現代ファンタジーに勝利の女神を!   作:ぬくぬく布団

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ラピの新衣装投票が来ました。
欲を言えば全部欲しいが、仕方がないね。
それよりもドロシー様の衣装の復刻をお願いします。あれは良い物だ。
オバロ厳選の為にどんぐり集めてるけど速攻で溶けるし、クレジット足らないしでカツカツですわ!!





そして、誤字脱字報告感謝です!
















第6話

~ドロシーside~

 

ドローンでたった数時間配信されただけでお祭りとなった状況を知らずに一日が過ぎた。今日もダンジョンに潜って魔物を倒してお金を稼ごうと再びギルドに訪れた。早朝にギルドに到着した二人は、ドローンと予定より早く到着した経過時間減衰機能付きの大型マジックバッグと武器をレンタルして食料ダンジョンへ潜る。

 

「さて、今日の目標は二層の到着と余裕があれば魔物の強さについて調べましょう」

 

「…オレヒモニナリタクナイ」

 

「……こちらの気が滅入るので普通にしてくれませんか?」

 

「……オレモマモノタクサンタオシタイ」

 

ドロシーは遊星がここまで気落ちしている姿を見て少しだけ……ほんの少しだけ融通してあげても良かったかもしれないと感じ始めた。しかし、ダンジョンでは何があるか分からないので安全を積み重ねてでも攻略したいのだ。気を紛らわそうとドローンの方に視線を向けるとコメントが溢れる。

 

:おいおいおい勝ち組のくせに何言ってやがる!

:ドロシー様、主にはしっかりと首輪を着けてあげてもろて

:安全第一。これ大事

:たった一人の我慢で安全マージンを確保出来るなんて普通ありえないからな?

:ドロシー様ばんざぁあああああああい!

:ふつくしいぃぃぃぃ!

:まぁ…ヒモ主の姿はある意味見ていて面白いがなw

:世間体を殺していくw

:きっと幼い子供が見たら「あー!ヒモ男だ!」って悪意の無い言葉を突き付けるんだろうな

 

流石にコメントの内容がドンドン酷くなっている。見るに堪えないと思いつつも、中にはダンジョンに必要であろう道具等の紹介をしてくれるリスナーも居るのでドローンを破壊する事まではしない。

 

「あまりにも不愉快なコメントを残す者はどうしましょう?特定して射殺しても誰も文句はありませんよね?」

 

:ごめんなさい

:ごめんなさい

:ごめんなさい

:ごめんなさい

:ごめんなさい

:ごめんなさい

:調子に乗りましたすいません

:すいません

 

「分かればいいのです。しかし、私が倒し過ぎるのもあまり良くないのは先日の夜に分かりました」

 

「レベルアガンナイ……オレムノウ……コノスキルバンノウジャナイ」

 

「……コホンッ。遊星が言う様に、先日私が魔物をたくさん倒してもレベルの変動がありません。この事から、レベル上昇に必要な経験値の量が膨大もしくは、本人がトドメを刺さなければいけないかの二択になります」

 

「オレモタタカイタイ……マモノブッタオシタイ…」

 

「……インターネットで調べた結果、通常の召喚スキルは召喚獣の主にも経験値が入る事でした。となれば、百体以上倒したのにも拘らず上がらないとなると後者の可能性がより大きいと判断しました」

 

「……ヒモオトコイヤ………チャントカセギタイ……レベルアゲタイ……」

 

プッツン!

 

遂にドロシーの堪忍袋の緒が切れる。

 

「えぇい、男らしくしなさい!」

 

「フモッフ!?」

 

ドロシーのビンタが炸裂し、遊星は十m程吹き飛ばされて頭から地面にダイブした。

 

「……あっ」

 

:あ

:あ

:……あっ

:あ……

:ドロシー様がご乱心!?

:メディック!メディーーーーーック!?

:…主大丈夫なのか?

 

これにはドロシーもうっかりやってしまった事に呆然としており、慌てて遊星の元に駆け寄る。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「…流石にこの威力は酷くね?」

 

「つ……つい力を込め過ぎてしまっただけです!遊星がいけないのですよ!先程から文句ばかり垂れるなんて男らしくありませんよ」

 

「リリーバイスが来たら告げ口してやる」

 

「なっ!?そ、それは卑怯ではなくて!?」

 

:ん?リリーなんて?

:リリーバイスって?

