真夏になるころには家も井戸もずいぶんしっかりしたものになった。
家はドアがあるし井戸は屋根もつるべもある。
屋根は茅葺きから瓦屋根になった。
広場にはかまどの近くに陶器や料理を焼ける窯もできたよ。
レンガがたくさんあったのでソウザブロウたちの家もまあ早くできた。
畑も苗が出始めている。いや早くない?
ソウザブロウが呪文むにゃむにゃ唱えたら次の日にはしっかりした芽が出てた。
妖精学ってスゲー!
「と、いうわけで次は酒場と酒だな」
「このジャムが?」
「今はジャムだね。これを酒にしていく」
サボテンの実やらベリーやらの木の実を片っ端から鍋に入れて煮込む!煮込む!
糖度を上げて、ガレンに焼いてもらったボトルサイズの壺に入れて、冷えたら酒精を入れる。
ここでソウザブロウの魔法をひとつまみ……
なんか呪文を唱えて拝んだら順調に発酵するんだよ。
ソウザブロウの拝んでる神様だか妖精だかに魚や酒の一部をお供えしなきゃいけないが。
「酒ができる頃に酒場を作らねばならんな。旅人も増えてきた。できるだけごまかしてはいるが……やはり酒場があれば相手の出方も柔らかくなろう」
「まァボコして金を巻き上げてもいいんだけどなァ」
「揉め事起こしてたらキリがないよ。今ある酒を売ったり、その金で酒を買ったりの綱渡りしてもな……」
とにかく酒場だ。ライリーには行き倒れた牛の皮を拾ってきてもらったり、はぐれ牛を狩ったりして牛革を集めてもらっている。鹿の角とかもな。
4頭分くらいあつまったのでそろそろできるな。
こいつを縫い合わせ、鹿の角を煮た煮汁で縫い目をふさぐ。
要はニカワだ。砕いた角を煮ると動物性の接着剤になるんだよ。
この超でかい牛革でテントを張る。
「レンガの家でなくてよいのか?」
「サルーンを作ろうと思ったら相当デカくなるだろ。レンガだと1月はかかる。大変だよ」
「屋根は革で、柱はそのへんの枝を杭にして打ちゃァいいけどよォ、壁はどうすんだ?」
「ソウザブロウが良いの知ってた」
「うむ、すだれをかけておけば涼しいですじゃ」
ソウザブロウは女たちと協力して枝を束ねて糸で編んですだれとやらを作る。
なるほど、横に束ねて蛇腹にすんのね。
牛革を屋根にかぶせ、ロープでくくり、釘で打ちつける。
壁代わりにでかいすだれをかけて、これも四隅を結んでおく。
ガワはこれでできた。
「して、せめてカウンターは欲しいが……もうレンガで作ってはどうか?」
「椅子と机は後回しでいいとしてもな……やるか!」
「じゃァ、俺はおがくず代わりの葉っぱの粉を作ってくるわ」
カウンターだけレンガつんで、サニーが編んだ貴重な布で覆う。
糸から作ってるからな……荒野では布がマジ貴重なんだよ。
床におがくず代わりの葉の粉を巻けばまあ最低限の体裁はできた。
おがくずとか細かい砂を撒いとけば唾吐かれたりゲロされても掃除が楽なんだ。
粉が水分を吸うからな……
「ふう……ようやっとできたのう。さ、酒もそろそろ良いじゃろう。ジェイク殿、開店祝いも兼ねて皆で乾杯してはどうじゃ?」
ソウザブロウがちょこちょこと素焼きの酒の壺をいくつか持ってくる。
弟子のルパートは素焼きのコップを魔法で浮かしながら人数分持ってきた。
「ささ、おひとつ」
「おー、悪いね。さてと、ああそうだ。店の名前どうする?せっかくだから今決めようぜ」
「そりゃァおめェ……アレしかねえだろォ!?」
「うむ、我らのパーティー名……」
あー、あれか。俺たちは声をそろえて言った。
『スリー・ジョリー・フェローズ!』
「三人の陽気なおじさん?それがあなたのパーティー名だったの?」
サニーが首をかしげる。
まあ、独特だよな。でもまあ俺たちには合ってるんだよ。
もうおじさんじゃないけど。
「あはは……いい名前ですだよ?」
「えー、じゃあこの店スリー・ジョリー・フェロー・サルーンになるの?」
ミラが愛想笑いして、キキが犬顔でわかりにくいがちょっと引いてた。
「では間をとって『サルーン・ジョリーフェローズ』ならそれっぽくないかい?」
ルパートは果実酒の入った素焼きコップをユラユラさせながら笑った。
「うーん、まあ。うん。いいかも」
「いいんじゃない?覚えやすくて」
まあ、嫁たちの合格も出たし、酒も行き渡ったから……
「よし、酒は持ったな!じゃあ、サルーン・ジョリーフェローズの開店に!」
『乾杯!』
超適当に作った素人密造酒はとても甘かった。
この店がいずれいくつものチェーンを展開することになるとは、まだ誰も予想だにしていなかった。
どちらにせよ、この村は旅人を迎え入れる準備が整ったのだ。