現代ファンタジーに勝利の女神を!   作:ぬくぬく布団

8 / 10
お、おう…。
周年イベントの内容が濃すぎた。ドロシー様おいたわしい。おのれ運営!どこまでドロシー様を曇らせるおつもりだ!!

と、イベントクリア後もストーリーを何度も読んだ結果―――。

この世界線ではGODDESS FALLなんて無かったんや!

でも、メインストーリーの方はそれなりに絡ませていってます。ホエリーは可愛いから倒したくない。良いね?

そして、誤字報告大変ありがとうございます。拙いながらもエタらない様にデイリークエストの様にコツコツと執筆していきます。






第8話

~ドロシーside~

 

あの鹿の魔物を討伐してから一週間が経過しました。どうやらあの大きい鹿の魔物はフロアボス?という存在で間違いないそうなのですが、とりわけ珍しい歴戦の特殊個体という事実が分かりました。歴戦の特殊個体という呼び方の時点で私達は不思議に思いましたが、歴戦というだけで百人以上の探索者達を殺したという魔物らしいです。

不人気のダンジョンでどうしてそこまでの探索者が犠牲になったのか?疑問に思う事が一杯なのですが、どうやら初期の頃にダンジョンに潜った探索者達を殺したのだろうという推測だそうです。特殊個体というのは様々ですが、あれはダンジョンの魔物を食べてより力を蓄えた魔物だとの事。魔物が魔物を食べる事自体中々無い事例らしいです。

買取金額は初発見+歴戦の特殊個体という事を踏まえて買い取りで百万という破格の報酬でした。しかし、通常のドロップの買い取りの金額なら五万程度との事……。

 

「「安っす(すぎです)」」

 

遊星と全く同じ感想です。さて、これに関してはドロップの素材が全て食べ物であるという点と、食品の鮮度の問題等色々とある為に高額では不可能だという事です。美味しかったのですが何故なのでしょう?と口にするとどうやら野生動物の鹿と遜色ない味だそうです。そして、野生動物の鹿は害獣らしく、探索者ならば余裕で狩猟出来るので価値が低いとの事でした。

 

大きい鹿の魔物の肉は普通の鹿肉と同じ味。個体による味の変動は無いが、家畜の肉よりも痛みが早くて需要と供給が合っていないという実態だ。ジビエ料理は美味しいと言われているが、それは料理人によって味も変わるし個人の味覚に合っているかにもよるので定期的に卸しても量は必要ないのだ。

 

さて、話は変わって第一階層の調査です。本来はニ~三日で調査を終わらせようとしましたが、遊星からの提案で植生や魔物の生息数を場所毎に調査するという何とも時間が掛けていました。理由は、「俺達がまた一階層で調査しても数や植生の変化が無ければそれで良し。問題が在れば、どの場所にどの様な変化があるかが範囲で分かるからな」なのです。確かに分かり易い変化を事前に調べていたなら予想範囲等も調べる事が出来ます。

 

そうして、一週間という長い時間で第一階層の調査を完了した二人は、ギルドから正式に調査の報酬を得た。その額何と三百万―――。

 

「魔物の生息場所や種類頭数比率なんて物凄く詳しく調査、植生っていう今まで見向きもしなかった所も調べて変化がある事に気付けたんだ。二百万程度の情報じゃないって事さ。もし、いざという時は二人以外の探索者を大人数集って一斉に広範囲調査すりゃあ問題ないしな。全国のギルドからどのダンジョンへの転移が可能なんだから報酬の分配とかも喧嘩はない」

 

「お二人のこの調査報告書をギルド全体で共有して定期的に探索者を派遣して調査をする方針です。一応お二人はこれ以降の階層を攻略される予定ですのでお手を煩わせる訳にはいきませんから」

 

という事で臨時収入ががっぽりと手に入り、大分どころかかなり余裕を持つ事が出来た。これで第二階層の攻略に入る為の下準備―――キャンプ用品等を購入する事が出来る。というよりもキャンプ用品は必須である。ダンジョンの二階層から下を攻略するには日帰りでは厳しいので事前準備だ。

だが、二人にキャンプ用品で何が良いのかは分からない。なので、これは視聴者から情報を得る為に家で配信をする事にした。そして、"ある事"もする計画だ。

 

「という訳で、配信スタート―――っと。映ってるのか?」

 

「この枠がコメントなので映っているのでしょう」

 

:きちゃ!

