現代ファンタジーに勝利の女神を!   作:ぬくぬく布団

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DORODORO WORLDの歌に謎の中毒性がある。
OVER ZONE主題歌「SATELLITES」はドロシー(CV:斎藤千和)Ver.が大好き。
イベストの最後の内容も予想はしていたけどラピドロのキャットファイトが繰り広げられるとは思っていなかった。





水着ドロシーをあと二体確保したいな……もう課金出来ないけど








第3話

~ドロシーside~

 

遊星と計画を立て終え、私は用意されたお風呂に入りました。お湯を大量に使い体全体を温める。シャワーとは違い贅沢な使い方。つい、長湯をしてしまいました。洗髪剤が男物しかないというのが減点ですが、それ等はダンジョンで稼いで購入すれば何も問題はありません。

さっぱりして全体を乾かし終え私達は眠りに就く。ですが、私は直ぐに目を覚ましました。

 

「………」

 

ドロシーは体を起こし、隣で寝ている遊星をじっと見つめる。只何もせずに視線を向け続ける。

 

あぁ、貴方は隣で寝ているのに私は眠れない。先程見た悪夢が現実になったらと思うと不安で眠れない。

 

心臓の鼓動が止まっているのではないか―――

 

今も夢を見ているのではないか―――

 

自身が思った以上に恐怖している。

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 

ドロシーはベッドから降り、隣で寝ている遊星の布団に潜り込んで胸に耳を当てる。

 

…鼓動が聞こえる。一定のリズムで心地良い。触れていないと貴方が消えて無くなりそうと思う私はどうしようもない。普通はこんな事はしない。でも、失ってから初めて気付けたのです。貴方はゴッデスの影の柱だったのだと。

私を支配している感情は恐怖―――

もう二度と離したくない。失いたくない。

貴方のスキルが成長したら―――

もしまた他の皆も呼び出せるなら―――

私はまた皆で笑い合えるあの時が恋しい。でも今だけは、貴方しかいないの。傍で触れている間だけは目を閉じている時の恐怖を紛らわせる事が出来る。

……ごめんなさい。……傍にいて。

 

ドロシーは少しだけ涙を零しながら眠りについた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~遊星side~

 

もうそろそろ朝か?………それにしても何か微かに重い?

 

遊星は重い瞼を開け、目を擦る。そこで、自身の腹部に柔らかい?何かが接触している事に疑問が浮かぶ。

 

?…シーツがずれて当たってんのか?

 

寝起きで覚醒していない中ゆっくりと布団を捲ると、隣のベッドで寝ていた筈のドロシーが抱き着いて寝ている。

 

「‥……っ!?っッ!?」

 

ギョッと目を剥いて体が硬直し、深呼吸を数回した後に瞑想して冷静さを取り戻す。

 

落ち着け……俺。ドロシーは仲間であり家族。取り敢えず家族と言えどもこうして抱き着いて寝られるのは非常によろしくない。こういうのはレッドフードだけにしてくれよ……。まぁ、レッドフードだと首を絞められるという形になるんだが―――って今はそんな事を気にする必要はない!

 

瞑想して落ち着かせようにもこういう状況に陥った事がないので感情が右往左往している。しかも、ドロシーは服をがっちりと握っているのでどうしようもないというのが現状なのである。

 

これでドロシーが起きたら俺って殴られるんじゃね?

 

ふと気付いてしまった可能性に全てを察して大人しくそれを受け入れる準備をする。

 

俺が動く事でドロシーが起きて機嫌悪い状態で殴られる……これが一番最悪のパターンだ。そして、比較的まともであろうパターンは、ドロシーが自然に起きるまで待機して言い訳しながら謝罪しながら殴られる。これでよし!

 

とにかく、ドロシーが自然に起きるまで無の心で耐えるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ドロシーside~

 

温かい…、鼓動が聞こえる…。夢じゃない。

 

徐々に思考が覚醒するドロシーは、目を閉じたまま今の状況を冷静に理解する。自身が遊星に抱き着いて寝ているという事を。その瞬間、自分では考えられない浅はかな行動に混乱して顔が熱くなる。恐らく赤面しているのであろうと理解し、それを隠す様にピッタリと彼の身体に引っ付ける事で冷静さを取り戻そうとする。

 

お、落ち着きなさい私…。そ、そう、これは必要な事だったの。遊星の心臓が止まらない様に確認する必要があっての行動です。………ふぅ、一度落ち着きましょう。遊星は起きている様子ですがこちらの出方を窺っている。ならば、ごく自然に起きた事にしてこの事を流しましょう。