:もしかして仲間の一人?

:この反応…姉だな!

:ドロシー様の姉…だと……!?

 

「ドロシーが暴力的になったって言いふらしてy「止めなさいっ!!」る前に俺の頭が取れる!?タップタップ!?脳汁が噴き出そう!ヘッドロックはあかんって!?」

 

:ヘッドロックが決まったぁああああ!

:カウント入ります

:1

:2

:3

:KO!

:無駄に連携の取れたコメントすげぇなぁおい

:ドロシー様のお胸が!

:うっ……ふぅ……

:↑貴様を処する

:やべぇ会長が出やがった!

:非公式のくせに調子に乗ってんじゃねえ!

 

ドロシーのヘッドロックから解放された遊星は、両手で頭を抑えながら呻いていた。ただでさえ力が強いドロシーのヘッドロック―――、常人であればぺしゃんこだ。

 

「レッドフードのヘッドロックよりも痛いとか勘弁してくれ」

 

:…レッド…フード?

:えぇい、新情報がドバドバ出てきやがる!

 

リスナー達は大騒ぎだ。次から次へと出てくる新情報にてんやわんやしている。

どうにか遊星のコンディションが普通より若干低めまで回復したので、ドロシーは溜息を吐きながら妥協案を提示する事にした。

 

「はぁ……。これ以上コンディションが低下するのであれば討伐に少しだけ参加させましょう」

 

「……でも一体とかじゃん?」

 

「私が援護射撃で遊星がメインです。これなら文句はありませんよね?」

 

「ハッピー!ハッピー!ハッピーィィィイイイイイイイイイ!!」

 

遊星の喜び様は玩具をプレゼントされた子供並みの反応だった。

 

「ですが、これは今居る一層だけです。深く進む際に先ず私の攻撃が通じるかどうかを判断してからになりますのでぬか喜びしない様注意して下さいね?」

 

「それでもいい!これで俺もヒモから脱却出来る!!」

 

:草

:そんなに勝ち組のヒモ生活が嫌なのかw

:召喚スキル持っている奴は戦わないのがセオリーなんだが…

:でも危ないんじゃ?

:おい主!慢心するんじゃないぞ!

:ドロシー様おいたわしや…

:まぁ主は動きから見て只者じゃねぇけど

:死ぬなよ?絶対に死ぬなよ!

:主が死んだらドロシー様を拝めないからなぁ!

 

「皆ドロシー目当ての視聴で草生えるw」

 

「ドン引きです。所詮外見で判断するだけの害虫が多くて煩わしい」

 

:俺達害虫でもいい!

:飛び回るっぴ!

:殺虫剤吹かれても根性で耐える!

:ドロシー様を陥れようとする輩に群がって攻撃するよ?

:そんな外道には手加減なんて必要ない

 

「あぁん?ドロシーを陥れる?……はんっ、逆にそいつがやられる未来しか見えねぇわ」

 

「遊星が私の事をどう思っているのかよく理解しました。やはりヒm「それだけは勘弁して下さい!!」……即土下座する程嫌なのですか」

 

ドロシーからのヒモという単語が出そうなだけで土下座して赦しを乞う姿はとても鮮麗化された物だ。素早くて無駄にクオリティの高いそれは、ある意味ネットミーム化しそうで怖い一面も無きにしも非ず。

話は戻り、二人は一層に生息する魔物を狩る。戦闘はとても安定しており、尚且つ無駄のない援護が飛ぶので視聴者達は二人の前世の仲間説が濃厚だと大多数が理解した。

 

:前世の仲間説濃厚ですわ

:完璧な援護に裏山

:ドロシー様の力量もあるんだけど…

:ドロシー様ツヨツヨですわ!

:主が要所要所で射線を開ける様に動いてるな

:現探索者の俺から見てもあんな動きや配慮出来ねぇわ

:俺剣士だけど自身無くすわ

:弓士としてドロシー様の視点欲しいわ。何かが違うんだろうな

:二人という少数パーティーなのに火力が十分過ぎる

 

遊星が刀を振れば一体は確殺で、わざと身体を大きく動かして射線を開けてドロシーの援護で複数体が殺される―――この繰り返しである。例え魔物の数が多かろうと、動き回る遊星がヘイトを集めてドロシーが殲滅していく場面も多くある。ただ、もう少し動きながら魔物を倒したいと文句を言うがドロシーのビンタでそれ以上の文句を言わせないという形がお決まりと化しつつある。

 

:あんだけの魔物に囲まれて攻撃されても捌けるとかありえねぇ

:俺Bランクの上澄みだけど主の動きは異常です

:同じく

:何か能力付の装備を着けているかと思います!