:待ってた!

:今日もふつくしい!

:ダンジョンじゃねぇ!?

:室内って事は家?

:ギルド所有のドローン借りれたのか!?

:前例が無いんだけど!?

:おいギルド忖度してんじゃねぇ!

:ドロシー様!ドロシー様!ドロシー様!

:専用ドローンからの告知助かる

:仕事ほっぽって見てる

 

「仕事はしっかりとしなさい」

 

「ドロシーに言われてるぞ?」

 

:草

:ww

:しっかりします!

:俺も仕事するぅ!

:私もするぅっ!

:自宅を守ってるから大丈夫だ

 

配信が始まってからもう視聴者のテンションは最高潮なのか、かなりの速度でコメントが流れている。その中で目に付いた物を偶に拾ったりする。

 

「本日は第二階層から下を攻略する為に必要なキャンプ用品を購入するのですが、何か良い物はありますか?」

 

「収入でそこそこ良い値貰えたから質の良いキャンプ用品を買いたい」

 

:ほうほう!

:ダンジョンで使うキャンプ用品!

:もう一強ですわw

:ダンファームだな

:素材がかなり良し

:丈夫だからお勧め!

:いつも思うが何故ファームなのだろう?

:…突っ込むな

:皆敢えて言ってないんだから

 

「ファームって農場…。キャンプで使うのか?って思うんだが」

 

「き、企業名は置いておきましょう」

 

:草

:そりゃそうなる

:あたりまえで草

:ファームは無いわな

:そんな事言うなって

:広い農場だとキャンプするかもだろ?

:車で移動が普通なんだが?

:休憩としてじゃね?

:車の中で良いやん

 

取り敢えず、早速購入したパソコンでネットに接続してダンファームについて調べる事にした。出るわ出るわ大量のダンジョンで使えそうな品々。キャンプだけでなくとも日用品としての品も売っている。……本当に何故ファームという名がついているのかが不思議で仕方がない。

 

「本当に色々あるな…。非常食まで売ってるのか」

 

「一応買いましょう。いざという時に食べて飢えを凌ぐのは当たり前です」

 

「取り敢えず三十個注文っと……」

 

注文数を三十個にして購入カートに入れる様子を見たリスナー達からの反応は様々だった。

 

:何故に三十個?

:一人十五個は多過ぎるっぴ!

:マジックバッグ持ちとはいえ他にもキャンプ用品入れるから十個減らしたら?

:いや…十個でも多いと思う

:消費期限が長くても食べなきゃ勿体ないぞ!

:何気に高いんだぞ

 

「確かに高いですが、これには理由があるのです」

 

「何と、この度の調査でレベルが10まで上がりました!気になるユニークスキルゴッデスも俺達の予想通り1/2に表示されました~という事でステータス数値以外を表示のステータスオープン」

 

:ちょ!?

:おまっ!?

:主ぃいい!?

:いきなりの情報!?

:レベル上昇おめでとう!

:ひ、一人召喚出来るのか!?

:今、此処でするんだよな!

 

お祭り上体のコメントは放置して遊星は最低限の情報のステータス開示をした。

 

 

名前:(さかい) 遊星(ゆうせい)

 

 

レベル:10

 

 

スキル:なし

 

 

ユニークスキル:ゴッデス1/2

 

 

予測通りゴッデスの欄に変化があり、召喚出来る人数が増えている事が分かった。

 

「しかしながら……恐らくこの召喚はランダムでしょうね」

 

「多分なぁ~。ドロシーが呼ばれた時って俺は仏壇で前世の事について色々とぶっちゃけていただけだからな」

 

「もし…もしもですが、私ではなく他のメンバーが呼ばれたらと思うと遊星が無茶をしそうなので私が最初で良かったです」

 

「それにしても誰が来るのかなぁ~?」

 

「私とレッドフードとリリーバイスの三人はほとんど変わっていませんが、残りの皆は服装など変わっていますのでご注意下さいね」

 

「……それ初耳なんだけど?」

 

「根本の性格は変わっていないので誰かは直ぐに分かります」

 

「なら大丈夫か!」

 

:何処が大丈夫なんだろう

:主がやらかしそうなフラグを

:もったいぶらないで!

