【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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悲しきモンスターたち 急

「女の子を殴る趣味は無いのだが……」

 

「安心して下さい。私の試作を試すだけです」

 

「まあ、それなら良いですが。あ、出来れば貴女の渾身の力を込めて殴って頂けると私としても嬉しいので是非とも本気でお願いします!」

 

メイド服の私が上半身裸の殿方と向かい合っている構図はかなり怪しい光景なのでは?と考えながらも全身の練りと二重の極みを撃つ瞬間のインパクトを合一させ、ゆっくりと岩息舞治様の左右の脇腹に触れる。

 

「擽ったバア゛ァ゛ッ!!?!?」

 

両手を大の字に広げていた岩息舞治様は突如鮮血を噴き出して、仰向けに地面に倒れ伏す。私がやったの左右の足を同時に内側に向かって捻り、そのエネルギーを四肢の関節を使って「発勁」と二重の極みを重ねた変異型の三重の極みです。

 

本来は高祖父様の編み出した二重の極みにデコピンを加えたバリエーションを「三重の極み」と呼び、私の使ったのは全身の関節を利用した連発式の三重の極みになり、ただ使用できるのは手足のどれか一つを平面に接触させていないといけませんね。

 

あと技の練りに遅れがあるのも難点です。

 

「……ハッ!なんだね、今の衝撃は!?」

 

「ひゃあっ!?」

 

いきなり起き上がった岩息舞治が鼻息を荒くして私の両肩を掴み、キラキラした綺麗な瞳を此方に向けながら興奮気味に言葉を繰り返し、気がつけば地面に倒れ込み、彼の事を見上げていた。

 

「離れて下さいッ…!」

 

巴投げの状態に足を畳み、鳩尾をゼロ距離で蹴り付け、浮遊する岩息舞治様を押し退けてボタンの千切れた胸元とブローチを握り締めて、パタパタとお坊っちゃまの後ろに隠れて血液を口から垂れ流す変態さんを見つめる。

 

「ハアッ、ハアッ…!素晴らしい!」

 

「変態さんは嫌いです」

 

「お前の主人は蝶・変態した男だがな。しかし、俺のものに迫るとは不届きなヤツだ。いっそのことこの場で殺してやろうか」

 

「止めとけ。ソイツは喧嘩好きの馬鹿だ、お前らが手を汚したりする必要はねえ。それよりもオレと景の玄孫を押し倒した報いを受けさせる」

 

「成る程、確かに百理あるか」

 

そう言うとお坊っちゃまと高祖父様は岩息舞治様に向かって飛び掛かり、三人が殴り合いを始めてしまいました。あれは、もう私を口実にしていませんか?

 

「悲しきモンスター達の戦いですね」

 

「悲しきモンスター?」

 

まさか高祖父様も変態さんなのですか?

 

そう驚きながらも高祖父様に視線を向ける前に綺麗なメイド服に着替える。しとりお婆様の拍手を一身に受けつつ、お坊っちゃまを見つめる。

 

なんだか、とても楽しそうです……。

 

 

 

 

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