流浪人の世界巡り   作:増えることに飽きたプラナリア

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始まりの地 北の不死院その7

 騎士と別れた後、彼は階段を駆け上がる

 

 その途中で、おそらくは鉄球を落とした犯人だろう亡者が奥に逃げていくのを確認するや、階段を飛ばして跳ぶように登り切ると、そのまま殺意のままに亡者へと突進し、振り返ろうとした亡者の体を切り捨てるように袈裟斬りを放つ

 

 亡深々と自身の体に剣身を差し込まれた亡者は即死し、その体に白いモヤを残してその場に膝をつく。その死体を踏みつけ、乱雑にブロードソードを引き抜いた後、踏みつけた亡者の死体についた白いモヤに触れる

 

【直剣の柄】

 

 頭の中に単語が浮かび、彼はコンソールを開いて部下のページにそれがあることを確認すると、コンソールを閉じて目の前にある閉じられた鉄格子へと向かう

 

 鉄格子は鍵がかかっていたが、騎士から譲り受けた鍵で簡単に開けることができ、その先の霧の壁を潜ると、外に出たのか、薄暗かった世界が眩い光で覆われる

 

 刹那、光の中に差し込まれた銀の輝きに彼は驚愕しながらも咄嗟に身を捻り、亡者が放った鋭い刺突を躱す

 

 そのまま亡者は彼を押し倒そうと勢いのままに体当たりを敢行、回避するために不安定な体勢になっていた彼はそのまま外から建物の中へと押し倒されねしまう

 

 背中を強かに打ちつけた彼が短く悲鳴をあげ、亡者は彼を殺そうと状態を無理やり起こし、折れた直剣を振り上げる

 

 舐めるな、そう叫びながら彼はひしゃげたカイトシールドを鈍器の代わりに亡者の顔面を殴り抜く。下顎の骨を砕き、歯を何本か吹き飛ばしながら体勢を崩した亡者に対し、彼は逆手に持ち替えたブロードソードを振り上げ、開きっぱなしで血を垂れ流す亡者の口に突き立てる

 

 くちから喉を貫かれた亡者は即死し、力の抜けた死体をどうにかこうにかどかした後、追撃がないことを確認してから一息ついた彼は、立ち上がって誇りを軽くはらってからブロードソードを引き抜き、再び外に出る

 

[この先、避けることが重要だ]

 

 と、頭の中にメッセージが浮かぶ。それに何があるのか、とより一層警戒しながら道なりに進むと、折れた直剣を握る亡者の後ろに弓を構えた亡者がいた

 

 メッセージの意味を理解した彼は、武者震いを覚えながら、しかし次の瞬間には正面の亡者に向かって走り出す。当然それを迎え撃とうと亡者が折れた直剣を手に突進し、後方の亡者が構えた弓に矢をつがえる

 

 これに対して彼はわざと亡者の間合いにまで踏み込む。亡者は当然彼に対して振り上げた直剣の先を叩きつけてくるが、彼はその直剣の先を斜めに構えた盾で受け流しながら、タイミングを合わせて直剣の腹を叩くようにして武器を弾く

 

 大きく亡者の体勢が崩れ、その体を押し除けて先へと進んだ彼はそのまま前転して放たれた矢を躱し、次が来る前に体勢を立て直してブロードソードを顔面に向けて投擲、放たれた剣は見事に亡者の頭に突き刺さり、その衝撃で体勢を崩した亡者は仰向けに倒れる

 

 倒れ行く亡者を見送り、彼が振り返ると、そこにはちょうど起き上がった亡者がいて、2人は目が合うと同時に動き出す

 

 亡者が両手に構えた直剣を振り下ろし、彼はそれを左手を支えにして構えた右手のシールドで防ぎ、亡者が動く前に、その無防備な胴を蹴り飛ばす

 

 彼の蹴りを喰らった亡者は体勢を崩しながら吹き飛ばされ、彼は右手の盾を外して両手でしっかりと持ち直すと起きあがろうとする亡者の胸を足で押さえつけ、その顔面に盾を叩きつける

 

 盾を叩きつけられた亡者は後頭部を強かに床に打ち付けることとなり、彼は続けて亡者の顔面にシールドの先を何度も叩きつける

 

 7度目の叩きつけを終えた辺りで、自分の体の内側を満たすような感覚を感じて攻撃の手を止める彼。見下ろす亡者は見るも無惨に顔面を破壊、変形させられており、彼はそんな亡者を数秒見つめた後、盾を右手に装備し直し、道なりに進む過程でブロードソードを回収する

 

 そして霧の壁が姿を現した所で立ち止まると、ふたたび頭の中にメッセージが浮かび上がる

 

[この先、落下攻撃が有効だ]

 

 メッセージを受け、彼はこの先に待ち受けるものが何かを察して息を呑むが。すぐにそれを吐き出して気持ちを抑え、覚悟を決めてからの壁を越える

 

 壁を越えると、元はテラスか何かであっただろう、しかし今は足の踏み場がかろうじてある程度にまで壊れた場所に出てくる。そこは最初の広場を見下ろすことのできる場所でもあった

 

 そして彼は自分が見下ろす広場で、じっと自分のことを見つめる怪物と目が合う。その瞳には一切の生気も正気も感じない。そんな怪物の虚無の双眼が彼のことを見つめていた

 

 自然とブロードソードを握る左手に力を込める。深呼吸して胸の高鳴りを抑えようと努力するが、目の前の強敵と対峙することとなった彼の闘争心はもはや有頂天と言って良いほどに膨らんでいた