 

「……おはようございます」

 

「…えっ、あぁ…おはよう」

 

「昨晩は夢見が悪く、自身でもはしたないと思いましたが遊星の心臓がちゃんと動いているか確認しているとつい寝てしまいました」

 

「おっ…おう…。それはいいんだが……離れてくれると助かる」

 

「ええ、離れます。流石に家族でもこの状況はあまりよくないと理解しています」

 

私は何事もなかったかの様にベッドから降りる。今は背を向けていますが、背を向けて降りた事で必死に隠していた羞恥心が一気に溢れ出てしまいどの様な表情をしているかは分かりません。

 

「少し顔を洗ってきますね」

 

「おーう」

 

貴方は気の抜けた返事をしますね!恥ずかしがっているのは私だけなのですか!?私が抱き着いて寝ていたのですよ!?もう少し恥じらいのある反応を返すべきでしょう!?

 

火照る顔を水で洗う事で目を覚まして落ち着き、更に顔が真っ赤になる。

 

は、恥ずかしいっ!この様な大胆な行動をする事自体無い私が…こ…こんなっ!?

 

今度は髪が濡れる事を気にせず、頭から水を被り茹でだこの様な顔をいつもの平静さを取り戻す。深呼吸をしたドロシーは、洗濯済みのタオルで髪の水気を取ってドライヤーで乾かして元通りになる。

 

今日は不本意ながら遊星を連れてダンジョンに潜る重要な日。必ず成功を収めなければならないのです。

 

心を引き締めるドロシー。そして、以前と同じ様に冷静で優雅に台所へ向かうと質素であるがちゃんとした朝食が用意されていた。

 

「「いただきます」」

 

ゴッデスを結成し食事を摂る時、遊星が食前に言葉にしていた"命を食す"祈り。初めて聞いた時は不思議だったが、言葉の意味を知ってから忘れずに言葉にしていた。

朝食を食べ終えた二人は、ダンジョンに潜る為に必要な道具を再度確認。そして、良くしてもらっているご近所の老夫婦達へスキルの発現とドロシーの事について説明に周った。案の定、「お嫁さんかい?」「こんな別嬪さん逃がすんじゃないよ!」「ドロシーちゃん、何かされたら私が代わりに怒ってあげるわよ!」という誤解を含む勘違いがあったが、懇切丁寧に再度説明して事なきを得たりする。

 

「ご近所に住まわれる老夫婦達に随分と心配されていますね」

 

「俺がスキル無しって言っても手伝いとかそういうのしてたからだと思う。同年代は絶対に許せねぇだけどな」

 

「スキルが無い事が迫害や差別の対象というのは容易に理解します。そして、家族をその様に扱われたのであれば、私達は其れ等に手心を加えるという事はありません。何せ、此方では勝利の女神という肩書すらないのです。枷がないのはある意味楽ですね」

 

「ドロシーが本気で怒ると怖いだろうなぁ~」

 

実はドロシーの内心ではその者等をどの様にして制裁を下そうか計画を立てていたりするが、虐められていた当の本人は今を生きる事を重視しているので障害にならなければどうでも良いと思っている。完全にすれ違い状態だ。

 

「ダンジョンに行く前に武器はどうするつもりですか?」

 

「色々考えた結果、倉庫に眠っていた鉄パイプ?を武器にする事にした」

 

遊星が手に持つ鉄パイプ?というのは先端が少し尖っており、反対側は小さいヘラの様になっている物だ。明らかに鉄パイプではない事は分かるが、それが何なのか知らないので敢えてスルーする事にした。

 

「そういうドロシーの武器は?」

 

「玄関に立てかけていた金属バットですよ」

 

「……撲殺天使」

 

「ぶん殴りましょうか?」

 

「…ごめんなさい」

 

「はぁ……金属バットに関しては銃が使えなかった時用の武器です。近代兵器が使用出来ない事については分かっていますが、私は貴方のスキル扱いとなるなら使用出来る可能性が高いです」

 

「……使えたら最強じゃね?」

 

「そうなれば安全でしょう?」

 

ドロシーとしては安全マージンを確保した上で安全第一というリスクをほぼゼロで動く計画だ。

 

 

 

