝になって俺たちは誰ともなく、へへへ……と笑いあい、旅を再開した。
ここからはちょくちょく宿場町にもよっていく予定だ。
もちろん、だだっ広い荒野の中で孤立した街に止まる予定だが。
「ねー、退屈~。なんかないの~?」
こいつはコボルトのキキ。なんか……ちっさいドーベルマンみたいな毛並みのやつだ。
「ヘイッ!ジェイク、歌でも歌おうぜェ!」
「おー、いいね。なんか盛り上がるやつやろう」
ライリーが馬車の中でバンジョーを取り出す。
ガレンは革張りの小さな太鼓をトトトン、と手でたたく。
「ラッキー・トップはどうか?」
「いいねー」
で、俺たちは歌うわけよ。
『ラッキー山脈とってもいいとこ、テモシー川の丘の辺りにあるね。空気は良いし、請求書も来ない』
ライリーのバンジョーは超早弾きでこれがまた景気がいい。
バカみたいに高く青い空。浮かぶ白い雲……それに合うんだ。
ガレンのパワフルな太鼓も一面に草が生えてなだらかな丘が続くこの道にちょうどいい。
『女の子と初めてデートにいったこともあったっけな。男勝りでソーダみたいに甘く爽やか』
『今でも夢に見るよ~』
「ヘイッ!FOOOO~!」
ライリーの遠吠えによる合いの手がまた景気いいんだ。
こういう旅で歌は格別の娯楽だ。憂鬱が吹き飛んで風景が美しく見える。
さらに旅をしていこうという気力がわく。
まさに人の知恵だ。
『ラッキー山脈とってもいいとこ、古き良き俺の庭だよ~』
まあ、こんな歌詞。
陽気な曲でライリーがおどけながら演奏するから女の子たちも盛り上がるわけ。
そして、音につられてモンスターがやってくる。
これは実はライリーを主体にした吟遊詩人の技『獣寄せの歌』だ。
さすがに専門外の魔法だから三人がかりじゃなきゃ使えないけどな。
「ジェイク!上だ!」
「おう!ガレン、女の子たちを守ってやれ。俺がやるわ」
「うむ!」
出てきたのはクソデカペリカンだ。これワイバーンくらいあるんだよね。
実際の名前は何かあったけど忘れた。これで通じるからだ。
「キャオーン!」
「マスター、大丈夫なの?!」
「まあ見てなって」
俺は御者席からクソデカペリカンを指さす。
手の甲に刻まれた魔術焼印が熱くなり、指先に魔力が練られる。いいかんじだ。
あとは魔力弾を撃つだけだ。
「当たった。落ちてくるよガレン」
「心得た」
ガレンがその巨体に似合わぬ素早さで素手で馬車から出てくる。
さっと精霊馬の前に出て落ちてくるクソデカペリカンを待ち構えた。
ペリカンは頭の半分を消失してもう死んでいる。だがその巨体が馬車に直撃すれば脅威だ。
「ライジングドラゴンフィスト!」
ガレンが拳を握りしめ、足に力をためて思い切りジャンプする。
そしてそのままアッパーをペリカンの胴にたたきつけ、勢いを殺し、羽をつかんで地面にたたきつけた。
うーん、鳥の骨がベキバキに折れたっぽい。
「良い肉が手に入った。昼餉にせんか?」
「いいねー」
ガレンが鳥の首を持ち上げて笑う。
こう見えて一流パーティーだ。モンスターを取って食うのは十八番なんだよね。
■
ペリカンの羽を全部むしってナイフで肉を切り分けてデカいフライパンで焼く。
味付けは塩がメインでレモングラスなどの乾燥ハーブをさっとまぶして香り付けする。
このハーブ類は普段は馬車の中に吊るしてあって匂い消しにも使える。
まさに自然の恵みだ。
「さっ、まあ食いなよ。行き渡った順でいいから」
「うむ、ほら遠慮せず食うがよい。『自然の恵みよ、汝に感謝する』」
「あァ、感謝感謝。ほら食え食え。うまいぞ」
俺たちが手を付けてから女たちも肉を食い始めた。
ちゃんとナイフフォーク使えるところとか「店」がちゃんとしてたんだなってわかる。
「……!肉ってこんなに美味しいものだったかしら?」
「お、おらたちこんな美味い肉食ったことないだ……」
「ね~、美味しいよね!さっすがごすずんさまたちじゃん!」
あー、まあ街の肉とはね。狩猟して新鮮な肉とはまた違うから。
俺たちはちょっと得意になって酒を開けたり歌ったりしてまあのんびり進んだよ。
宿場町で「最終的にこんな感じの街を作るよ」って言って見せたり泊まったり。
木造のおしゃれな家が左右に立ち並んで、真ん中には風車ポンプつきの井戸があって、酒場にはだいたい冒険者ギルドがあって……そんな感じだ。
風景も緑にあふれたものからだんだん荒野になっていく。
で、半年くらいかけて予定地にたどり着いたってわけ。
「このアワビ岩から、次の道しるべのディック岩までが俺たちの土地らしいわ」
「えっ、ここ?……ここ!?何にもないじゃない!」
サニーがビビるが、想定内だ。
何もない場所に村を作るって言っただろ。それが開拓だよ。
「ガハハハ、案ずるな。ジェイクはこう見えてサバイバルの達人だ。3日もあればすぐに家の一つもできよう」
「なァに、それに……小川の匂いがまだするぜェ。川があるってこたァ、水もありゃァ獣だっているってこったァ。木の実だってあるかもしれねェ」
トレイルというものは基本的に川や水場に沿って通っている。
たしか数百メートルほど進めば小さな川があったはずだ。
「ってわけだ……ライリーとキキはなんか食い物あったら狩ってきて。俺たちは家を作る」
「了解だァ!」
「うむ、任されよ」
そういうわけで村づくりが始まった。