:早く召喚しましょうよ!!

:えぇいじれってぇな!

:役目でしょ!!

 

コメント欄は濁流の様に流れ、お祭り状態だ。しかし、これからキャンプ道具を準備する際には一緒に相談する事にしているので流れる形で召喚の準備を行う。

 

「……今思ったんだが」

 

「どうしましたか?」

 

「どうやって召喚すればいいんだ?」

 

「何を言っているのですか?」

 

「…え?」

 

「…え?」

 

二人の沈黙と共に、コメント欄もまた沈黙する。

 

「…取り敢えず『召喚』と言えばいいのではないですか?」

 

「成程……召喚!」

 

:ドキドキ

:ワクワク

:さぁ!さぁさぁさぁ!!

:あのさぁ

:焦らしプレイか?

:失敗?

:どういう事だってばよ?

 

遊星が召喚と告げても何の変化もなく、沈黙が流れる事で悟った。召喚方法はこれじゃないと。

 

「ま、まぁ他にも思い付いた方法でやってみるから!」

 

「……」

 

今度は、ステータス一覧のユニークスキル:ゴッデスの部分に触れてみると変化があった

 

名前:(さかい) 遊星(ゆうせい)

 

 

レベル:10

 

 

スキル:なし

 

 

ユニークスキル:ゴッデス1/2

        ドロシー

        ?????

 

 

これ以上の表記はなく、?????の所が点滅していた。間違いなくこの?????の所を触れる事で召喚されるという事が分かる。

 

「さぁもう一度行くぜ。召喚!」

 

遊星が?????を指でタッチすると、二人の目の前に魔法陣が浮かび上がり眩い光を放つ。

 

あぁ、やっと―――やっと会える。

 

ドロシーの心の内は歓喜。そして、少しばかりの後悔。

 

光が大きくなり、前が見えなくなる程の輝きと同時に薄暗い影が姿を現す。その形は成人女性の身長より高いが、色々と凹凸の大きい体だった。光が収まるとその装飾は白と黒を基調とし、所々に金色の装飾をされている服装はまるで聖職者を思わせる。

 

:ひゃっはー!美女キタコレ!!

:はぁはぁはぁ!

:うっ!

:はぅうっ!

:エチチチチチチチチチ!

:ボッ!

:ふーんエッチじゃん

:聖職者にあるまじき肉体

:主はSHINE!輝けだぞ?

:パイパイパイ!

 

ラプンツェル―――。真面目で遊星とレッドフードの悪戯に険悪な時期があったが、それが輪に馴染める様にしていた事を知ってからプンプンと怒る程度になった。だが、遊星が死亡してからもレッドフードの悪戯に何処か物足りなさを感じていたりしていた。そんな彼女が遊星と再会したらどの様な反応をするかドロシーは気になっている。

 

「……ん。此処は一体?――――え」

 

「…ラプンツェル…だよな?」

 

「ふふふ、ラプンツェルで合っていますよ」

 

しばし固まっていたラプンツェルは、震える手で遊星の手を掴む。そして、涙腺が決壊して号泣しながら抱き着いた。それはもう全力で。

 

「遊星!」

 

「ちょまっ!?」

 

「ら、ラプンツェル!?全力は駄目です!」

 

遊星を鯖折りする様な形で抱き締めており、幾ら頑丈な身体だとしても骨がミシミシと悲鳴を上げる。

 

「ゲフッ!?そ、それ以上は死ぬ!一旦落ち着kイデデデデデデデエエエエ!?」

 

:羨ましいと思った俺が馬鹿だった

:羨ましくはある

:骨の軋む音が聞こえた

:罅は入ったんじゃね?

