お・ま・た・せ・!
切りの良い所でと思い執筆してたのですが、予想以上に長くなってしまいました。
リアルでの農作業で(米とか米とか米とか)例年以上に時間が掛かり執筆も遅れて申し訳ない。
~ドロシーside~
三層の魔物の強さは三人からすればあまり変わらず、一撃で倒せる程度の強さでこれなら余力も十分である。降りてから一番近い安全地帯に到着して夕食+就寝の休息を入れる事にした。
「と言う訳で、今日の夕食はロールキャベツとロールレタスを作る」
マジックバッグからガスコンロやそこそこの大きさの鍋を取り出して手早く準備していく。道中でドロップした食料を大量に使って調理する。豚と鶏の肉を包丁である程度の大きさにぶつ切りにする間、先にした準備していたタネに入れる野菜を手動のフードプロセッサーに入れてラプンツェルに渡す。
「その取っ手を引いたら刃が回転するから細かくなるまで切ってくれ」
「分かりました」
「ドロシーはキャベツとレタスの葉を根元から千切ってくれ。―――あぁそれと、先に包丁で切れ目を入れておくと取りやすいぞ」
「……もう少し早く教えていただけませんか?」
ドロシーの手にはキャベツの芯が抉り取られていた。恐らく、三本の指で芯を掴んで捻じり回しながら抉ったであろう様子だ。芯が綺麗に抉られているので問題は無い。
「いや……芯を抉り取れるならそっちの方が早くていいよ?」
「なら、余計な手間を掛けずに美しく取れるならこちらの方が良いでしょう?」
「さぁ~て、タネを仕込んでいくか」
「種を仕込む!?」
「ロールキャベツの中に入れる具材だからな?」
「優しく包んで温める……。例えるなら親鳥が卵を温めるかの如く丁寧に―――という事ですね!」
丁寧に仕上げるのは間違いないが、ラプンツェルがその様に言うと別方向のニュアンスに聞こえてしまう。
:言い方ぁ!
:丁寧に包まないと具が出るからな
:この性女が言うと何かいかん事を連想してしまう
:……スルーしよう
:スルーだな
:もうツッコミ疲れた
:色物枠で
視聴者もラプンツェルの暴走気味なあれを察してか、余計なツッコミを入れる事を止めた。それよりも今は作っている者の味付けが気になるところである。
「鶏ガラかコンソメのあっさりにするべきか……トマトベースも好みではあるが未だ見かけてないからなぁ」
色々と呟きつつ作る手は止めずにタネを包み、タコ糸で軽く縛って形を整えていく。この先の事を考えつつ、鶏ガラベースにする事にした。三層以降は全てが手付かずなので期待する事にした。
ここでトマト缶を使った場合、もしもトマトの魔物が出なかった場合の事を考慮して取り置く事にする。そもそも、缶なので長持ちするから無暗に使うよりいざという時に使う方針に決めた。
「さてさて、じっくりと煮込む間にご飯を炊くけど……。二人に質問するけど普通に炊いたご飯を食べるか雑炊にするかどっちが良い?」
「雑炊……とは?」
「煮込んだ残りのスープに炊いたご飯を入れて煮込む料理の事」
:この主やりおる
:カップ麺の残り汁にご飯を入れるのも至高
:鍋のシメだけじゃなくても雑炊は定番
:消化も良いしな
:カロリーに関しては言うまでもないがな
:探索者のエネルギー消費はエグイです
:主達も結構な距離を走ってるから消費量はエグイだろうな
エネルギーの消費……、カロリーの補給を考えつつ消化にも良いとなれば雑炊の方が適切でしょう。
これからの道中の食事全てを雑炊系にする事はないが、この一日の移動距離を考えると食べ易くて消化吸収も良いとなれば最適解だろう。
「雑炊でお願いします」
「私も同じく」
「という事で土鍋で二……いや、三合炊こう」
ロールキャベツとロールレタスがあるとはいえ、おかずは少ないので多めのご飯にする。スープの水分を多く吸収するが、スープ単体で飲むよりも美味しく全部食べられる。
「生米から作るのも美味しいんだが、如何せんスープの量を考慮すると足りないんだよなぁ~。」
生米から雑炊を作る場合だとスープの水分量だけでは足りないのだ。水で薄めてという手もあるが、土台の味が鶏ガラという点を考慮すると薄めるというのは却下だ。ドロシーの水魔法で米を洗って炊く―――、魔法で料理を作るという贅沢なやり方だ。
「今思うとドロシーの水魔法めっちゃ重宝するわ。飲み水だけじゃなくて調理の事も考えると消費量が段違いだ」
「私の攻撃は銃ですので魔力を消費するという事は殆どありませんから」
「魔力で銃弾を作るのは分かったんだが…コスパ良すぎじゃね?一発で一の消費じゃなくてマガジン一つで一というのは色々とエグイ」
「私は杖にエネルギーを充填ですが、どういう仕組みなのか一発毎ではなく六発なのです。撃ち切りで魔力を一消費で再び六発という……数が微妙で困ります」
「これもレベルが上がれば何かしらの変化があるかもしれませんが、当分先の話になるでしょう。私のレベルが10を超えても銃器に変化はありませんでしたから」
前世なら拡張武装を展開出来ていましたが、今の状態は殆どの機能が使えない。使用可能になるには切りの良い数値でスキルでの発現と想定していましたが、最悪の場合を考えると少しだけ不安が残りますね。
今は順調であるが、いつか限界が来るのは当たり前だ。ダンジョンは奥へ進めば進む程、魔物が強くなるのだ。今の三階ですら魔物の身体の大きさが一層よりも大きい。
「――シー、ドロシー」
「えっ?どうかしましたか?」
「考え込んでからかなり時間経ってるぞ。飯も出来たし食べて落ち着け。どうせ今日はこれ以上の探索はしないんだから多少なら警戒を緩めても大丈夫だ」
「……そう、ですね。食べましょう」
「「「いただきます」」」
鶏ガラスープで煮込まれたロールキャベツとロールレタスは柔らかく、フォークで切る事が出来る。一口食べると野菜とミンチにした豚肉の甘さがスープに融けていて、とても食べ易くなっている。
:普通に美味そう
:美味いに決まってんだろ
:飯テロォォ!!
