『王に導かれし戦士たち、汝らの力となれり』
真新しい執務室のイスに座り机に肘をついて八神はやて二等陸佐は悩んでいた。
先日、姉のように慕うカリム・グラシアに呼びだされて聖王教会に行ったらさっきの言葉を言われたのだ。
いきなりの事で戸惑いながらも理由を聞くと、カリムのスキルである『予言者の著書』で分かったとのこと。
ロストギア関係かと聞いたが詳細は分からないと言われたので、しばらくは警戒しておくと伝えて帰ったのだ。
「はやてさん、大丈夫ですか?」
気がつけば目の前に心配な顔で見つめるリインフォースが机に立っていた。
「あぁごめんな、心配かけたみたいやな」
そう言うとはやてはイスの背もたれに寄りかかる。
その様子を見ていたリインフォースははやてに問いかける。
「予言の事ですか?」
はやては何も言わず頷く。
「いつ起こるか分からない予言に悩んでいたら、できるものもできませんよ」
説教するように言われたはやては少し笑いながらリインフォースを見つめる。
「ふふ、そうやな、悩んでもしかたないな。ありがとうなリイン」
礼を言われたリインフォースは胸を張って腰に手を当てて答える。
「いえいえ、こういうのも仕事のうちですから」
「そうか、ならお仕事ご苦労さん」
「そういえば、今日はなのはさん達と食事でしたね」
「そうや。久しぶりになのはちゃんとフェイトちゃんの3人でお昼にな」
時計を見てリインフォースは確認する。
「ではもうすぐですね」
「そうやな、もう午前の練習も終わってるやろな」
そして、ドアの向こうで話し声が聞こえてきて部屋の前で止まりノックされる。
「はやてちゃん、なのはだけどいいかな?」
「いいで」
ドアが開き高橋なのは一等空尉とフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官が入ってくる。
「ごめんね、遅くなって」
そう言ってなのはは顔の前で手を合わせて謝罪する。
「私もごめんね」
フェイトもなのはを真似て手を合わせる。
「気にせんでええよ。それより早くお昼に行こう。うち、おなかと背中がくっつきそうや」
お腹に手を当てて摩りながら言うはやてに、二人は手を降ろしてほほ笑む。
「はやてちゃんらしいね。じゃぁ行こうかフェイトちゃん。はやてちゃんがくっつく前に」
「そうだね、なのは」
そして、三人そろって廊下に出ようとしたとき、床が揺れ置物が小刻みに音を立てる。
「地震?」となのはが言い、
「うん。けど大きくはないね」とフェイトが相槌を打ち、
「そうやね。シャーリー、そっちは大丈夫かな?」とはやては部下に連絡をする
ディスプレイが現れそこにはひとりの大きめのメガネをかけた女性が映っている。
「はい、こちらは大丈夫ですよ。はやて部隊長。被害も今のところは聞いてませんし大丈夫だと思われます」
「そうか、ならよかった。新設そうそう壊れたら洒落にならんからな。あと、震源地分かる?」
「少し待ってください。えーと・・・。分かりました。臨海第8空港近隣の廃棄都市で次元震の可能性が高いですね」
報告を受けた三人は引っかかる言葉があったので聞いてみる。
「あの廃棄都市が震源地って珍しくない?」とフェイトが聞き
「そうだよね。それと次元震自体が珍しいもんね」となのはが相槌を打つ。
「シャーリー。一応やけど、レリックの反応はある?」
「少しお待ちを」
そう言ってディスプレイが消えたと同時にはやてがため息をつく。
「なんもないといいけどな~」と願うような声を出すはやてに二人はそっと肩を触り慰める。
「元気出してはやてちゃん」
「そうだよ、諦めたらそこで終わりだよ」
二人からの励ましを受けたはやては気持ちを気持ちを持ち直す。
「そうやな、まだ諦める訳にはいかんな」
「そうだよ。今日が無理でも今度にすればいいんだから」
フェイトが話しかけたと同時にディスプレイが現れ先ほどの女性が映っているが緊迫した表情でいた。
「はやて部隊長!」
「どうしたんや!?」
その緊迫した表情を見たはやては状況を理解しようと聞き返す。
「廃棄都市に陸戦型ガジェットの反応多数探知しました!」