:高価なポーションは持ってないよな

:くっ!豊満なあのボディで抱き締められたい!

:死ぬぞ!?

:死んでも後悔はしない!!

:死んだら他の仲間も見れないんだぞ!?

:じゃあ我慢する

:掌高速ドリルw

:主大丈夫なのか?

 

ラプンツェルが落ち着くまで幾分かの時間を要したが、ドロシーが強引に二人を引き離した事でようやく落ち着き、自分がした所業に青褪めて遊星を回復をさせる。その際に、コメントが更に阿鼻叫喚になったが見られる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ラプンツェルside~

 

ブラザーが率いるカウンターズが主軸となり、皆でクイーンを撃破。長年の目標だったクイーンの撃破―――、それからの地上に残る有害なラプチャーの殲滅。ようやく地上に残る有害なラプチャーを殲滅し終えた私達は、彼等が埋没されている場所へ向かった。棺の上には花束と、記憶に残る髪飾りが置かれていた。髪飾りを見た瞬間に我に返り、周囲を見渡すが人の気配は全くなかった。

 

「……ドロシー。何故、最後は私達と共に来なかったのですか―――。いえ、本当は一緒に最後まで共に来て欲しかったというのは贅沢なのでしょうか?」

 

「ふむ、これはこれは私達より早くここに来たのは予想外だったね」

 

「いいや、ドロシーはこういうものだ。最後の最後まで一線を越えた自身を私達の隣に立たせたくなかったのだろう」

 

「それでも……と思うのは我儘でしょうか」

 

「さてな―――。私も最後は辺鄙な場所で農作業でもと思っていたが、予想より身体にガタが来ていた様だ」

 

「…それは私も同じだ」

 

「……私もそうです。やはり、最後は皆でという想いは一緒だったのかもしれません」

 

ラプンツェルは棺の上に伏せ、スノーホワイトは背中を預け、紅蓮は棺に頭を乗せて寝ころんだ。三人共目を閉じ、これまでの記憶を思い出しながら静かに吹くそよ風を浴びながら意識を落とした。

 

真っ暗な闇―――。寂しいと感じつつも此処が行きつき先だと感じる静けさがあり、まるでふわふわと水中の中を漂っているかの様。でも、やっぱり寂しい。ブラザーの部隊での日常は懐かしさがありつつもやはり何かが物足りなかった。でも、ゴッデスで皆が居た時はその様な事は無か―――いいえ、遊星が亡くなってから物足りなくなってしまった。

人を惹きつけるだけ惹きつけて呆気なく逝ってしまわれた。あぁ、思い出しました。遊星は大人でありながら子供っぽさが残っていたのです。いえ、わざと残していたと言うべきでしょうね。

 

 

 

 

あぁ、主よ―――。もし居られましたら家族の皆を明るい明日へとお導き下さい。

 

 

 

 

 

 

闇の中から願ったラプンツェルの丸い魂を光の手が優しく包み込む様に上へ上へと持ち上げられて行く。その過程で段々と丸い魂から生前の姿へと形を変えて光の中へ取り込まれた。

そうして光が晴れ瞼を開けると、ドロシーと一人の男性が目の前に居た。頭が混乱しているが、男性が自身の名前を口にした声色がかつての声色と同じで、その隣にはドロシーが当たり前の様に立っている。導き出された答えは一つ―――。

 

「遊星!」

 

「ちょまっ!?」

 

「ら、ラプンツェル!?全力は駄目です!」

 

「ゲフッ!?そ、それ以上は死ぬ!一旦落ち着kイデデデデデデデエエエエ!?」

 