:鶏ガラだと濃い味じゃね?
:鶏ガラの元をそこまで入れてないから大丈夫
:野菜と豚肉の甘さでそこまで気にならなくなる
:それよりも雑炊だ!
:旨味を吸った雑炊とか勝ち確だろ!
―――美味しい。この世界に来てから思う事は色々とありますが、食べ物が豊富にあるというだけでとても贅沢ですね。調味料は濃い味付けの為と決めつけていましたが、調理法でここまで変化するとは驚きます。
この現代は様々な調理法が周知されており、誰でも情報を手に入れれる事が出来る強みもあるので多くの人が参考にする事が出来る。しかし、ラプチャーが跋扈していたあの世界では命が最優先で食に拘る余裕が無かった為、長い年月と共に廃れていった。しかも、パーフェクトという完全栄養食が作られていたのも大きな要因だろう。
「ふわわぁ~。煮込まれた料理はここまで味が染み込むのですね」
「お肉も柔らかく食べ易いですね」
「……以前ドロシーに聞いたんだが、パーフェクトってどんな味だ?」
「「………」」
遊星のふとした疑問にドロシーとラプンツェルの手の動きが止まり、少しだけ重い空気が漂う。
「今この場で食べている食事と比較するとエネルギー吸収効率ではパーフェクトが一番です」
「ですが、食感は絶望的です。肉、魚、フルーツ等に似せて作られてもそれだけは変えられません」
「一応聞くけど何回ぐらい食べた?」
「私は数回です。ですが、もう二度と口に入れたくありません」
「私もドロシーと同じですね」
「その数回だけ食べて二度と口に入れたくないとなれば……どんだけ不味いんだよ」
「味も食感も元の食材の足元にも及ばないと言えば分かり易いでしょう」
「食べるだけで長生き出来ると噂されている位です」
パーフェクトについて語るドロシーとラプンツェルの表情は二度と思い出したくないのか、とても暗くなっている。
:なぁにその怖いの
:食感を二の次って
:レーションよりも凄い代物か
:でも二人が二度と食べたくないっていうんだぞ?
:とりあえず主の飯を食べてくれ
:雑炊は美味しいぞ!
:飯テロ放送
:晩御飯卵雑炊にしよう
そうこうしている内に雑炊が完成したので、アルミのお椀に入れて渡す。
「もしも味が薄いと感じたらタネの肉を入れて食べてくれ」
「……そこは調味料を少し足すのでは?」
「濃い味に慣れると薄味が美味しく感じなくなるぞ」
「んんっ!美味しいです!!」
二人を無視して渡された雑炊を一口食べたラプンツェルの感想は美味の一言―――これには遊星もにっこりである。ドロシーも黙って一口食べ……。
「美味しいですね」
「だろ?」
「何故味が薄いと言ったのですか?」
「味覚には個人差があるからね?」
「万人が美味しいと受け入れられる味なら自信を持って出しなさい!」
:草
:www
:くさぁw
:主の自己評価低いの何でなの?
:作る手順見てたけど普通に美味そうだったんだが?
余りにも自己評価の低さに視聴者達も疑問に思う。
「だってさ……自炊を始めたのは家族が死んでからだ。食べさせる人も居なかったし自分が食べるだけだったからな……」
「「……」」
重い空気に皆が沈黙する。自炊で料理を作って食べるのは自分だけで、振舞ったのはドロシーとラプンツェルの二人だけで、野営で作る様な料理は出していない。
「今は私達が居ます。自信を持って下さい」
「そうですよ。前世で食べた料理と比較しても美味しいのですから誇るべきです!」
「…そうなのかなぁ?」
:自分に自信をもてなさ過ぎぃ…
:成功体験どころか試す機会がほぼ無かったからか
:普通は褒められて伸びるからな
:自信持てよ!
:二人が美味しいって言ってんだから!
:美女二人に美味いって言われてんだぞ!
:主は男飯っていうよりも主夫が作る夕食だぞ
:男飯はもっと単純だぞ?
:俺は白米に納豆だけだわ
:俺は白米に醤油とチクワだぞ?
:豆腐と納豆だわ
:↑これらは節約飯だから比較すんな
:節約飯勢多過ぎか?
なんだかんだありつつも夕食を食べ終えた三人は、各自装備を点検と清掃をして就寝の準備をする。
「三人居るから多めに九時間の休息にするか。三時間で交代して―――」
「「遊星は見張り番をせずに寝て下さい」」
二人の反論を赦さない言葉が続く。
「この中で決断速度と生存能力が一番高く、命の代えが効かないので当然ですから」
「私が先に見張りをしますので遊星をお願いします」
「行きますよ」
「ちょまっ!?ッアーーーーーーーーーーーーー!?」
遊星の返事は一切待たず、ドロシーが首根っこを掴んでテントの中へと連れ去っていく。
:主はゆっくり休め
:羨ましいという感情が湧かない
:ばっかやろう!ドロシー様の添い寝だぞ!!