:《ギルド長・本郷》ギルドの貸し出しの防具だから能力は付いてない

:本当か?

:忖度してるんじゃ?

:《ギルド長・本郷》忖度はしているがお前達も食料ダンジョンの専門攻略をしてくれるなら良いぞ?

:《ギルド長・村上》本郷の所は良いな~。誰か食料ダンジョンを専門で攻略してくれないかな~?チラッチラッ

:採算取れない食料ダンジョンは拒否します

:危険が多いので無理です

:忖度は仕方がないね!

 

誰もが食料ダンジョンを専門で攻略するのを拒否して話の流れは終了した。

そんな中、一つのコメントが遊星の目に留まった。

 

:ダメ元で聞くけど主のステータスってどんな感じ?

 

基本、他者のステータスを見るのはありえない。というよりも暗黙の了解で見るのは憚れる。そんな中でも無遠慮に聞くという事は色々と疑問に思う所が沢山あるからだろう。

 

:おいテメェ、暗黙の了解を理解しろよ

:マナー違反は死刑

:自分の生命線の一つだぞ?

:あまりにもおかしかったらギルド長の確認があるだろ

:《ギルド長・本郷》一応確認はしたが……まぁ、そうなるよなって理解しちまった

:《ギルド長・村上》確認するけどマジ?そんなに筋トレか訓練を頑張ってたの?

:《ギルド長・本郷》こればかりは当人の意思によるので言わんぞ

:了

:そらそうだわ

:ゲロったらギルド長の座から降ろされるもんな

 

「え?俺のステータスを見たいの?まぁ良いけど―――ステータスオープン」

 

「何をしているのですかこのお馬鹿!!」

 

ドロシーの拳骨を食らうも、一度唱えたそれが途中でキャンセルはされない。全リスナーに遊星のステータス画面が表示される。

 

:やりやがった!?

:おい馬鹿野郎!?

:はい、終わった

:コメは責任取れよ

:すいませんすいませんすいません出来心だったんです!?

:は?

:ナニコレ

:んん~、目の錯覚かな?

:偽装か何か使ってるとか主のジョークセンス最高!

 

「いってぇな……それより偽装って言うスキルあるの?あったら体重とか偽装したいんだが?」

 

「あぁもう……本当に危機感の無いバカ……」

 

「見られても問題なくね?」

 

「悪用する人が現れたり命を狙われたりすると思わないのですか!!」

 

「???狙う必要ってあるん?」

 

:主の価値観どうなってんの!?

:ドロシー様おいたわしや

:この高ステータスはありえん

:ドーピングでもしてんのか?

:いや…ギルド長案件でもこれは想定してなかった

:ユニークスキルマジかこれ!?

:スカウト合戦が始まるな

:引き込んだギルドは勝ち組確定だな

 

遊星の現在のステータスはこんな感じである。

 

名前:(さかい) 遊星(ゆうせい)

 

レベル:3

 

体力:2030

攻撃:1530

防御:1000

速度:3100

魔力:103

 

スキル:なし

 

ユニークスキル:ゴッデス1/1

 

ステータス上昇が少々おかしいが、当の本人は身体能力が変わった事を分かっていない。というよりも、スペックが高すぎるのであまり違和感を感じていないというのが正しいだろう。

そして、コメントの一つにスカウト合戦と表示されたのだが未だにコメント欄にスカウトを行う様な者が一人も現れていないのはある意味不気味だった。

 

:あれ?ここはスカウト合戦のコメントが流れるのでは?

:《ギルド長・本郷》ギルドが直で食料ダンジョン専門で攻略して欲しいと公言しているからな

:あ、あぁ~そう来たか

:採算取れぬ食料ダンジョンの攻略はギルドの資金を圧迫する未来が見える

:ギルドに所属すると一つのダンジョンを専門的に攻略するってのは手痛いのか

:それでもこんだけステータスが高けりゃスカウトされそうなんだが?