「レリックは!?」
ガジェットがレリックに反応して集まる習性があるので反応があるということはレリックがある可能性が高いのだ。しかし、返ってきたきた返答は意外なものだった。
「それが、レリックの反応らしきものは探知できませんでした」
「じゃぁなんでガジェットがいるのかな?」
なのはが疑問に思ったことを聞いてみた。
「現状ではなんにもわかりません」
「そう・・・」
「それと、もう一つ反応がありました」
「なんや?」
ガジェットとレリック以外の反応があるとしたら何があるかと考える三人は考えるが思いつかず尋ねる。
女性は落ちつた声で報告する。
「生命反応が多数反応ありました」
聞いた三人は暫らく硬直していたらしい。
「・・・ス」
真っ暗な闇の中、誰かの声が聞こえる。
「・ラ・ス」
誰かの名前を呼んでいるようだ。
「プライス!」
呼ばれている気がする。
すると、真っ暗な闇が少しずつ白けて来た。
そして、真っ白に染まると引き上げられる感覚に襲われるのを最後に世界は暗くなる。
目を開けると目の前には、頭の髪の毛を真ん中だけ短く残してそれ以外は剃ったソフトモヒカンで、顔のラインに沿って無精髭が生えて、左目に額から頬まで縦に傷跡がある男が跨っており、右手に拳を握り振りかぶろうとしている、その後ろには青空があり左右には古いビルが立っている。
背中がひんやりと冷たく堅いことからコンクリと判断し、今は地面に寝ていると頭が理解すると同時に拳が振り下ろされる。
「起きろ、プライス!!」
「起きろ、プライス!!」
怒声と同時に左の脇腹に衝撃が走る。
「ガハッ!」
衝撃によって肺の中の空気が押し出される。
「お? やっと起きたかプライス」
そう言うと体の上に跨っていた男が立ちあがり手を差し出す。
左の脇腹をさすりながら差し出された手を掴む。
「もっと優しい起こし方は無かったのか、ソープ?」
掴んだ手を引っぱりながら立って周りを見渡す。
プライスが立っているのは、崩壊したビルや瓦礫が散乱する道路の真ん中にいた。
太陽が真上にいることから昼ぐらいだろうと思う。
ソープに顔を向けてさきほどの起こし方について批判しながら聞く。
とうの本人のソープは軽く笑って答える。
「これをされるよりましだろ?」
そう言ってソープは、マガジンや無線機が付いているベストからナイフを取り出し自分の首に軽く当てる。
当てるのを見てプライスは右手で額を押さえ、ため息をつく。
「まぁ、味方に寝首を掻かれるよりはましだが、」
言葉を切り殴られた脇腹を摩る。
「年寄りには少しキツイものがある」
するとソープは小さく鼻で笑う。
「冗談を言うなプライス。シェパードとの殴り合いで死ななかったくせに、たかが脇腹を一発殴られたぐらいで弱音を吐くなんて、明日は雪でも降るんじゃないか?それに・・・」
「それに?」
ソープはプライスの顔をジーーと見つめて、確認したかのとうに頷いて口を開く。
「若くなってるように見えるぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
唖然とするプライスにソープは道路に散らばっているガラスから手のひらぐらいの破片を拾い、軽く拭いてプライスに渡す。
「自分の目で見たほうが早いだろう」
渡されたガラスを持って自分を見る。
そこに映っているのは、確かに若くなっている自分だ。
白髪がほとんどだった髪と髭が茶色になっている。
年齢的にいえば20代後半には若返っている。
「大丈夫か?」
唖然とするプライスに少し心配して声をかけるソープだが返事は無く、プライスはガラスを見つめている。
「おーい、プライスー?大丈夫か~?」
プライスの前で手を振ってみるが反応がない。
しばらくじっとしていたソープだが、いきなりプライスが持っていたガラスを引ったくり地面に叩きつける。
それでも動かないプライスにソープは右手に拳を作りプライスの左脇腹を思いっきり殴ろうとするが、腕を掴まれ背負い投げのように投げられて背中を強く打つ。
「グッ!」
背中に強い痛みを感じるが投げ飛ばした奴に視線を向ける。