:やっぱ羨ましい!!
:ちょっと男子ぃ~
:エッチな目で見ないでよ
:そんな関係になるわけないだろ?
:主が超草食男子という情報があるんだが?
:何だそりゃ心配いらねぇじゃん
:草食男子ww身体能力化け物が?www
:部隊にもう一人男居るって言ってたじゃない!
:薔薇よ薔薇!!
:どっちが攻めだと思う?
:普段温厚な主が攻めだと思うわ!
:腐女子は腐海にお返り!!
:ッアーーーーー!
「ふふふ、指揮官と遊星の裸体が絡みあう……。汗に蒸れた室内でも気にせず体を動かすなんてとても興奮します!」
:こいつっ!?
:両刀だとっ!?
:もう駄目だこの性女
:ラプンツェルさんにBL本贈りたいわ
:おいやめろぉ!?
:ドロシー様の心労を増やそうとするな!
:同志は増やすべきでしょ?
:ならエロ同人誌もありという事だな?
:カオスなコメント欄だなぁ
:本郷のギルド宛てに配送したら受け取ってくれるかな?
:《ギルド長・本郷》!?
:それだ!!
:突っ込め―!!
:《ギルド長・本郷》やめろやめろやめろ!?ほんとうにやめろ!!
ラプンツェルが妄想に耽っている中で視聴者達の悪ノリが加速する。ネタなのか本気なのか分からない行動力の影響先に居る本郷は色々と戦慄している。
~ラプンツェルside~
食料ダンジョンの安全地帯という情報だけで見張り番を疎かにする事はしないのだが、一時間も周囲の様子を窺っているとどういう性質なのかがおおよそ理解出来てた。
「安全地帯は魔物が入って来る可能性は0に等しいですね。かなり遠くにある気配ですが、此方に近付く事や待機する事もせずに散策をしている。魔物の個体別に情報量が違う等も考えましたが、凡そダンジョン内での大原則的な制約があるのでしょう」
この見張り番で気になった事や気付いた事をメモして、後々の判断材料にする計画である。
しかし、日が落ちないというのは過酷な条件の一つです。夜という暗闇も過酷な一面を持ちますが、人間の身体のホルモンバランスが崩れる可能性があります。睡眠障害が一番になりますが、それによる弊害―――集中力や判断力の低下が最も危険ですね。
「それにしても遮光のテントは素晴らしいですね。ダンジョンでの野宿を考え尽くされた設計に携帯性も高く、重量も軽くて丈夫……。一番需要がある商品ではないでしょうか?」
:ほんとそれ
:遮光テントは神
:深い階層まで攻略する上位探索者は遮光テント必須
:体調管理も重要だからな
「一日中明るい場所に居ると自律神経が崩れますから注意が必要ですね。……問題は次の四層」
今回の探索をする前に、他のダンジョンに潜っている探索者達の配信を見て環境の情報の類似点を見つけ出そうとしたのだがうまくいかなかった。ダンジョン内では日がな一日明るいというだけで、それ以外の目立った点が無い。
「今の周辺環境の変化等も調べたのですが、変化が殆どありません。変化は出現する魔物の種類が増える程度…」
:一応調べたけど魔物の大きさが少しづつ大きくなっている
:適度の階層の区切りで魔物の分布が変わってたぐらいか
:ドロップによって魔物の個体が変わる位かな
:分布まで調べてんのかよ
「分布…ですか?どの様な分布なのか教えて頂いても良いでしょうか?」
:大概クソダンジョンと呼ばれている内の消耗品ダンジョンの話。一~十層までは例えると日常生活で使うタオル等の布や糸等の素材がドロップするけど、十一~二十層から加工された現物、二十一~三十層では特殊効果が付与された現物って具合。基本二十一層からドロップを狙う探索者が多くて道中の魔物もそれ程強いのは居ない。
:一層から強い魔物が闊歩する食料ダンジョンってやっぱりクソだな
:クソダンジョンの中でもトップオブクソ!
:消耗品ダンジョンもあまり人気は無いけどレアな消耗品ドロップを狙って潜る探索者は一定数居る
:《ギルド長・本郷》どっかの国のオークションで無駄な脂肪が汗になって落ちる飴があったな
:それクソ高いやつやん
:一個で一千万だっけ?
:《ギルド長・本郷》飴は容器に五個入ってたそうだ
:一個二百万で無駄な脂肪が落ちるとか神だろ
:《ギルド長・本郷》それ以降は値段が跳ね上がってるがな
摩訶不思議な効果を持つアイテムが落ちるのですね…、それはかなり深い場所でなければドロップしない。一度効果を知れば誰もが欲しがり、それを狙う探索者が増えてそれ以上を求めてもっと深く探索する。欲望というものは際限がありませんね。
「それにしても、その様な話を聞けば聞く程この食料ダンジョンは歪ですね。攻略と成果が極端に分かれています」
:需要が無いんだよな
:食べ物も美味しいのが出たら考えるけど…
:初っ端から魔物強過ぎて誰も手を出さなくなった
:マップも広いし
:食べ物しか落ちない
:命かけて普通の食べ物を手に入れに行くか?