全力で抱き締めている為に骨がミシミシと音を立てているが、それ以上に感情の起伏が激しく強く抱きしめ続けた結果―――ドロシーによって強引に引き剥がされる。そこでようやく自身がとんでもない事をしでかしたと理解して、いつも通りナノマシン治療で傷を治した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(し、死ぬかと思った…いやマジでドロシーが居て助かった。え?ラプンツェルってこんなに行動力溢れる感じだったっけ?いやいや……そんなわけないだろ。レッドフードが少しHな本?を見させては張り倒されたりしたというのは又聞きで知ってたけど、時々ムッツリな妄想を捗らせるだけでそこまで酷くないし……。いやいや、それよりも問題なのは二人の状況なんだが……どうしたらいい)

 

遊星が何かを言う前に、ドロシーとラプンツェルの間の空気が少し重くなっている事に気付き緊張した面持ちなのだ。お互い何も言わずの状態だが、確実にドロシーの何かしらのやらかしだというのは理解した。

 

:何この空気

:おっも

:沈黙が重い

:これドロシー様が何かしらやらかした感じ?

:完璧なお嬢様なドロシー様がやらかす訳ないだろ!

:でもこの場の沈黙が……

 

明らかに重過ぎる。遊星は、一度この流れを変える為ドローンを捕まえて電源を落とす事にした。それはもう何も言わせない形である。

 

「アッ、イッケネー。テガスベッター!」

 

:ちょ!?

:主ぃぃぃぃ!?

:待t

 

配信は終了、これでこの場の空気を一度和らげる事に成功。後は当人同士の話し合いを進めるだけだ。

 

(はぁ……この沈黙に関係無さげなのに胃が痛い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(最後の別れを言わずに死んだ事が後悔であり、今なら言葉で話す事が出来ると思っていました。ですが、実際に会ってしまうと言おうとした言葉が喉の奥に引っ掛かり説明も何も言えずにいます)

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

遊星が配信を止めてしばらくしても重い沈黙は続いたままだった。ドロシーが何かを口に出そうとしたら、ラプンツェルの眼差しがそれを止める。少しばかり考えて再度口に出そうとするも止める―――それが何度も何度も繰り返されている。

そこで、準当事者でもある遊星がこの状態を変える為に口を開く。

 

「黙ったままは良くない。―――という訳で言葉に詰まりそうなドロシーは後にしてラプンツェルから聞こう」

 

これにはびっくりしたのかラプンツェルは驚いた表情をしたが瞼を閉じて一息入れ、ゆっくり瞼を開けてから遊星に質問をする。

 

「私自身とても驚いています。死後の世界と言うべきなのでしょうか?いいえ、それともまだ生きているのでしょうか?」

 

「ドロシー曰く身体にガタが来て亡くなった事は確かだそうだ」

 

「…そう……ですか。では、此処は天国なのですか?」

 

「あー……、何て言えばいいのか…。ラプンツェルは転生って聞いた事はある?」

 

「死して新たな生命へと生まれ変わる事ですね。勿論知っています」

 

「俺がその転生した状態だ」

 

「……待ってください。遊星は背格好や声色も全く一緒です!」

 

「そこは俺もそう思ったが、もうそういうものだと諦めている」

 

遊星の容姿や声までもが前世と全く一緒という事が奇跡と言っても過言ではない。

そして、遊星は自身がこの世界に産まれてからラプンツェルを召喚出来た経緯を少しずつ、ゆっくりと説明していく事で納得させた。

 

「恐らく、遊星のスキルが幼少期に発現しなかった理由が前世の姿をそのままこの世界に定着させるという仮定とするならば、馴染んだ事によってスキルが発現しこの世界に適応されたという事でしょう。そして―――」

 

「ユニークスキルっていう特殊なスキルで前世の縁を持って来たという事も馴染むまで時間が掛かったという原因の一つであろうとされる―――っていう所かな?」

 

「……遊星も生まれ変わってからも壮絶な人生だったのですね」

 

「…まぁな。でも、今は近所のお爺さんお婆さん達にもよくしてもらっているし、ドロシーとラプンツェルも来てくれた事が幸せだよ。……所で話はすっごく戻るんだが、死ぬ前に何があった?何か二人の間に謎の沈黙の空気が漂ってたからそれを和らげる為の話でもあったんだが」