暫く歩き、目的地である冒険者ギルドに到着。冒険者と思われる人々は防具を身に着けており、ギルドのテーブルの奥に座って作業をしている人達は仕事している者だろう。そして、当たり前の様に注目の的だ。

 

「おいおい、スキル無しのゴミが何で此処に居るんだよ」

 

遊星の後ろから見た目が派手な鎧を身に着けた青年が苛立たしそうに声を掛ける。その声に同調する様に大多数の冒険者達も馬鹿にした眼つきで見ている。

 

「ってかどうやって隣の美人を引っ掛けたんだよ?テメェみたいな無能には不釣り合いだろ。なんなら俺達Cランクパーティーが世話してやってもいいんだぜ?」

 

ドロシーを嘗め回す様に見るその様は汚物だ。

 

「残念だったな。スキルはつい先日発現したんだよ。どっちにしろ登録が必要だし、此処に来るのは義務なんだよ」

 

「はあっ!?スキルが後天的に発現だと!?嘘ついてんじゃねえ!!」

 

スキルが幼少期以降に発現というイレギュラーは今までに前例が無い為、周囲はざわつき怪訝な視線を向ける。嘘か本当か―――、それを確認するにはステータスを開示する必要がある。しかし、個人情報の為においそれと他人が沢山居る場所で開く事は暗黙のルールがある。

 

「そんじゃあな。一々突っかかってくるなよ。こちとら今日中にダンジョンに潜りたいんでな」

 

「ま、待てよ!お前はそうかもしれねぇが隣の女は無関係だろ!」

 

「関係あるから一緒に居るんだよ」

 

「なっ!?どういう事だよ!?」

 

遊星はそれ以上何かを言う事もなくドロシーと一緒に窓口に行き、職員に事情を説明して冒険者としてダンジョンに潜る事が出来る様に免許の発行手続きをする。

 

「あ、あの~……一介の職員ではありますがステータスの開示をお願いします。スキル欄だけの表示で結構ですので……」

 

「他人のステータスを見る事は原則的に禁止なのでは?」

 

「えっと、先程の会話が本当なら後天的に発現したスキルを登録するのは良いのですが…何分前例が無い為どういったスキルなのかを記録しなければならないのです」

 

「後から生まれたスキルが特殊かどうかを調べるって事なら……多分イレギュラーなスキルなんだろうな」

 

「それでは、少し失礼します」

 

遊星の言葉を聞いた職員は、周囲を確認して二人だけに聞こえる様に小声で質問して確認を取った後に傍に置いている電話を何処かにかけ始めた。その電話は一分も満たなかった。

 

「すみませんが、お二人を奥の部屋に案内します。ギルド長が居ますのでそこで確認を致します」

 

二人は職員に案内され部屋へ入ると、厳つい男性が椅子に座っていた。机の上には書類が鎮座マシマシに積まれており、とても忙しいという事だろう。

 

「ご足労感謝する。そちらのソファに座って少しだけ待っていてくれ」

 

「そんじゃあ失礼します」

 

遊星とドロシーはソファに座り、ギルド長はタブレット端末を片手に持って対面のソファに座る。

 

「ギルド長の本郷(ほんごう) 史郎(しろう)だ」

 

「境 遊星だ」

 

「ドロシーです」

 

「境は分かった。だが、ドロシーさんのファミリーネームは?」

 

「あ~……後で説明するから今は流してくれると嬉しい」

 

「分かった。では、改めて聞くが…スキルが後天的に発現した為報告に来たという事で合っているか?」

 

「報告もあるんだが、ダンジョンに潜って金を稼ぎたくてな」

 

「成程…。ダンジョンに潜るのは今日が良いのか?」

 

「そのつもりなんだが……駄目?」

 

「免許の発行が出来たら基本的に何処のダンジョンにも潜る事は出来る。しかし、ある程度の実績がなければ立ち入りを許可していないダンジョンもある」

 

「……食料ダンジョンに行きたいんだが入っても大丈夫?」

 

本郷は少しだけ「あそこかぁ……」と呟きつつ受付職員を促してダンジョンの情報が書かれた書類を取らせてテーブルの上に乗せる。

 

「さて、話を戻そう。本来なら個人情報の為ステータスの開示を求める事は無いのだが、如何せん後天的にスキルの発現きた。どんなイレギュラーだよ!!俺を忙殺させる気か!?」

 

「それは本当にすいません」

 

「いや、これはギルド長案件だからお前は悪くないんだ。ただの愚痴で、時期が悪かったというだけなんだ」

 