私自身が予想しているよりもこの食料ダンジョンは危険で価値の無い物と認識されている。しかし、先程の摩訶不思議な効果を持つアイテム……。もしも、深く潜るにつれてその様な効果を持つ食べ物が落ちたらと思うと怖いですね。
人とは欲望の塊を持つ者が多く、知れば望む―――。自らが独占したいが為に大量の人員を導入するでしょう。それにより命を落とす者が多くなる。良い成果を望めば望む程多くの人を危険に晒してしまう。ダンジョンとはどういった存在なのか調べる必要がありますね。
ダンジョンの事を調べれば調べる程色々な事が見えてくるが、誰がどの様な者がこの世界にダンジョンを出現させたのかが理解出来ない。この世界の資源が少なくなった事で星の意志が生み出されたのか―――、神という上位存在が興味本位で生み出したのか―――、科学的な物なら理解が出来るが摩訶不思議な事は理解出来ない。
「……ままならないものですね」
ラプンツェルはぼやいてしまう。
:どしたん?
:性女が聖女になった?
:切り替えで脳がバグる
:真面目な側面が一番良い
「ッ!あぁ、気にしないで下さいね?ダンジョンについて色々と考えていただけです」
:もう俺達は気にしない事にした
:いくら調べても分からないというね
:ギルドも調べているらしいけどそこまで手が回らない
:それよりも魔石が優秀
:ほぼ何でも利用できる
「それにしてもかなり長い間考え込んでいましたが、周囲の変化は殆どありませんね。これなら見張り番は不要かと思いますが、想定外を考慮しないといけませんからね。…ですので、集中力を保つ為に此処で贅沢な物を頂きます!」
ラプンツェルがマジックバッグから取り出したのはチョコレートバーだった。
:チョコバーだぞ?
:お菓子じゃん
:ありふれたデザート…いや待て
:主達の前世は食い物が
:加工品だから中々手に入らない代物だった?
:甘いチョコは砂糖めっちゃ使うんだぞ?
:そりゃあ贅沢って言うわな
包装を剥いてチョコバーを一口食べた感想は…。
「美味しいですね。やはり世界が違うと味は違うのでしょうか?」
前世で食べた事があるチョコバーは甘ったるいだけでも美味しいと感じていたが、このチョコバーは別格だった。カカオの苦味と砂糖の甘さが絶妙な比率で混ぜられて大人から子供まで美味しいと断言出来る味わい+硬いパイ生地とチョコレートを何層にも重ね合わせて食べ応えも兼ね備えられている。
最初はちまちまと食べていたが、少しだけ大きく食べる。尚、視聴者達からはもの凄く大事そうに食べる姿というギャップ萌えに心を撃ち抜かれていたりする。
「…どうしましょう。美味しくてついもう一つ食べたくなってしまいます」
:リスみてぇに喰いやがって!
:えぇいじれってぇな!
:お菓子を送り付けてやりたいw
:食べる姿を配信しろ!
:もう一個食べちゃえYO!
:比較的安いお菓子だから食べな
:本郷のギルド宛てにお菓子送っておくわw
:俺のお勧めお菓子を食らえええええ!!
:段ボールに大量に詰めてやんよ!
視聴者達のお財布が輝き叫ぶ!ラプンツェルだけでなく運が良ければドロシーも口にするかもしれないし、これからも召喚されるであろう仲間達にも―――という思惑もある。
如何せん外は深夜で本郷の活動も小休止状態になっているというのも相まって誰も止める事は無く、数日後には大量の段ボールが届くだろう。それどころかギルドの職員がお菓子を直接手渡す事も出来るので、裏ではこの事は本郷には内緒にして事を進める職員が多く居たりする。
「量はどの位……、えっ?こんなにも沢山?」
マジックバッグからチョコバーを含めた糖分の高いお菓子等が沢山詰められた袋が三つが収納されていた。そのどれもが長期保存が可能な品々である。
:主考えてんな
:チョコに羊羹とカロ〇ーメイトか
:カロ〇ーメイトはお菓子じゃねぇw
:金平糖が入ってんぞw
:なっついw
:砂糖の塊だから糖分補給には丁度いい
:それにしてもチョコと長期保存が出来る和菓子が多いな
:ビスケットもあるだろ!
:チョコビスケットじゃん?
:それはもうチョコという分類です
:キノコとタケノコが入ってなくて良かった
:どちらかが入ってたら戦争になるw
「お、お菓子で戦争が勃発するのですか!?」
:ちがうwそうじゃないww
:派閥争いなんよ
:過激すぎて戦争みたいな罵詈雑言が飛び交う
:永遠に終わらない戦争
:主達は美味しいって言いながら食べてるだけでええんよ
:今は休憩タイムだからな!
