カワウソモドキはカワウソとデカい鼠を足して二で割ったような生き物で、だいたい一抱えくらいある。蹴球用ボール2個分くらいだな。
こいつの皮をはぐと便利だが、腹が減ってるので毛皮がついたまま火に放り込む。
実はこいつは毛皮ごと焼いたほうが最高に美味い。
グレイビーソースをかけた子牛みたいな、イノシシみたいなこってりとした味だ。
表面が焼けてくれば、血抜きで割いた腹に焼けた石を詰め込んでじっくり焼く。
ナイフで切って塩をかければ完成だ!
「よし……できたぞ!自然の恵みに感謝だ!」
『感謝感謝……』
そうして食えば作業再開だ。
「まず石を積む。四角い石で石垣をつくっていく。下はぶっとく、上は平らにだ」
「うむ!いやあ若い体というのはいいものだな!」
「まあな。魔法刻印も消えなかったしな」
壁をどんどん作る。これに時間がかかるんだ。
なにしろ20
まず入口以外の三方を作り、さらに内部に2つの壁を作っていく。
これで仕切りにもなるし、屋根用の枝を張りやすくなるんだ。
「次は赤土だな。川の辺りのあのへんの土が粘土になってるだろ?こいつを壁に塗り込んでいく。乾燥してるからすぐに乾くし、強度が段違いに増す。屋根はどうせしばらく雨は降らねえから問題ない」
壁が完成すればいよいよ屋根だ。
チョークチェリーやストレートヤナギのまっすぐで細長い枝をどんどん壁の上にかけていく。
網目状にかけ、密度が確保されれば葉っぱのついた枝や木の皮を乗せ、最後に軽めの石で重しをしておく。
これで1週間だよ……
「おもったよりちゃんとした家ができたわね」
「だろ~?褒めてくれよ!」
「素直にすごいと思うわ。すごしやすいし。ありがとう」
「ヨシッ!」
乾いた葉っぱで作ったベッドに寝っ転がりサニーに頭を撫でてもらう。
うーん、お互い女の子のいい匂いがする……
かまどを外に1つ、家の中心に1つつければとりあえずは完成だ。
水瓶も置いてあるしね。
「うむ、まずはこれが我らのこの地における第一歩となろう」
「飯も十分ため込めたしなァ。少しのんびりしようぜェ」
「だなあ!3日休もう!」
『おー!』
本日より連休とする!
■
歌ったり飯食ったりカードゲームしたり、寝たりヤッたり持ち込んだ本を読んだり。
まあ、思い思いにのんびり過ごした。
でもマジでやることないので3日目にはもうそわそわしてその辺の枝で椅子作ったり、粘土で陶芸して皿作ったりしてた。
「じゃあまあ、明日からだけど次は井戸とちゃんとした家を並行してつくってく。優先度は井戸が先ね」
「川があるじゃない?」
女たちを代表してサニーが質問した。
「おっ、いい質問だね。川は乾期に枯れたりほかの旅人が汚したりするかもだからね」
「わかったわ。水がないと死ぬものね。私たちも井戸掘るのかしら」
「いや、女衆には水汲んだり糸作ってもらう」
「糸を?」
「ユッカランの葉っぱを叩きまくって果肉を落として洗ったのを干せば糸になるんだよ。まあ手本見せるから」
これはあんまわかってない感じなので手本見せるしかないね。
「では私はレンガを作ろう。あの粘土はいいレンガになる。あって困るまい?」
「良いね助かる」
「ならオレは、狩りと井戸づくりだな」
「いいね。井戸は俺もやるからそういう感じで行こう。暑いから井戸は夜明け辺りにやろう」
そうして、井戸と家づくりが始まった。
朝早くに起きてまず水脈を探る。
「たぶんここだ。低い盆地で……川からも遠くない。水脈に根を張るネフカスカ草が一直線に生えてるし……獣がかなり深く土を掘り返してなんなら湿ってる。ここだ」
「枯れ川じゃあねェよなあ?あれは洪水になるからな」
「地面の感じからして違うね。3碼も高いあの丘の辺りに家を作れば問題ないはずだ」
「ふむ、川でレンガを作って運ぶのにも問題ない。よかろう。掘ろうではないか」
