刀をまた、握れたのなら。   作:無課金勢

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いつも見ていただきありがとうございます。
縁壱の喋り方や、縁壱先生の地の文のおかしい部分があれば、お気軽に誤字報告でも感想欄でもご指摘お願いいたします。

アロナに現代知識を叩き込まれるまでは、三人称視点を多用すると思われます。


超銃社会

道中、リンから生徒たちの名簿を受け取った縁壱は、粗方目を通した。

主に"学園"という組織に属する者たちの名が並んでいる。

 

――正直に言えば、生徒の名前は自ら出向き、会話の上で知りたかった。

だがそれを口にすれば冗談と受け取られることすら叶わないと、建物を出た瞬間に彼はすぐに理解した。

 

「な、なによこれ!?」

 

名簿に書かれていた生徒――ユウカが悲鳴に似た声を上げる。

縁壱も同じく、その叫びに頷かざるを得なかった。瓦礫、爆炎、土煙。目に映るすべてが、この場所を戦場であると証明していた。

 

(...これが、この世の常なのか)

 

彼女らの手に握られた武器は空気を裂くような破裂音と共に火花を散らし、金属の弾を吐き出している。

一瞬、その軌道が見えた気がした。あれは火縄銃に似ているが、より精密で速射性に富んだ、進化した"銃"の類だろう。

その危険性を縁壱は身に染みて理解している。たった一発でも当たりどころが悪ければ人は命を落とす。――本来、あれは人を殺すための武器であり、子供が扱うべき代物ではない。

 

(もしくは...これも普通なのか)

 

少し考えれば、この世界の治安が戦国の世より良くないことも見えてくる。だが、縁壱の脳は理解を拒んだ。

大人ではなく子供が、幼子が――口より先に手を出し、殺し合うことを、彼は信じたくなかった。

 

「もう!しつこいわね...」

 

ユウカが怒声を上げる。戦いの最中に怒りをぶつけるその声は、瓦礫の陰から飛び交う弾を背景にしていた。本当に目を覆いたくなる状況だ。

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻す為には、あの部室の奪還が必要ですから...」

 

傍らのチナツがユウカをなだめるように言葉をかけるが、その表情からは戦いを望んでいないことが見て取れた。

 

「それは聞いたけど...私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけ――」

 

言いかけた瞬間、背後から光が迫る。縁壱はその一閃を見て、反射的に動いた。無意識に呼吸を整え、身を投じる。

 

「日の呼吸...伍ノ型──陽華突」

 

右手に握った、リンから貰ったナイフの刃を柄尻から左掌で押し込み突き出す。元は刀による技だが、今は短い刃で弾丸とユウカの間に割り込ませた。刹那、甲高い金属音が鳴り、弾丸は辛うじて逸れた。

 

「間に合って、良かった...」

 

少女たちの瞳に驚きが宿る。信じられないとでも言うような表情だった。だが次がいつ来るかは分からない。縁壱はユウカの前に立ち、ナイフを再び刀のように構えた。

 

(...また守れた気になって、結局失ってどうする)

 

曖昧な追憶が、頭をよぎる。

己に力強く釘を刺すように言い聞かせ、強く言い放つ。

 

「気を抜くな」

 

だが縁壱に返ってきたのは困惑と心配が混ざった声だった。

 

「ちょ、せ...先生!?怪我はありませんか?!」

 

ユウカの声色は真剣そのものだった。縁壱は愕然とする。何故自分の身よりも縁壱を優先するのか。彼女たち、否、子供たちの命は縁壱にとっては少なくとも遥かに尊いものだ。彼が抱えて歩んできた"当たり前"が、ここでは通用しないのかと、彼は思い知らされた気分になった。それでも縁壱はただひたすらに、自身の"当たり前"を実行するのみである。

 

「...ユウカ達が、死ぬのが見たくなかった」

 

「えっと、私達は銃弾では死にませんよ?」

 

「...何?」

 

何度目か分からない問い返しに、縁壱は目を見開いた。ナイフを握る手がわずかに緩む。脳が混乱を起こすが、ユウカは怒りを滲ませながら続けた。

 

「それよりも!なんで安全な位置から前に...『気を付けてください!巡航戦車で――』」

 

その声はハスミの声と、さらに空気を裂くような飛翔音にかき消される。ユウカは音源に近かったのか、驚いて縁壱の懐に飛び込んだ。チナツとハスミは距離を取り、瓦礫の陰に身を隠す。スズミは縁壱と同じく、何が起きたのかを理解しきれていない様子だった。

 

煙と共に近づく大きな影。その正体を見た瞬間、縁壱は声を張り上げた。

 

「スズミ!右に避けろ!」

 

「っ!?」

 

回転する箱に取り付けられた鋼鉄の筒から炎が吹き出す。スズミは地面を蹴って横に飛び退き、攻撃は遥か後方で爆ぜた。

 

(...威力が高い)

 

縁壱は背筋に冷たいものを感じた。仮に彼女たちに銃弾が効かない硬度があったとしても、あと少しの遅れが致命傷になり得ると同時に思考する。

 

(やるしかない、か...)