「な、成程……好みの対立でそこまでの言い争いとなるのはかなり危険ですね」
ラプンツェルはお菓子袋に入っている羊羹を取り出して一口―――。
「もっちりと甘くお腹に溜まりますね!しかも、お菓子の一つ一つが小さいので選ぶ楽しさもあり充実します!」
袋にはまだまだ沢山のお菓子が入っているが、何事も適度が良いのでこれ以上食べるのは止めた。
そして、気付けば交代の時間となっており、ラプンツェルはドロシーを起こしにテントの中に入ると二つのマットレスが敷かれているが一つの場所に固まっていた。
あらあら、ドロシーったら遊星に引っ付いて寝るなんて……なんて大胆な!!―――こほん。冗談も程々にして起こしましょう。
「ドロシー、起きて下さい」
「…ぅん。……ラプンツェル?」
「交代の時間ですよ」
「……ふぅ、分かりました。少し待ってください」
ドロシーはスッと立ち上がり、手鏡とヘアブラシで身嗜みを整える。流石と言うべきか手慣れた様子であっという間に整え終わりラプンツェルと交代する。
「気になった点を幾つかメモに残しました」
「分かりました。こちらも何か仮説等を残します」
「それにしても、ニケの身体とほぼ生身の身体だと色々と違いますね」
「起床時に紅茶を用意しておきます」
「お願いします」
ドロシーがテントから出たのを見てラプンツェルは就寝した。
~ドロシーside~
ダンジョンの中で初めての野営は静かなものですね。外からは安全地帯の生活音は漏れずとも視覚情報までは防げずではありますが、魔物が安全地帯内に入った事は一度も無い。どの様な形で入って来れないのか―――、規制、誓約、条件、他にも考察出来る物がありますが一概に決め付ける事ほど愚かではありません。
ラプンツェルもそうだが、ドロシーもこのダンジョンについて独自の考察を立てている。そして、安全地帯での魔物の襲撃の可能性についてもだ。
見張り番の最中であろうとも、周囲の警戒は怠らない。しかし、何もせずに待つという事はせず、マジックバッグからティーセットを出してお湯を沸かす準備を始めた。
:ティータイムですわ!!
:お紅茶の出番よ!
:カップは柄の無いシンプルなやつやな
:そこら辺に金掛けるにはもうちょっと稼がないとな
「しかし、この様な長時間の配信を見る人は暇人なのですか?」
ドロシーは呆れを含む視線をドローンの方に向ける。
:自宅警備員は立派な仕事や!
:ニートやん
:ニートは黙れ
:残業でまだ会社に残って仕事で五十連勤ナウ
:それはあかん
:ブラックやん
:労基行きな
:お前は休め
「よくこの時間まで仕事をしていますね。責任感があるというのは美徳ですが、周囲に助けを求めるのも大事ですよ。今の状況を家族に相談する事が良いと思います。私は此方に来て前世の出来事を遊星に伝えたら、『もっと周りに頼め』と言われましたから」
復讐も良しとする一方で、ドロシーの行動を聞いていた遊星が素直に思った事だったのだ。とはいえ、これは本人だけでは気付かないという点もあるだろうと仮説を立てるなら、周囲の仲間や家族も本心を聞き出すなりすればいいと思っていた。
「今でも不思議に思います。何故、遊星は私だけでなく他の人達にも悩み事があると分かったのでしょうか?本人に聞いても"何となく"という答えだけが帰って来るだけでした」
:主のさり気ない有能さ何なの?
:いや……自分自身には過小評価
:過小評価し過ぎてるんだよな
:でも偶に居るよなこういう奴
:大抵友好関係広いわ
:自分より他人の何かを見てるっていうね
:ドロシー様達も主をしっかり見てやって
:絶対何処かしらでやらかすから
:何かしらの問題を抱えてるやーつ
「問題…ですか?」
考えた事はあったが、召喚されてからずっと見ても違和感が無かった。遊星が居た時の生活とほとんど変わらない日常だったが、視聴者達の意見にある何かしらの不安を感じる。
:自分より他人を優先する奴に多い
:姉ちゃんがそれで鬱になったわ
:一人で抱え込んである時に爆発する。爆発時間は不明
:主は両親死んでからほぼ一人で生きてきたんだろ?
:何かしら後悔があっても不思議じゃねぇ
:スキル無しって言ってたから虐めとかあったんだろうな
:多分虐めに関しては『まぁいいや』程度に感じてそう
:恐らく主は大事な人達が傷付くのを恐れてる感ある
:それが証拠に魔物倒したいって言ってるからな
「待ってください。魔物を倒したいと言っているだけですよ?レベルを上げたいというだけなのではありませんか?」
:確証は無いけど感情が爆発した後輩と結構似てる部分があるから注意してねって事
:姉ちゃんは強迫観念で鬱になった
:しっかり者のどぎつい状態じゃねーか!
:身近にいたのに気付かなかったのメッチャ後悔してるわ
:もっと強引に話を聞き出せばよかったってな
:ため込んでる奴は何が切っ掛けで爆発するかわからんからな
:大抵はストレスが多い
ストレス…。いえ、今の生活は楽しいと言っているのでストレスは殆どない筈……。しかし、私だけではこれを判断するのは危険ですね。この後ラプンツェルにも共有しておきましょう。
「今は……皆さんも遊星には秘密にして下さい。指摘されたらほぼ確実に隠します」
:それはそう
:指摘されてから聞き出そうとしても逆効果
:梃子でも言わんなる
:日常会話レベルで拾うしかないのが現状だな
:…俺達の方でも注視するか
:面白半分や冗談でも書いた奴は永久BANでよくね?
:やらかしってレベルじゃねぇから妥当
以前の私達の様に死者への後悔……吹っ切れているという事はほぼありえない筈ですが、会話や無意識化の行動を注視する必要がありそうですね。私達はどうにか立ち直り前を向いて進む事が出来ましたが、それでも長い時を経たからこそです。未だ数年の遊星には立ち直る時間が足らない筈……。
難しく考えていると、湯を沸かしているやかんから湯気が昇った。
「……一人で考えても限界がありますね。この問題はラプンツェルや今後召喚される皆と共有する事にします」
一人で抱え込むには大きすぎる問題は、他のメンバーと共有して答えを出す事にする。紅茶を淹れる諸々の準備が終わり、マリーゴールドの茶葉を取り出す。ドロシーにとっては慣れた作業だが、紅茶を飲む機会が少ない者にとっては新鮮であり嗜む者からは賞賛が沸く。
:紅茶って淹れるだけじゃないのな
:茶漉しに入れるもんだと思ってた
:手慣れてるな
:紅茶は美味しいんだぞ!