ガレンがシャベルを掲げる。
俺はいいかんじの棒でざっくり井戸の大きさを地面に書く。
およそ3,5碼。
三人分くらいの大きさだが、石組みで井戸を作れば2人分くらいの大きさになるはずだ。
「暑くなる前までな。炎天下で井戸掘ったら死にかねないから」
「うむ」
俺は「巨人の腕」を発動して掘っていく。
それでもやっぱり1週間はかかるだろう。
腰が入るくらいの深さになるたびに石で枠を作らなきゃいけないからな。
崩落は怖い。
日が昇れば井戸掘りを中断して、レンガ造りと糸づくりだ。
「よいかミラよ。レンガ造りにはこのような粘り気のある赤土がまず必要だ」
「はいですだ!」
「これは乾燥しておっても水を入れれば元通り粘土になる。よってこのあたりの乾いた赤土を運ぶ」
「はい!このバケツですだね!」
「うむ」
ガレンとオーガのミラはデカいバケツに土を入れては家の建設予定地のあたりにもっていく。
「次に枯草だ。このような柔らかい藁や枯れ葉を混ぜると強いレンガになる。集めるのだ」
「はい!」
「して、水を流し込みこねて……この型枠に押し込む!」
こいつのふとももくらいあるデカいレンガになるようにデカい木枠を持って来たんだよね。馬車の中では分解してればいいからね。
ばちんばちんこねて木枠に入れてポコンと出す。乾かす。
「乾けば焼けばよい。さあ続けるぞ!」
「わかりやすいだ~。旦那様はなんかやってらしただ?」
「ははは、若い頃食うに困ってレンガ職人をな」
「さすがですだ!頼りになるだ~」
すげえ勢いでレンガができてくな。負けてられんわ。
「ほんでこれがユッカランね」
「アロエじゃないの?これ」
「似てるけどこの辺の形と色が違うんだわ」
「へー。なるほどね。これの葉っぱを根元から集めればいいの?」
「そう。ほんでいいかんじの平らな石で……叩く!叩く!叩く!」
ユッカランの棘の生えた細長い三角形の葉っぱをガンガン叩いて、石でぎゅーっとしごいて葉っぱの中のゼリー部分をこそげ取るわけよ。
「まあこのゼリーは薬になるし石鹸代わりにもなるしなんと食べられる。美肌効果もある」
「あっ、それでこのちっさい壺もってきたの?こっちの鍋は?」
サニーでも持てるくらいの小さな壺と鍋だ。それで十分に機能する。
「あとでこの葉っぱを色が落ちるまで煮て繊維だけ取るんだよ。煮汁とゼリーを合わせて冷やして薬代わりにとっておくわけね」
「わかったわ。……この暑いのに煮るの?」
「まあ火にかけてる間は離れてればいいから」
「やってみるわ」
こうして残った繊維を割いてよじって糸にするわけだ。
糸があればロープができる。布ができる。
だいぶ生活が便利になるんだよね。
「よォし!こっちは魚採るぞォ!」
「は~い」
「つってもネズミ捕りみたいな魚が入れるけど出られない形に石を積むだけなんだけどなァ!」
「労働~!」
「でもこれで毎日魚に困らねェ!やるぞー!」
「おー!」
ライリーの方は罠つくってるね。
そのうち動物の狩猟用のくくり罠も作るんだろうな。
くくり罠ってのは絞首縄みたいなのがくいっと動物の首や手足にからまるやつだ。
こうして労働の日々が始まった。
井戸掘る。レンガ作る。糸編む。合間に陶芸。
これを1週間だ!大変なんだよ……
まあ苦労の甲斐あって俺たちの頭がすっぽり隠れる頃には水がなみなみと湧き出してきた。
数日おけばきれいな水がわくだろう。
その頃には井戸の地上部も完成するはずだ。
3日に1回ほど少し離れたトレイルの本線のあたりをキャラバンが通る。
俺たちはさりげなく隠れるか、見つかったら俺たちも開拓者ですよって感じの笑顔で手を振ってできるだけ関わらないようにしてた。
まだおもてなしできる状態じゃねえ。サービス的にも、武力的にもな。
見つからないのが一番だ。