「苦労人ですね」

 

「そういう訳で不正が無いかどうかを判断する為に審議のモノクルを使って境のステータスを覗かせてもらう」

 

「「審議のモノクル?」」

 

「簡単に言うと鑑定の道具って事だ。だが、これは表示されている情報が本物であるかどうかが分かるんだ。虚偽の申告の書類をこのモノクルで覗けば嘘が分かるのさ」

 

「便利なアイテムだな~。ステータスオープン」

 

「あっさりと開示するのかよ。どれどれっと……………は?」

 

本郷が呆然した理由は、遊星がステータスを全開示したからだ。最初はスキルの欄でゴッデスという文字に?が浮かんだ。しかし、「他にも表示されてるじゃん」と軽い気持ちで見ると疲労で勘違いしたのか目をゴシゴシと擦り、再度見ると常人ではありえないステータスの数値だった。

 

「審議のモノクルさんよぉ。出番だ!」

 

「ギルド長?「全部本当なのかよ!?」ってぇえええええええ!?」

 

受付の職員も見た異常な数値―――。

 

「お前誰かに黙ってダンジョンに入ったか?……いや待て。レベルが1のままだと!?入ってなくてこれかよ!?」

 

物凄く驚愕しているのは理解しているが、どこら辺に驚愕しているのか全く理解していない二人は互いに首を傾げる。

 

「さ、境さんのステータスはとんでもないですよ!一般人なら100が平均値です!スポーツや格闘技等を習っている者でも高くて500程で、達人なら800辺りなのにどうしてこんな数値なのですか!?」

 

「遊星?どういう事ですか?」

 

「もしかして馬鹿みたいに鍛えたからかな?」

 

「いやいやいやいやいや!?鍛えたからでこんな数値になるか!!」

 

「んな事言われてもなぁ……」

 

遊星が自分が特訓した内容を説明すると、皆がドン引きした。

 

「幼稚園児の時から気絶するまで身体を動かすとか死ぬ気か?」

 

「木刀の素振り一日100万回?受け流しの練習に高所から飛び降り?」

 

「後でじっくりとお話をしましょう。ええ、それはもう根掘り葉掘り聞き出しますよ?」

 

「だって……敵わない強敵が現れても戦える様に鍛えただけなんだよ」

 

「脳味噌まで筋肉で出来ているのですか?一人で全てを担当するなんて自殺行為以外の何物でもないでしょう!」

 

本郷と職員がとんでもない異常者が免許を取りに来た事に頭を抱え、ドロシーに泣きつく形で首輪を着けて制御して欲しいと懇願する程だ。ドロシーは快諾してパーティーでの行動に融通してもらう形で交渉を進める。

 

「ステータスのあれこれについては解ったんだが……ドロシーさんについてはどういう関係なんだ?」

 

「ドロシーは前世の仲間だな」

 

「「……前世?」」

 

「俺、異世界転生者。ドロシー、異世界の仲間。OK?」

 

二人が信じられない様な表情をしつつドロシーの反応を確認すると、ドロシーが静かに頷いた事で事の事態の大きさが際立つ。

 

「って事は幼少期から記憶を引き継いでるって事か?」

 

「強くてリスタートはチートでは?」

 

「強くてリスタートなんてご都合の良いのは無いぞ?チートってのは知識チートだな。身体の限界ギリギリのラインを知る事が出来ていたから無茶な訓練が出来たってわけだ。それ以外は全然ないぞ?」

 

「貴方の刀が一緒なら良かったのですがそれは贅沢な悩みでしょうね」

 

「無い物ねだりしても仕方がねぇだろ?」

 

「時々ですが、紅蓮が手入れをしに立ち寄ったりしたと聞きました。もし、紅蓮が召喚出来るとなれば一緒に来るかもしれませんよ?」

 

「相棒はじゃじゃ馬で俺以外が持ったらなまくらになるポンコツ妖刀だからな」

 

専用武器と言えばとても聞こえはいいが、遊星以外が持つと何も切れないとなればただの置物といっても過言ではない。

 

「妖刀か…。ダンジョンのボスや宝箱から武器が確認されているが、所有者以外が使えないという武器は今までで確認されていないな」

 

「でも、そんな武器が出てきたらあっという間に噂されますね」

 

「という訳で相棒はこの世界には存在しない―――と。……悲しいな」

 