:所詮コーヒーは泥水じゃけぇ
:今の言葉取り消せよ!
:焙煎の香りの無い葉っぱ風情が生意気言うな!
:おん?やんのか?
:茶葉からは沢山の種類が出来るんだぞ?
:単一のコーヒーと一緒にするなw
:(*´Д`)ハァ 分かってないなぁ
:コーヒーにも種類があるんだってばよ
ドンドンと紅茶とコーヒーの信者達の喧嘩が起こるが、ドロシーはそれを冷めた視線を送る。
「…紅茶が美味しくなくなるので論争は止めていただけませんか?」
:…はい
:すいません
:この言い争いは止めよう
:好みは人それぞれだ
:悪かったな
:コチラもむきになってすまぬ
私も好みがありますが、全てを否定する程愚かではありません。しかし、あの黒いコーヒーだけを常飲しているのは体に悪いのでは?
ドロシーはマジックバックからクッキーを取り出す。時間が無かった為にスーパーで買った商品だが、価格と手軽さで言えば高評価である。
「近くの商店で買ったクッキーですが、価格に対しての仕上がりはかなり高いです。色々と調べましたが様々な種類の茶菓子もありますので、少しずつ食べ比べしようと思います」
:スコーンも良いよ
:マカロン送りたい
:欲しい物リストあれば大量に送られる可能性大
:性女にはお菓子送るしついでに送っても誤差よ
:お勧めの商品送りつけよw
:商品レビューして欲しい!
「スコーンやマカロンは手作り出来ますので―――と思いましたが、専門で売っているのなら買ってみても良いかもしれませんね」
入れた紅茶を一口飲んで心を落ち着かせて、メモを見ながらこの食料ダンジョンについての考察をする。
「不思議な効果を持つ飴……ですか。余分な脂肪を落とすとなると健康に配慮された物?……いいえ、ダンジョンの奥深くへと誘う欲を掻き立てているのでしょう。贅沢を見聞きしただけでも欲する者が居るとなると…更なる効果を求めて競争心を掻き立てる筈です」
欲を出せば出す程に効果はより良い物を―――、死ねばダンジョンの資源となる。
「探索者がダンジョンで亡くなる事で死体を吸収して情報を得ているのでしょうか?あまりにも人の欲を掻き立てる効果を有するとなるとそれを疑いたくなります」
:ドロシー様はその仮説を想定するか
:あまりにも的確で欲しがる人が沢山居るからな
:富豪勢は次の出品を心待ちにしているんだよな
:…目を血走らせていると言っても過言ではない
:……札束ビンタ準備万端なご様子
潜れる探索者なら資金を得るかスポンサーとしての後ろ盾とする等の色々な手段がありますね。もし、この食料ダンジョンでも同様の効果を得られれば、私達を貶めようとする者達を炙り出して確保する事も出来ます。ですが、この食料ダンジョンでそれ程の効果を持つドロップとなると最低でもニ十層以降かもしれませんね。
考察をメモを書き、この食料ダンジョンがどの様に変化するかが一番の悩み処である。
「食料ダンジョンというだけで食べ物が落ちる事は確実……、食べ物に飲料は含まれるのでしょうか?」
純粋な疑問だった。食料とは何か?―――これに関しては人それぞれであり、食べる物=口から摂取する。であるなら飲み物も含まれる。
:……なるほど
:食べ物って肉とかじゃ?
:口に入れる物を食べ物と過程したらそうなるな
:薬も出たりしてw
:そんなバランスブレイカーなダンジョンとかw
:絶対に無いとは言い切れないな
:傷を治すポーションとか見た事ないもんな
:ポーションとかw現実にあるわけないw
「そもそも私達から見てダンジョンが存在しているだけでファンタジーな世界ですよ?ありえないと決めつけるのは早計です」
少しだけコメントが流れなかったが冷静に考え始めた視聴者達。
:食料ダンジョンって三層までしか探索されていないんだよな?
:上澄みの探索者達は潜ってたりしてないんかな?
:敢えて報告して無いとか?
:いやいやいや、配信は世界中で義務になってるから難しいだろ
:海外の食料ダンジョンってどうなんだろうな
:批判が多すぎるクソダンジョンw
:消耗品ダンジョンは食料ダンジョンに比べて広くないから比較的マシと言われてる
:やっぱり魔石を砕いて畑に撒くだけで野菜が直ぐに収穫出来るというのがね……
:換金率も魔石が一番だからな
「魔物の奪い合いが激しそうですね。改めて不人気な食料ダンジョンを専門で攻略するというギルドからの依頼は正解でしたね」
色々と優遇されていますが、問題はこの三層以降のドロップ状況によります。需要があっても時間減衰効果のマジックバッグにも限界があります。時間停止のマジックバッグが欲しい所ですが、ギルドが管理する規則というのは手痛い所です。まぁ、手に入る可能性がほぼありませんが……。
食料ダンジョンを攻略していて頭を悩ませる点は多く、収入を得る為にはマジックバッグが必須なのだ。しかも時間減衰効果が最低限の条件である。
:何にせよ主達のパーティーじゃないと短時間で三層まで潜れない
:移動速度が段違い
:軽装で潜れているのが大きいわ
:重装甲だとどうしても遅いもんな
:Sランクの探索者で食料ダンジョン潜った事ある人居たっけ?