視線の先には満足したかのような顔をしたプライスがいた。
「ふむ、見た目だけではないようだな」
そう言ってプライスは掴んでいた腕を離す。
腕を放されたソープはすぐに立ち服を数回たたき砂を落としプライスを睨む。
「確かめるならいきなり投げることは無いんじゃないか?」
「なら聞いたらやらせてくれたか?」
「その時は丁重にお断りする」
「だろ。だからいきなり投げたんだよ」
したり顔で見つめるプライスにソープは殺意に近い感情を抱く。
「ところで、おまえだけか?」
ソープの殺意を込めた視線を無視しつつプライスはソープに訊ねる。
そんなプライスにソープは諦めたかのようにため息を吐く。
「わからん」
「わからんだと?なぜだ?」
ソープの返答に若干声のトーンを落とす。
「なぜといわれてもな・・・」
言い淀むソープにいら立つプライス。
「なんだ?」
「・・俺達以外にいるかわからん」
「・・・・・・・・・・・・・俺“達”?」
「ああ俺“達”だ」
プライスはいら立ちを忘れてオウム返ししてしまう。
「他に誰がいるんだ?」
ソープはほほ笑んで答える。
「懐かしい連中だよ」
ビルとビルの間にポッカリとあるサッカーグラウンド二個あるかないかぐらいで地面が砂利が敷き詰められてる広場に、車両とヘリコプターが多数止まっている。
広場は後ろと左右をビルで囲まれ前には4車線の道があり、反対側にもビルが道に沿って立っている。
ソープはプライスを連れて広場に入る。
そこには激戦を戦い抜いた兵士がたくさんいた。
そして、なつかしい顔もたくさんあった。
「ギャズ!!」
初めに見つけたのはSAS時代に共に死線をくぐり抜けた仲間の名前を叫ぶ。
向こうも気づいたのかこっちに歩いて近づいてくる。
そして、軽い抱擁した後、面と向かって話し合う。
「プライス! 元気そうだな!」
「お前も元気そうでなによりだよ。ギャズ」
「ハハ、まぁな」
「他のみんなは?」
「すぐ来るだろうよ」
ギャズが言いきると同時に走ってくる三つの姿に気づく。
「プライス大尉ー!」
「おお、みんな無事だったか」
彼らは、かつてプライスが第22S、A,S連隊所属の小隊の隊長をしていた時の部下だった。
彼らもまた、プライスと共に死線をくぐり抜けた仲間なのだ。
プライスがかつての部下と話をしていると近づいてくる姿がある。
それに気づいたプライスは無言のまま近づく。
「お前らもいたのか」
「それはこちらのセリフだぞ、プライス?」
灰色を基調とした戦闘服を着て蒼いサングラスをかけた男が皮肉をこめて返事をする。
プライスは立ち止まり前にいる三人の男を見る。
向かって右にいるのが、さきほど返事をした男がいる。
真ん中には、隣にいる男と同じ戦闘服をきた黒人が立っている。
左には、緑を基調としたズボンを履き灰色の上着を着て、頭蓋骨がしるされたバラクラバをかぶり目元を黒のサングラスで隠している男がいる。
プライスは右から順番に握手しながら話しかけていく。
「サンドマン、また会えてうれしく思う」
「あぁ、俺もだ」
「フォーリー、懐かしな。いついらいだ?」
「お前のところとの合同訓練いらいだな」
「そんな前か」
「そうだ。 お互い結構歳もとったしな」
「それを言うな」
二人は小さく笑う。
「ゴーストは、あいからわずそれを付けてるんだな」
「これをはずしたら誰も俺と分かってくれないからな」
その瞬間、場が笑いに包まれる。
「プライス大尉ですね?」
談笑していたプライスに後ろから若い隊員が訊ねてくる。
プライスは振り向いて「ああ、そうだ」と答える。
「司令官がお呼びですので、本部に案内しますからついて来てください」
「久しぶりだな。プライス」
連れて来たところには一機のブラックホークが停められておりそこには、戦闘服を着た初老の男が後ろに手を組み仁王立ちしている。
周りでは何機ものヘリが空に向かって次々と飛び立っていく。
初老の男に向かってプライスはため息をつき右手で頭を押さえ視線を落とす。
「あんたには会わないと思っていたよ」
そして視線を初老の男に向ける。
「マクミラン大尉、それともベースプレートとでも呼ぼうか? 司令官殿」