 

「スカウト?ないない、俺は自由に探索したいの。指針を強制的に決められるって物凄く嫌なんだよ。そんな所はお断りだよ」

 

「そもそも組織に入る事は無いでしょう。組織を立ち上げる事もありえなません。私達は既に仲間であり家族ですから」

 

:あっ、そらそうだ

:家族を引き裂こうとする輩は万死に値する

:そういやユニークスキルの名前がゴッデスっていう名前だったな

 

「ゴッデスとは、私達の部隊の名前です」

 

「ゴッデスの後に1/1ってあるだろ?俺とドロシーの予想だと、俺のレベル上昇と合わせて人数が増えるんじゃないかって思ってる」

 

:ふぁ!?

:そ、そうきたかぁ~

:リリーバイス様とレッドフード様の二名の他に誰が居るのですか!?

:気になって眠れません!

:何人部隊なの!?

:主はレベルをどんどん上げろ!無茶しない程度でな!!

:男女比を教えろ!ドロシー様の様な美女は居るのか!?

:男は要らぬ女が欲しい

:ちょっと男子!男は絶対欲しいでしょ!

:主と男性のウホッな光景を

:腐海にお帰り!!

:くそっったれぇえええええええええ

:はぁはぁはぁはぁ

:やばたにえん

:うっわ同接数がえらい事に!?

:二回目の配信なのにもかかわらず10万!?

:とんでもねぇ数だ!

:これは波が来るぞ!!

 

あまりにも多いコメントの濁流にビックリするが、直ぐにスルーして応えられる範囲で返答をする。

 

「どうする?」

 

「男性2と女性6です」

 

コメントで「ハーレムかよ!」と流れているが、気にしない。

 

「ハーレムって……今更ながらにそうじゃねぇか!」

 

「その様な事を考える事自体ありませんでしたね」

 

「俺は親友と一緒に行動する事が多かったしな」

 

「……私に悪戯していたのは忘れませんよ?」

 

「悪戯の反応で一番面白いからショウガナイ」

 

「紅茶を淹れたかと思えばわざと渋くしましたよね?」

 

「ピュッピュピュー♩」

 

:紅茶を無駄にしただと?

:ユルザンッ!

:こいつw

:俺は知らねぇと言いたげに口笛吹きやがって

 

「お返しとしてタイキックをお見舞いしたので大丈夫です」

 

「ケツが割れたかと錯覚しちまう程強烈な一撃だった」

 

「レッドフードにもしましたが、遊星だけ直ぐに回復したのは驚愕しました。無駄に頑丈な体でびっくりです」

 

:それでも怪我してねぇのはドロシー様の優しさか……

:いやいや…主が頑丈なだけだろ

:なんだろう……他の面子にも色々とやらかしてそう

:悪戯されたら嫌いになる筈なんだがなぁ

:そこは主の人徳?

:それは無理筋じゃね?

 

「しかも悪戯に理由を持たせる時点で色々と厄介なのです」

 

「そりゃあ、ピリピリしていると最高のパフォーマンスを維持するの難しいからさ。適度のガス抜きって理由さ」

 

「遊星は馬鹿なのに憎めない不思議な存在ですよ」

 

:なんだろう……馬鹿にしているのに謎の安心感

:信頼しているという事なんだろうな

:かぁ~!ドロシー様という美女から信頼されるとか裏山!

 

基本的なターゲットはドロシーだ。しかし、他の仲間にも悪戯をちょくちょくしていたりもするがその後にサンドバッグみたいに反撃されるのを良しとしているので誰も真似しようとは思わない。転生チートの頑丈な身体が活き活きとしていた。

それからも魔物を狩って狩って狩りまくり、マジックバッグが一杯になるまでを目標に奥へと進んでいくと早くも安全地帯かつ下の階層へと続く階段を発見した。

 

:もう二階層へと続く階段か

:ボス部屋って無いのか

:《ギルド長・村上》食料ダンジョンでは基本的にボス部屋はありませんね

:《ギルド長・本郷》その代わりに強い魔物が通常エリアで歩いている場合があるがな

:クソダンジョンじゃねぇか!

:食料ダンジョンはクソ

:クソの中のクソダンジョン

:正直要らねぇダンジョン

:《ギルド長・本郷》上からの許可が下りたから言うぞ

:おっ?

:ドキドキ

:ワクワク

:《ギルド長・本郷》食料ダンジョンは三階層以降は手付かずだ

:《ギルド長・村上》調べるにしても旨味が一つもないダンジョンとして切り上げられたのさ

:手付かずってやばくね?