:定期調査で潜った事あるだけって聞いたぞ?
:『二度と潜らんわこんなクソダンジョン』って吐き捨ててたw
:主達はギルドからの報酬をもうちょい多めに貰っても探索者は批判しなさそう
:一般人からだと十分に高額に見えるから世間体の問題だな
海外も食料ダンジョンを攻略していないと仮定すると……、私達の配信を見ているのはこの国の人達だけではありませんね。地図の情報等はどうなのでしょうか?
:海外で食料ダンジョンを攻略している情報って殆どないな
:そもそもこっちと一層の環境が違う
:向こうは荒野だもんな
:水魔法使える探索者が居ないと無理って言われてるからな
:そう思うとドロシー様の水魔法偉大だわ
「飲み水もそうですが、もう少し潤沢に使える様になりたいですね。水浴びする事も出来ないのはかなり…いえ、とてつもなく苦労します」
:女性の悩みは其処なのよね~
:食料ダンジョンでお風呂入りたい!シャワーしたい!←飲み水だけにして
:水魔法が使えても飲み水の事を思うと無駄使いしないでってなる
:パーティーに女性が居ると野営する前提だと嫌がられる
:高ランクの人だとある程度は我慢するけどイライラが止まらないのよね
:男でも辛いのに女性となるともっとね…
これ等を考えると食料ダンジョンに潜る女性探索者はほぼゼロに等しいでしょうね。男性だけのパーティーでも深くまでは潜らないが鉄則になるでしょうね。
食料ダンジョンが嫌われる点は何度も言うが、ストレスが溜まりやすいのだ。それはもう誰しもが潜りたくなくなる。
「難しく暗い話はここまでにしましょう。折角のティータイムをこれ以上暗い空気で過ごすのはお断りします」
:切り替えだいじ!
:これ出来ないと探索者には向いてない
:話は戻ってドロシー様の作ったスコーン食べてみたい
:私はマカロン欲しい!
「あげるわけないでしょう。私と家族だけが楽しむ分だけで十分です」
そう言った所でドロシーはふと思う。近所でお世話になっている夫婦達には配っても良いのではないか?―――と。召喚されて以降、何かと心配されたり遊星の幼少期の話を聞かされたりお裾分けを頂いたりとお返しがダンジョンで取れた鹿肉のみ。
「……お世話になっている近所の人達にはあげましょう。…色々と貰ってばかりが多過ぎます」
貰う事は嬉しいが、ふと思い返すと貰い過ぎていた。一渡して十以上貰っている事を考えると流石に思う所がある。(尚、ご近所さん達はそこまで気にしていない)
:田舎あるある
:お裾分けとか貰い過ぎるとね
:お返ししなきゃって思っちゃう
:お爺ちゃんお婆ちゃん達のフランクさは田舎に旅行していた時には助かるぅ
:何気にお勧めな場所教えてくれる
:殆ど当たりが多いの凄いよな
「食料ダンジョンでドロップする物と思いましたが、早々に痛まない焼き菓子でも作りましょう。後は……珍しい物ですね」
とはいえ、珍しい食べ物がドロップするなんてありえるのでしょうか?
三層の安全地帯までとはいえ、ドロップする食べ物はかなりありふれた食材ばかりだ。四層以降の魔物の種類やドロップ物によっては、当たり外れがある。それに魔物の強さが未知数というのもあり、かなりのギャンブル要素が盛り込まれている。
すぐにはどうこうする事が出来ない状況に溜息を吐きつつ、紅茶を飲んで考えを落ち着かせる。これを何度も繰り返し、時間はあっという間に過ぎて二人を起こす時間となる。
「そろそろ時間ですね。二人を起こしましょう」
:もうそんなに経ったか
:いうてコメントも少なくなってきてるし
:徹夜勢は仮眠を取ってるのかね
:今日も一日頑張って仕事だー!……休みたい
:ブラック社畜は労基行け
ドロシーがテントの中に入って様子を見ると、予想通りと言うべきかラプンツェルが遊星が伸ばし切った腕を枕にして寝ており、見事に涎を垂らして腕がベトベトになっている。
:性女w涎ww
:属性がまた追加されてるw
:主の腕が涎まみれw
:ってか普通に寝れてるのすげぇわ
「二人共、起きて下さい」
軽く頬を叩いて目を覚まさせる。しかし、だらしないラプンツェルにはほんの少しだけ強めに打つ。遊星ならペシンという軽い音だが、ラプンツェルはペチンッ!という響き渡る音だ。
「……ふぃ~……大分寝れたな」
「…はっ!?てき……ではありませんね。良く眠れました」
ラプンツェルは、遊星が伸びをする事で頭がマットレスの上に落ちた衝撃でびっくりして目が覚めた。遊星は少しだけ凝り固まった四肢をストレッチで解しテントの外へ出る。
「敵襲が無かったとはいえ、戦場でここまで快適に寝れたのは初めてだわ。安全地帯は言葉の如し―――、襲撃もなく安心だな」
「私が見張り番をしていた際の外の様子は、この安全地帯に入った時と変わりはありませんでした」
「ドロシーと同じく、私の時も変化はありませんでした」
「おっ!紅茶淹れてくれてたのか?」
「目覚まし用ですが、普通に淹れています」
遊星とラプンツェルが紅茶を飲む。
「やっぱりマリーゴールドか。紅茶自体が物凄く久しぶりだから新鮮だな」
「ドロシーの好みの茶葉ですよね?」
「効能は何だったかなぁ…」
:マリーゴールドか
:美容効果とかエイジング効果等々
:お肌の調子も良くなる!