 

そう覚悟を固めた縁壱は、震えて腕にしがみつくユウカに声をかける。

 

「...ユウカ」

 

「ひっ!?すみません先生!つい計算外の――『お前の武器を一つ貸してくれないか?』」

 

「え?」

 

「...どうにか無力化できるかもしれない、あの鉄の塊を」

 

***

 

縁壱が対峙する戦車の内部では、乗員たちのやり取りが続いていた。

 

「リーダー...?目の前に人影です、ですが煙でよく見えません」

 

運転手らしき不良が潜望鏡を覗きながら報告する。

 

「まだ距離がある、そのまま前進しろ」

 

車長格はハッチを少し開けて状況を確認し、静かに返す。

 

「了解」

 

「装填完了、次弾いつでも撃てます」

 

薬室に弾が送られ蓋が閉まる音が響く。

 

「分かった。狙いも合わせておけ、さっきの連邦生徒会の奴らかもしれないからな」

 

「...よし、照準完了」

 

全員が準備を終えた頃、影を覆う爆煙が晴れかけた。だがその時、戦車に何かがコツンと当たる音がした。直後、甲高い破裂音と共に乗員たちに強い衝撃が走る。スズミ特製の閃光弾は、ヘイローがあるキヴォトスの生徒ですら視界と聴力を暫く奪うほどの威力を持っている。

 

「閃光弾...そんな馬鹿な!?状況を...いや、これでは駄目か……」

 

嫌な予感を感じたリーダー格は耳を塞ぐ。戦車内の乗員たちは爆音に怯んでおり、動揺が広がる。

 

「...チッ、一回逃げ――「...遅い」

 

キューポラに手を伸ばす車長は、飛んできた弾丸に意識を奪われた。

 

***

 

後に縁壱が知ったところによれば、あれは"戦車"と呼ばれる乗り物だった。ハスミの所属する学園の制式戦車と同型らしく、ハスミが流出元を調べるために縁壱が乗員だけを倒して鹵獲した。正式には「取り戻した」と言う方が正しいのだろうが、一悶着の末に無事シャーレも確保できた縁壱達。

 

「大切なものだっただろうに...貸してくれて、深く感謝する。」

 

縁壱は会釈し、ユウカに愛銃を返した上で感謝を述べた。思い返せば、彼女たちの武器と敵の乗り物の弱点に関する知識がなければ、敵を倒せなかっただろうと縁壱は考える。

 

「私の閃光弾が先生のお役に立ててよかったです」

 

スズミは丁寧に言い、ユウカは動揺混じりに眉を顰めた。

 

「連邦生徒会長が指名した先生とはいえ...何故あんな無茶をするんですか!そもそも――」

 

その長話が始まりそうなところで、リンが追いついて来て割って入る。

 

「...遅れました。先生、そちらの方は無視して下さい」

 

「なっ!? 代行、今なんですって!?」

 

ユウカは顔を赤らめて言うが、リンは動揺を見せず縁壱の返事を待っている。

 

「分かっ...た...っ」

 

「せ~ん~せ~い~!? 後で覚えておいてくださいね!!」

 

縁壱はどちらの主張にも全面的には同意できなかったが、とりあえずリンの言葉に従うことにした。だが、その迷いが見えたことでユウカの怒りは縁壱へ向き、強く詰め寄られる。縁壱は少しバツの悪そうな顔をした。リンはそれを無視して続ける。

 

「良かったです、では部室を奪還できたようなので、この扉の先を進んで下さい...私もあと少しで用事が終わるので、終わり次第向かいます。」

 

「成る程...?」

 

「ちょっと、聞きなさいよ!?」

 

この先どうなるかは定かではないが、暫くはユウカに頭が上がらないだろうと縁壱は思った。




次回

クラフトチェンバー

特に関わらせたいキャラクターの学園(作者の恐らく可能な候補&学園によってはかなり後半になります)

  • アビドス高等学校
  • ゲヘナ学園
  • トリニティ総合学園
  • ミレニアムサイエンススクール
  • SRT特殊学園
  • シッテムの箱(学園じゃないけど一応)
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