 

「遊星にはしっかりと知って頂きます。ドロシー、良いですね?」

 

「……はい」

 

ドロシーの声は弱く、覇気の無い返事だ。

そして、ラプンツェルは遊星が死んでからの出来事を知っている限りの事を語った。だが、其処で一つだけ違和感を覚えた。

 

あれ?私の記憶が鮮明に思い出せている?…何故!?重要な記憶以外は一年毎に消していたのに何故思い出せるのでしょう?いいえ、今は其処についての説明をするよりも前世の最後までを伝える事が重要です。

 

多くの死者を出しながらも、最終的には元凶のクイーンを倒し新たに生まれたクイーン?は保護?というより害の無いラプチャーとは共存の道を掴み、地上を奪還する事に成功した。その後、スノーホワイト、ラプンツェル、紅蓮の三人は墓地の棺の横で眠る様に死んだ―――。そして、眩い光に引き上げられる様な感覚と同時に遊星に召喚されたという事だ。

 

「……情報量多過ぎだわ。無害なラプチャーは未だともかく、新たに生まれたクイーン?保護?…えっ?クイーンって増えるって言うか生まれるの!?」

 

「そ、それについては私達も驚きました。ブラザー……彼が多くの道のりを経てその結果に行きついたという事らしいのです」

 

「後世の指揮官は親友より色々と持ってるな~。絶対にニケタラシだな」

 

「そ、それについては否定出来ませんね」

 

「……さて、ドロシーのやらかしも色々と知れたし言う事は一つだな」

 

遊星が視線をドロシーに向けると肩をビクッと震わせていた。ドロシーは俯いて怒られると理解しつつ、それを受け入れようとした。だが、結果は予想とは違い―――。

 

「まぁ、復讐もしたくなるってのは仕方がないな」

 

頭を優しく撫でるだけだった。

 

「「えっ?」」

 

これには二人共驚いた。自分達が命懸けで守り、作ったアーク―――。その上層部を抹殺しようとした。勝利の女神とは言えない行為には怒るものだと思っていたのだ。

 

「何故に二人は驚いてんだ?」

 

「わ、私はアーク上層部を抹殺しようとしていたのですよ!?遊星に後の事を託された私達にとって一番赦されざる行為ではないのですか!?」

 

「……理由をお聞きしてもよろしいですか?」

 

「理由としては沢山あるんだが、そもそも俺は軍上層部を毛嫌いしてたからな」

 

「「…え?」」

 

「ニケを消耗品の道具として見ているというのもあったんだが、安全地帯でのうのうと指示出してふんぞり返る奴なんて大っ嫌いだからな?俺自体が希少価値が高すぎるという理由もあって処罰される事は無かったが、何度か上層部の奴を殴ってたのさ。そんな上層部の中でも一部は良い奴が居たんだが…まぁ、ゴッデスオタクみたいな奴だったからな。」

 

あろう事か、遊星自身が軍上層部を嫌っていた。この情報は二人にとって物凄く驚愕するに値するものだ。

 

「どうせ、アークが出来たらゴッデス=ニケの神格化をされたら困るっていう理由だけで締め出されたんだろ?まぁ、其処については我慢出来るが―――俺と一緒にニケ達の士気向上をさせる為に研究していた奴等が殺されたんだろ?全員が全員それを赦してでも地上を奪還する為に行動するってのは絶対に不可能だ。特に、ドロシーは絶対に赦さないってのは予想してたしな」

 

「な…何故?」

 

「バッカだな~。それなりに一緒に過ごしたんだぞ?その位分かって当然だっての」

 

「ですが「ですがもへちまもねぇ!」ッ!?」

 

「喜怒哀楽が無いのは人じゃない。―――只の機械だ。もし、ドロシーに復讐という怒りが無かったら思考転換しても何もない空っぽな状態だったと思う」

 

「…空っぽ」

 

「だが、一つだけ怒る点がある」

 

「―――ッ」

 

「それは、ドロシーがなまじ優秀過ぎるが故にラプンツェル達がリーダーをドロシーに押し付けていたという点だ」

 