:他にも効果ありそうだな
:マリーゴールドティーの別名は"若返りの薬""太陽のハーブ"等々と云われている。そして、上記にもある通り美容等の効能もあるが"タンニン""サポニン"といった成分による抗菌・抗ウイルス作用もあるだろうと研究されている。季節の変わり目に飲む事で体調不良を多少緩和する事も出来る。体の中に作用する効果が多いので体の中をスッキリさせたい時に飲む事が良いとされている
:うん?……うん???
:専門職か何かですか?
:紅茶の紳士とでも呼んでくれ
「紅茶の紳士と自称するなら数多くの茶葉を持ち、効能やそれに伴う副作用等も勿論ご存じですよね?」
「さ~て、朝食作るかぁ~」
「お手伝いします」
ドロシーの興味を惹いたのか、はたまた地雷を踏んだのかは不明だが遊星とラプンツェルは何も言わずに朝食の準備を始めた。
「アールグレイ」
:ミカン科の常緑低木であるベルガモットを使用して茶葉に香りを付けたフレーバーティーであり、ベルガモットの香りを付けたフレーバーティーなので特定の茶葉を使用するという事はない。ストレス軽減や脂肪燃焼といった効果も有名だが、消化器官の保護やコレステロール値を下げる効果もある。しかし、飲み過ぎは頭痛や吐き気等があるが、食欲不振や貧血もあるので注意しなければならない
回答の時間は一分も掛からず、これだけの分かり易い文章での説明となると紅茶の紳士と言っても十分だろう。
「ダージリン」
:"紅茶のシャンパン"と呼ばれる程の芳醇な味わいと豊かな香りが特徴。幅広い場面に合う定番の紅茶であり、贈り物や来客用で使用するとハズレは少ない。収穫時期別で主に三種類に別けられ、味、香り、コク等が違う。春詰みがファーストフラッシュ・夏詰みがセカンドフラッシュ・秋詰みがオータムナル。ファーストフラッシュは収穫量が少ない為希少性が高く、新芽特有のフレッシュな味わいとフローラルな香りが特徴。セカンドフラッシュは紅茶の渋みとしっかりとしたコクがあり"紅茶の女王"とも呼ばれる。オータムナルは二つとはかなり違い色味は濃いものの、渋みが柔らかくまろやかな味わいがある
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「それなりの知識はあるのですね」
:本郷の支部にドロシー様宛に茶葉を送ります
:こいつぅ!?
:お、お前ほどの奴が送るなら外れは無いな
:前世の世界での茶葉とこちらの世界の茶葉では味わいが違う可能性が高いので感想をお願いします。それを参考にしてブレンドの配合比率を調整して定期的に茶葉を送り其方の収入が安定しましたら入手経路や産地等を記載したメモを同封いたします。それまでの料金は此方で負担します。
:('ω')
:('ω')
:('ω')
:\(^o^)/ナンテコッタ!
:金持ちか?
:茶葉って高いぞ?
:ドロシー様の紅茶の淹れ方等を拝見しましたが完璧の一言です。茶葉は高ければ高い程良いという訳ではありませんから言う程の手痛い出費というわけではありません。
:なんて奴だ…
:《ギルド長・本郷》起きたら何か凄い事になってないか?
:本郷来ちゃあ!
:おめえのギルド支部宛てにお菓子送ったからな!
:つまみ食いしたら丸太持って襲撃するからな!
:《ギルド長・本郷》なんつぅもん送ってやがる!?
:聖女がお菓子食べる姿見たいんじゃ
そうこうしている内に、朝食を作り終えた二人が戻って来た。
「ちょっとだけ贅沢してフレンチトーストを作った」
「紅茶にも合うと思いまして」
「いただきましょう」
外で作ったとはいえ、かなり出来が良いですね。ミルクは……保冷バッグに入れて時間経過減衰効果のあるマジックバッグに入れていたのですね。さて、この三層から稀に果物の魔物が出るとの事なので是非手に入れたいですね。
「……悔しいですが美味しいですね」
「遊星は作れる料理は幅広いのですか?」
「一度作ったり何回か食べた事がある物ならほぼ同じ様に作れるぞ?」
これを聞いた二人は戦慄した。レシピ通りに作ればほぼ間違いないが、食べた料理を再現するという難しい事までは出来ない。もし、自身で作るのに難しい料理なら遊星に食べさせれば作って貰える―――という浅ましい考えに寄った事で冷や汗を掻いてしまう。
「……これは……非常に悩ましいですね」
「…私達は食べてばかりですね」
「ま、まだファッション等での女子力は私達の方が高いです!」
「もしも遊星がそちらの方も私達より高くなってしまったら……」
「不安になる事を言わないで下さい!大丈夫…えぇ、大丈夫です。ファッションは此方で優位に決めれば何も言ってこなくなるでしょう。ついでに遊星の服も私達が見繕う事で判断力を低下させる様に仕向ければどうとでもなります」
何気に主夫力が高過ぎるが故に、二人の家事方面がかなり怪しい雰囲気だ。当の本人は美味しい美味しいと食べてくれる二人を見て、もう少し料理のレーパートリーを増やしてみようかなと思っていたりする。
朝食は何事もなく普通に終わり、四層へと続く道を最短距離で進み様子見をして進むか退くかの判断をする事にしようと計画を立てる事にした。