:アー

:まぁ知ってはいるけど

:お宝が眠ってるって事!?

 

一般人のコメント欄が驚く中、探索者達のコメントはどれもが意気消沈としている。ギルドが重い腰を上げて探索したにも関わらず、中途半端で止めた理由は色々とあるが現役探索者達は察して何も言う事は無かった。

 

「いやぁ~、広いって聞いていたけど小走りで半日は結構な距離だな」

 

「私達の早さでという点が追加されますので他の探索者を連れるとなれば……丸一日の可能性が大きいでしょう。私達は軽装である事を前提かつ、遠距離からの攻撃という手段を用いていますので圧倒的な制圧速度を有している状況ですから。まぁ、今は一名だけランク詐欺にも等しい近接職が居ますが」

 

「前世の経験は伊達じゃねぇ!」

 

:前世の設定って未だに言うのな

:馬鹿野郎!

:主が前世持ちなのは確実だ

:輪廻転生って何かと言われそうだな

:主に厄介なアンチが湧いたら迎撃してやるぜ!

:ドロシー様を不快な気持ちにさせるからな!

:その他の仲間様達にも迷惑掛けられねぇぜ!

 

「……本音は?」

 

:仲間の美女を見たいっぴ!

:もう一人の男はイケメン?

:俺達は所詮美男美女に釣られる存在だくまぁ~

:ダンジョンの外でも配信して欲しい

:むふふな光景を!

 

中々に欲望に忠実なリスナー達である。だが、それでも色々とメリットがあるので有益である。

 

「雑談も程々にして二階層に降りてみましょう」

 

「ドロシーの銃で倒せるなら俺も倒せるって事だからな!」

 

「ヒモ男の方が安全なのにどうしてこうなのでしょう?」

 

「俺にも意地があるから」

 

「吹けばボロボロと崩れそうな意志でしょう?」

 

「ヤメテ!それ以上チクチク攻撃しないで!?」

 

:主がドロシー様に悪戯してたのって嘘じゃね?

:いやいやそんな

:ドロシー様の溜まりに溜まった鬱憤をね?

:紅茶をワザと渋くした恨みは根に持たれるぞ

:物理じゃなく精神だから

:戯れ程度だから良いじゃん

:ピリピリした空気で進むのが普通なんだが…

 

階段を降りていく事数分―――。二階層は一階層と同じ雑木林がある草原だった。

 

「……一階層と環境は変わってないっぽいな」

 

「ギルドから情報を得ていましたが、本当に変わらないですね。敵の魔物が変わるのでしょうか?」

 

「小型から中型に変わるらしいっと……。ふむふむ、軽自動車より少し小さい魔物か」

 

「他に変わった点は……自生している植物は食べられるのですね」

 

「確かに食料ダンジョンって感じだな。このダンジョンで生活出来るんじゃねぇの?」

 

「ですが、夜間が存在しないらしいので休む気分さえ無いのはいただけませんね」

 

そうこうしていると、真正面から木々をかき分けて普通自動車よりも大型な角が厳ついシカが現れた。とても興奮しているのか二人を睨みつけている。

 

「……どうする?」

 

「取り敢えず撃ちましょう」

 

ドロシーが間髪入れずに眉間に速射した。弾丸は綺麗にシカの魔物の眉間に吸い込まれて貫通した結果、シカの魔物は地面に倒れてお肉がドロップした。

 

「えぇ……一発かよ」

 

「……手応えが無さ過ぎます」

 

二人は呆気なく死亡したシカの魔物に溜息を吐きつつドロップ品を回収。お肉は片足のモモを丸々だ。かなり食い応えのあるお肉である事だろう。

 

:《ギルド長・本郷》えぇ……初めて見た魔物なんだが……

:《ギルド長・村上》こっちでも確認しているけど未発見の魔物だね

:《ギルド長・宮本》食料ダンジョンの配信をしていると聞いて来たわ

:桃花さんだ!

:桃ちゃん!

:《ギルド長・宮本》桃ちゃん言うな!

:《ギルド長・宮本》それはそれとしてドロップ品をギルドに降ろす事できる?