二人は意味が分からないと言いたげな表情をしていた。

 

「ドロシーは自覚なしかよ…。良いか?人には向き不向きってのが絶対にある。そして、これで一番難しい所は万能な奴だ。万能が故に、―――自分が我慢すれば、―――これは自分だけしか出来ない、等といった徐々に精神を疲労させる重りが圧し掛かる。重りが圧し掛かれば圧し掛かる程、誰かに褒められやる気を上げたいと思い始める。認められたい、任されたい、自分自身が無自覚が故に何かが切っ掛けで溜めた物が一気に崩れる。そして、立ち直る為に偽りの表情で本音を隠し、徐々に何が本当で何が嘘なのかが分からなくなっていく」

 

ラプンツェルはこれを聞いて思い出した。ドロシーが大丈夫だと言ってそれ以上の本音を聞き出さなかった事。ドロシーが大切にしていた"翼"量産型のニケ―――名はピナ。彼女は侵食されてドロシーが撃ち殺した。合流した時にはドロシーとは思えない状態だった。でも、時間と私達の言葉で立ち直ったと思った。

―――そう、思ってしまった。決めつけてしまった。"私達"はこうだから"私達より優秀な彼女"なら大丈夫だと。信頼は場合により当人の楔となり、苦しめる要因にも成り得る。

 

「では、どうすればよかったのですか?」

 

「その時に親友とリリーバイスとレッドフードが居なかった。スノーホワイトと紅蓮は思考転換―――、ぶっちゃけると思考転換が起きていようがいまいがゴッデスとして動くのなら全員が対等である必要があった」

 

「…それは」

 

「まぁ、過ぎた事だが今に活かせる。それが分かってたらいいのさ。正直俺自身もそんなに的を得ているか?と問われても、正直分からん!と断言出来る!!」

 

「意味がないではありませんか!!」

 

「ヒデブッ!?」

 

ドロシーがつい遊星をビンタしてしまった。

 

「あっ…」

 

「ど、ドロシー!?ゆ、遊星大丈夫ですか!?」

 

「この不意打ち酷くね?」

 

ビンタされた頬をさすりながら遊星はドロシーにジト目で頬を膨らます。

 

「なっ!?ラプンツェルも遊星が駄目だとは思わないですか!?自分で自信満々に説明しながら最後は分からないと言ったのですよ!?」

 

「で、ですが流石に手を挙げるのは……」

 

「うっ!?」

 

「ラプンツェルの正論パンチ!ドロシーの心に一のダメージ!」

 

「あ・な・た・は何を言っているのですか!!」

 

ドロシーが遊星の頬を両手で引っ張る。それはもう漫画やアニメに描かれる様な程思いっ切りである。

 

イヒャイイヒャイ!?ホレハホムヒャネェ!(痛い痛い!?俺はゴムじゃねぇ!)

 

懐かしい。あの頃もこうして悪戯をして仕返しをされていましたね。つい笑ってしまいます。

 

「ふふふ」

 

「ラプンツェル笑う所ですか!?」

 

フォロシーハフゥーフニフェヲアヘルゥ!(ドロシーはすぅぐに手を上げる!)

 

「毎度毎度シリアスからギャグに変えるこの口がっ!」

 

ボフェエエエエエ!?(ぎょぇえええええ!?)

 

「あはははははは!」

 

あぁ、本当に懐かしく楽しい。ドロシーの表情もあの時の様な切った貼ったの様なものでもなく素の表情は貴方しか引き出す事は出来ません。主よ、出会いと奇跡に感謝します。これからも私達に幸有らんことを此処に祈ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ラプンツェルが合流したました。次話からいけない言葉が出てくるかもしれない!でも、それが彼女の個性?だからね!

そして、世界の裏側の???の修復により記憶は全て思い出せるように変更(魔改造)されました。そうしなければドロシー様のやらかし等を第三者に報告する事も出来ませんしね…。



追伸:ラプンツェルの姿はパイオニア時としています。


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