 

 そして覚悟を決めた彼はブロードソードを両手で持つと、それを逆手に振り上げながら怪物の頭目掛けて飛び降りる。怪物は思いもよらない行動をとった彼に困惑して動きが一歩遅れることとなり、それが致命傷につながった

 

 彼が怪物の頭に降り立ち、その眉間にブロードソードを叩き込む。怪物が悲鳴をあげる。鮮血が溢れ出して彼のジャージを汚す

 

 怪物は彼を頭から引き離そうと大槌を持たない手を彼に向ける

 

 それに彼は素早くブロードソードを引き抜くと怪物の頭から広間に飛び降り、自分の鮮血のせいで目を開かなくなってしまった怪物は懸命に顔を手で拭っていた

 

 彼は再びブロードソードを両手持ちに構えると、雄叫びと共に怪物はと走り、無防備な膝裏に目掛けて剣を振り抜く。放たれた切先は深々とその肉を切り裂き、鋭く走った激痛に怪物が再び悲鳴をあげて膝をつき、手で体を支えることで倒れるのを防ぐ

 

 続けて彼はその無防備な体に追撃を入れようとするも、怪物は彼の方を睨むと背中の翼をはためかせて突風を巻き起こす

 

 それから身を守ろうと動きを止める彼、その間に怪物はそのまま体を浮かばせると、その高度を上げていく

 

 その動きに逃げようとしているのか、と考えた彼は、しかしそれを阻止する手段がないために悔しげな怪物を睨み上げた

 

 しかしある程度上昇した所で怪物が動きを止める。それにどうしたことかと彼が眉間に皺を寄せた、その次の瞬間だった

 

 羽ばたきを止めた怪物が重力に従って地面へと落下し、それを見た彼は咄嗟に飛び退きながら盾を構える

 

 凄まじい衝撃はと轟音が広間を揺らす。発生した衝撃波は距離を空けながら盾を構えて身構えた彼であったが、それを受け止め切ることはできずに吹き飛ばされ、柱に背中を打ち付けることとなる

 

 肺から空気を搾り出すように声を上げた彼が広間に倒れる。痛みに痙攣する体は、彼の思うようには一切動くことはなく。その間に広間へと落下した怪物はゆっくりと起き上がり、額から流れ出た血を乱雑に拭うと、蹲るばかりの彼を殺そうと大槌を両手に構えてゆっくりと歩き始める

 

 痛みに震えるばかりの彼は、しかしそれから脱する一つの好気を……エスト瓶を思い出すと、震えるてでそれを取り出し、中身をこぼしながら口につける

 

 その時、怪物は彼に向かって大槌を振り下ろす。衝撃と土埃が舞い上がり、怪物は勝利を確信して下卑た笑みを作る

 

 おい、何笑ってんだよ……そう怪物の真横から声が聞こえてくる。それに笑みを驚愕に変えて振り向いた怪物は、しかし次の瞬間には懐にまで踏み込んだ彼の横薙ぎの一撃を受けて苦悶の表情へと変わる

 

 痛みに怪物が叫び、追撃が叩き込まれる。これ以上やらせるものかと怪物が大槌を片手で薙ぎ払い、彼はそれを背後にステップして回避すると素早く両手持ちにしたブロードソードを構えて怪物へと迫る

 

 怪物が雄叫びを上げて大槌を振り下ろし、彼はそれを斜め左に前転して回避し、大槌を握る怪物の手を切り付ける

 

 痛みに怪物が手を引っ込めた瞬間を狙い、もう片方の手に飛び乗った彼はそこを足場に片手に持ち替えたブロードソードで鋭い刺突を放ち、的確に怪物の左目を抉る

 

 怪物が絶叫をあげ、彼はそのまま目を抉り取りながら怪物の後方へと飛び込み、抉り取られた目を抑えながらも殺意をたぎらせながら怪物が振り返って彼に大槌を叩きつける

 

 それを彼は左に前転して回避して距離を取るともう一度エスト瓶に口をつける。そうして傷を完全に癒した彼は両手にブロードソードを構えて再度怪物に迫る

 

 対して怪物は頭を狙って薙ぎ払うように大槌を振るう。が、彼は大槌の間合いの下に潜り込むように前転して回避すると、そのまま懐に潜り込んで怪物の腹を切り上げる

 

 深々と腹を切り裂かれた怪物がたまらず膝をつく。そこに彼は間髪入れずに傷口に蹴りを放ち、怪物が呻き声を上げる中追撃として腹の傷口に剣先を突き込み、その傷口を抉るように剣を捻る

 

 あまりの痛みに悲痛な呻き声を上げる怪物はそのまま血を吐き出し、怪物の吐き出した血を浴びてからの体が真紅に染まる

 

 彼はブロードソードを引き抜き、雄叫びを上げて今度は怪物の胸に剣先を突き立て、そのまま抉るように横一文字に切り裂く

 

 それが致命傷となり、怪物は掠れた呻き声を何度か上げた後、天を仰ぎ見ながらゆっくりと前方に倒れ、その体が地に着く前に白い光の輝きとなって消え去った

 

 そして戦いを終え、肩で息をしながら怪物がいた場所を眺める彼の頭の中に単語が響く

 

【巡礼者の大鍵】

 

 そこで彼は漸く勝利の実感を感じらことができた。が、彼は喜びを表現することなく、広間の真上……すなわち空を仰ぎ見て一言

 

 終わった、と……彼は達成感と充足感を感じる表情でそう呟いたのだった

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