暫く沈黙が流れるが、これで遊星とドロシーの関係に納得がいった本郷は二人分の免許の発行を許可する事にした。しかし、ドロシーは如何せん容姿が良すぎる事と規則を理由に単独でダンジョンに潜る事は禁止された。

 

「……」

 

「納得いかないか?」

 

「それはそうでしょう。遊星が家で待機して私が稼ぐ―――ノーリスク・ハイリターン。安全に稼ぐを目指すべきです」

 

「ドロシーさんの言う事は分かる。だが、こればかりは曲げれようのないルールだ」

 

「それに、ドロシーさんはもの凄くお綺麗ですから常に二人で行動する事をお勧めします。今では探索者の男女比がマシになっていますが、ダンジョン内での性犯罪に遭う可能性もあります」

 

「その場合はどう対処したらいいんだ?」

 

証拠となる映像が必要になるのであれば撮影機器の持ち込みが必要となってくる。邪魔な手荷物が一つ増えるとなると動きが制限される。

 

「つい最近ですが、ダンジョンに入る際に私達ギルドからライブ撮影用の自動追尾ドローンが導入されているので状況証拠を掴む事は容易です。しかし、ドローンが出来るのは証拠となる映像を撮る事だけなので自衛の為の武力行使は容認されています。殺害以外ならほぼ赦されますので遠慮なくやっちゃってください」

 

「探索者になると己の力に酔いしれた馬鹿が何処にでも現れる。二人がギルドに入るまででもかなりジロジロと見られただろう?男は性欲、女は嫉妬………探索者の犯罪率が高いのが痛い所なんだが、今では探索者が取ってくる資源が必要不可欠だからな」

 

「難しい問題だなぁ~」

 

「そうですか?相手が悪なら武力で圧倒する。単純明快かつ社会の掃除にはもってこいでしょう?」

 

「………ドロシーを襲おうとする男はもれなく去勢コース確定だろうな」

 

遊星が達観した表情で遠くを見た事で本郷が目を剥いて驚き、頬を引き攣らせる。男の大切な逸物が破壊される瞬間を想像したのか、顔が青褪めていた。

 

「何を言っているのですか。私が手を下すよりも先に貴方が壊すでしょう?」

 

「それはそう」

 

ドロシーの言葉に即答した遊星を見た本郷は理解した。召喚したドロシーは召喚主よりもステータスが高いだろうが、それよりも先に判断して動き叩きのめすと来た。このやり取りだけで判断力は遊星の方が高い事を容易に想定出来た。そして、前世での仲間……共に背中を合わせて戦場を駆け抜たという事。それはもう大切な存在と言っても過言ではない。

 

「……二人の免許の発行も出来たぞ。最初から食料ダンジョンの方に行くつもりならこれを持って行け」

 

「えっ、ギルド長それは!?」

 

本郷から渡されたのはアンティークな肩掛けバッグだ。かなり使い込まれているのか所々傷が付いている。

 

「かなり使い込まれているな。中には何が入ってるんだ?」

 

「遊星、このバッグは何か変です。奥底が見えません」

 

「はははっ!そりゃあそうだ。それは俺が現役の時に偶々宝箱から拾ったマジックバッグだからな。時間停止機能何かは無いが、凡そ1㎥の容量だからそこそこ入るぞ」

 

「………何が目的ですか」

 

ドロシーは銃を召喚して本郷に向けて冷徹な視線を浴びせる。例え貸し出すにしろありえない待遇だからだ。

初心者なら浅い場所での討伐が基本であり、獲得物を多く持ち帰る事が出来ないのでアイテムバッグがあればその問題が解消される。だが、それは普通ではない。親が大成している冒険者なら可能性はあるだろう。

そして、この場合は赤の他人に貸し出すという愚かな行為である為、何かしらの契約をさせる可能性がある。ありがたいから活用するという訳にはいかない。

 

「……俺個人としての期待だ」

 

「……は?」

 

「……へぇ~」

 

ドロシーは呆気にとられるが、遊星は本郷が期待するその内容が気になる。

 

「元Aランクの俺が全盛期だとしても1対1で勝つビジョンが見えない程二人は強い。正直いきなり高ランクに認定してやりたいが、規則だから最初はEランクからだ。もう一つは、食料ダンジョンについての問題があるからだ」

 

「クソダンジョンって呼ばれている位だから人が入ってないからか?」

 