 

新しく登場したギルド長の宮本のコメントを見て、少しだけ考えた。

 

「う~ん、食べたいから遠慮したいんだが」

 

「シカの肉は売っているのですか?」

 

「普通のスーパーとかでは売ってないぞ」

 

「なら却下です。ご近所の方達にも分けたいのでお引き取りください」

 

:金になりそうなのにな

:未発見だからなぁ

:《ギルド長・本郷》ドロップ品をどうするかは探索者次第だからな

:《ギルド長・宮本》ダメ元で聞いただけだから気にしないでね

:やさしい世界

:やさいせいかつ

:だれだてめぇ?

 

いきなりの未発見の魔物の登場に驚きつつ、魔物がやって来た雑木林の方に耳を傾けると奥の方で何やら魔物同士の争う様な音が聞こえてくる。

 

「気になりますか?」

 

「まぁ、そりゃあ気になるでしょ」

 

「それでは離れま―――『ドスンッ!』っ!」

 

二人の後ろから降って湧いた音の正体は、先程のシカの魔物だった。しかし、体の損傷が激しく大きな穴が開いていた。

 

「ほうほう、こっちに標的を変えたか」

 

「何悠長な事を言っているのですか!」

 

:おい主逃げろ!

:いや待て……

:でっか……

:これボスじゃね?

:《ギルド長・本郷》所々に傷があるな……歴戦か!?

:《ギルド長・宮本》逃げなさい!早く逃げなさい!!

:《ギルド長・村上》くそっ!二階層だから直ぐに救援を出せない!

:ちょい待ってくれよ

:二人共死なないで!

:にげろにげろにげろ

 

現れたのはシカの魔物……なのだが、体躯が恐ろしい程大きくミキサー車並みに大きい。角は所々折れたりしていたのか、歪な成長をしている。なにより、角にこびり付いている染みは黒に近い赤で染まっている。

ドロシーが咄嗟に銃口を眉間に向けるが、巨体の体躯に不釣り合いな俊敏さで狙いをずらす。流石歴戦の個体と言った所か、警戒心が異常に強い。

 

「対人の経験があるのでしょうか……間合いを一定に保っていますね」

 

「ん~、俺の予想だと何人か殺されてるな。普通では嫌らしい距離感で警戒してる」

 

「……普通?」

 

「こういう事さ」

 

ドロシーよりも先に遊星が動いた。右手に持っていた刀の鍔を親指で弾いて飛ばす。シカの魔物は眉間に真っ直ぐに飛んで来る刀を体ごと横後ろに移動して回避、奇襲を仕掛けた遊星が居た場所に視線を戻すと銃を構えて発射するドロシーの姿が飛び込んで来たが頭を垂れて素早く震わせて角で弾丸を全て弾き逸らす。

 

「全く……無鉄砲かと思えば理詰めかつ強引にチェックメイトまで運ぶその判断力は健在ですね」

 

シカの魔物の最後の光景がドロシーの苦笑だった。視線が下に落下して横になり真っ暗になった。ヒュンッと何かを振るう風切り音を最後に完全に絶命した。

 

「いやぁ~、ナイス援護」

 

「やはり初見の対応力はずば抜けていますね」

 

:は?

:何したん?

:《ギルド長・本郷》一撃?……え?一撃?

:《ギルド長・宮本》は?え?は?え?

:《ギルド長・村上》

:魔物の首がいつの間にか斬られた

:おいこのドローン最新モデルなのか?主がブレて見えたんだが

:俺Aランク探索者だけど主の動き殆ど見えんかった

:おい現役Aランク探索者マジかよ!?

:Sランクでも良い気がしてきた

 

二人は普段通りの雑談を続けている一方でリスナー達は慌てふためいていた。何しろ未発見の魔物のボスであろう個体を一撃で仕留めたのだ。

 

「さてさてドロップは……ナニコレ」

 

「首が切断されたのに肉になりませんね」

 

二人が驚いているのは倒したボスのシカの魔物が消えずにそのままの姿で残っている事だ。

 

:《ギルド長・本郷》ちょい待てちょい待て!?

:《ギルド長・宮本》む村上前例調べなさい!

:《ギルド長・村上》やってるよ!?

 

ギルド長達のこの慌て様に普段ではありえない事態にてんやわんやしていた。

 

「……これをマジックバッグに入れて帰るか」

 

「…そうですね。本日の目標である二階層への入り口の発見と様子見も終わりましたので帰りましょう」

 

ボスのシカの魔物をマジックバッグに入れ、二人は真っ直ぐ出口へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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