【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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「某剣客浪漫世界で私は物書きをする」でも話していた「武装錬金」編になります。

楽しく読んで貰えると嬉しいです!


お仕えする使命 序

新学期、1年生は2年生へ、2年生は3年生へと進級し、そしてこれから新しい1年生を温かく迎える桜の咲く時期の訪れを銀成高校で私とお坊っちゃまは五度目の学校生活(・・・・・・・・)を過ごすことになる。

 

「お坊っちゃま、昨晩の内に巳田先生と猿渡の二人の破壊を確認しました。おそらくお坊っちゃまが懸念していた錬金の戦士による襲撃です」

 

「そうか、遂に来たのか」

 

私の報告をお坊っちゃまは静かに聞き、やがて濁音の混じった歪な溜め息を吐く。今朝のお薬は気休め程度には効いているようではあるけれど。

 

あの薬類に彼の身体を癒やす効果は望めず、いつも苦しげに複数のお薬を服用するお坊っちゃまに煮沸したお水を差し出して、お薬のゴミを受け取る。

 

「あの廃工場は実験場として使い勝手は良かったんだが。ひいひいお祖父様の残した本の通りなら、アイツらは手段を選ばない外道だ。呉々もヘマはするなよ」

 

「畏まりました」

 

ベットを降りて私に歩み寄ってきたお坊っちゃまの忠告に頷き、静かに一礼してお坊っちゃまの部屋を退出する。銀成高校の寄宿舎は男女共同であり。昨晩、裏山のオバケ工場で猿渡を打破した山吹色(サンライトイエロー)の輝き、おそらくあの閃光こそ錬金の戦士の切り札───。

 

コツコツと寄宿舎の廊下を歩いていると、見知らぬ制服の女子生徒を窓の外で見つける。巳田先生の言っていた邪魔をされて取り逃がしたという女子生徒とは、きっと彼女の事だろう。

 

携帯電話を取り出して話す彼女の唇を見る。

 

「『かずき、裏山の廃工場に集合』……」

 

かずき。カズキ。

 

この寄宿舎に在籍する男子生徒の中にカズキという名前は何人か候補を脳内でリストアップすることは可能ではありますが、手当たり次第にカズキという名前の人物を聞き込めば普通に怪しまれてしまいますね。

 

「鷲尾さん、お坊っちゃまにオバケ工場に錬金の戦士が集まるとお伝えして頂けますか?私はもう少しだけ彼女の事を観察しておきます」

 

「承知した。創造主に伝えよう」

 

私の近くで警戒していたお坊っちゃまの造り上げた最高水準のホムンクルスたる鷲尾さんは私の言葉に頷き、先程まで私のいたお坊っちゃまの部屋に入っていき、直ぐにお坊っちゃまの驚愕する声が聴こえ、コンコンコン…!とドアをノックして入室する。

 

「ゴブッ…!挨拶しに行くとしようか」

 

吐血するお坊っちゃまの口許をハンカチで拭き、洗面器とお水を差し出す。お坊っちゃまは暴れる事もなく、お水で口の中を濯ぎ、洗面器に汚れを吐く。

 

「鷲尾、コイツも一緒に行くぞ」

 

「ハッ」

 

荒鷲の姿に身体を作り替える鷲尾さんの背中に飛び乗り、お坊っちゃまの身体を引き上げ、お洒落な蝶々覆面(パピヨンマスク)を身に付けるお坊っちゃまを見つめ、私も自前のマスクを着ける。

 

「お前もマスクの準備をしておけ」

 

「では、無貌の仮面に蝶の絵を描いたマスクを」

 

「ホウ。あとで俺の分も作っておいてくれ」

 

「はい。良きデザインを一緒に考えましょう」

 

そう言って私はお坊っちゃまと共に裏山に聳え立つ廃墟と化したオバケ工場───ホムンクルス実験場の上空へと向かって移動する。

 

 

 

 

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