「定期的に探索者を入れてはいるがそれではデータが足りないと言われていてな……。何処の支部でも募集しているが月1回で探索される位だ。そこで、二人はメインで食料ダンジョンに行くと言った。だったら、此方は二人に支援をする形で情報の収集をしたい」

 

「俺達が調査隊になるのか?」

 

「そう捉えてくれて構わない」

 

「……ッ!遊星、さっさと出ましょう。こんな提案は飲めません」

 

「まぁまぁ、ドロシーは一旦落ち着け。…………んで?続きがあるだろ?」

 

遊星は苦笑しながらドロシーの肩を抑えて落ち着かせながらソファーに座らせるが、本郷に向ける視線は少しだけ殺気を混ぜている。無い無い尽くしの状態の自分達に提案する内容は、旨味もあるがリスクが大きい。

 

「……その殺気を少しでも抑えてくれ」

 

「抑えているぞ?」

 

「………俺は腹芸なんて出来ねぇから直接ぶっちゃけるしか出来ない事を理解した上で判断してくれ」

 

「……」

 

「食料ダンジョンは広大なマップのせいで碌に調査が出来ていない。こちらが把握しているまでで3階層までだ。それ以降は全くの手付かずだ」

 

「あ、あぁ~………そういう事ね」

 

「私達以外にも探索者は居るでしょう。何故そちらに依頼しないのですか?」

 

「半日で帰れる探索で数万稼げるダンジョンと、泊まり込み必須でどれだけ稼げるか分からないダンジョンとなれば人は来ないさ。ギルドの強制依頼で頼んだ事はあるが、不平不満で誰もが二度とやりたがらないんだ」

 

確実で楽に稼げるダンジョンと全てが不明なダンジョンではどちらを選ぶのかは分かり切っている。それでも、ギルドが高額の依頼料を出しても敬遠されるのだ。

 

「今の時代の探索者は楽して稼ぐが主流だ。ごく一部の探索者はそうでもないが、食料ダンジョンに行く物好きは居ないのさ」

 

「冒険心を求めて金銀財宝等の換金率が高い危険なダンジョンで稼ぐって事ね。一方、食料ダンジョンは食材が落ちるだけで敵が強くマップが広大って事か。換金率が一番低く、体力や士気を大きく削ぐタイプだな」

 

「ダンジョンが出来た当初は食料ダンジョンに潜る探索者は居た。だが、今は魔石を落とす資源系のダンジョンの方で金銭を得て生活する方が安全なんだ」

 

「……俺達も金要るんだけど?」

 

「だからこちらが支援する。必要な経費は払うし、税金関係も任せてくれ。食料ダンジョンで募集を掛けている報酬金よりも優遇出来る。現在魔石が落ちるダンジョンは人が多く、安定供給されている状況だ。そこで稼いでいる探索者よりもステータスが軒並み高く、状況判断が早いとなれば多少優遇してでも食料ダンジョンの攻略を支援して未開拓の宝を手に入れる。少しばかり目標が高くなるが、土台が安定した長期的な調査や探索が良いだろう?」

 

「言うねぇ。だが、それでも足りないだろ」

 

「こちらが今まで記録した食料ダンジョンについての資料と地図を無料で渡す。武器の貸し出しと、少し時間が掛かると思うが時間経過減衰効果の付いたマジックバッグの貸し出しもする。……どうだ?」

 

遊星は納得し、ドロシーはその様子を見て溜息を吐いて本郷が提示した条件を飲む事にした。

 

「……いいでしょう。本郷、貴方達の提案に乗りましょう。しかし、少しでも約束を違える事をしたら―――分かりますね?」

 

「周囲の不平不満なんてギルド全体の圧力で黙らせる。こちらが依頼していた金額や条件でも食料ダンジョンの探索を受けなかった馬鹿共より、心優しいお二人が善意で引き受けたとして反発する探索者を後ろ指差される様に誘導するさ」

 

「……陰湿過ぎね?」

 

「まぁ、仕方がない犠牲として案山子に成ってもらうだけだ」

 

くっくっくっと笑う本郷の様子を見るに、今まで探索者達に依頼した食料ダンジョンの探索について反発が大きく陰湿な噂を流されたりしたのだろう。

 

「しっかし、武器の貸し出しもしてくれるのは助かるぜ」

 

「希望があるなら先に聞いておくが?」

 

「刀!」

 

「了解した。性能の希望はあるか?」

 

「とにかく頑丈で切れる奴だな。多少重くてもそっちはどうとでもなる」

 

