「左之助さん、こちら武藤君の再従姉妹の糸色賛さんです。賛さん、こちら私の夫の相楽左之助です。で、あそこにいるのが左之助さんに会いたくて遠路遙々やって来た岩息舞治君です」
「カズキの言ってた蛮竜の継承者か」
「女性に見せる姿では無かったね。失礼」
「初めまして、表向きは糸色賛と名乗っていますが本名は秋葉賛でございます、歳は19歳ですのでお二人とは大して変わりませんので敬語はやめて欲しいです」
ボコボコになった高祖父様とそのご友人らしきマッチョの男性の二人の殿方を紹介してくれた高祖母様達に向かって一礼し、未だに帰って来ないお坊っちゃまの安否が気になってきました。
雪山という場所で戦うのは私もお坊っちゃまも初めての事ですから不安になります。
「チッ。派手に暴れやがって」
「随分と色物揃いの部屋だな」
「素敵な着物ですね」
「ホウ。分かるか、流石は武藤の高祖母だ」
ひいひいおばあちゃんと呼ばなかったのは女性が多いからでしょうか?と思いつつ、チラリと相楽様を見ると「マジかコイツ」と言いたげな視線を高祖母様に向けて見下ろしていますね。
チラリとお坊っちゃまを見上げる。
多彩な蝶の刺繍の付いたミニスカート風の着物。帯にも蝶の刺繍を施し、マスクを付けている以外はもはや変態さんですけど。
しかし、片袖の千切れた影響で更にセクシャルバイオレットさが増してしまっています。アイヌの方々も「和人ではあれが流行っているのか?」とか「やめろ。あの仮面はオシャレだろう」等々の言葉が聞こえてきます。
アイヌ語は聞き取り難くて難しいですね。
「(しかし、アイヌにもお坊っちゃまのマスクのオシャレさを理解できる方がいるんですね。いえ、まあ、あの蝶・ハイセンスに造形が深そうではありますが)」
「ん!これいる?」
「これは、なんですか?」
「ドンのえさ!」
「鮭のルイペ、鮭の切り身を凍らせたものです」
イタチに鮭の切り身をあげるとは、明治時代の民家はすごいことをしますね。────ですが、この熟成された鮭の甘さととろける舌触り、とても美味しいです。
「アイヌの料理か…」
「帰ったら調べてみます」
「賛も脳ミソ食うか?」
「それは結構です」
鮭の脳ミソというより鮭そのものに齧りつくお坊っちゃまの姿に少しだけ驚いてしまったものの。それほどススハムと呼ばれた彼女に苦戦し、スタミナとエネルギーを消費したということなのでしょう。
何より彼女は私より素早く動ける。
「君は強いのかい、パピヨンさん」
「蝶・強いさ。蝶人だからね」
お坊っちゃまが岩息舞治の質問に答えた瞬間、私は彼が恍惚とした表情でゴクリッ…!と唾液を飲み込む姿を見てしまった。