刀をまた、握れたのなら。 作:無課金勢
申し訳ございません...
二週間に一回程度の更新を目指して、これからは少しずつ頑張って行けたらなと思っています。
連邦調査部シャーレの地下。
再び縁壱が薄暗い廊下を歩み始めた、その直後。
背後から、硬質的な足音と同時に、声がかかっていることに縁壱は気づいた。
「はぁ、はぁ...申し訳ございません、縁壱先生。」
立ち止まり、振り返った縁壱の目の前で息を切らす少女の正体はリンだった。
「どうした...?」
なぜ謝るのかという困惑、そして怪しみの感情が滲んだ声を零す。
それに対しリンは、呼吸を落ち着けてから返事を返す。
「私の説明が曖昧でした...実は──」
リンは縁壱に伝えた。
用事を終えた後にすぐに追いつくつもりが、縁壱が想定以上に通路を進んでいたこと。
そして、さっきまで縁壱が居た製造室が本来の目的地であったこと。
「そうか...すまない、余計な手間を掛けさせた」
説明を聞いた縁壱は姿勢こそ動かさないもの、申し訳なさそうな口調で謝罪を述べた。
「いえ...幸い、目的の物は無事でしたので」
「目的の物...?」
疑問符を浮かべ問い返す縁壱に応じるかのように、リンは自身の羽織る上着の内ポケットに手を添える。
「...受け取って下さい」
左手の指先で確りと保持されたそれは、縁壱の目前に差し出された。
純白を基調とし、角が丸く洗練された外装の中央に取り付けられた黒き面。
「それは...何だ?」
縁壱は、生まれて初めて見るその風貌に驚愕半分、警戒半分といった具合で問う。
「これは、連邦生徒会長が先生に残した物の一つ。シッテムの箱です」
初めて聞いた筈なのに、どこかで耳にしたような名前。
縁壱の思考が乱されると同時に、いつの間にか開いた口は言葉を発していた。
「...続けてくれ」
「はい。連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられる筈だと言っていました。私達では起動すら出来ませんでしたが...先生ならこれを起動させられるのでしょうか。それとも...」
縁壱に対する不安が滲む声で発せられた言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
「...」
沈黙する縁壱に、リンはゆっくりとだが、確実に口を開く。
「...では、私はここまでです。邪魔にならないよう、一度離れていま──どうかしましたか?」
リンは目の前の光景に疑問の声を出すことしか出来なかった。
理由は明確で、縁壱がシッテムの箱を前面に突き出し、色んな角度から見ていたからだった。
「その起動とやらは、どうすればいいんだ?」
「...はい?」
突然投下された質問に、リンは素っ気ない声を漏らす。
驚いた表情で縁壱を見やるが、至って真面目、そして丁寧にシッテムの箱を調べる彼の瞳に、嘘は垣間見えなかった。
「──はぁ...」
溜息と共に、リンは立ち尽くす。
どうやら、自分の所属する組織の長である連邦生徒会長に対する不満がまた一つ増えたようだった。
***
【システム接続パスワードをご入力下さい】
────我々は望む、七つの嘆きを。
─────我々は覚えている、ジェリコの古則を。
【接続パスワード承認】
【現在の接続者情報は継国縁壱、確認できました】
【シッテムの箱へようこそ、縁壱先生】
【生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します】
***
私の目の前が白く染まった直後。
最初に感じ取ったのは、自身の鼻を突き抜ける磯のような匂いだった。
快晴の青空、見渡す限りに散りばめられた白雲が、風と共に流れていた。
「...ここは、一体──?」
瞬く間に喉を突いて出た困惑と共に、目線を下ろし周りを見渡そうとした。
尤も、それは視界の奥で小さな寝息を立てる空の色をした髪の娘を見るまではの話だったが。
「むにゃ、カステラにはぁ...いちごみるくよりぃ...ばななみるくのほうがぁ......えへっ...まだたくさんありますよぉ...」
今、なぜ私はこんな所に居るのか。
ここは何処なのか。
目の前の女性は誰なのか、何者なのか。
(...寝ている?)
自問のような思考が頭に浮かぶ。
「...」
私は四方を見渡した。
ここに来たということは、何かしらの理由があるのだろう。
恐らく、リンが言っていた"シッテムの箱"とやらの強い繋がりがあるのだろうと私は考える。
(...待つか)
結論はすぐに出た。
目の前の少女は無防備に眠っている。万が一、何者かに襲われればひとたまりもないだろう。
それに――彼女を起こす理由が、少なくとも私にはない。
私がここに来た理由は分からない。
だが、少なくとも今この瞬間、彼女の安らかな寝顔を乱す権利は、私にはないと思った。
腰を下ろし、少女から少し離れた位置に座る。
風が頬を撫で、雲が流れ、波音だけが静かに地平線の彼方から響いていた。
(...いつぶりだろうか、こんなにも穏やかな時間は)
手を翳せば届きそうな記憶、そして真実が──波のように押し寄せては、逃げるように輪郭を曖昧に変化させる。
「んぅ...あと、ごふん...」
少女が寝返りを打ち、小さく呟いた。
私はその様子を、ただ静かに見守る。
「...」
どれくらい時間が経ったのだろうか。
太陽の位置は変わらず、時間の感覚が曖昧になっていく。
(...このまま、ずっとここに居られたら)
そんな、叶わぬ願いが──空を見上げる私の胸をよぎった。
だが結局、それを口にすることはなかった。
やがて――
「ん...んんっ...」
少女の瞼が、ゆっくりと開き始めた。
それと同時に、彼女の頭上に薄っすらと青い円が浮かび上がる。
それらはまだ半分夢の中にいるような、ぼんやりとした動きだった。
私は立ち上がることも、声をかけることもせず、ただその場で待った。
「ふわぁ...あれ...?」
少女は大きく伸びをして、きょろきょろと辺りを見回す。
そして――私と目が合った。
「...えっ?」
「...」
数秒の沈黙。
「せ、先生...ですか?」
戸惑いと驚きの混じった声で、少女は私に問いかけた。
「...ああ。そうらしい」
私は短く答える。
少女はぱちぱちと瞬きを繰り返し、それから慌てて立ち上がった。
「お、お待たせしてしまって申し訳ありません!わ、私、アロナと申します!シッテムの箱に常駐しているシステム管理者で、メインOSで――」
早口で自己紹介を始める彼女を見て、私は小さく首を横に振る。
「...慌てなくていい。私は貴方が目覚めるまで、待っていただけだ」
「え...待って、いた...?」
アロナは不思議そうに首を傾げた。
「ああ。幸せそうに眠っていたからな」
その言葉に、アロナの頬がほんのり赤く染まる。
「し、幸せそうって...!?もしかして寝言、聞かれてました...?」
「...ああ。カステラに、いちごみるくとばななみるく。どちらが良いか、随分と悩んでいたように見えた」
「へっ!? う、うぅぅ...!」
アロナは両手で顔を覆い、恥ずかしそうにうずくまった。
私は、その様子を見て――久方ぶりに、口元が"僅か"に緩んだ気がした。
心を強く閉ざす、鎖と同時に。
友人に読んでもらったのですが、縁壱先生は戦国時代の人なのに、一人称視点にて現代的な単語を地の文で使いまくっていることに最近気づかせてくれました。
過去の話も含め、逐一調べながら少しずつ修正していきます。
特に関わらせたいキャラクターの学園(作者の恐らく可能な候補&学園によってはかなり後半になります)
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アビドス高等学校
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ゲヘナ学園
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トリニティ総合学園
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ミレニアムサイエンススクール
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SRT特殊学園
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シッテムの箱(学園じゃないけど一応)