「防具は?」

 

「要らね」

 

「それだけは止めてくれ……」

 

「……えぇ?」

 

「防具無しでダンジョンに挑むとか自殺行為だぞ」

 

「あぁ、それについては私から提案があります。安全靴と手甲等の腕と足を守る装備を持たせて下さい。遊星に生半可な防具を与えるとかえって邪魔になりますから」

 

「ふむ、そこそこ頑丈で軽量の革製の防具で胸当てを追加しても問題ないか?流石に胸部を何も守らないのは映りが悪すぎる」

 

「あぁ、証拠映像として残すんだったな。ドロシーは映っても良いのか?」

 

「……。情報は命です。配信にして情報の共有をする事は出来ますか?」

 

ドロシーは少しばかり考え込み、録画ではなくライブ配信で逐一情報の伝達が出来ないかどうかを提案する。

 

「いや…出来るには出来るが……。うぅん、でもなぁ………」

 

本郷が何か悩んでいる様子は、特殊な事情故に特別な許可が必要な物だと推測出来る。とはいえ、新鮮な情報程有益な物はない。

 

「こちらとしてはライブ配信にして情報を共有する事は賛成する。しかしな……ダンジョンで配信するとなると制限が殆どない無法地帯になる」

 

「「無法地帯?」」

 

「簡単に言えば、一般人もそのライブを見るという事だ」

 

「……は?」

 

「規制していないのか?」

 

ダンジョンに潜れるのは探索者だけだが、今の人達はほぼ全員がスキルを持っている為誰でも探索者になれるという点で規制がほぼ出来ず、規制しようものなら反発が必ず起こるし規制する為の情報統制や制限を設ける為の設備や技術が追い付かないとの事だった。

 

「ダンジョンが技術革新を起こしたのは言うまでもない。だが、技術革新が起きたとしても精密な情報規制の方が追い付いていないのが現状だ。いや…それどころか、今はダンジョンでの配信活動が多くなっている事から下手に制限する事が困難と言った方が良いだろう。博識な者の助言やモンスターの情報等がコメントで書かれる」

 

「成程な…。ギルドでも全部を見回る事が出来ないが、一般人が調べたり博識者の知識の開示による情報提示の方が早い場合もあるという事か。ギルドの人員も限られているから猶更だな」

 

「情報は正確で多いのならその方が良いのではありませんか?」

 

ドロシーとしては情報を無料で迅速に提供してくれるのならそれだけで有り難いと感じる。しかし、そこで待ったを掛けるのは職員の女性だ。

 

「もの凄く具体的な内容になりますが、ギルド長が言った無法地帯というのはドロシーさんへの卑猥な要求やコメントが投げられる可能性が大きいのです。そして、そのパートナーである境さんにも矛先が向きます」

 

は?

 

「ひぃっ!?」

 

「ドロシーちょい待って!その人悪くない!」

 

ドロシーの殺気交じりの視線を浴びた女性職員が体を震わせて怯える。そこで遊星が身体を間に入れてドロシーの肩を掴んで宥める。

 

「男女混合パーティーの配信では必ずある事だ。だが、情報が直ぐに手に入るとなるとそれらのデメリットを無視というよりエンタメに変えているパーティーが殆どだ」

 

「私達は芸人ではありません。真剣に戦う中で「ドロシー」……遊星、貴方は反対しないのですか!?」

 

「俺だって不安もある。だが、適度にガス抜きするのを忘れてないか?初めての戦いではそんなに余裕がなかったか?」

 

「そ、それは……」

 

「どうせ今日から潜るんだ。慣れてくるまでは日帰りするんだから徐々にやっていこうぜ。最初から無茶するって事はないからな。最悪を想定して動くのは俺が言っていたけど、ずっと張りつめていても最善の動きを阻害する。もう少し気楽にいく事を忘れんなよ」

 

遊星がドロシーの頭を撫でる。最初は懐かしさで受け入れていたが、直ぐに他人も居る事を思い出して手を払い除ける。

 

「恥ずかしいので止めて下さい!まったく……」

 

どうしてこう自然に恥ずかしい事をするのですか!いや……私もそれを受け入れて安心しているという事は気が緩んでいる証拠です。私が先導しないと都合の良い様にされるかもしれません。

 

ドロシーは深呼吸をして落ち着き、ダンジョンに潜る為の情報を集める遊星を見ながら本郷から手渡される資料をじっくりと見る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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